歴史はヒーローになれるのか   作:おたま

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たとえ生死の境にあって、気持ちが極度に張りつめている時でさえも、他人の人生を思いやり、人類を支配する法則とは何であるかを考えてみるとすれば、必ず何らかの報酬が返ってくる。

ウィンストン・チャーチル


青年たちは闘っている

残り7分。

 

ロボットに謎のプラグが挿入され、突然、壊れた。

 

その個性を使っている人物は、三白眼のボブカットの女の子で、名前を耳郎響香という。

 

耳朗は、倒した後、周りを見渡した。

そして困惑した。

 

自分の隣を茶色く、四角い乗り物?が爆走しているのだ。CV33だ。それも沢山。

 

中からは、「È il migliore !!! ! ! È tutto italiano! ! ! Fino in fondo! ! ! ! Vai avanti! ! Vai avanti! ! ! !(最高だ!!!もっと、ガンガン飛ばせぇ!!!イタリア万歳!!!総帥万歳!!!!進め!!進め!!!!)」

 

などと聞こえる。

勿論、耳朗は何を言っているのかは全く分からない。

 

なにあれ?と思っていると、今度は、緑と黄色と黒の迷彩色で、ドでかい戦車がこちらへ走ってきた。

 

砲は、太く長い。ヘンシェル型砲塔と言う種類だ。前部には、小さい砲も取り付けられている。

二つのキャタピラで大地を踏みしめ、この戦車が通った後には亀裂が走っていた。

 

ティーガーIIだ。

 

この戦車を見たアメリカ軍は「キング・タイガー」と呼び、イギリス軍は「ロイヤル・タイガー」とあだ名した。

 

正に、戦車の王であろう。

 

仮想敵かと耳朗は思ったが、違う。

なぜなら、中から音楽がするからだ。

 

音楽には詳しい彼女ではあるが、その曲は知らなかった。

だが戦車が好きな諸君であれば知っているであろう。

 

その曲は、ルイスカリートと言われている、漁師のメロディが採用されている軍歌。

1993年まで、曲の使用を停止されていた曲である。

その曲はまさしく、戦車の威風堂々な立ち振る舞いを、見事に再現している。

 

その題名は『パンツァー・リート』

日本語に訳すと、戦車の歌。である。

 

足で鉄の床を踏み、リズムをとっているのが聞こえる。

 

Ob's stürmt oder schneit, Ob die Sonne uns lacht(嵐も雪も 、太陽燦々たる)

 

仮想敵が現れる。

 

ティーガーIIを視認し、”ブッ殺ス!!”

なんぞと、息まき、突撃してくる。

 

Der Tag glühend heißOder eiskalt die Nacht(灼熱の日も 凍てつく夜も )

 

ティーガーⅡは仮想敵に照準を合わせる。

 

estaubt sind die Gesichter,Doch froh ist unser Sinn(顔が埃に塗れんとも 陽気なり我等が心 )

 

仮想敵が前面を殴るが、全く効いていないようだ。全く、凹みもない。

 

Es braust unser PanzerIm Sturmwind dahin(驀進するは我等が戦車 暴風の只中を)

 

砲が轟音を鳴らしながら、仮想敵を貫く。そして、何もなかったのように前進を続け、仮想敵はキャタピラに巻き込まれ、金属の破片となった。

 

耳朗は唖然として、ぼーっと見ていると、多種多様なブゥウウウン・・・。

という音が辺りからしてくるではないか。

 

ふと、上を見る。

 

飛行機が何機も飛び交っているはないか。

 

日の丸みたいなものが翼に描かれている機体。

黒い十字が描かれている機体。

丸の中に点が描かれた機体。

 

多種多様だ。

 

ここは、本当に試験会場なの?と耳朗は思った。

 

当然の疑問である。

 

 

 

私は今Ju 87 シュトゥーカに乗っている。戦争中、私がずっと乗り続けた機体だ。

だが、私の機体には、37mm対戦車機関砲が付いている。だから、カノーネンフォーゲルと、呼ばれた。

 

色は、緑と、黒。シュトゥーカの翼はまるでカモメの様だ。

全体的に太く、ガッシリとした武骨なフォルムだ。

足が常に出ている。私のかわいい愛機だ。

この機体は複座で、後ろには私の相棒が乗っている。

 

「なあ!ガーデルマン!!今、何個ロボットをつぶしたんだったか?」

 

「今は、たぶん8機です。・・・てかあなたが倒したのですから、自分で覚えておいてくださいよ。」

 

「おお!!すまんな!!・・・また一機見つけたぞ!!」

 

ハンドルを前に傾け、急降下する。

 

急降下をしていきながら、シュトゥーカから、ラッパのようなサイレンが鳴り響く。

 

ああ・・・懐かしい。この音を俺は何万回も聞いたんだ。今はあのくそったれの赤軍も今は味方だ。

 

心地よいGをこの身で受けながら。感傷に浸る。

 

今だ!

