歴史はヒーローになれるのか   作:おたま

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愉快なことを理解できない人間に、世の中の深刻な事柄がわかるはずがない。

ウィンストン・チャーチル


男の子は寝ている

 今時刻は22時だ。

男の子は今日は疲れたのか20時には船を漕いでおり、21時には布団の中だった。

 

今、リビングでチャーチルとヒトラーは椅子に座っている。向かい側には男の子の両親がいる。

無言である。誰も話さない。

 

と言っても、父は言葉が分からない。母には黙っていろと言われ落ち込んでいる。哀れである。

 

ヒトラーはまだ感傷に浸っていた。呑気なものである。

 

母とチャーチルは頭の中で整理をしている。

 

考えていることは同じだ。

 

何故此処にいるのか。何故突然現れたのか。

 

「I thought, wasn't I summoned by his “personality”?(考えたのだが、私は彼の”個性”によって召喚されたのではないのかね?)」

 

チャーチルは口を開けた。

 

考えれば、すぐに出る結論だが、チャーチルにとっては、到底認めたくない真実であった。

 

だってそうだろう。その仮説が正しければ、チャーチルとヒトラーはもう死んでいて、男の子の助けがなければ、この世界に出ることすらできない。

 

 それに、もしかしてだが、男の子は20時にはもう眠そうであった。

 

 いつもなら9時くらいにああなるらしい。泣きつかれたかもしれないが、それでも一時間も早く船を漕ぐなど、疲れている証拠である。

 

 チャーチルは男の子を心配していた。我々のせいで疲弊しているのだとすれば、それは悲しいことだと思った。

 

 わたしは存外子供が好きらしい。今日初めてチャーチルは実感した。

 

「That may be ... but ... Does that really happen?(それは・・・そうかもしれませんが・・・。本当にそんなことが起こるのでしょうか?)」

 

「I do not understand at all. But I ’m Winston Churchill. I was hospitalized in 1965. But now it is 2XXX. For me it is a far future. If the time machine that H. G. Wells thought of was developed, I would have been a sick clothes, not a suit.(私は全くわかりません。ですが私はウィンストン・チャーチルです。私は1965年に入院していたのです。ですが今は、2XXXです。私にとってははるかに未来です。H・G・ウェルズが考えたタイムマシンが開発されたのであれば、私はスーツ姿ではなく、病衣でしたでしょう。)」

 

母はなるほどと思った。同時に彼は聡明で教養がしっかりとあることが分かった。

 

母は考える。

 

ウィンストン・チャーチル。

 

 

第7代マールバラ公爵ジョン・ウィンストン・スペンサー=チャーチルの三男で、サンドハースト王立陸軍士官学校で軽騎兵連隊に所属し、様々な戦場を観戦、指揮し、武功を重ねた。

第一次世界大戦では、海軍大臣に就任。だが、第一次世界大戦でのチャーチルが指揮した戦い。ガリポリの戦いでは大敗北を喫した。

 

その後保守党の政治家として、与党を痛烈に批判。

 

その後ヒトラーが台頭。ユダヤ人の評価が分かれ、1932年からヒトラーを批判。

 

その後、第二次世界大戦が勃発。

 

前首相のネヴィル・チェンバレンから英国首相を引き継ぎナチス・ドイツと互角の戦いを繰り広げた。

 

 

夫からの受け売りであるが、これだけでもわかる。彼は英雄だ。息子が、彼を召喚したのは夫の影響も少しはあるかもと考えた。

 

隣にいるアドルフ・ヒトラーは恐ろしい。歴史に疎い私でも分かる。

 

彼らはライバル関係で、居るだけで双方にとって抑止力になる存在だ。

 

全てが真逆の男たち。出身も身分も思想も。すべてが違う。

 

だからこそ、彼らが召喚されたのかもしれない。

それに、もしかして他にも召喚できる人がいるかもしれない。チャーチルと、ヒトラーだけでは、類似点がない。他にもスターリンや、ド・ゴール。東条も召喚できるかも。

 

母は深く決心した。

 

絶対に歴史の本は息子には読ませないと。

 

「Apropos Churchill. Wie hast du das gemacht Dieser britische Soldat(そういえば、チャーチル。おまえはどうやってだした?あのイギリス兵どもを。)」

 

ヒトラーが突然多分ドイツ語であろう言語でしゃべる。

 

母は英語しかわかないから、?しか浮かばなかったのだ。

 

 

 

ヒトラーは感傷に浸りながら考えた。

 

そういえば、あの坊やの個性はなんなのだろうか。

 

我々がここに現れたから、我々が坊やの個性なのか。それだと他にも召喚できるかもしれん。ムッソリーニや、ホルティを召喚し、隣に座っている男を打倒しなくては・・・。

 

ん?そういえば、坊やが泣く前、我々は兵士を出した。あれはどうやって出したのか?

 

・・・分からない。

 

 

「Apropos Churchill. Wie hast du das gemacht Dieser britische Soldat(そういえば、チャーチル。おまえはどうやってだした?あのイギリス兵どもを。)」

 

「Ah···. can not understand. At that time, my emotions were high. Isn't that the effect or something?(あー・・・。分からん。あの時は感情が高ぶっていたからな。その効果か何かじゃないのか?)」

 

「Excuse me. Churchill. What does Hitler say? I don't know Germany.(すいません。チャーチルさん。ヒトラーさんは何と言っているのでしょうか?私ドイツが分からないので。)」

 

「What are you talking about? He will be speaking in English.(何を言っているのだご婦人。彼は英語でしゃべっておるだろう。)」

 

「え?」

 

「Hmm?」

 

夜は長くなりそうだ。

 

 

 




命は弱さを許さない

アドルフ・ヒトラー
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