とある食堂へ二人を連れて行く。
※今回からシャト6様の作品「太正?大正だろ?」とのコラボをさせて頂きます。
「太正?大正だろ?」の主人公である森川大輔さんを直仁が行きつけの店の店主として登場します。
それから翌日。次世代の歌劇団全員が集まり、鍛錬室となっている地下の一室に集まっていた。
全員が練習用のインナー姿だ。初穂は初めのうちは嫌がっていたが、指導の邪魔にならないようにと説得し、納得させた。この日から直仁がすみれの考えた指導を行うことになったのだ。
「あ〜あ~あ~~あ〜!」
「もっと大きな声で!」
初めはピアノの音程を使った発声練習から始めた。直仁がピアノが弾けるのが意外だと思われたが、サンダーボルト作戦時に招集された際、ソレッタ・織姫から基本だけを指導してもらい、なにかの役に立つかも知れないとそれを続けてきたのだ。荒れていた時期でも演奏を聴かせてお金稼ぎをしていた事は黒歴史だ。
「あ~あ~あ~~~あ~!!」
「腹式呼吸を意識しろ!喉からじゃなく、腹から声を出すイメージで!!」
今、発声の指導を受けているのは天宮だ。彼女の声は確かに魅力的だが、一度舞台で聞いた時、全く聞こえない程、声が小さかったのだ。声に関しては初穂が最も優れていた。祭好きの彼女は日頃から大きな声を出している。腹式呼吸を覚えた彼女は、歌の声が優しく響く形になったのだ。彼女自身もそんな自分の声に戸惑いを隠せなかった様子ではあったが。
「う・・・うううっ!」
「ぐ・・・ぐうう!」
「はっ・・・うう!」
今度は肉体面での指導だ。柔軟性を身体に持たせ、体幹を鍛えるようにする。ある程度の筋力もなければ舞台でのアクションシーンやダンスシーンなどをこなす事は出来ない。
今行っているのは柔軟運動の前屈だ。開脚した姿で行っているが、天宮、初穂、クラリスの三人は苦痛に顔が歪んでいる。それもその筈、彼女達の肉体は硬い。剣術などの訓練で柔軟性があると思われたが、あくまでも剣術などに対してのものだ。
ほとんど変わらないが、舞台においては全身に柔軟性がある事が望ましい。全身を柔軟にする運動を彼女達は行ってこなかったのだ。柔軟性に関してはアナスタシアが最も優れていた。あらゆる歌劇団を渡り歩いてきた彼女にとって、基礎中の基礎であったに違いない。
「すぅ・・っは!すぅ・・っは!すぅ・・っは!」
腹筋を鍛える筋力トレーニング、これに関しては誠十郎も足を支える為に手伝いを申し出た。だが、ただの腹筋ではない、背中をつけた瞬間に息を吸い、上半身を起こした時に息を吐く、それを素早く行うのだ。
これに関してはあざみが最も優れていた。忍者の修行を毎日欠かさず行っており、この訓練は基礎として必要だと言われていたそうだ。
あらゆる指導に最も苦戦していたのはクラリスだ。彼女は運動とは無縁の生活を行っていた為だろう。だが、彼女は身体の軸が非常に美しく出来上がっていた。彼女の軸の定まった動きは非常に美しい姿を見せてくれる。これに関してはアナスタシアも同意し、彼女の軸の持ち方を身に付けるよう、直仁に指導された。
◇
「はぁっっ・・はぁ・・・はぁっ!こ、これが・・・本格的な・・・役者指導・・・なんです・・ね」
「わかっちゃ・・・いたけど・・・キツ・・過ぎるだろ・・これ・・はぁ・・はぁ」
「はぁ・・はぁ・・!!これを・・・以前の歌劇団の・・・皆さんは・・・こなして・・・いたんですね・・・」
「はぁ・・は・・・基礎を疎かにしたツケかしら・・・」
「はぁ・・はぁ・・忍者の修行よりも・・・厳しい・・・」
次世代の歌劇団全員が汗をかき、息を切らしていた。直仁は此方へ向かせる為に二回ほどパンパンと拍手をした。その音に全員が視線を向ける。
「15分休憩の後、滑舌の指導をするぞ!飲み物を用意してあるから、しっかり水分補給をしておけ!」
