想いを遂げられなかった直仁とその羨望と憎しみを受け止める森川
※この二人の共闘用の主題歌は仮面ライダーエグゼイド・アナザーエンディングの「Believer」です。
※歌詞が降魔大戦で大切な人を失い、それでも想い続けたり取り戻そうとする心境がピッタリ合っていると思うので、気になる方は検索してみてください。
直仁のキャラソンイメージは「HEART OF SWORD ~夜明け前~」です。
今回の喧嘩シーンにセガ繋がりになってます。
降魔大戦、最終段階。帝国・巴里、そして紐育のすべての華撃団が霊力によって降魔皇、封印の儀である帝剣を使った。
「ま、待て!待ってくれ!みんな!!」
その時、直仁は封印の儀を行っている場所から離れた位置にいた。彼の光武二式は大破しており、動かせる状態ではない。
「俺も、俺も一緒に!置いていかないでくれ!!」
『直仁さん、すみれさんと一緒に帝都をお願いします』
『私は決して死にません、私達の思いを繋げてください』
「さくらさん!!花火さん!!行くなぁ!うわあああああああああ!!」
◇
「うわああああああああああ!!!!!!っ!?はぁ・・・はぁ・・夢?」
時計を見ると午前4時、まだまだ目覚めるには早すぎる時間だ。だが、先ほどの夢で目が完全に覚めてしまっている。
「くそっ・・・また同じ夢を見るようになっちまった・・・」
直仁は自分の顔を右手で隠しながら、俯いた。彼はこうして時折、降魔大戦の夢を見るようになってしまっていた。それだけ心に刻まれた傷が深いのだろう。
「軽く瞑想するか・・・」
直仁は呼吸を整え、軽く瞑想することにした。己の霊力の流れを感じ取り、それが循環していることを感じ取るようにイメージする。
「・・・・・」
彼は瞑想に一度入ると長くなる、最長で三時間以上も瞑想していることもザラだ。だが、この瞑想が彼の中に巣食っている龍脈の力を沈める要因にもなっている。
「・・・・・っ」
雀の声で瞑想を解くと午前6時50分、三時間近く瞑想していた事になる。直仁は布団から出ると、シャワー室へと向かった。夢でかいた冷や汗を流すためだ。
今日は朝の稽古をした後、昼食を誠十郎を始めとした帝都花組、伯林華撃団の面々と「オアシス」で取る事になっている。
そして昼食時には貸切となり、二つの華撃団が揃い食事を楽しそうにしている。エリスは直仁の隣に席を取っているのはお約束だ。
「そういえば、支配人と森川さんは仲が良いですけど喧嘩とかしなかったんですか?」
天宮の何気ない一言に二人は苦笑しながら同時に答えた。
「喧嘩はしたぞ、最初で最後の大喧嘩をな」
「築地倉庫がとんでもない事になったものな、新聞にも乗ったくらいだ」
「えええっ!?」
天宮を始めとした直仁と森川以外の全員が驚いていた。二人の喧嘩で築地倉庫が壊滅的打撃を受けたというのだから当然だろう。
「じゃあ、話してやるか・・・あれは、黒鬼会の驚異を退け、サンダーボルト作戦が終わって平和になった後の二ヶ月後の事だった」
◇
その当時、直仁は正式に帝劇に配属され大神と同じモギリをする事になった。名物モギリが復活したとあって、演劇と二人が目的のお客も居て大盛況であった。
だが、ある日・・・直仁は中庭で見てはならないものを見てしまったのだ。
「森川さん、あたし・・森川さんが好きです!」
「俺で良いのか?」
「はい!」
「!!!!!!」
それはさくらが森川へ告白している現場であった。それを目撃した直仁はその場から飛び出し、大神やカンナの静止も聞かず大帝国劇場から出て行ってしまったのだ。
「直仁くん!待つんだ!」
「アイツ、何があったんだ?」
それから直仁は深夜を過ぎても帰宅せず、見かねたかえでが森川に捜索を依頼し、築地倉庫付近に居るという情報を得た。だが、花組の面々がきたところで素直に帰らないだろうと森川が意見し、彼が連れ戻してくるという形になった。
◇
直仁は築地倉庫から見える海を眺めていた。そこへ誰かが近づいて来る。無論、連れ戻しに来た森川だ。
「何やってんだよ?みんな心配してんぞ?」
「・・・」
「おい・・!」
「!!!」
瞬間、見えない何かが空を切り裂いた。それは村正による居合抜きだった。森川の目ならば黒い刀身だとしてもタイミングが分かっていたため避ける事は出来たが、わずかに衣服が切り落とされた。
「危ねえな・・・!いきなり何をしやがる!?」
「・・・俺に近づくなよ。今・・俺は誰とも話したくない。特にアンタとはな」
村正を霊力で安全な場所に置くと直仁は、その目に羨望、憎悪といった光が宿っていた。
「まさか、お前・・・聞いていたのか?さくらの」
