最底辺の頂点   作:SEA MAN

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プロローグ

2000年代に入り東西の冷戦は終わりを告げる一方で、世界各地で武装勢力によるテロ事件が発生し始めた。

世界規模でのテロ活動はやがて各国独自の軍事力だけでは解決することができなくなるほどの規模に発展し、事態を重く見た国連安保理は緊急理事会において対テロ対策を議論し、国際平和維持活動やVIPの警護などを手掛けるPMC「SMART」を国連直轄部隊として徴用することに決めた。

世間ではそんなことが起こっているものの、第二次世界大戦からおおよそ75年もの間平和を守り続け、テロとは無縁といっても過言ではない日本の国民にとってそんなことは関係なく、今日もいつもと同じような日々を過ごしている。

 

 

日本の都市、東京。そのなかで空の玄関口としての役割を持つ大田区に私立鷺森学園高等学校は存在している。生徒数は少子化の影響下でも480人を超えるマンモス校である。学校の偏差値はあまり高くはないが、毎年この国最高峰の大学に3人から5人ほどを輩出しているため、学力に関してはピンからキリまで揃っているといえる。その代わり部活動への支援が厚く、多くの部活が県のトップを取り一部は全国制覇を達成している。

しかし、そんな優秀なところがある学校でも在籍しているのは普通の学生であり、子供なのだ。いくら高校生で大人へあと少しであっても正確な善悪の判断など大の大人であってもできないのだから彼らにできるわけがない。日常生活を送る彼らの中に一体どれほどの人が、自分が誰かを傷つけているかもしれないという可能性を考える人がいるのだろうか。

 

 

憂鬱だ。

「おいおい、こんなこともわからないのかよ!?」

「さすがだわ。飯間。そんなんじゃ、親もテメェを見捨てるだろうよ!」

ああ、面倒だ。この、平和の泥沼に浸かり切った腐った脳みそを持つこのバカどもの相手をするのはどうも面倒だ。これから仕事だというのに、やる気を削ぐようなことはしないでもらいたいのだが・・・。仕方がない。

「おいおい、逃げんのかよぉ〜」

「ほおっておいてやれよ〜。そいつ、親に見捨てられて金がねえから学校休んでバイトに行くんだからよぉ〜。ぎゃはははは!」

「そんなこと言ってやるなよ。飯間だって好きでこんな状況じゃないんだからさ」

「そうよ!自分が言っていることの意味をもう少し考えなさいよ!」

クラスメイトの誰かが俺をかばうかのように反論しているが、もうほっといてくれないだろうか・・・。

バカ共の馬鹿騒ぎを無視して教室を出てバイトへと向かう。

 

 

東京都23区の中にある摩天楼の隅にあるビル群の1角。いたって普通の株式会社が入っている雑居ビルを見下ろすことのできるビルの屋上には夜中ではありえないヒトカゲがあった。

「クラッシュリーダー。"クラッシュ1"。現状に異常なし」

『クラッシュ1。監視を続行。動きがあったら知らせろ』

「了解です。クラッシュ1、アウト」

うちのリーダーは不思議な人だ。俺たちの中で一番ガキのくせしてバカみてぇに強ぇ。それなのにその強さに傲慢になることなく、日々の訓練をこなしている。その強さにはあの人の中にあるものが原因なんだろうが俺にはよくワカンねぇ。だだ、俺にできるのはあの人を俺が。俺たちが支えてやることなんだと。そう思っている。

「クラッシュリーダー。屋内に動きあり、"話し合い"が始まったみてぇだ」

『了解した。合図したら撃て。"ヤレるな?"』

「よろこんで」


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