スクイズボトルに似た入れ物に、ストローのようなものが刺さっている飲み物入れを直仁が用意し、誠十郎も応援の意味を込めてそれを一人一人に渡していく。
よほど喉が渇いていたのか、全員がすごい勢いで水分を補給する。長い溜息が出る程に飲んでいたようだ。
◇
「「「「「あ!え!い!う!え!お!あ!お!か!け!き!く!け!こ!か!こ!」
」」」」
「天宮!四番と八番の音が弱いぞ!しっかり意識しろ!」
「はい!」
「初穂!一番から音が大きすぎる!少し声の音量を抑えろ!」
「んな事言ってもよぉ・・!」
「クラリス!恥ずかしいと思うな!基礎をしっかり学ぶと考えろ!」
「は、はい!」
「アナスタシア!基本をしっかり思い返すためにやってくれ!」
「わかったわ」
「あざみ!声が小さいままだ!舞台の奥まで届かせるつもりで発声しろ!」
「うん・・・!」
15分後、今度は舞台の上で滑舌の指導を直仁は始めた。最初は直仁自身が手本を見せ、それを行うように指導した。気恥ずかしいと言われたが、これをこなさなければ舞台でセリフを噛むことになると言い、意味があると教える。
そして、滑舌の指導も終わり、歌劇団全員がその場に座り込んでしまった。彼女たちからすればかなりハードな練習だったのだろう。直仁は厳しく指導していたが、練習が終わると全員に笑みを見せた。
「お疲れ様、初めてなら疲れも出るからこうもなるだろう。だが、それぞれの長所がちゃんと見えたから無駄じゃなかったぞ!これからもビシビシ鍛える!が・・・無茶はしないように!今回の指導はまだまだ初日だ、自主的でも指導でも続ければ成果は出る!今日はしっかり休んで明日の指導に備えてくれ、以上!解散!!」
「「「「「はい!ありがとうございました!!」」」」」
直仁の言葉に励まされつつ、次世代の歌劇団のメンバー達はそれぞれの部屋やシャワーを浴びに向かっていった。
◇
「さてと・・・誠十郎、居るか?」
「え?あ、はい!」
「よう、邪魔するぜ」
指導後の30分後に珍しく直仁が直々に誠十郎の部屋を訪ねていた。驚いた様子で扉を開けたが昔からの友人のように接してくる直仁に対してさらに驚く。
「今日は協力してくれてありがとうな、その礼に外へメシでも行かねえか?俺のおごりだ」
「え・・良いんですか?」
「メシぐらい構わねえさ。それと少しだけ酒も付き合え」
「いや、俺・・・お酒は」
「無理には飲ませねえさ、食前酒だけでもいい。ほら行くぞ」
「はい・・・」
二人は夕食の時刻に夜の帝都へとくり出した。帝劇の中で二人を見かけた天宮はこっそり後を付けていた。
「誠十郎さんと支配人、何処へ行くんだろう?」
しばらく歩いていると、ボンヤリ明かりのついた一軒の店の前に直仁は足を止めた。それと同時にため息を吐くと後ろに振り返って声を出す。
「はぁ・・・・おい、天宮!コソコソしてねえで出てこい!」
天宮はビクッとしたが観念して出てくると、二人の前に近づいてくる。
「さ、さくら?」
「何やってんだ?お前」
「二人が何処かに出かけそうだったので、後を付けてきたんですよ!」
天宮は若干怒っていたが、直仁が頭痛を耐えるかのようにこめかみに手を添えた。
「はぁ・・・あのな?俺は誠十郎への礼代わりとしてメシに誘っただけだぞ?」
「え・・そうだったんですか?本当に?誠十郎さん」
「ああ、支配人がおごってくれるって言ってくれたから」
「紛らわしい事をしないで・・・くだ」
声を荒らげようとした瞬間、グゥ~!と大きな腹の虫が鳴る音が聞こえた。直仁でも誠十郎でもない、音の出処は・・・。
「あ・・あぅ・・・//」
天宮だった。恐らくは夕食を食べずに二人の後を追って来ていたのだろう。
「やれやれ、天宮・・・一緒にメシ食うか?お前のもおごってやる」
「良いんですか!?支配人!」
「この空気で断れるかよ、俺の行きつけだ。料理は最高に美味いからな」
