ナポレオン・ボナパルト
伝馬は、雄英高校に来た。
受験をする為である。
校門を見る。
そして歩いていく。
後ろからは五月蠅い声で、デクだかなんだが言っている。怖い人もいるようだ。
筆記試験が終わった。
100年以上前とはいえ、エリートぞろいだ。勿論、勉強も教えてもらっていた。
筆記は大丈夫であろう。
「今日は俺のライヴにようこそー!!!」
教壇の前にいるのは、プレゼント・マイク。
「ボイスヒーロー」の肩書きを持つプロヒーローだ。
全身黒ずくめで、黒い革ジャンを羽織っている。襟を立て過ぎだ。
髪の毛は金髪で立っており、まるでインコのようだ。
サングラスをしており、首のあたりには、四角い機械を装着している。
返事が来ることを期待していたプレゼント・マイクは、返事が来なく悲しそうだ。
しかし、めげていないようだ。
「受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!」
皆は受験に来ている。
それは、人生で初めての的確な試練だ。
私も苦労をした。
伝馬の前の席のもじゃもじゃがプレゼント・マイクについて、ボソボソと独り言を言っている。
隣の人が注意をしていた。さっきの怒声に似ている。
プレゼント・マイクが、実技試験の説明をしている。
実技試験は10分間の【模擬市街地演習】のようだ。
演習会場にて、ポイントが振り分けられている”仮想敵”を行動不能にしてポイントを稼ぐ方法になっている。
仮想敵は3種類。それぞれの、「攻略難易度」に応じてポイントを設けてある。
「質問よろしいでしょうか!」
突然声が響く。その声は、堂々としている。いかにも、真面目って声だ。
「プリントには四種の敵が記載されています!誤載であれば、日本最高峰たる雄英に於いて恥ずべき痴態!我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求め!この場に座しているのです!」
確かにそうだ。
4種類プリントに載っている。
「ついでにそこの縮れ毛の君!先程からボソボソと・・・物見遊山のつもりなら即刻、ここから去り給え!」
どうやら、伝馬の前の子を注意した。
喋っている彼は非常に固く、ド真面目のようだ。
注意された前の子も「すいません」と謝って、周囲にくすくすと笑われている。
「オーケー、オーケー。受験番号7111君、ナイスお便りサンキューな!」
四種目の敵は0P!!そいつはいわばお邪魔虫。各演習場に一体!所狭しと大暴れしているギミックよ!倒せない事は無いが、倒しても意味はない。リスナーには上手く避ける事をオススメするぜ?」
ひょうきんにプレゼント・マイクは答える。
真面目な青年は、お礼を言い、着席した。
「他に質問があるリスナーはいるか?・・・いないなら、俺からは以上だ。最後に、リスナーへ、我が校から校訓をプレゼントするとしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った・・・。『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』だと!」
「更に向こうへ――”Plus Ultra”!!それでは皆、良い受難を」
”知っているさ”。と伝馬は思った。
ナポレオンの子孫に、直々に兵としての技術を、9年間教わっているのだ。ナポレオン・ボナパルトの事を知らないはずがない。
それに彼の周りには、沢山の苦難にまみれた人生を、送った人たちが何万といる。
戦死した者。命令した者。生き残った者。英雄として表彰された者。戦犯として裁かれた者。
受難を受ける覚悟は、すでに出来上がっている。
此処にいる誰よりも、遥かに。
小豆色のジャージに着替え、バスに乗り下って行けばそこには街があった。
現代日本の街並みだ。いや、どちらかと言えば、都市であろう。ビルが何個も建っている。
此処まで試験に力を入れた雄英に、伝馬は驚嘆した。
