東條英機
今、彼らは地下室で最後の訓練を見ている。
「そういえば、あいつの個性って何なんだ?」
切島が疑問を言う。
「大歴君の”個性”は歴史だよ。切島少年。」
オールマイトが答える。
「”歴史”っていうのは、どおいう事なんすか。」
上鳴がオールマイトに言う。
「私も良くは知らないんだが・・・。歴史上の人物を出せたり、銃火器を召喚できる能力らしい。」
「私から説明しようではないか。」
突然後ろから、声がする。このクラスの誰でもなく、先生方でもない。
その男は、緑色の軍服を纏い、眼鏡をかけている男。
そう東條である。
「オールマイト殿。確りと伝馬の許可を頂いております。自己紹介が遅れておりました。私は、日本陸軍大将。東條英機であります。今後とも宜しくお願い致します。」
”よ、よろしくおねがいします・・・。”
と、返事が来る。
「早速でありますが、伝馬の”個性”の説明をしようと思います。伝馬の”個性”は歴史であります。彼の個性は、歴史上の英雄を召喚することができます。そして、歴史の人物は、過去に彼に従った人物、兵士達を召喚し闘うことができます。皆伝馬の命令で動きますので心配はいりません。」
「質問をしてよろしいでしょうか!!」
そう言ったのは、飯田である。
「なんだね。そこの白いロボットみたいな君。」
「飯田天哉です!!」
「そうか。飯田君。質問はなんだね?」
「はい!!先程、歴史の人物を召喚できる言っておりましたが、どの様な人物を召喚できるのでしょうか。卑弥呼や中大兄皇子等の人物も召喚できるのしょうか。」
「良い質問だね。人物は、主に政治家・軍人らしい。そして国の実質的なトップのみだ。そして、卑弥呼等の人物は召喚出来ない。彼の召喚には条件があり、鮮明に写真が残っていなくてはならない。以前、写真があった近藤勇を召喚しようとしていたが、できなかったよ。」
「成程・・・。ありがとうございます!」
「簡潔に纏めますとこれが、歴史であります。他にも、いろいろありますが伝馬の戦い方を見ていただければ、何となくでありますがご理解いただけると存じます。」
そう東條がいうと、モニターを見る。そして、それに釣られて、皆もモニターを見た。
そして、見た画面には、一階に司令部を作る軍隊の姿であった。
最初に言っておくが、銃は実弾ではなく、ゴム弾だ。雄英側が訓練なので、人数分を用意してくれた。雄英様様である。
今回の軍団は、フランス軍、ドイツ軍のコマンド―部隊で行われる。
フランス外国人部隊:16名。第502SS猟兵大隊:9名。ヒーロー候補2名の、計27名で行われる。
なので、26人分の銃が支給された。
1部隊は、4名編成。隊長・衛生・機関銃・通信である。
個性持ちは決して、油断してはならないという判断である。
まず、フランス外国人部隊と伝馬の17名が一階を制圧。HQを作り、4人とド・ゴールとヒトラーを残し伝馬含め13名が、上へ上がって行っている。
そして、二階・三階へと昇って行っている。しっかりと制圧してからだ。
アイコンタクトと指差しのみで会話をし、非常に静かに速く制圧をしていく。
3分しかたっていないが、1階から3階までを制圧した。
ここまで、彼らは一言も発していない。見事なものだ。
そして、四階には二人がいた。そう轟と、障子である。
その前に、このビルの間取りの説明をしなければならない。
このビルは、5階建てで、屋上がある。
間取りは、ヰ状に廊下がある。そして、階の真ん中にエレベーターがあり、その右上に階段がある。
いかなる特殊部隊であろうと、完全に足音を消せるわけがない。障子目蔵の個性は複製腕だ。肩から生えた2対の触手の先端に、自身の体の器官を複製できる。
彼の耳にかかれば、どんなに小さい音でも聴くことができるだろう。
そして、外国人部隊は、すぐさま姿勢を伏せにし、FM mle1924/29軽機関銃を構えた。
すぐさま、轟は氷の壁を一面に作り、二人が隠れた瞬間。
ズダダダダ!!シュウゥ・・・。
という、機関銃の音が鳴り響き続ける。音が非常に大きく、障子の高性能な耳は効力を発揮しなくなってしまった。機関銃の音しか聞こえない。
目の前で大声で発しなければ、他人の声が聞こえないのだ。
外国人部隊は、今階段で機関銃を撃っている。彼らの右には階段があるが、氷の防壁は、逆L字型になっており、階段ががっちり埋められている。
そっちに集中したからだろうか。
階段側の逆側。部屋があるほうには、氷の壁はない。
16人のうちの4人が部屋側に行き、十字砲火を浴びせようとする。
だが、彼らも雄英生である。すぐにその動きを察知し、轟がエレベーターの下のほうの廊下に氷の壁を作ろうと走る。
その時に、氷の壁の向こう側から、ズダダダ!!の音のほかに、ボォォォーーー!という音が聞こえた瞬間。氷の壁から、炎が噴き出した。
