歴史はヒーローになれるのか   作:おたま

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”「頑張れ!!」って感じのデク”だ!!

緑谷出久


青年は観戦する

「始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

オールマイトが大きな声で言う。

皆、オールマイトの方向を見ており、考え深いそうな顔つきをしている。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

白いロボットの様なヒーロースーツを着ている飯田が質問する。

 

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での()()()()訓練さ!!(ヴィラン)退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば、屋内のほうが凶悪(ヴィラン)出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売・・・。このヒーロー飽和社会。真に賢しい(ヴィラン)屋内(やみ)にひそむ!!」

 

確かに屋内の戦闘では、元々いる防衛側のほうがはるかに有利だ。ゲリラやレジスタンスは常に屋内に隠れ、局所で攻撃している。

 

「君らにはこれから「(ヴィラン)組」と「ヒーロー組」に分かれて、2対2の奥内戦を行ってもらう。だが、このクラスは奇数なので必然的に一人余ってしまう。だから、余った人は好きな人と、ペアを組んで、終わるのが速かったチームと対決してもらう。役職は逆になるぞ!!ヒーローだったチームは、(ヴィラン)に。(ヴィラン)だったチームはヒーローに!ヒーローは連戦が多い。経戦能力も必要だぞ!!」

 

「基礎訓練もなしに?」

カエルの個性を持つ、蛙吹梅雨が言う。

 

「その基礎を知るための実践さ!ただし、今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ。」

そう、オールマイトが言うと、生徒から授業への質問がなされる。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

落ち着いて質問を投げかける者。

 

「ブッ飛ばしてもいいんすか」

楽しそうに震えながら言う者。

 

「また、相澤先生みたいな除籍とかあるんですか・・・・?」

不安そうに言う者。

 

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいのですか」

しっかりとした口調で投げかける者。

 

「このマントヤバくない?」

キラキラしている者。

 

「んんん~~~~聖徳太子ィィ!!!」

 

「いいかい!?状況設定は、「(ヴィラン)」がアジトに「核兵器」をかくしていて、「ヒーロー」それを処理しようとしている!」

 

『設定アメリカンだな!』

 

「「ヒーロー」は制限時間内に「(ヴィラン)」を捕まえるか、「核兵器」を回収すること。」

「「(ヴィラン)」は制限時間まで「核兵器」を守るか「ヒーロー」を捕まえる事。」

オールマイトがカンペを読みながら、説明をする。

 

「コンビ及び、対戦相手はくじだ!」

 

「適当なのですか!?」

飯田が驚く。

 

「プロは、他事務所のヒーローと急増チームとピックアップする事が多いし、そういう事じゃないかな・・・。」

 

「そうか・・・!先を見据えた計らい・・・。失礼いたしました!」

 

如何やら、緑谷の説明(深読み)に、飯田は納得したようだ。

 

「いいよ!!早くやろ!!」

 

因みに、オールマイトはそこまで考えていない。くじでいいか。という安価な考えである。

 

そして、くじの結果が下記である。

 

Aチーム:緑谷出久。麗日お茶子。

Bチーム:轟焦凍。障子目蔵。

Cチーム:八百万百。峰田実。

Dチーム:爆豪勝己。飯田天哉。

Eチーム:芦戸三奈。青山優雅。

Fチーム:口田甲司。砂藤力道。

Gチーム:上鳴電気。耳郎響香。

Hチーム:蛙吹梅雨。常闇踏陰。

Iチーム:尾白猿夫。葉隠透。

Jチーム:瀬呂範太。切島鋭児郎。

余り:大歴伝馬。

 

である。

 

悲しきかな。余ってしまった伝馬は少し悲しい気分になっている。

 

「大歴君。大丈夫だよ。お、落ち込まないで。それにメリットもちゃ、ちゃんとあるし!!」

緑谷が優しく慰める。

 

「ああ。大丈夫さ。これのおかげで皆の個性を把握し、運用ができるってものだ。」

元気よく言ってはいるが、なんかボッチという感覚があり、少し悲しい伝馬であった。

 

