Roidmude W(・∀・)RLD ―ロイミュード・わーるど― 作:あららどろ
「改めまして、俺は厳島勇吾。レベル78のゴーデスナイトです」」
「そんでもって、僕は相棒の宮本翔。LV58のウォーザード。攻撃も補助もどんとこいなスーパー魔法使いです」
ハートたちとユーゴたちのパーティーは、テーブルをくっつけて、お互いの情報交換を行っていた。
ハートにとって、彼らがどのような人間で、何故ここにいるのか、なんてどうでもいい話のはずだったが、ユーゴが「ギャスパルクという闇の神を蘇らせてこの世界を支配しようと企んでいる悪の教団と戦っている」というものだから、無視するわけにもいかなくなった。
多くのロイミュードたちが移り住んでいるかもしれない世界だ。そこを闇の神なんてものに支配されるわけにはいかない。
聞くところによると、ユーゴとショウは次世代のRPG「ギャスパルクの復活」をプレイしていた所、気付いたらこの世界に来ていたらしい。
見た目こそ地球にいたころのままだが、強さはゲームのキャラクターそのまま。
キリリとした顔つきのユーゴという少年は戦士職としては耐久力が心許ないものの、攻撃力はずば抜けて高い「ゴーデスナイト」。
長い髪を後ろで縛った眼鏡の少年、ショウは、攻撃、回復、補助、何から何までお任せの超万能魔法使い「ウォーザード」。
イシュラとレヴィアは、ユーゴたちがこの世界に来てから最初に立ち寄った村で教団が起こした事件を解決した時に親しくなり、教団と戦う旅に同行することになったようだ。超高レベルのユーゴとショウと比べて、彼女らはレベルがかなり低いらしい。
そしてもう一人、真紅のコートを身に纏う、黄金の髪のエルトリーゼという少女だ。彼女はエルフという異人らしく、美術品のように整った顔立ちに加えて長く、耳が尖がっていた。
これには、ブレンが強い興味を示した。
ユーゴたちは教団と戦うために王の力添えを頂こうと、ここ、ガライアに立ち寄った。
王が有能だったこともあり、王はユーゴたちに力を貸すことを快く承諾し、多額の支援金をくれたらしい。
その時、お目付役として宮廷魔法使いのエルトリーゼが仲間に加わった。そんなところらしい。
レベルは35。ユーゴたちの後では霞むが、この世界の基準ではこの若さでこのレベルはかなりの凄腕らしい。
「ちなみに、これが僕のステータスね」
ショウという少年は、自分の力を誇示したいらしく、隙あらば自慢をしてくる。
ショウが表示したステータスウィンドウには、疲労や空腹を示すFOODゲージやSTR、VITなどの各種数値がずらりと並んでいる。
そんなものの存在を知りもしなかったハートは、ほう、と感嘆の声を漏らした。
「なんだ……その、不可解で非現実的で興味深いものは」
「えっ。知らないんですか?」
「ああ。俺たちはこっちに来てから日が浅いからな」
「そうですか……ステータス画面を見たい、と、念じると、表示することができますよ」
「なるほど……それは面白いな」
そう言って、ハートは目を閉じて言われた通りに念じてみる。すると、ドット風の文字で書かれたステータスウィンドウが開いた。
「ほお……」
「ええっと、ハートさんのステータスは……」
ユーゴがハートのステータスを見ようと近寄る。だが、ハートは隠すようにウィンドウを閉じ、ユーゴのステータスウィンドウへと目をやった。
「なるほど。お前はレベル78のゴーデスナイトなのか。どうやら随分と腕の立つようだな」
「ええ。俺は、1体1ならよほどの相手でもない限り負けません。ですが、そんな俺でも数の力の前には無力なんです。できれば、おふたりにも力を借りたいのですが……」
そう言って、ユーゴは手を差し出した。
ハートはその手を少し見てから、振り向いてブレンを見た。
「どうする、ブレン」
「私はハートの意見を尊重します」
「そうか。なら断る」
当然返事はイエスだろうと踏んでいたため、ハートの返事を聞いたショウは驚きの声を上げた。
「どうしてですか? 世界が教団の手に落ちてもいいというんですか?」
「いや。それはこちらとしても困る。教団を倒すことには賛成だ」
「なら……」
「人間と手を組むつもりはない。俺が認めるほど強い戦士なら考えないこともないが……」
その言葉に、ユーゴは、眉を潜めて訝し気にハートを見た。
しばらくの沈黙の後、ユーゴとショウが内緒話を始めた。
(おい、ユーゴ。なんだかこいつら怪しいぜ。日本から来たくせに、ギャスパルクの復活のこと知らなかったし)
(ああ。ギャスパルクの復活のゲームプレイヤーじゃなかったら、どうやってこの世界に来たっていうんだ)
(それに今の発言もおかしい。もしかして、教団のスパイなんじゃないのぉ? なんか、メタ○ンみたいなモンスターが人間に擬態しててさ……)
(……あり得る。けど、だったら俺たちの誘いを断るはずがないだろ?)
