シャルル・ド・ゴール
少年は体を鍛えている
彼らが名前を教えてもらってから、5年の歳月がたった。
伝馬は10歳になった。
彼が5歳の頃から、状況は非常に変わった。
まず、奇妙な同居人が増えたのである。
彼らは本物のチャーチルとヒトラーだ。
その後、ムッソリーニやシャルル・ド・ゴールも増えた。
彼らも本物である。
しかも、それは伝馬の個性である。
伝馬の個性について、分かったことがある。
彼が召喚できるのは、なくなった歴史上の人物でしっかりと書物に詳細が記載されていて、写真があり、そして、彼が興味を持ったら召喚できることが分かった。
しかも国のトップのみだ。
そして国のトップは当時率いていた兵士・士官、を召喚できる。それに、兵士・士官には、銃火器を所持している。
もし、歩兵を召喚したのであれば、装備は、小銃・手榴弾・スコップ・双眼鏡などである。
勿論必要な分の弾も、持っている。
砲兵を召喚したのであればでっかい火砲と、歩兵と同じ装備を持った兵士が召喚される。
戦車兵なら、戦車ごと召喚される。装備は歩兵と同じだ。
人数は、今はどうやっても50人位が限界らしい。疲れすぎて寝てしまう。
兵士の召喚持続時間は訳1日位だ。
体力が向上すれば、もっと時間が伸び、増えるかもしれない。
彼は、4人の国のトップから5歳の頭では到底分からない事を教えられた。
民主主義がどうたら。ユダヤ人がどうたら。共産主義がどうたら。ファシズムが何たら。
全く分からないことばっかりだ。分からな過ぎて、泣きそうであった。
そうしていたら怒られた。怒った人物は母である。
怒った母は非常に恐ろしく、ソビエトの赤い津波よりも恐ろしかった。
なので、政治の話は禁止された。イデオロギー論など以ての外である。
政治家の道は閉ざされた。じゃあ、次の道は軍人の道である。
6歳になった瞬間、伝馬は混乱した。
突然人を紹介されたのである。
その人とは、デビッド・スターリングとルイ・ナポレオン。そしてオットー・スコルツェニーの三人だ。
デビッド・スターリングはイギリス人で茶色の軍服でコートを羽織り、軍帽には羽に矢が描かれている紋章が付いている。この中では、一番普通の人であろう。良い意味で、だ。
彼は、イギリスの特殊部隊である特殊空挺部隊。通称SASの創設者である。
先を見ることができ、人材を正確に配備させることができる。
ルイ・ナポレオンは通称ナポレオン6世。
フランス人で、紺色の軍服を着ており、胸にはレジオンドヌール勲章をつけ、顔は黒髪碧眼の美男。髪の毛は短く刈り込み、目は鋭く光っている。
かのナポレオン・ボナパルトの子孫であり、フランス帝位の請求者であった。彼は偽名を使い、フランス外人部隊に入った。フランス降伏後、外人部隊が解散されたが、彼は諦めなかった。
レジスタンスに入り、終戦まで戦い抜いた男である。その期間6年。常に最前線で戦い続けた。
生粋の愛国者であり、最強の王族だ。
兵士として非常に強く、聡明で、生き残りにたけている。ゲリラ戦にもってこいの人物である。
オットー・スコルツェニーは『ヨーロッパで最も危険な男』と呼ばれている。
黒色の軍服を身に纏い、首には騎士鉄十字章受章者をつけている。
だが彼の一番の特徴は顔であろう。彼の頬には、ざっくりと、深い刀傷が刻まれている。髪をオールバックし、温和そうな表情を常にしているが、目はとても冷たい。
目を見たら、畏怖をしてしまうだろう。
失脚して幽閉されていたムッソリーニを救出する作戦の指揮を執り、救出。
その後密かにソ連との講和を策していたハンガリー摂政ホルティ・ミクローシュの息子ニコラスを誘拐して摂政を辞任させ。降伏を取り消された。
その後、アメリカ軍に偽装した部隊の指揮を命られ、潜入。