「はいスタート!・・・どうした!?実戦にカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れ!賽は投げられてんぞぉ!?」
プレゼント・マイクからのスタートの合図を聞いた受験生たちが、一斉に街へと走り込んでいく。
伝馬は「はいスタート!」の時点で走っていたのだ。
何度も、”実戦ではだれも合図しないぞ!!”と、
ルイ・ナポレオンに言われていたからだ。
彼はとある場所を見つけようと走った。
その途中には、当然のように仮想敵が現れた。1P。早いが、脆い。
彼はすぐにロシアで開発、製造された、モシン・ナガンM1891/30を取り出し、仮想敵の赤いカメラに突き刺す。
その後、弾を2発撃ちこんだ。
それだけで、1Pは機能を停止させた。
だが、気が抜けない。伝馬は走る。目的の場所まで。
1分ほど走ったであろうか。目的の場所にたどり着いた。
その場所は公園である。
開けており、余計なものがなく軍事拠点を作るのに適している。
すぐさま七人のトップを召喚する。どんどんと彼らが兵を召喚していく。
10秒ほどで、1000人の兵がそろった。
戦車や、航空機、火砲は後で召喚する。
アメリカ軍、200名。イギリス軍、30名。フランス軍、100名。ドイツ軍、200名。イタリア軍、150名。ソビエト軍、200名。日本軍、120名。
公園に並び直立している。
彼らの前には司令官がいる。
階級に関係なく、その軍一の名将である。
イギリス軍の前には、バーナード・モントゴメリー 。
ドイツ軍の前には、ハインツ・グデーリアン。
イタリア軍の前には、ジョヴァンニ・メッセ。
フランス軍の前には、ジャン・ド ラトル・ド・タシニー
アメリカ軍の前には、ジョージ・パットン。
ソビエト軍の前には、ゲオルギー・ジューコフ。
日本軍の前には、山下 奉文。
ジャンは、オリーブ色の軍服を着ている。そしてド・ゴールと同じ軍帽を被っている。違う点は、柄だ。柄は、4つの星が付けられている。
常に笑っている。優しそうなお爺さんだ。
だが、目を見てみろ。まるで”老獪”の様だ。常に思案し、効率よい戦い方を考えているようだ。
パットンの見た目は個性的だ。黒の軍服。金の装飾があり、まるで近代の軍服のようだ。ズボンはカーキー色をしている。ベルトはボクシングのベルトをそのまま小さくみたいだ。
目は、燃えている。自分で言っているように、骨の髄から、”軍人”なのであろう。
ジューコフは、青い軍服を着ている。胸には大量の勲章が付いている。
顔は、けつ顎で、眉毛が凛々しい。
目は、スターリンほどではないが、ドロドロとしている。
ソビエトは恐ろしい。
山下の軍服は、緑色だ。そして、胸には勲章が付いている。そして、日本軍人の象徴。日本刀を差している。
頭は坊主だ。顔つきは典型的な日本人顔だ。
目は、猛然と獲物に飛び掛かろうとしている、虎のように爛爛としている。
皆、歴史に名を残す名将である。
伝馬は敬礼をした。そこにいる千人の軍人が、一糸乱れぬ敬礼を返す。
『話は省略します。時間が短いから。各々の奮戦を期待します。』
そう伝馬が言った瞬間、千人が自らの役割を果たすために、行動をし始めている。
アメリカ軍は、戦車を召喚しながら前進を始めている。
イギリス軍は、ロボットがいつ来てもいいように公園の入り口で見張っている。
フランス軍は、フェンスの上に鉄条網を設置し、土嚢を積みながら、フェンスの間に機関銃を配備している。
ドイツ軍は、ティーガーなどの戦車に乗り込み、前進を始めていた。
イタリア軍は、C.V.33に乗り込み、突っ走っている。
ソビエト軍は、兵士を戦車の上に載らせ、前進している。様々なところに狙撃兵を配備させる予定だ。
日本軍は、兵士のための救護基地を作り試験生の為の救護所を作っている。
準備は整った。
一頭の狼に率いられた百頭の羊の群れは、一頭の羊に率いられた百頭の狼の群れにまさる。
ナポレオン・ボナパルト