サクラ大戦~もう一つの視点   作:アマゾンズ

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巴里華撃団の一人、花火との出会い。

※この作品ではすみれさんが大神さん寄りになっています

※巴里華撃団の副隊長は花火さんになってます


第十五話 巴里華撃団・副隊長との出会い

直仁は森川に水を頼み、それを飲んで喉を潤すとエリスに視線を向けた。エリスは生真面目な口調で質問を続ける。

 

「巴里華撃団は帝国華撃団と双璧をなすと言われていた。貴方やマスターは出会ったことがあるのではと思い、聞いたのだが」

 

「構いやしねえさ。巴里華撃団の話をしてやるよ。でも、俺は巴里に行っていた訳じゃねえから、副隊長が先に帝都に来た時からでいいか?」

 

「構いません、聞かせてください」

 

「分かった。あれは大神さんが巴里から帰ってきて、しばらくした時だ」

 

 

 

 

 

帝都では大神が帰還し、誰もが盛大に喜んでいた。その中で最も喜んでいたのがすみれだった。直仁も同じように喜んでおり、その日は盛り上がった。

 

「998・・・999・・・1000!ふぅ・・・はぁ・・はぁ」

 

「精が出るね、直仁くん。鍛錬かい?」

 

「あ、大神さん。ええ・・・やっておかないと俺はすぐに追い抜かれちゃいますからね」

 

「前に森川さんとあれだけの喧嘩をしておいてかい?」

 

「それは言わないでくださいよぉ・・・」

 

「ははっ、ごめんよ」

 

直仁は師範代から渡された鍛錬用の竹刀の素振りを終えた。それと同時に大神が現れたのだ。あの喧嘩騒動の後、さくらが森川と恋人同士だというのは全員が納得済みで知っており、大神はすみれと良い感じだというのを森川の伝手で直仁は知っていた。

 

その過程で知ったのが隠れて森川のところへ、すみれは料理修行に来ているのだという事だった。

 

「(最近、すみれさんが料理を振舞ってくれるけど、かなり美味しかったものなぁ)」

 

すみれのレパートリーは洋食が多かったが、高級店の味を再現出来るようになりたいと言っていたそうだ。今までの高飛車な態度は少しずつ改善され、財閥の娘としての気品と優しさを併せ持った淑女になりつつある。

 

『わたくしが高級店の料理の味を再現出来れば、皆様も楽しめるでしょう?』

 

そういって、直仁にだけ試作だというビーフシチューを食べさせてもらえたのは嬉しかった。

 

「あ、そうだ!大神さん。巴里はどうでした?聞いた話だと華撃団があったって」

 

「うん、直仁くんは軽く知っていてもおかしくないな。それじゃ詳しく話そう」

 

それから大神から聞いたのは、巴里創立の中で血塗られた歴史の影があった事、その血を引くのが巴里で戦った怪人であり、巴里華撃団もその祖先たるパリシィの血を引いていた事、最後にはパリシィ達の怨念は浄化され、新しい未来へ旅立っていったという事だった。

 

「パリシィ・・ですか。まるで俺の村正みたいですね」

 

「そういえば直仁くんは影打ではあるけど、村正の所持者だったね。それが何か関係あるのかい?」

 

「似てるなって、思ったんです。村正は対峙した相手と同じ存在になる。大神さんが巴里華撃団の皆さんと一緒に鎮めたパリシィは、パリシィの魂をパリシィの血をもって鎮めた・・・村正と何処か似てません?」

 

「そう言われれば、確かに似ているね」

 

「これから先、ひょっとしたら魔をもって魔を鎮める・・・なんて事になるのかもしれませんね」

 

「・・・・」

 

それから三ヶ月後、直仁は大帝国劇場の前の清掃を頼まれた為、掃除しているときであった。

 

「あの・・・」

 

「ん?ああ、すみません俺ですか?」

 

「はい、大帝国劇場はこちらでよろしいのでしょうか?」

 

「ええ、こちらになりますよ」

 

声をかけてきたその人は喪服のように黒い服を着た女性であった。肌は白く黒髪で日本人のようだが、瞳の色が深緑色であるから察するに海外産まれで海外在住の人なのだろう。

 

「失礼ですが、貴女は?自分は・・・狛江梨直仁と言います」

 

「北大路花火と申します・・・・狛江梨直仁・・・あ、もしかして貴方が大神さんが仰っていた、もう一人の方ですか?」

 

