サクラ大戦~もう一つの視点   作:アマゾンズ

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直仁が制限時間のある中、改修された旧式霊子甲冑でたった一人、降魔と戦っていた時期。

伯林華撃団、上海華撃団、倫敦華撃団との出会い。

森川との初共闘。




※この投稿を持ってアンケートを締め切ります。結果、伯林華撃団のエリスが恋人になります。

この回でエリスと直仁が出会いますが、まだ恩人状態です。


第十一話 円卓の騎士・五つ首の龍・鉄の戦乙女との邂逅

「華撃団大戦に乱入って・・・どういうことですか!?」

 

誠十郎は掴みかからんとする勢いで声を荒らげたが、何故か森川が罰が悪そうに後頭部を掻いて答えた。

 

「言い方が悪かったな。正確には直仁の奴は華撃団大戦に現れた大量の降魔を倒す為に現れたんだよ」

 

「大量の降魔って・・・どのくらいの規模ですか?」

 

「そうだな。覚えている限りで、ざっと500万だ」

 

「!ご・・・500万!?それだけの大群の降魔を撃破したって言うんですか!?」

 

誠十郎は知らず知らずのうちに水割りを飲んでおり、声が荒くなっていた。500万という圧倒的な数を知らない訳ではない、それこそ正しく数の暴力といって良い程だ。

 

「ですが、事実ですわ。直仁さんと来場していた森川さんが共闘した戦いでもあったのです」

 

「森川さんが?」

 

「彼は生身で脇侍を破壊し、降魔を倒せる実力者ですわよ?」

 

「なっ・・・」

 

「話してやろう。天宮達が来る前、そして・・・誠十郎、お前も着任していなかった時期の帝都の戦いをな」

 

 

 

 

 

大正二十八年、あらゆる国の首都で華撃団が結成され、帝国華撃団は復活せず、帝都防衛を上海華撃団が担っていた時期、直仁は帝劇の地下の格納庫で紅蘭の残したメンテナンス表を基に自分の光武二式を整備していた。すみれの協力で改修する事は出来たが、整備だけは手が回らなかったのだ。

 

「よし!」

 

整備が終わると同時に警報が鳴り響く。これがもっぱらである、整備を終えてもすぐに出動となってしまうのだ。

 

「直仁さん!出撃です!場所は・・・え?華撃団競技会の会場!?」

 

「ほう、良いじゃねえか。帝国華撃団の歌劇は見せられないが、戦闘なら見せられるだろ」

 

「直仁さん・・・いつも言っていますが、60秒は保険にしてください!」

 

「了解だ・・・出撃するぞ!」

 

すみれが見出して雇い入れた新メンバーのひとり、竜胆カオルが注意を促す。

 

もはや旧式と言っても過言ではない光武二式を起動すると帝国華撃団の遺した弾丸列車 ・轟雷号を参考に小型、改修したユニット「神雷」を装備し、出撃した。

 

 

 

 

 

その頃、偶然にも華撃団競技会のチケットに気まぐれで応募し、当選していた森川は会場の休憩室で一人座っていた。

 

「嫌な予感がしやがる・・・降魔が来るのか?」

 

そんな事をつぶやきながらも、森川は外に出て煙草に火を点ける。一度吸って紫煙を吐くと、薄く笑みを浮かべた。

 

「この気配は、光武二式・・・アイツが来やがったのか。ふっ」

 

誰かの登場の気配を知り、森川も客席へと移動する。客席付近の入口から空中用の降魔が大量に飛び回っていた。

 

「さて、円卓の騎士を名乗る華撃団に本物の騎士の剣を見せてやろうか。空中の相手ならこれだな。投影開始・・!」

 

森川の手には光が集まり、シンプルな西洋剣が握られていた。その光はまるで天上に輝く恒星を思わせ、柄からは紅炎が揺らめいている。

 

「後、30秒後に俺も行くか」

 

 

 

 

 

試合場で上海、倫敦、伯林、それぞれの華撃団が各々で降魔を撃退していた。

 

「ハイヤァ!!くそ、数が多すぎるぜ!」

 

