不利は一方の側にだけあるものではない。
ウィンストン・チャーチル
「最下位除籍って…?入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…。理不尽すぎる!!」
麗日お茶子が必死に反論を言う。
「自然災害・・・、大事故・・・、身勝手なヴィランたち・・・。いつどこから来るか渡らない厄災。日本は
相澤が優しく諭すように答える。
「そういう
「全力で乗り越えてこい。」
相澤の演説は、彼らにとって、大きな意味となった。今自分の不幸を悲観している暇はない。目の前の障害を乗り越えようとしている。
第1種目:50m走
因みにちゃんと番号順で行われる。
1番:青山優雅。2番:芦戸三奈。
チャーチルは困惑している。
金髪の彼は一体何をしているのだ。彼の隣の女子はトーマス・パークが使用した、クラウチングスタートしている。個性が、役に立たないのであれば最適解だ。だが、彼はどうだ。ゴールに背を向けている。いったい何をするのだろうか。
「フフ・・・。皆工夫が足りないよ。」
相澤が合図を言う。いや、そのまま走るのか。それじゃあ、まるで映画のチャップリンみたいだ。
「”個性"を使っていいってのは、こういう事さ!!」
合図とともに、金髪の彼が装着している、ベルトからビームが出たではないか。
だが、すぐに彼は落ちた。落ちたそしてまたビームを出す。
一体何をしたいんだ。
「5秒43!!」
「5秒51!!」
中々に速いではないか。
「一秒以上射出するとおなか。壊しちゃうんだよね。」
そ、そうか。
3番:蛙吹梅雨。4番:飯田天哉。
「3秒04!」
ほう。とても速いな。開始してすぐではないか。
ふくらはぎから、炎が出ていた。彼の個性はエンジンか?なんだか、管がレシプロエンジンの様だ。
「5秒58。」
あのカエルの女子もなかなかではないか。彼の記録で、目移りしてしまうが。
5番:麗日お茶子。6番:大歴伝馬。
伝馬は隣の彼女と話しているぞ。いけ、口説け。
話し終わったら彼女は靴や服を故意的に触っている。伝馬が何か粗相をしたのだろうか。
だめだぞ伝馬。
ジョン・ブルたる者。いかなる時も優雅たれだ。
私は、今50m走を走るためにいる。そうしていたら隣の彼女は、私へ話しかけてきた。
「デク君と一緒にいた人だよね。私、麗日お茶子。よろしく!!」
「ああ。私は大歴伝馬だ。これからよろしく頼むよ。」
「うん!よろしくね!!」
やはり、とても明るい子だな。私にもそれぐらいの明るさが欲しい。
さあ。走るか。
スタート!と言う言葉と共に二人は同時に走る。麗日はさっき靴や、服を触り、重さをなくしている。
だが、最初から速さが全く違う。伝馬のほうが圧倒的に速いのだ。麗日との差を大きく広げた。
「5秒79!!」
「7秒15!!」
伝馬は5秒79だ。
彼は何も個性を使っていない。彼は無個性の人類の中では、トップクラスの脚力を持っているのだ。
その後、着々と続いて、行われてる。
第二種目:握力
伝馬の握力は、64Kgwだった。
「540キロて!!あんたゴリラ!?タコか!!」
「タコってエロイよね・・・。」
などと、隣では言っている。思春期である。
第三種目、4種目と着々と過ぎていった。
因みに、立ち幅跳びは313cm。反復横跳びは74回だった。
チャーチルが笑顔で、相澤に話しかけた。
「やあ、先生。今更だが、伝馬の事を宜しく頼むよ。」
「それは、私の生徒なので、ちゃんと指導しますよ。まあ、此処で居なくなるかもしれませんが。」
「いや、誰もいなくならないね。東條が言っていたが、君は、合理主義者ではないか。そんな君が入学初日で、落とす訳がない。」
「はあ、何故そんな確信があるのですか。」