「言うなああああ!!」
琉球空手の拳を向けてきた直仁に対し、森川は距離を取って回避した。直仁の身体からは霊力が溢れ出ており、今の彼は何を言っても聞かないだろう。
「そうか・・・そういう事か。お前、さくらの事を好きだったんだな?一人の女性として」
「・・・・っ」
「・・・・」
そう言って森川は服を脱ぎ捨て上半身だけを生身にし、真剣な目で直仁を睨んだ。その身体からは霊気ともオーラとも言えるものが立ち昇っている。
「お前も男なら、グズグズしてねえで・・・惚れた相手を奪っていった奴を一発くらい殴ってみろ」
「・・・!」
森川に挑発された直仁もモギリ服を脱ぎ捨て、上半身のみを生身にした。右腕にだけ包帯かサラシらしき物が巻かれているが、怪我をしているという訳でもない。
「ほう?良い
「帝国華撃団に入ってから、体調を崩した時以外に鍛錬を休んだ事なんて無い・・・おまけにアンタが身体を作る料理を出してくれてたろ?いいか、行くぞ・・・!」
「はははっ!違いない。なら、手加減はしねぇ・・・来いッ!!!!」
「うおおおおあああああ!!!」
「うおおおおおお!!」
[推奨BGM 龍が如くより『散るは永遠の刹那・極2』or『誰が為に Ver.極』]
「ぐあっ!」
「ぐううっ!」
お互いに拳で殴り合ったと同時に頭突きをぶつけ合って、互いに牽制しあう。素手の直仁が得意とするのはカンナ仕込みの琉球空手と士官学校時に鍛えられた合気道だ。
それに対し、森川はあらゆる技の中で、肉弾戦のみを使う技だけをセレクトし、直仁と殴り合っている。
「まぐれで当たっただけじゃ、殴ったうちには入らねえぞ!」
「あたりめえだ!オラアア!」
二人の喧嘩は築地倉庫に爆弾が落とされたのでは?と言えるくらいの地鳴りが発生するほどであった。
◇
帝国華撃団にもこの緊急事態の知らせが入っていた。恐らくはと全員がその場所へ向かう。華撃団が到着した時、倉庫はとんでもない有様になっており、観音と黄龍がお互いを止め合っている姿が見えているほどであった。
「みんな、急ぐぞ!おそらく、直仁くんと森川さんに違いない!」
「どうして・・・どうして、大輔お兄ちゃんとちい兄ちゃんがケンカしてるの?」
「わからへん、とにかく二人を止めるんや!」
「なんで・・・あの二人が喧嘩してんだよ・・・!」
花組のメンバーは二人が殴り合っているであろう、中心部へと急いで向かった。だが、その衝撃の余波と二人の殴り合う時のうめき声が戦いを物語っているかのように聴こえてくる。
「ボケがあああ!」
「ぐぅあああ!」
直仁は倉庫の壁に叩きつけられ、追い打ちをかけるように森川の拳が迫って来る。それを切り返し、今度は直仁は森川を向かい側の倉庫の壁に後頭部を叩きつける。
「がはっああ!行くぞ!この野郎があああ!!」
「ぐあああっ!負けられねぇんだよ!!」
「クソがああああ!!」
「直仁ォォォ!!」
鋼鉄製の扉に顔面をぶつけられようとも直仁は立ち上がり、森川にタックルしてマウントを取ろうとしたが、今の時代にはない格闘技の技であるドラゴンスクリューを森川にかけられ、直仁は吹き飛ばされた。
「ぐ・・はぁはぁ・・・」
「はぁ・・はぁ・・・」
二人の顔面にはいくつもの殴られた跡の痣ができており、口元からは血が流れている。直仁が厳重にしていた右腕の包帯が解けてしまい、まるで巻き付いているかのような龍の痣があらわになっていた。
「はぁ・・はぁ・・・てめぇ、その腕・・・」
「龍脈の代償・・・らしい・・でも、今は関係・・・ねえ!」
「直仁くん!森川さん!」
そこへ大神を始めとする帝国華撃団のメンバーが現れる。全員が二人を見て驚きを隠せない。二人はボロボロで、フラフラになりながらも殴り合うのを止めようとしないからだ。
「二人共、止めるんだ!」
「じゃあかぁしい!!」
「すっこんでろ!これは俺達の喧嘩だ!!」
「う・・・」
二人の怒号に、止めに入った大神だけではなく、他の花組メンバーまで怯んでしまっていた。野生動物の間でも戦っている時の横槍は御法度ともいえる行為だ。それほどまでにこの二人の喧嘩はお互いに譲れない物の為に戦っている。
「うおおおおお!」
「ぬんっ!」
最後の一撃とも言えるクロスカウンターがお互いに入り、崩れ落ちる。だが、直仁は意地で立ち上がり、拳を握って追撃しようとした。
「ううああああ!」
「止めてええええ!!!」
「さくら!?」
「さくらさん!?」
倒れている森川の前に両手を広げて立ち塞がったのは、さくらであった。いきなり飛び出していった事にマリアやすみれなども驚いていた。