「フンッ!空中から次から次へと来てるからね・・!」

 

龍のような外装を持った王龍を駆る上海華撃団は、持ち前の拳法で降魔を撃退していた。だが、空中からの奇襲を警戒していて判断が鈍く、シャオロンとユイは身軽な動きで奇襲を避け続けている。

 

「ハアアアア!一般の皆さんは避難したようですが・・・!」

 

「ハッ!いつまで経っても埓があかない!伯林!」

 

騎士のようなブリドヴェンを駆る倫敦華撃団の騎士達も剣撃による戦闘で、数は減らしているが焼け石に水であった。

 

広範囲の攻撃ができるアーサーはその切り札が使えず、ランスロットもアクロバティックな動きによる翻弄が会場という事もあって使えないままだ。

 

「分かっている。マルガレーテ・・!」

 

Jawohl(了解)!」

 

伯林華撃団が駆る二機のアイゼンイェーガーが背中合わせの形をとり、レーザーサイトのような霊力を降魔達に合わせ、掃射しつつ回転する事で大量に撃破していくが、降魔の数は減っていない。

 

「む・・マルガレーテ、敵の数は?」

 

「計算の結果、あれだけで倒せたのは50・・・残りは500万・・・」

 

「500万だと!?」

 

「先に参りそうな数だね」

 

撃破しても撃破しても、果てがない降魔も群れ。そんな中、エリスの乗るアイゼンイェーガーが弾切れを起こしてしまい、更には降魔達にモニターによる視界を塞がれてしまう。

 

「しまった!」

 

「エリス!」

 

一匹の降魔がアイゼンイェーガー・エリス機を爪で引き裂こうとした瞬間だった。

 

「う・・・?何?」

 

『ギギギ・・・・』

 

「(女ひとりに寄ってたかって・・・降魔ってのはあいかわらずだ・・・な!)」

 

群青色の光武二式が降魔の爪を太刀で防いでいた。その姿に華撃団全員が目を見開く。

 

旧式とはいえ、伝説の帝国華撃団が使用していた霊子甲冑が今、目の前に現れ動いているのだから。

 

「光武二式・・・だと?誰が乗ってやがるんだ?」

 

「あんな旧型・・・まだ動いているなんて」

 

上海華撃団の二人が思わず声を発した。二人からすれば、知っていてもおかしくはない。だが、あの機体は降魔大戦で消えたはずと記憶している。ならば、幽霊なのかと思ってしまう。

 

「・・・・神に合っては神を斬り、魔物に合っては魔物を斬り、降魔に合っては降魔を斬る!鏡反相殺斬・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)ーーーーーッ!!」

 

上空へ向けて放たれた刀からの衝撃波は霊力が形を成し、山に匹敵する巨体を持ち、八つの頭と八つの尾を持つ多頭竜の姿となって、大多数の降魔達を飲み込んでいった。

 

このような技が使えるのも龍脈の加護の影響が大きい、制限時間があるが、龍の姿を模倣すれば広範囲殲滅の力が使える。それが今の状況で最大の武器となるのだ。

 

「ヤマタノオロチ・・・だと?」

 

「見て、さっきまであんなに居た降魔が・・・」

 

「一撃で500万のうち、200万を倒した・・・信じられない・・!エリス、大丈夫?」

 

「問題ない、が・・・あの機体は一体?」

 

上海と伯林、二つの華撃団は突然現れた光武二式二の動きを見ていた。刀だけではなく、バックバックから銃を取り出し、刀と銃を使い分けるといった高度な技術すら披露している。

 

 

 

「(おーおー、やってやがるな・・・なら俺も便乗するか。地上と空を攻撃するならコイツが一番だからな) この剣は太陽の映し身。もう一振りの星の聖剣!あらゆる不浄を清める(ほむら)の陽炎!転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!