一部の兵士は捕らえられたが、スコルツェニーが指示した嘘の自白によって「部隊がパリを襲撃し、最高司令官のアイゼンハワーを誘拐または暗殺しようとしている」との嘘の噂を広めた。アメリカ軍の警備は強化され、アイゼンハワーは何週間も司令部に閉じこめられることとなった。
要するに化け物である。
3人とも各部門のプロ中のプロである。
スターリングは指揮を。ナポレオンは兵士としての能力と市街地戦での戦闘を。スコルツェニーは、現場指揮を専門に教えた。
伝馬はとてもかわいそうな男の子である。
6歳からこんなに恐ろしい人たちが、訓練の教官なのである。
勿論、母は怒った。毎回ケガをして帰ってくるのだ。
問い詰めたら、訓練をしていると聞いた。
内容は、個性の能力の向上。ランニングや、筋トレ、サバイバル能力や足の音を出さない等の、ステルス能力の向上。ディフェンドゥー、サイレント・キリングなどの格闘戦術。
他にも、銃剣術や、様々な銃の整備、撃ち方。狙い方。捧げ銃などの敬礼の仕方。
其の他諸々・・・。
大体の訓練は、全て、実戦形式であり、もはや軍隊よりも酷い。
6歳で受ける訓練ではないと怒った。というか、6歳が訓練などするかと怒った。
父が説得し、「明日俺も訓練を受けてくるよ。その後から考えてくれ。」といった。
その夜。父と伝馬は帰ってきた。
なんで説得したかって?それは、伝説的な三人から教わってみたいと心の底から思ったからである。
父はまるでぼろ雑巾みたいにボロボロになって帰ってきた。
次の日は会社を休んだ。
母親は激怒した。そりゃあ、激怒する。
実の息子が、父親がぼろ雑巾くらいになるくらいの仕打ちを毎日受けているということになるからだ。
だが、彼はピンピンしていた。子供の体力恐るべきである。
それか、彼の体が慣れてしまったからなのかもしれない。6歳でムキムキかもしれない。母は卒倒しそうになるが、ギリギリで耐える。
そして、母は辞めさせるように説得を始めた。だが、無理であった。彼らは、プロであり、全て正論だ。正しく、筋が通っている。
母は言いくるめられしまった。すべて、スターリングが説得した。流石戦場で上司を言い負かして特殊部隊を設立した男である。
だが、母も負けてはいなかった。せめて、一週間に一回にしてくれといったのだ。
交渉は成立した。
それから2年間。しっかりと休憩しながらも、鍛え上げられている。
彼は、8歳の時点で、敵地のど真ん中からでも生存できる技能と、1週間無人島で生活ができる能力がある。
才能があったのだ。恐ろしい男の子である。
彼の弱点はあるとしたら、経験不足であろう。
8歳からは、これに併用して、指揮の仕方を教わっている。スターリングやスコルツェニーだけではない。
モントゴメリーからは、防衛戦術を、グデーリアンからは、攻撃戦術を。
他にも教わっている。
ヒトラーとムッソリーニからは、コミュニケーション能力と、演説のやり方を。
そして、チャーチルとドゴールからは決して折れない心を教わっている。
子供がやることではない。
もう彼は戦い専門の何でも屋になってしまった。彼の天職は独裁者か、元帥クラスの士官だろう。それか、007クラスのスパイだ。
そんな彼は、今、小学校の課外活動で遠い、ある山にハイキングに来ている。
どうやらほかの小学校もハイキングに来ており、校長同士の企画で一緒に山を登ろうという企画なのだ。
隣には、別の学校の男の子が立っている。
彼の髪の毛は紅白で彩られ、左目にはやけどの跡があり、それに目の色が違う。
話しかけても、反応しない。彼は無表情に前を見ている。いや、只ボーっとしているだけであろう。
出発の笛が鳴る。さあ、行くか。
羊として100年生きるくらいなら、ライオンとして1日だけ生きるほうが良い
ベニート・ムッソリーニ