夜叉とさくらの違いを見抜き、正体を推察する。
※夜叉の正体については作者である私自身の考察と推察、予想が入っています。
翌日、直仁は地下司令室にいた。簡単な調べ物をするためと皆には言ってあるが実際はデータの調査だ。
「やはり・・・手順データが閲覧されている。アイツ・・・」
だが、責める事は出来ない。今ここで責めればアイツは確実に天宮達を傷つけるだろう。
「どうすりゃいいんだ?そういえば、キネマトロンの技術がここにあるって言ってたな。少し繋げてみるか」
何気なくモードをキネマトロンに切り替え、手動でダイヤルを合わせる。隊員達や誠十郎、店の番号などは知っているためにそこへは通信しない。そんな中・・・。
「ん?この番号・・・反応してるぞ?一体どこだ?」
何気なく合わせた番号「13410」に合わせ、コールする。すると同時に驚くべき事が起こった。
「一体誰だい?こっちは夜の6時だよ」
「え・・・もしかして貴女はグラン・マさん!?」
「ん?アンタ・・・もしかして、ムッシュ・狛江梨かい?ムッシュ・大神と並ぶ男がトーキョーにいるとは聞いていたけどね。まさかこんな形で話をする機会があるとはね・・・少し待っておくれ、大きい画面にするから」
大画面に表示されたグラン・マの顔はどこか憔悴しており、気丈に振舞ってはいるが疲れが見え隠れしていた。
「ムッシュ達が居なくなって10年。アンタとマドモアゼル・すみれには感謝しかないよ。あの子達も封印されているままだしね」
「いえ・・・俺は」
「ムッシュの遺志を継いでいるアンタが居るからこそ、アタシはこうして待っていられるのさ。偶然繋がっただけで用件は無いようだけど、こうして話せているのが嬉しいよ。ムッシュ・狛江梨」
「・・・・っ」
「機会があれば巴里へおいで・・・その時は紳士の教育を・・してあげる・・よ」
どうやら電波状況が悪くなってきているようだ。声が途切れてきており、ノイズも入ってきている。
「グラン・マさん!」
「いい・・か・・い?決して・・・バカ・・な事、かんがえるん・・じゃ・・ない・・よ?ムッ・・・シュの・・・意志・・は・・アンタ・・の・・中・・に」
グラン・マとの通信が途絶えてしまった。元々、東京から巴里へという超長距離だ、繋がったのが奇跡と言えるだろう。端末の電源を切り、直仁は作戦指令室を後にする。
「っ・・・情報を整理しに行こう。大神さん達の意思は俺の中に・・・か」
直仁は支配人室に戻り、夜叉との出来事を整理し始めた。どうしても夜叉が言った言葉の中に違和感あって引っかかっていたのだ。
「アイツは・・・俺もあの技を放った時、こう言っていたな」
『この技を使いますか・・・・意外でした』
「おかしい・・・仮に夜叉の正体がさくらさんだとしたら、俺にあの技を見せた事は知っているはず、なのに・・・「意外」という言葉が出てくるなんて」
直仁の疑念はまさにそこだった。あの時に夜叉が放ってきた破邪剣征・桜花放神を体験入隊時に「見取った」事のある直仁は型は違えど、同じ破邪剣征・桜花放神で相殺した。
「仮に洗脳されて忘れているとしても、意外だなんて言葉が出てくるか?来ないよな・・・身体で覚えているはずだ、必ず何処かに変化があったはず」
顎に手を添え、紙に重要な事をメモしつつ、考察する。そこで一つの結論が浮かんでくるがすぐに否定した。
「反魂の術はありえない・・・死んでいる訳じゃないからな。だとしたら・・・あ!いけねえ・・・ん?」
小さい紙を落としてしまい、それを拾い上げた瞬間に直仁の中である一つの考えが浮かんだ。
「まさか・・・式神か?いや、もしも・・・仮にだ。さくらさんの髪か何かの一部を何者かが手に入れて、それを媒体に式神として夜叉を作ったとしたら?さくらさんの一部を媒介にしているのなら、北辰一刀流も破邪剣征・桜花放神を放てた理由もつく・・・そして声が似ている事も・・・」
だが、これはあくまでも直仁自身の推察に過ぎず、証拠もない。式神だったとしたら倒した時に媒介が出てくる。もし、本物だとしたら殺す事になってしまう。
「確率は半々・・・だが、俺の勘がアイツは、夜叉はさくらさんじゃないと言ってる」
告白は出来ずとも片思いをした相手、その自分の中にある想いが偽物であると訴えかけている。
「・・・・俺は俺の中のさくらさんを信じる!」
◇
同じ頃、森川自身も情報を得ていた。封印された自分の恋人を取り戻す、その目的を果たそうとせんがために。
「夜叉・・・か、さくらと同じ声を持ち、同じ剣術、同じ技を持つ上級降魔か」
森川は笑っていたが瞳の奥にある輝きは怒りに溢れていた。書類をテーブルに投げつけ、体制を直す。
「えらく俺の女を侮辱してくれるじゃねえか・・・降魔さんよ」
握り拳を作り、怒りに満ちたオーラが周りを震わせている。自分の女の偽物を作り出された、恋人としてこれ程の屈辱があるだろうか?直仁からもさくらに関しては気持ちを託されている。降魔がした事は大喧嘩をしたとはいえ、さくらに対するケジメをつけてくれた直仁に対しても侮辱である事にほかならない。
「偽物なら、それでいい・・・本物なら、俺が引導を渡してやるよ・・さくら」
祈りの所作を行い、観音が森川の後ろに現れる。攻撃する意思はないあくまでも己の意思を鎮めるするためだ。滾った己の心を鎮めなければ意味はない。