 

 

 

 

森川は客席から試合会場へと飛び移り、着地すると手にした剣を一度投げ、剣から太陽を思わせる球体が彼の頭上に照らされる。剣をキャッチすると太陽のような形をした焔の刻印が地に刻まれていき、刻印から灼熱の炎が噴き上がり空と地上を闊歩している降魔の大群を焼き払った。

 

その輝きと剣の名称に驚いたのは、倫敦華撃団のアーサーとランスロットだった。

 

「ガラティーン・・・だと?かの円卓の騎士の一人・・・太陽の騎士と謳われたガウェイン卿が持っていたとされる伝説の剣がなぜこの地に!?」

 

「わからない・・・あれは実在しているかも不明なのに・・・」

 

光武二式に飛び乗った森川は炎を纏った矢を弓で放ち続けて降魔を退治していき、光武二式を駆る直仁も刀や銃を駆使して降魔を退治していく。

 

「残り300万のうち・・・先程の二つの技で残り60まで一気に減ってしまった・・・ありえない」

 

「味方・・・なのか、それとも・・・」

 

マルガレーテは冷静に状況判断をして口に出しているが、動揺を隠しきれていない。エリスは警戒を強めつつ、マルガレーテから弾薬の補給を受けている。光武二式は刀の戦闘に切り替え、肩に乗っていた人間も姿を消していた。

 

「悪いが俺は一足先に帰るぜ、店もあるからな」

 

森川は戦いのドサクサに紛れて退散し、残党全てを倒し終えた直仁はカウントダウンのタイマーに視線を移す。そこには残り、101秒と表示されていた。

 

「(・・・・プラス40秒、か・・まぁまぁだな)ぐっ・・・!」

 

直仁は右腕を押さえて呻いた。蠢くように筋肉が動き、強い痛みと痺れに耐えられなかったのだ。同時に上海、倫敦、伯林、三つの華撃団が囲むように光武二式の前に近づく。

 

「お前誰だ?顔を見せろよ」

 

「そうだ、そうだ!」

 

「援護は感謝する・・だが」

 

「姿を見せて貰えないとね・・・」

 

「貴方は・・・味方?それとも」

 

「敵であるのなら・・・殲滅する」

 

「・・・・(仕方ない、か)」

 

直仁は観念したかのように光武二式から出てくる。三十代手前とは思えない程の若々しさと、頑強な肉体、そして数々の実戦を潜り抜けた鋭い目つきに帯刀している姿がより一層、威圧感を醸し出していた。代表してシャオロンが話しかける。

 

「アンタは?」

 

「帝国華撃団・花組所属・・・狛江梨 直仁だ。今は俺一人しかいないけどな」

 

「帝国華撃団だと?落ちぶれたあの・・・うっ!?」

 

シャオロンが言葉を紡ごうといた瞬間、首筋に刀の刃が触れるか触れないかの位置にあった。

 

「今度、俺の家を悪く言ったら・・・その首、胴体から離すぞ?」

 

「っ・・・悪かった。謝る(いつの間に抜いたんだ?)」

 

「・・・・私にも見えなかった」

 

「・・・・・」

 

直仁は村正を刀を鞘へと収めたが、その居合抜きを見ていた倫敦華撃団の副隊長であるランスロットは剣を抜こうとしていた。だが、直仁は剣の柄に自分の刀の鞘の鋒をぶけて押し込んでいた。

 

「狂犬だな・・止めておけ。此処で戦いに来たんじゃない。あんたが隊長か?」

 

「な・・・止められた!?」

 

「そうだ・・・倫敦華撃団隊長、アーサーだ」

 

「しっかり手綱を握っておけ・・・すぐに噛み付いてくるなんて危険だろ」

 

「すまない・・」

 

次に伯林華撃団の二人が敬礼し挨拶する。

 

「伯林華撃団副隊長、マルガレーテ・・・貴方は何者?あの強さ、普通じゃない」

 

「答えたばかりだが?俺は強くなんかねえよ・・・」

 

「同じく伯林華撃団隊長、エリスだ。貴殿の援護に感謝する」

 

「・・・ああ」

 

上海、倫敦、伯林の全ての華撃団の挨拶が終わり、直仁は感謝の意を込めてそれぞれに握手して周り、最後にエリスと握手をした。

 

「済まなかった」

 

「気にしていない、それでは帰投するぞ。マルガレーテ」

 

Jawohl(了解)

 