「もう止めて下さい!直仁さん!もう充分でしょう?これ以上、二人が殴り合っているのは嫌なんです!もう、これ以上・・・大切な人が傷つくのも、好きな人が傷つくのも見たくない!」
「っ・・・く」
これが決定的だった。さくらは直仁を止めようとしたのではない、森川を守るために直仁の拳の前へ自らの身を晒したのだ。森川の血に染まった拳を寸止めしていた直仁は、これほどまでさくらに想われている森川への嫉妬と怒り、悔しさが篭った震える拳を地面へ向けて殴った。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
その咆哮は怒りではなく、悲しみに近いものであり、咆哮を上げて涙を流し緊張の解けた直仁はそのまま倒れて気絶してしまった。
「森川さん・・どうしてこんな事に・・・」
「男同士の・・・意地って奴・・・だ。さくら・・・お前は・・アイツに残酷な現実を・・・・見せちまった・・・な」
「え?」
「分からないなら・・・それで・・いい」
森川はさくらの肩を借りて立ち上がり、気絶した直仁を見ている。その顔には男泣きした跡が残っており、それが・・・さくらへの思いであった事が明確だ。
「直仁、お前の気持ち・・・全て受け止めた。さくらは任せておけ・・・お前はこれからだ・・・」
◇
「それが、俺と森川さんがやった・・・最初で最後の喧嘩さ」
「降魔大戦後はお互いにまた喧嘩しそうになったが・・・意味がないって悟ってな」
二人の話を聞いて、帝国華撃団、伯林華撃団のメンバー達は開いた口が塞がらなかった。特に天宮とエリスはそれぞれ別の意味で驚いている。
「も、森川さんが真宮寺さくらさんの恋人だったなんて!」
「公表してなかったしな。する前に降魔大戦になっちまったからよ」
森川の口調が変わっている事に関しては直仁が説明した為、全員が納得した。それ以上に帝国華撃団のトップスタァであった真宮寺さくらの恋人が、森川であった事が驚きであった。
「話を聞いていると真宮寺さくらさんを巡っての喧嘩だったんだな・・・」
「悲しいわね・・・でも、女性という星は一つ、二つの星で共に輝けるのは一つだけよ」
「支配人、普通の失恋以上に辛い失恋をしていたんだ・・・」
「もう、終わった事だ。今はもう未練とか恨みはねえよ」
お茶を飲みつつ、直仁は食事に手を付けようとするが、隣に座っていたエリスがさり気無く直仁の左手に自分の手を重ねていた。後ろから見ても、脇から見ても、上から見ても丁度、死角になっているので見える事はない。
「!(エリス・・・?)」
「(私では・・・ダメなのか?)」
不器用な好意の伝え方に、直仁はエリスの手に自分の手を重ね直して軽く握った。
「!」
直仁からの返しに思わず彼の横顔を見るエリス。その顔は変わっていないが、大切なのだという気持ちが伝わってくるのを感じ、目を伏せた。
「惚れた女性のためにそこまで出来るなんて・・・今の俺には到底真似できない・・・」
「誠十郎・・・いつかお前にも、心から大切だと思える女が必ず出来る。その時は全身全霊をかけて守ってみろ。前にも言ったが、男ってのは惚れた女を必ず守るって決めた時には、今まで以上の力を発揮出来るからな」
「直仁・・・さん」
「説教臭くなっちまったな。とりあえず、メシを食おう」
「はい」
誠十郎と直仁は互いに笑みを浮かべると、食事を始めた。ほかの面々も食事を始め終始、和やかな雰囲気になっていった。
「直仁・・・聞きたいことがあるのですが」
「ん?」
「よろしければ、帝国華撃団と双璧をなす巴里華撃団の話をお聞かせ願いたいのですが・・」
エリスからの提案に直仁は目を丸くさせた。直仁は笑みを浮かべ、遠い目をすると店の天井見つめた。
「あの人達も気高く、美しく、そして・・・強い人達だった。そんな話になるぞ」
はい。直仁くんがさくらさんとのケジメを付けた話でした。
このような失恋と別れを経験しているからこそ、彼は本気で異性を愛して良いのか迷います。
今回は複数のタグで遊んでみました。森川さんに付けた「万能一心(ばんのういっしん)」という四字熟語は意味を調べた結果『何事をするにも、心を集中してしなければならないということ。また、あらゆる技芸をこなせても、真心が欠けていれば、何の役にも立たないということ』という意味があったので彼に付けました。これは戦国BASARAのアレと同じです。
喧嘩のシーンはセガのあれで、神室町と言えばわかると思いますww
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