「だって君は合理主義者ではないか。そんな君が、良く分らない生徒を我武者羅に退学させるわけがない。それに、君には、我々と同じ匂いがする。扇動者の匂いがする。」
「何を言っているか分りませんね。まあ、見ていてください。貴方の勘が本当か、試してあげますよ。」
「ああ、宜しく頼むよ。君。」
チャーチルは少しにやけている。彼の反応を楽しんでいる様子だ。相澤は無表情だが。
第5種目:ボール投げ。
伝馬の記録は、74mだった。去年よりも伸びたようだ。
麗日は、”セイ!!”と軽い掛け声と共に、投げる。すぐに落ち来ると思ったが、フワ~~と中々に落ちない。皆が眺めるていると、計測器から、結果が出ていた。
「∞」だ。
「∞!!?すげぇ!!無限が出たぞーー!!!」
クラスの皆が歓声を上げる。
だが。一人ドキドキハラハラしている生徒がいた。
”緑谷出久”である。
彼は、今まで突出した記録を残していない。なので最下位の可能性が最も高いのは彼だ。
伝馬もこの体育測定では、無個性みたいなものだが素の能力が高い為、常に10位前後を記録している。
(ダメだこれ!すぐ出来るような簡単な話じゃない!皆・・・一つは大記録を出しているのに・・・!!残りは持久走、上体起こし、長座体前屈・・・。もう後がない・・・。)
(このままだと・・・。僕が最下位・・・。)
私は、飯田君と麗日君ともにボール投げを見ている。
確か、麗日君は体育測定前に、パンチが凄かったと言っていたが、彼は、大丈夫なのだろうか。
「緑谷君はこのままだとマズいぞ・・・。」
飯田君が心配そうに言う。
「ったりめーだ。無個性のザコだぞ!」
爆豪君が、大声で言う。
「無個性!?彼が入学式に何をなしたか知らんのか!?」
「は?」「そうだ。緑谷君は何をしたんだ。教えてくれないか?」
爆豪君と被ってしまった。
「おい!この野郎!!被せてくんじゃねえ!!!」
「まあまあ、落ち着いてくれよ。他意はないんだ。」
「あぁ!!!?」
「大歴君。彼は、」
緑谷君が投げようとする。
「一撃で0p仮想敵を倒したんだ。」
「46m。」
相澤先生の声が聞こえる。
何やら、緑谷君が手を見ている。個性が発動しなかったのだろうか。
「”個性”を消した。つくづくあの入試は・・・、合理性に欠くよ。おまえのような奴も入学できてしまう。」
成程。あの時にやったように個性を消したのか。
緑谷君は目を見開き驚いている。
「消した・・・!!あのゴーグル・・・。そうか・・・!」
「視ただけで人の”個性”を抹消する”個性”!!抹消ヒーローイレイザー・ヘッド!!!」
凄いな。私は、雄英に来た時に初めて知ったぞ。
周りの人たちも、ざわざわ知っているか、話し合っているようだ。
相澤先生が緑谷をマフラーのようなもので、引き寄せコソコソ話している。
一体何を話しているのだろうか。
「彼が心配?僕はね・・・。全っ然。」
「指導を受けていたようだが。」
「除籍宣告だろ。」
などと、様々な憶測が飛び交っている。一人毛色が違うが。
緑谷君がSMASH!!を言いながら、ボールを投げた。
飛ぶ距離は、さっきの爆豪君に匹敵する。すごいな。確かに0pの仮想敵を倒したというのは信じていなかったわけではないが、本当の様だ。
相澤先生の計測器には、705.3mと記されている。
「先生・・・。まだ・・・。動けます。」
彼の退学はありえなさそうだ。
昔、暑苦しいヒーローが、大災害から一人で千人以上を救い出すという伝説を創った。同じ蛮勇でも…おまえのは一人を救けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久、おまえの“力”じゃヒーローにはなれないよ
相澤消太