全員が去った後に直仁も帝劇へ戻るため、回収してくれるよう頼み、帝劇へと帰っていった。

 

 

 

 

 

その夜、新しい中華屋あると聞いて行くとそこには上海華撃団のシャオロンとユイが居た。シャオロンがウエイトレスをやっていたのは珍しく、厨房には森川が腕を振るうっており、どうやら二人は森川の料理に興味があるようだ。

 

「森川さん、何やってんです?」

 

「いや、料理を指導してたら、作ってみてくれと言われてな?饅頭料理を作ってんだよ」

 

「はああ?」

 

「お前も食っていけ、そろそろ出来上がるからな」

 

そう言って、森川は自分の店から持ってきた竹を取り出し、何かを作り始めた。そして出来たのが宝船を模した蒸籠であった。

 

「これが俺の最大最高の位置にある四神海鮮八宝饅だ!」

 

「四神海鮮八宝饅?どれ」

 

「あーん、むぐむぐ・・・」

 

上海華撃団の二人が森川の作った四神海鮮八方饅を食べた瞬間、惚けた顔になってしまった。

 

「美味い・・・それに気持ちが落ち着いていく」

 

「故郷でもこんなに美味しい饅頭・・・食べたことない」

 

「お前も食ってみろ、直仁」

 

「むぐむぐ・・・!これの中身、乾貨を戻した高級海鮮ですね?ほうれん草を使って緑は青龍とし、人参を使って赤は朱雀、そして黒胡麻を使い黒で玄武をイメージしてあるという訳ですね?それに皮によって苦味、甘味、塩味、酸味を刺激するように作られてる・・・それに八大海鮮とも言われる「ナマコ」「フカヒレ」「アワビ」「ホタテ」「カニ」「エビ」「イカ」「ヒラメ」をそれぞれを最高の煮方で仕上げてる・・・流石です」

 

「ほう?食っただけでそこまで見抜くとはな」

 

食事を終えた後に直仁は帰宅するとシャワーを浴び、着替えると倒れるように眠り込んでしまった。

 

 

 

 

「一年前に・・・そんな事が」

 

「ああ・・・それから天宮達がスカウトし、お前もきたってわけだ」

 

直仁はいつの間にか酒を飲む事をやめ、ただの水を飲んでいた。酒は楽しむが持ち崩した経験から多くは飲まないのだろう。

 

「支配人、もう少しだけお話を聞かせてください!」

 

「やれやれ、仕方ねえな」

 

笑いながら直仁と誠十郎は、すみれと森川を巻き込んで話が盛り上がり、森川の店が終わるまで語り合ったのだった。

 

 

 

 

 

同時刻のベルリン、日本とは8時間の時差があるため、朝帰りをした直仁達が眠っている間、ベルリンは夜だ。

 

伯林華撃団隊長エリスは一年前に出会い、握手した相手である狛江梨 直仁の事が頭から離れなかった。今はもう無くなったが、あの時に握られた手が熱く感じ、更には彼から何か特殊な霊力を感じ取ったというのもある。

 

「一体・・・私は?」

 

そういってエリスは、かつて直仁と握手した自身の右手の人差し指を自分の唇に優しく触れさせる。性的な意味はないが、身体が一瞬震えて顔が熱くなってくるのを感じた。

 

これがクセになっており、マルガレーテにも指摘されてしまっている。何があったのかと聞かれる毎日であった。

 

「わからない・・・私はどうなってしまったのだ?」

 

鋼の戦乙女は己の心の内に点った、恋という名の炎を知る由もなかった。学問と訓練ばかりに時間を使っていたのだから。次の任務は日本であった、自分の鼓動が早くなってきているのを感じる。日本と聞いただけでこうなるのだ。

 

「休もう・・・」

 

疲れのせいだと決めつけ、エリスは少しだけ唇に触れながら、ベッドへと潜っていった。




はい。出会い編でした。

色々なところにネタが仕込まれいています。

次回はエリスが来ます。

サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)

  • 倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
  • 上海華撃団 ホワン・ユイ
  • 新・帝国華撃団の誰か
  • 風組or月組メンバー

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