「続いて最初の対戦相手は、こいつらだ!!」

 

「Aコンビが「ヒーロー」!!Dコンビが、「(ヴィラン)」だ!!」

なんと、因縁の二人が闘うこととなった。

 

「先に(ヴィラン)チームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他のものはモニターで観察するぞ!飯田少年、爆豪少年は(ヴィラン)の思考をよく学ぶように!これはほぼ実戦!ケガを恐れず思いっきりな!度が過ぎたら、中断するけど・・・。」

 

静かに彼らは、オールマイトの話を聞いている。友とは何か。試されるのかもしれない。

 

 

ビルの地下室には、モニタールームがある。そこで、訓練をみんなで見るのだ。声は聞こえないが。

 

「さぁ君たちも考えてみるんだぞ!」

 

 

そして、伝馬は見る。彼らの戦いを。

 

ヒーロー側である緑谷と、麗日は如何やら、窓からの侵入ルートのようだ。

そして、道を歩く。屋内なので、非常に死角が多い。

角を曲がろうとしたとき、爆豪が飛び出した。

 

「いきなり奇襲!!!」

頭が目立つ、峰田実が驚く。

 

そして、爆破。ビルの耐久なんぞ知らんと、ドでかい爆発をする。

 

緑谷のマスクの半分が、なくなっている。寸前で避けたのか、掠めたのか。

何れにせよ、直撃していたら、危なかった。

 

「いい判断だ。双方、しっかりと考えられている。」

伝馬が、感心したように言う。

 

「爆豪スッゲェ!!奇襲なんて、男らしくねえ!!」

赤ずくめの、男らしい青年。切島鋭児郎が興奮した様子で言う。

 

「奇襲も戦略!彼らは今、実戦の最中なんだぜ!」

オールマイトが、そう答える。

 

「緑君。良く避けられたな!」

左右を見渡しながら、ピンクの肌をしている、女子の芦戸三奈が言う。

 

「爆豪が行った!!」

金髪のチャラ男のような青年。上鳴電気が言う。

 

爆豪が走る。そして、右手でまた爆破をしようとした。

が、その右腕を緑谷がホールドし、見事な一本背負いをしたのである。ドッという、鈍い音が聞こえてくる様だ。

 

そして、緑谷が何かを叫び、爆豪がそれに対して、怒り狂っている。

 

「アイツなに話してんだ?定点カメラで音声がないとわかんねえな。」

そう切島が言うと、オールマイトがやはり答える。

 

「小型無線でコンビと話しているのさ!持ち物はプラス建物の見取り図。そして、この確保テープ!コレを相手に巻き付けた時点で、「捕らえた」証明となる!!」

 

「制限時間は15分以内で、「核」の場所は「ヒーロー」に知らされていなんですよね?」

 

「YES!」

 

「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね、コレ。」

と、芦戸が言う。

 

「相澤君にも言われたろ?アレだよ。せーの!

 

「Plus U「あ ムッシュ。爆豪が!」」

 

オールマイトは、言葉を発した青山を見る。なんだか不服そうだ。

 

そして、訓練は進んだ。

 

緑谷は身を隠した。

上では麗日と、飯田の一騎打ちが行われている。どちらも有効打がなく、膠着しているようだ。

 

そして、爆豪がヒーロースーツで増大した、爆破で緑谷を攻撃した。

 

当たったら、確実に死ぬ。そんな爆発であった。

 

ドオォォォ!!!!!

 

彼らは闘う。己のプライドの為に、憧れに勝つ為に。

 

双方、幼馴染に向かって拳を振り上げる。

彼らは、殴り合いをするのかと思ったが、違う。

 

緑谷が、爆豪に拳を当てずアッパーをして、衝撃破を作ったのだ。

 

上の階では、衝撃で床が壊れ、その瓦礫群を麗日が個性で軽々と持ち、飯田に浴びせた。

 

そして、飯田が瓦礫に引き付けられている間に、麗日が核に抱き着いて勝利条件は達成された。

 

「ヒーロー・・・、ヒーローチーム・・・。WI----N!!