 

37mm対戦車機関砲を撃ち、離脱する。

仮想敵は吹っ飛んだ。

 

ああ!!楽しいぞ!!!

 

 

 

バレルロールをしている機体の中からは、笑い声が聞こえる。

その声は、悪魔か魔王か。

 

鈍重な機体を、まるで我が身の様に操る男。

その男は、ソ連戦車500両以上と800台以上の車両を撃破し、ソビエトから多額の懸賞金を受け、優先的に狙われるも。何度も生還し、戦車を撃破し続けた。

 

『ソ連人民最大の敵』

 

”ハンス・ウルリッヒ・ルーデル”

 

 

 

残り6分

 

 

伝馬は、今、M3ハーフトラックの上にいる。軍事基地で待機しようと思っていたのだが、感情が高ぶってしまい、アメリカ軍に相乗りし戦場に赴いた。

 

伝馬には、殆ど活躍の場はない。

敵を視認した瞬間、後ろにいるアメリカの戦車、M4中戦車 シャーマンが撃破してしまうのだ。

 

シャーマンは、片方が傾いている台形のような形をしている。青がかった緑色だ。デカい砲の下には、白い丸の中に星がある紋章が見える。

 

そう。活躍の場がないのだ。

 

これは試験だ。軍隊が、仮想敵相手に蹂躙しているが、伝馬自身が活躍できなければ、もしかしてだが、合格できないかもしれないのだ。

 

伝馬は焦った。焦りに焦った。

 

急に、ドシン。ドシン。と謎の音がする。

 

瞬間、マンションよりもデカい、ロボットが現れた。

 

0pの仮想敵だ。伝馬は視認した瞬間、パンツァーファウストを二丁召喚し、撃つ。

 

1pくらいであれば、一発で倒せるのだが、0pの仮想敵には全く通じていないようだ。

 

さあ。決戦だ。

 

 

 

軍事拠点では、受験生のケガに応急手当を施している日本兵の姿を見ながら、嘆息したウィンストン・チャーチルは無線機からの応答を聞いていた。

 

『G9ポイントに0p仮想敵襲来。伝馬も一緒にいる。至急応援を要請する!』

 

とチャーチルは、その方向を見ると、マンションより高いロボットが見えた。

それほどまでに巨大なのだ。

 

「どうするチャーチル。私は軍人になったことがないから分からん。君の指揮に従おう。」

 

車いすの男はこう言った。

 

フランクリン・ルーズベルト アメリカの政治家。

 

民主党出身の第32代大統領。

ラジオを通じて、国民との対話を重視した初めての大統領で、アメリカ政治史上で唯一4選された大統領である。

彼の政権下でのニューディール政策と、二次世界大戦への参戦による戦時経済は、アメリカ合衆国の経済を、世界恐慌のどん底から回復させたと評価されている。

 

 

「ああ。私に考えがある。とってもおもしろいぞ。きっとみんな、度肝を抜かれるだろう。」

 

ムッソリーニが歩いてくる。

 

「ほう。どんなのだ。俺にも教えてくれよ。」

 

「いや、分らないほうがおもしろい。しっかりと考えてくれたまえ。」

 

「じゃあ、ヒントをくれよ。何もないんじゃ、分るもんも分かんねえからな。」

 

「私にも教えてくれ。単純に気になるんだ。」

 

「私は、元海軍大臣だ。それが、ヒントだ。」

 

 

 

 

残り5分。

 

其処の会場にいた人は、皆驚愕したであろう。

 

何故なら、空からデカい船が落ちてきたのだ。

地面が割れ、最下部が地面に食い込む。

このままでは倒れてしまうが、それをビル群が受けとめた。

 

因みに、しっかりとイギリス軍が避難をさせ、受験生の被害はゼロだ。 

 

なぜ船と分かるのか?