「・・・・直仁、お前の意見も聞かせてもらうぜ」
直仁は服を着替えると店の仕込みを手早く終わらせ、大帝国劇場へ向かうべく店を出た。
◇
大帝国劇場、支配人室。そこへ集まったのは直仁、森川、そしてすみれの三人だった。
「さくらさんの偽物!?」
「はい、夜叉と名乗る上級降魔でした」
「その件は俺も耳に入れてる。仮面を被った女・・・だったよな?」
「ええ」
直仁が敬語になっているこの時は仕事兼重要な事を話す場面でのみ、切り替えを行った時だけの状態だ。
「確かに、皆さんは『二都作戦』において『幻都』に封印されていますわ。ですが・・・」
「すみれさん、あれはさくらさんではありません。絶対に!」
「なぜそんな事が言い切れる?」
直仁の言葉に森川が疑問をぶつける。だが、直仁は確信に近い何かを得ているかのようで反論する。
「すみれさん、俺が体験入隊していた時期に、すみれさんから薙刀の稽古を付けて頂いていた時を思い出してください、俺がすみれさんの動きを模倣した時を」
「!確か、貴方は「見取り稽古」に関して並外れて優れていましたわね」
すみれはハッとしたような表情を一瞬した後、まさかという表情になる。
「もしや、直仁さん!貴方はさくらさんの技を!?」
「はい、「見せて」もらいました。夜叉と俺・・・お互いの同じ技が相殺した時、夜叉は気になる言葉を言っていたんです」
「気になる言葉?」
「『この技を使いますか・・・・意外でした』と・・・俺は帰った後、しばらく考えておかしいと思ったんです」
「どういう事ですの?」
「さくらさんは俺に自分から技を見せていた事を知っているはずです。ですが、夜叉は知っている様子がなかった・・・この意味が解りますか?」
「!待って、それじゃあ」
「なら・・・夜叉が使うさくらの剣術や奴の声に関してはどう説明する気だ?」
割り込むようにして森川が更に疑問をぶつけてきた。彼の疑問は最もだ、直仁は呼吸を落ち着けると今度は森川の目を見て話し始めた。
「これはあくまでも、俺の推察に過ぎないという事を念頭に置いて聞いて下さい。恐らく夜叉は、何者かが降魔の力で作り出した式神の可能性が高いです」
「式神だと!?」
「はい、さくらさんの身体の一部・・・理想としては髪ですね。呪術の書物によると女性の髪は呪力の源とも言われています。ましてや、さくらさんは霊力が高く、破邪の血統を受け継ぐ家系・・・式神として呼ぶならこれ以上にないものです」
「ですが、さくらさんは今『幻都』に封印され・・・まさか?」
「そうです。降魔大戦以前・・・もしくはその時に髪の毛一本でも手に入れられるチャンスは幾らでもあった」
「なるほど・・・な、確かにありうる。媒介がさくらの身体の一部だとするのなら、声も剣の腕も納得できる」
直仁の推察にすみれと森川の二人も説得力があると感じていた。証拠は無いにしても、あの真宮寺さくらが降魔に屈服する事などありえないと強く信じている。
「だからこそ、夜叉はさくらさんではありません。ですがこの事は花組には伏せておいて欲しいんです」
「どうしてですの?」
「アイツ等への試練ですよ、特に憧れている天宮にとって身内の敵や憧れを抱いた相手との戦い、アイツ等にはまだまだ戦いで起こる厳しさを知りません、だからこそ鍛える機会なんです。あやめさんの時のように・・・」
「!そうですわね・・・・」
「・・・・」
直仁は自分の手を見つめる。体験入隊が終わった後、士官学校に在籍中に非常収集として帝国華撃団に呼ばれた際、あやめが敵である葵叉丹の手に落ち、大神に自分を託した銃で自分を撃てと言った際、撃てなかった大神に代わって自分が撃った事を思い返したのだ。
「アイツ等には厳しいかもしれませんが、強くなって欲しいんです・・・」
「次世代の礎・・・本当によくやってくれていますわね」
「優しさゆえの厳しさ・・か、嫌いじゃねえぜ。それじゃ、意見交換も手がかりも得られたし、俺は店に帰るぜ」
「ええ、また」
森川は店へと帰っていった。すみれも立ち上がり、帰宅の準備をする。
「わたくしも一度、戻りますわ。資金面の話し合いがありますので」
「いつでも帰ってきてください。そちらの仕事が落ち着いたら、支配人の席をおかえしします」
「ええ」
すみれも帰宅していった後、足音が聞こえなくなったと同時に直仁は咳き込んだ。
「ゴホッ!ゴホッ!少し・・・早くねえか?だが、まだ喰われる訳にはいかない・・・アイツ等を育て上げ、歌劇団としても華撃団の方も次世代に託すためにも・・・それに」
直仁の中でエリスの微笑む姿が浮かぶ。不器用だが凛々しく、気高く、輝く彼女の姿が。
「
そんな独り言を呟きながら、直仁は花組の待つ舞台へと向かっていった。
今回はゲスト的な意味でグラン・マを登場させました。ですが、10年も自分の娘達に等しい巴里華撃団が居なくなっている事を鑑みると憔悴してるのではと思いつつ、直仁に大神さん達の意志は生きていると認識させる役になってもらいました。
夜叉については本当に考察と推察に過ぎません。
直仁にもすみれさんと同じ状態になる時期が迫っています。まだまだ先の話ですが。
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