「え、大神さんを知っているんですか?」

 

「はい、そちらの意味で此処を訪ねて来ました」

 

「そうでしたか、大神さんは中にいると思いますので、どうぞ」

 

直仁は花火を帝劇の中へと案内し、待ち合わせにも使われる食堂へと案内する。その途中で話を聞くと、彼女は壮絶な過去と共に強く生きているのだと直仁は感じた。

 

「あの・・何か?」

 

「ああ、いえ・・・強い人だ、と思いまして」

 

「そう考えられるのも、大神さんのおかげです・・・ぽっ」

 

「(大神さん・・・巴里でも発揮してたんですね・・・女性落とし)」

 

直仁は心の中でため息を吐きつつ、食堂へ案内し終えると仕事へ戻ろうとした。

 

「大神さんはあそこに座っているみたいですから。それじゃ、俺はこれで」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いえ・・・」

 

直仁は清掃に戻る途中、花火の「大和撫子」の雰囲気にすっかり魅了されていた。

 

「今じゃ、あんな女性・・・少なくなったものなぁ・・・」

 

今の時代、西洋の文化が融合し新しい時代となっている。日本固有の考えを持つ女性は少なくなり、職業婦人という言葉も出てくるくらいだ。だが、それも悪いことばかりでは無いと直仁自身も考えている。逆にあそこまで奥ゆかしい人がいるのだなと関心もしてしまったのも事実であった。

 

 

 

 

 

「それが、巴里華撃団・副隊長・・・北大路花火さんとの出会いだった」

 

「・・・・芯の強い女性、か」

 

「ああ、あの人は大切な人との死別を経験し、人を愛し、自ら強くなってい事を誓った人だったよ」

 

「そんな方が、巴里に居たんですね・・・是非、会ってみたかったです」

 

エリスと天宮は似た想いを抱いていた。戦いを好まず、それでも戦い、そして消滅した巴里華撃団の副隊長である北大路花火。守る為の戦いを知らないエリスにとっては尊敬を、悲しみだけを乗り越え、先へ進む強さを持っている事を天宮はさくらとは違った意味で憧れを抱いた。

 

「当時、惚れかけてたんだよな?」

 

「あの時は俺も若かったというのもあったから・・・ですよ」

 

「気が多かったんですね・・・でも、話を聞いていると異性として気になるだけで告白はしてないですよね?支配人は」

 

森川と誠十郎の言葉に直仁はやれやれと言いたげに苦笑する。直仁は正直に当時の心境を話した。

 

「当時は若気の至りってのあったが・・・大喧嘩の話はしたろ?あれ以降、俺は異性を好きになって良いのか分からなくなっちまったんだよ。いうなれば怖いって事だな」

 

僅かに右腕が震えているのを誠十郎は見抜いていた。彼は普通の男なら経験しないような失恋を経験している。それこそ、告白して玉砕したほうがまだ優しいとも言えるくらいの。

 

「・・・・・」

 

「情けねえ話さ、勝手に惚れて勝手に喧嘩して、挙句にはその惚れた相手の惚気を見る事になっちまった・・・それから降魔大戦が始まって、あの人達が居なくなって10年経った・・・今でも帰ってこれる様に守るってすみれさんと誓い合ってからな」

 

「支配人・・・」

 

「とまぁ・・・関係ねえ話になっちまったな。それが巴里華撃団との出会いの始まりだったって訳だ」

 

直仁は話の流れを戻してしまい、深く話すことはなかった。巴里華撃団の話に移行し、個性的だが強さを秘めた華撃団であり、帝国華撃団と双璧を成すという意味も理解出来た様子だった。

 

「支配人、この後は稽古がありますから帝劇で詳しくお話が聞きたいです!」

 

「アタシも興味あるからぜひ聞かせてくれよ!」

 

「私もよ」

 

「わ、わたしもです!」

 

「あざみも・・・」

 

「わかったよ、ちゃんと話してやるって」

 

昼食が終わり、支払いを直仁が済ませ帝劇の花組は稽古へ戻り、伯林華撃団の面々も戻っていったがエリスだけが最後まで残っていた。

 

「エリス、どうした?隊長なんだからサッサと戻らな・・・っ!?」

 

「・・・・」

 

エリスは何も言わず、正面から堂々と抱きついてきた。今此処に店主である森川も店の奥に居て、二人だけの状態だ。

 