下が、赤いからだ。それぐらいしか判別のしようがない。それぐらい巨大なのだ。

 

 

その船は、全長195.3 m。 幅は31.7m 。

 

主砲は、38.1cm(42口径)MkI連装砲 4基。

 

美しいダズル迷彩を施されているその艦は、大英帝国の礎を築いた女王の名を有しており、その名は今、客船に使われている。

 

その船は、第一次世界大戦から使われており、チャーチルが指揮した戦い。『ガリポリの戦い』にも参加していた。

その後、第二次世界大戦では、イタリア軍の攻撃で大破したが、一命をとりとめ、終戦まで生き残った艦。

 

その船の名前は、”クイーン・エリザベス”

 

誉あるロイヤルネイビーが誇る偉大な戦艦である。

 

 

 

クイーン・エリザベスは、0pの仮想敵に向け、照準を構える。

 

0pの仮想敵は、クイーン・エリザベスに向かって歩く。

 

チャーチルは、受話器を手にしながら、獰猛な顔をしているであろう。横にいる二人の白人も、きっと獰猛な顔な顔をしているのであろう。

 

何故わからないかは、ロボットと、クイーン・エリザベスの陰に隠れて見えないからだ。

だが、分かる。顔の下には、口が三日月状になっている。そして、目は爛爛と光っている。

治療を受けている受験生が、見なくてよかった。間違いなく、恐怖で漏らしてしまうであろう。

 

 

 

残り4分。

 

受話器の向こう側からの、装填完了の言葉を楽しみにしながら待っている。

 

ああ、楽しい!!こんな戦争久しぶりだ。北アフリカから枢軸を追い出した時、以来ではないだろうか。

早く来い。早く撃ちたい。ムッソリーニも、ルーズベルトも笑っている。楽しいよな。

戦争は楽しい。銃の音、エンジン音。鳴り止まぬ砲火。これこそ戦争だ。

 

向こうでヒトラーが、レーダー提督相手に怒鳴っている。私もやりたいと言っているらしい。頑張ってレーダー提督が諫めているようだ。

 

まるで子供だな。

 

『装填。完了しました!!何時でも指示を。早く撃ちたい!!!』

向こう側の男が、弾んだ声で言う。

 

まあ待て。チャーチルは静止した。

 

今も0pはクイーン・エリザベスに向かって歩いている。

 

500m位ではないだろうか。

 

残り3分。

 

300mだ。チャーチルは、楽しさを隠せないように言った。

 

「撃て」

 

今日一番の雷鳴のような大きな音がした。クイーン・エリザベスの砲からは、黒煙が出ている。

 

合計8個の砲弾が0p仮想敵に向かって飛んでいく。

 

まるで流星のようだ。

 

仮想敵に着弾する。その音はまるで地割れのような。

 

手足がバラバラになりながら、0pが斃れる。

 

それを見ていた軍人は。各国の言葉で盛り上がっている。

 

士気はまた上がった。

 

残り2分。

 

ドイツ軍は、ティーガーなどで、敵を粉砕している。

 

イギリス軍は、もう我慢できなくなったのか、チャーチル歩兵戦車で前進をしている。

 

フランス軍は、向かってくる仮想敵を機関銃や、火砲で撃滅している。

 

イタリア軍は、CV33でタタタと機関銃で攻撃しながら、煽っている。

 

アメリカ軍は、シャーマンや、大量の火器で仮想敵を葬る。

 

日本軍は、受験生を救出をしながら、東條自身が前に出て、突撃をかましている。

東條が1pを日本刀で一刀両断していた。

 

ソビエト軍は、戦車の上の狙撃兵が、的確にカメラを壊し、KV-2が、仮想敵を爆殺している。

 

残り1分。

 

伝馬は、アメリカ軍と別れ、一人で仮想敵相手に、無双している。

ライフルで倒し、手榴弾で爆発させ、パンツァーファウストでチリにしていく。

何人かを救護所へ誘導もしている。

 

試験は終わった。

 

伝馬は、合計27体。ポイントでは38ポイント。伝馬だけの戦果である。

 

蹂躙は終わった。

 




自分を過大評価するものを過小評価するな
フランクリン・ルーズベルト

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