(それもそうか……じゃあ、ただの変人2人組?)
(言い方は悪いが、そうかもな。このエターナルの世界を楽しんでる可能性もある。だから、ロールプレイに徹して、本名を名乗らないのかもな。それに、俺たちとの会話も、ただのゲームのイベントだと思っているのかもしれない)
(確かに)
「失礼。ちょっといいかな」
そう言って近寄ってきたのは、これまたイケメンのナイスミドルな男。頭の上に表示されている名前はダイス。
「聞き耳を立ててしまってすまない。こんなところで同郷の人に会えるなんて思ってもみなかったから」
男はスーツ――背広を着ていた。
それはこのガライア――いや、エターナルの世界のどこを探しても存在しないはずの服だ。
頭の上に表示されている名前はダイス。
この男は間違いなく地球から来た人間だ。
「私はダイス。村瀬大介だ」
そう言って、ダイスは軽くお辞儀をした。反射的に、ユーゴとショウがお辞儀をする。
「幾嶋勇吾です」
「僕は宮本翔」
「そっちの2人は?」
「俺はハートだ。こっちはブレン。それ以上のことを言うつもりはない」
ハートがそう言うと、ダイスは僅かに眉をひそめたが、すぐにナイスな笑顔を浮かべた。かと思うと、急に真剣な顔になった。
「そうか……ところで君たちは、先ほど教団について話していたね」
「はい」
「教団について何を知っている?」
そう言ったダイスの気配が、鋭く光ったのをハートは見逃さなかった。
(ほう……)
「連中がゲームのタイトルのままに、ギャスパルクを復活させようとしているのは知っています。ダイスさんも、教団について何か調べているのですか?」
「知っている、というよりは調査しているんだ。実は私はこういうものでね……」
そう言って、彼は懐から黒い手帳を取り出した。それを見たショウが、声を上げる。
「警察!?」
「そうだ。私は上からの命令で、ある新興宗教団体をマークしていた。やがて捜査を続けていくうちに、あるゲームメーカーとその団体の繋がりが見えてきてね。ここ最近の失踪者のほとんどが、このメーカーのゲームのテストプレイヤーに選ばれた人間だとわかって、何かヒントを得られないかと思ってゲームをプレイしていたんだ。そうしたら、いつの間にかここにいてね」
(何となく話が見えてきたな……)
ギャスパルクの復活をプレイしていない上に、教団についての情報も一切持っていないハートらは話に混ざることはできなかったが、彼らの会話から抜き出した情報を頭の中で再構築することで何となく話の流れを掴んだ。
「では、教団が現実の日本にも存在するというのですか?」
「ああ。そうだ」
それを聞いて、ユーゴはショウと顔を見合わせた。彼らにとっては、この異世界を救うという話でとどまるはずが、思いもよらないところで現実世界とリンクしていたのだから、驚くのも無理はない。
「なるほど……では、失礼ですがダイスさん。警察手帳をよく見せてもらってもいいですか?」
「なぜだい? まあ、構わないが」
そう言って、ユーゴはダイスから手帳を受け取った。パラパラとめくりながら、鋭い目でダイスを睨む。
「ドラマで見たんです。敵が偽物の警察官を装って主人公側に接触してくるのを。結局、その警察手帳の偽造が見抜かれて敵の目論見は破れたんですが……」
それを聞いて、場の空気が一変する。ユーゴはダイスを教団の手先ではないかと疑っているのだ。
最悪の場合、今この場で戦闘になる可能性もある。
「ふふふっ……」
ハートが笑う。それを見たイシュラが、眉を潜める。
「あの……どうして笑うんですか?」
緊張感の中に相応しくないハートの態度に、イシュラは嫌悪感を示している。隣にいた彼女の姉、レヴィアも同じように眉をひそめている。
「ああ、悪いな……続けてくれ」
そう言ったハートの口元はなお、ゆがんだままだった。