M1/M2火炎放射器である。
因みに、これは持ち込んだ実物である。
個性持ちにとっては、火系統の個性の人は多い。心配はいらないであろう。
すぐに轟が、壁を補強しに行くが炎が氷を貫通する。
障子は階段に退避したが、轟は、エレベーターの前。
メインホールで分断された。
実は、機関銃で牽制をし続けているのには、しっかりと目的がある。
彼らに銃を当てようとは、毛頭考えていない。
何故か?それは音を消すためである。
機関銃の煩い音が鳴り始めてから1分ほど経った頃か。
ビルの上空にはブンブンブンと言う音がする。
障子は微かにだがその音が聞こえたので、5階に上る直前。
横から、バァリィン!と、ガラスが割れた音がした。
猟兵部隊である。
猟兵部隊が突入する少し前、葉隠は上空にいた。いや、ヘリコプターの上にいる。
ヘリコプターの名前はフォッケ・アハゲリス Fa 223 。通称はドラッヘである。
オットー・スコルツェニー率いる、第502SS猟兵大隊の8名と葉隠の計10名が乗っている。
「ひえー!高いよー!」
葉隠がおびえるが、周りのドイツ人は笑っている。
「大丈夫だよお嬢さん。このヘリはあのビルにちゃんと降下できるし、我々がしっかりと護衛をするからね。君の作戦目的は、核に触ること。もし敵がいれば、後ろからテープを巻き付けるんだ。」
オットーが笑顔で言う。
「それって、大丈夫?弾とか当たらない?私透明だし。」
だが、不安そうだ。そりゃそうだ。
銃を持っている人がいる。それだけで怖い。
「大丈夫さ。お嬢さんは手袋しているし、我々はプロだ。生徒には絶対に当てないよ。これでも我々は、精鋭だからね!」
笑顔で顔に傷があるオッサンが大丈夫と言うのだ。信じられない。
「ほらぁ。貴方が言うともっと心配させちゃいますよ。顔の傷をちゃんと治してから行ってくださいよ。」
金髪の陽気な若者が言う。
「これは、学生時代の傷だ。関係はないだろよ。」
「それでもですよ。この子の顔は絶対にひきつってますって。ごめんね。お嬢さん。このおじさんが怖くてね。」
そういうと、そこにいるみんなが笑った。
”黙れ!”とオットーは言うが、顔は笑顔だ。
(まあ、信じてやるか!!)
と、葉隠はそう思った。
そして、屋上にヘリコプターが着陸し、なぜかこのビルには屋上への階段がないので、ビルの屋上からロープで降下し、5階の中に入った。
そして、4階。
轟は、機関銃の十字砲火を氷の壁で耐え忍んでいる。
念の為に言っておくが、彼らは轟に当てようとは1㎜も思っていない。全て、氷の厚いところ狙い、牽制している。
『こちらHQ。状況はどうか。どうぞ。』
通信兵が持っている無線から、声が聞こえる。
「こちら伝馬。今、Tと交戦中。予定通りに機関銃で牽制中。どうぞ。」
『了解。オットーが上で、Sと交戦中。Sの個性は強力なり。葉隠取り付く暇なし。援護を要請する。どうぞ。』
「了解。8名を上に行かせる。Tは私に任せてくれ。」
『了解。20秒後、作戦開始。オーバー。』
そして、階段の氷を溶かし、8名を上へ行かせた。
今4階にいるのは、回り込んだ4名と、階段に伝馬を含め5名である。
5階では、猟兵部隊9名と、葉隠が戦闘をしていた。
因みに葉隠は、オットーの背に乗り入った。ガラスを割った後に入ったので、ケガはしていない。
オットーは紳士である。
彼らと障子は死ぬほどに相性が悪い。
純粋なフィジカルには、彼らは勝てないのだ。
彼らは、銃を撃つがまるで効いていない。ゴム弾だからだ。
ゴム弾でも十分に殺傷揚力があるが、障子は怯みもしない。
恐るべきだ。
障子は身体能力で、隠れ撃ちする猟兵部隊を追いかけながら、核を守っている。
隙がないのだ。
そして、下から、外人部隊が8名上がってきた。
その光景に、障子は驚く。
「何。轟が負けたのか・・・?数が少ない。動けなくしているのか?」
と、障子が思案したところをオットーは見逃さなかった。
障子が目を離した後、スッと、音を出さずに走り出し、その勢いで足払いをした。
そして、倒れそうな障子の胸を、持っていたStG44 の持ち手で殴り、首を抑え鎮圧しようとした。
「お嬢さん!テープで・・・!?」
だが、そこで倒れたのは障子ではなかった。オットーである。
障子は持ち前のフィジカルのみで、この苛烈な攻撃を耐え複製腕でオットーを倒したのだ。
実はその間に彼らの後ろに回り込んでいた者がいる。
そう、葉隠である。
「その手を離せーー!」
と、テープを持ちながら、ぐるぐる回転する。
そう。テープを巻き付けたのだ。障子は無力化された。
そして、葉隠が核を触る。
勝利はヒーローチームに終わった。
7つの炎の手榴弾
フランス外国人部隊エンブレム