「やったぁ!楽しみです!」
「オアシス」と書かれた看板を目印にガラガラと扉を開ける。夕食の時間帯でそこそこ人は居るが、混んでいる訳では無かった。
◇
「いらっしゃーい!」
「よう、マスター!今日は連れも居るからよろしくな」
「お客様は大歓迎ですから大丈夫ですよ」
直仁は慣れたようにカウンターに座り、二人を手招きして座らせた。どうやら落ち着かない様子で天宮はキョロキョロしている。
「あ・・あの、支配人?」
「二人共、好きな物を頼みな。マスター、小龍包と焼売を、後ご飯大盛りと回鍋肉も、それとキープしてるアレを」
「じゃあ、俺はこの特大とんかつ定食っていうを」
「私は和風御膳を!」
「分かりました。少々お待ちください」
ある程度の時間が経過し、先に誠十郎の注文した料理が目の前に出される。
「お待たせしました。特大とんかつ定食です」
「お、おお!?とんかつって・・・こんな料理だったのか?それも大きい・・大きすぎる!」
「自分で頼んだんだろうが・・・」
「はい、こちらは和風御膳です」
「わぁ、きんぴらごぼうに・・ひじき、焼き鮭まで!沢山あって量も私にぴったりです!」
「はい、こちらはいつものセットですよ」
「済まねえな、マスター。誠十郎・・・コイツに付き合え」
直仁が取り出したのはウイスキーだった。誠十郎が酒に弱いと予想し、かなり薄めに作らせたシングルウイスキーの水割りを誠十郎の前に置き、直仁はストレートのダブルを手にしている。
「でも・・・」
「一口だけでいい」
「分かりました」
直仁がグラスを掲げ、誠十郎も合わせるように掲げると直仁の方から軽くグラスを当ててきた。
「これが、男同士の乾杯の合図でもある」
「・・・洒落てますね」
直仁はウイスキーをグイッと煽り、誠十郎は直仁の忠告を聞いて一口だけ、ゆっくりと水割りを流し込んだ。
「・・・っ・・少しだけ辛いですね。はぁ・・でも、美味しい」
「酒は楽しむもんだ。俺は現実逃避の手段にしちまったがな・・・」
「?」
直仁はウイスキーを置くと食事を始め、二人もそれに倣って食事を始めた。あまりの美味しさに二人は箸が止まらず完食してしまった。
「ここのマスター、森川大輔さんの作る料理は美味いんだが、店が隠れ家的になっていてな?見つけたのは偶然だったんだよ」
「そうだったんですね・・本当に美味しかったです。あれ?眠くなって・・・」
天宮は指導の疲れも出ていたのだろう、満腹感と疲れから眠ってしまった。お客は直仁達以外が帰宅し、それを見た直仁は目配せすると合図に気づいた店主である森川はのれんをしまい込み、本日貸切の看板を出した。
◇
「少し寝かせといてやろう。帰りはお前がおぶれよ?誠十郎」
「ええ・・・」
直仁は天宮を座敷席に移動させ、森川が用意してくれた簡易布団の上に寝かせた。
「相変わらずみてえだな?今日は次世代に指導でもしたのか?」
「まぁな」
「え?マスター?口調が・・・!?」
「ん?マスターは元々、こんな口調だぞ?客商売なんだから敬語を使うのは当たり前だろうに」
「い、いや・・・それでも違いすぎますよ!」
「ハハハハッ!違いねえや!」
誠十郎の慌てっぷりを肴に直仁はゆっくりとウイスキーを流し込む。森川は食事の終えた食器を片付け、誠十郎と直仁は隣同士になって座り直した。
「支配人、先程・・・貴方はお酒を現実逃避の手段にしてしまったと、おっしゃっていましたよね?」
「ん?ああ・・・」
「話してくれませんか?戦ってきた貴方に何が起こったのかを」
「・・・」
迷いを表すかのようにウイスキーの中で踊っていた氷が、カランと音を立てて揺れ始めた。
コラボは続きます。次回は荒れてた頃の直仁がすみれさんと再会した時の詳しい話になります。
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