 

「負けたほうがほぼ無傷で、勝ったほうが倒れてら・・・。」

 

「勝負に負けて、試合に勝ったというところか。」

 

「訓練だけど。」

 

 

 

 

そして、戻ってきた彼らの講評が始まった。

 

「まあ、つっても。今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」

 

「なな!!」

飯田が驚いている。

 

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

蛙吹が質問する。

 

「何故だろうな~~~?分かる人!!?」

 

「ハイ。オールマイト先生。」

 

「それは、飯田さんが一番状況設定に順応して居たから。爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生が言っていた通り、屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気のゆるみ。そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを「核」として扱っていたら、あんな危険な行為できませんわ。」

 

その通りだ。彼女が言っていることに私が付け足す事柄はない。

 

「相手への対策をこなし且つ、”「核」の争奪”をきちんと想定していたからこそ、打算は対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは「訓練」と言う甘えから生じた。反則のようなものですわ。」

 

飯田がジーンと、感激している。八百万への好感度爆上がりであろう。

 

彼女の評価を聞いて思ったのは、”「核」の争奪”が目的だが、安全なところにヒーローが核を送るにはヴィランを最初にどうにかするしかない。ビルを出るときの輸送中に教われたら元も子もないからだ。この訓練は、ヴィランを同じ場所に引き付け、捕まえるか、その一点であろう。と私は考えた。

 

そして、クラスのみんなはシーンとしている。

 

「ま・・・まあ、飯田少年もまた固すぎる節が有ったりするわけだが・・・、まあ・・・正解だよ。くぅ・・・。(思ったより言われた。)」

オールマイトが震えながら、サムズアップをする。

 

「常に、下学上達!一意専心に励まねば、トップヒーローに等なれませんので。」

 

きっぱりと言い張った彼女は、ポニーテールの大和撫子の八百万百。推薦入学者である。

 

因みに、下学上達とは、手近なところから学び始めて、次第に進歩向上してゆくこと。で、一意専心とはほかのことを考えずその事だけに心を集中すること。である。

 

見習いたいものである。

 

 

第二訓練は、ヒーロー側の轟焦凍と、障子目蔵のBチーム。

(ヴィラン)側の尾白猿夫と、葉隠透のIチーム。

 

だが、この訓練は、すぐに終わった。なんと、轟の個性でビルごと凍らせたのだ。

そして、核に手を当て、Bチームの勝利に終わった。

 

そして、訓練は続く。各々が自らの個性を使い、勝利しようと一進一退の攻防を見せた。

 

 

最後の第5戦が終わった後、いよいよ伝馬の出番である。

 

「よし!大歴少年。君の出番だ。君は誰をペアとして選ぶんだね?」

 

「はい。私は葉隠さんをペアとして、選びます。」

葉隠は驚いている。

 

「分かった。じゃあ、Kチームは大歴伝馬。葉隠透ペアだ!!そして・・・。彼らと戦うペアは、Bチームだ!前回はヒーローチームだったので、今回はヴィランのほうに行ってもらうぞ!」

轟と、障子は驚いていない様子だ。自分たちがやると分かっていたのではないだろうか。

 

「轟少年!頼むから、あんなビル全体を凍らせないでくれ。寒くてたまらないよ・・・。」

 

「善処はします。」

 

「うん。さあ、Bチームは先に入ってセッティングをしてくれ。Kチームは5分後だぞ。」

 

4人は、”はい!”と返事をして、作戦会議をしていく。

 

「なんで私を選んだの?ほかに強い人は沢山いるけど・・・?」

葉隠が疑問をぶつける。

 

「いや。君じゃないと、ダメだ。君のおかげで戦いやすくなる。」

 

「?」

 

「まあ、見ておいてくれ。君を活躍させてやる。」

 

伝馬は三日月の様と笑う。少しだが、彼らの笑い方に似て来たのではではないだろうか。

 

彼らは、オールマイトに勧められこの雄英に来た。そして、今はオールマイトの指示で二人は闘う。はてさて、どうなるのか。

 

私ににも分からない。




俺はぁ…至極悪いぞぉお。

飯田天哉

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