「エ・・・エリス?」

 

「の・・・か・・・?」

 

「?」

 

「私では・・・貴方の隣に居られませんか?」

 

それはエリスからの精一杯の好意の現れだった。直仁が話していた帝国華撃団の真宮寺さくら、巴里華撃団の北大路花火、この二人に対してエリスは嫉妬していた。自分が初めて恋愛感情を抱いた相手に自分を思わせ続ける二人に対して。

 

「エリス・・・お前の気持ちは手を握ってきた瞬間、分かってたんだよ。だけどな、俺は怖いんだ・・・異性を愛することがな。それに今のお前には立場があるだろ?」

 

「それでも・・・私は!」

 

「・・・慌てるなよ、お前は恋を知って・・周りが見えなくなってる。初めてだろうからな、でもな?俺は恋に振り回されている今のお前よりも、凛々しく隊長の責務を全うしているお前の方が好きだぞ」

 

「!!」

 

「いつか、助けてとお前が求めてきたら・・・その時、必ず助けてやるさ。だから、恋を秘めてしっかり隊長を努めろよ。お前は伯林華撃団の隊長だろう?俺も逃げたりはしない。だが、俺はまだ時間が必要な事だけは理解してくれ」

 

「・・・はい」

 

「女を待たせるなんて最低だが、エリス・・・俺はお前の事が嫌いじゃない。むしろ好きだ。でも、今は秘めておけよ?凛々しく、気高く輝いているお前を見ていたいんだ」

 

「!!!」

 

直仁はエリスを店の外に連れ出すと、帝都ホテルまで送り帝劇へと帰っていった。エリスの手には直仁に手を握られた際に何かを持たされたようで、紙の感触があった。

 

「?(ドラッヘ)の描かれた・・・紙?それにこの紙には霊力が宿っている」

 

それは東洋の龍が描かれた紙であった。それは直仁が霊力を宿す事の出来る紙に自身の霊力を込め、浮かび上がらせたものだ。

 

「直仁から・・私達とは何か霊力の質が違うのを感じた。あれは一体?」

 

紙をしまうと直仁に握られた手をエリスは見つめる。一年前と同じ温もり、やはり手が熱く感じてしまう。

 

「凛々しく、気高く、輝いている・・私か・・・」

 

自然と顔が綻んでしまう。そんな自分を好きと言ってくれた言葉が何よりも嬉しかった。それと同時に自分の立場をしっかり考えるようにと諭されてしまってもいた。

 

「そうだ・・・私は伯林華撃団の隊長だ。基本を忘れるところだったな」

 

だが、恋心を忘れろとは言われなかった。秘めた想いを糧にして先に進めと、そう言われたのが強く耳に残っている。その言葉を忘れずにとエリスは帝都ホテルへと戻っていった。

 

 

 

 

 

「・・・・やはり、此処に」

 

とある建物の屋根の上で一人の女性が帝劇を見つめていた。それだけではなく、視線を移し支配人室で書類整理をしている直仁を見ている。

 

「龍脈の御子・・・・貴方の力も必要です。あの方を呼び戻すためには」

 

仮面をつけた女性は薄く笑みを浮かべると消えてしまった。何かを偵察しに来ただけのようで、手出しはせずに。

 

「・・・・動き出したか」

 

嫌な予感を感じ取っていた直仁はペンを置いて、椅子にもたれかかった。傍には帝国華撃団・巴里華撃団・紐育華撃団、それぞれが写っている写真が写真立てに入って置かれていた。

 

「俺も命を懸けるに値する大切な人が出来そうです・・・大神さん、大河くん・・・」

 

今は会話する事の出来ない二人の男を思い返しつつ、壁に掛けてある刀・・・光刀無形を手にし刀身を見るために鞘から少しだけ引き抜いた。その刀身は手入れがされており、今も光を反射している。

 

「・・・・光刀無形、もし・・・力を借りる時が来たら、俺の悲願を達成させてくれ」

 

直仁は刀身を鞘に収め、再び壁に掛けた。これから起こる戦いに覚悟を決めるようにして。




巴里華撃団・副隊長が来たお話でした。

次回は例の仮面を着けたあの女性が出ます。

サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)

  • 倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
  • 上海華撃団 ホワン・ユイ
  • 新・帝国華撃団の誰か
  • 風組or月組メンバー

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