直仁が下町に行った際、一人の男と話をする。
※ちょっとだけ別の会社で作られたゲーム要素が入っています。
その日、直仁は珍しく一人で下町を歩いていた。盆踊りの季節でもなければ祭りの季節もない、ただ下町をぶらつきたかっただけだろう。
「ん?」
歩いていると不審な箱があった。直仁はそれに近づいて観察するが、視線を逸らすとわずかに動いて後退している。
「んん?」
更に視線を逸らすと箱が消え、首を傾げていると振り返った瞬間に目的の人物がいた。
「待たせたな!」
「何やってんですか?緒方さん」
「いやぁ、子供達が傭兵ごっこをやっているらしくてね?そこに出てくる主人公と声が似てるからやってほしいと頼まれちゃって」
「子供達相手だと断りきれませんもんね」
「さ、入ってくれたまえ」
長屋の中に案内され、お茶を出してくれた。彼の名は緒方星也、旧・帝国華撃団の一人で赤い貴族と称され、太陽の娘とも言われたソレッタ・織姫の実父である。
「織姫達が居なくなって・・・もう、10年か早いものだね」
「・・・すみません」
「謝らないでくれ、君を責めるつもりはないよ。織姫が自分で選んだ事だからね」
「その、カリーノさんは?」
「彼女は気丈に振舞ってはいるが、夜になると泣いているそうだ・・・」
「そうでしたか」
「直仁くん、君だけが私達にとっての希望なんだ。君が生きていれば彼女達のことを思い出せる」
「・・・」
「無理難題とは分かっているが、織姫達を解放してくれる事を期待しているよ」
「はい・・・」
それからは、話し込んだ後。帝劇に帰り日課となっている鍛錬を始めた。何年も続けてきた事もあってか、汗はかくが呼吸の乱れはほとんどない。
「はぁ・・はぁ・・・さくらさん達の開放か・・・」
星也からの言葉を思い返し直仁は空を見上げる。幻都は今、三華撃団が封印となる事で降魔皇を留めている。そこから解放するという事はまた世界を危機に陥らせる事になってしまう。
「でも、解放する事は出来ない。さくらさん達の決意を無駄にしてしまうから」
「支配人?」
「ん?ああ・・・天宮か。どうした?」
「いえ、支配人が空を見上げていたので気になって」
「そうか、別に大したことじゃねえさ」
「支配人、一度お手合せしてくれませんか?」
「?どうした急に?」
「支配人の剣は縛られていない無形の型ですよね?その剣を知りたいんです!」
「良いだろう。一撃だけ付き合ってやる」
直仁は天宮へ木刀を投げ渡し、それを受け取った事を確認すると二刀流の鍛錬をする為に置いてあった木刀を手にした。
「天宮、遠慮はいらねえぞ?親の敵や誠十郎を殺した相手だと思ってかかってこい」
「・・!はいっ!」
「・・・・」
「やああああ!」
天宮が得意とする唐竹と袈裟斬りを直仁へ打ち込む。だが、直仁はそれを受け刃を滑らし、天宮の左頬付近に当たる寸前で木刀を止めた。
「う・・・」
「剣も演技も迷ってばかりか?一体、何を抱えてんだ?」
木刀を引き、天宮の握っている木刀も回収すると天宮をサロンへ案内し、座らせた。
「私、憧れだけで何か出来るって思い込んでしまっていて・・・結局何も出来ていなかった。だから私、真宮寺さくらさんの事を知りたいんです!」
「さくらさんの事をか?知ってどうすんだ?さくらさんそのものになりたいのか?」
「違います!憧れだからこそ、どのような人か知っておきたいんです!」
「おい・・・まさか」
「私をオアシスへもう一度連れて行ってください!森川さんにもお話を!」
「やっぱりかーーーー!!」
直仁の嫌な予感は的中してしまい、天宮を連れて行く事になってしまった。夕飯時に予約し連れて行こうとしたのだが、間の悪い事にエリスと行く道途中でバッタリ遭遇してしまい、彼女も連れて行く事に。
◇
「いらっしゃい!お?」
「お邪魔する」
「こんばんは、森川さん!」
「こんばんは」
「珍しい組み合わせだな?何があった?一応予約は受けてるから安心していいぞ」
「森川さん!真宮寺さくらさんについて聞かせてくれませんか!?」
「直球すぎだ!落ち着け!」
直仁は天宮を座らせ、エリスは変わらず直仁の隣に座る。以前のデートで買った私服を着ている事から本当に外を歩くだけのつもりだったのだろう。
「私も知りたい・・・旧華撃団の一人であり、神崎すみれさんからトップスタァを引き継いだ真宮寺さくらさんの事を」
「そういう事か。で、どういった事を聞きたいんだ?あいつだって一人の人間だぞ?」
「私はトップスタァとしての真宮寺さくらさんを教えて欲しいです」
「私は華撃団として戦っていた話を」
「そうか。エリスの聞きたいさくらは俺よりも直仁の方が詳しいと思うぞ」
「当時の俺は半端な時期に招集されていたんですけどね・・・」
「じゃあ、まずは女優としてのさくらの事から話すか。あれは直仁が体験入隊に来る前だな」
◇
直仁が体験入隊する以前、帝劇では次回の公演の為の練習をに励んでいた。だが、そこで当時帝劇のトップスタァであった神崎すみれとトラブルを起こしてしまう。
「さくらさん!何をしているんですの!?その程度の読みでは意味がありませんのよ!」
「す、すみません・・!」
それは次回公演の主役がさくらに決まった事だった。そこですみれ、マリア、アイリスを含めた四人で稽古していた時だった。
「あ、ああっ、はああああ!?」
すみれは舞台の床に思い切り顔面を打ち付けてしまった。原因はさくらがすみれの着物の裾を踏んでしまった事であった。
「あ、ご・・ごめんなさい」
さくらにも悪気はなかったのだが、すみれとしては許せない事だろう。打ち付けた箇所を真っ赤にしながらすみれはさくらへ怒鳴った。
「さっくらさん!人の着物の裾を踏みつけるなんて失礼じゃありません事!?」
「すみません・・・」
「全く、これだから田舎臭い人は嫌ですわ。粗野でお下品で・・・」
流石のさくらもすみれからの悪口を許容できる程ではない。すみれが視線を逸らした後ろではさくらの表情がぐぬぬ!といった感じになっている。
「さ、もう一度初めから行くわよ・・・」
振り付けを行おうとした、すみれの着物の裾をさくらは再び踏みつけた。今度はわざとではなく明らかに怒りを込めての行動だった。それにより、すみれは再び舞台の床に倒れて顔面を打ち付けてしまう。
「でえっ!?ぐっ!」
「あーら、ごめんあそばせ?」
さくらはこっそり舌を出し、すみれは涙目になりながら怒った表情でゆっくりと立ち上がった。
「このガキゃ・・・・!さくらさん、口で言って分からない人はこうよ!」
「なんの!」
二人は同時に平手打ちをしようと振り被り、繰り出そうとしていた。そこへ通りがかった一人の男、森川が急いで二人の間に入り手を掴んで止めた。
「(あのバカどもが!)」
「貴方は」
「森川さん!?」
「二人共そこまでです」
さくらとすみれの平手打ちは森川によって止められ、不発になったのだった。
◇
「という事があってな?」
「アハハッ!さくらさんとすみれさんってば・・・俺が来る以前から変わってなかったんですね?」
「わ・・私の理想の真宮寺さくらさんが・・・」
「・・・すみれさんもそんな事があったのだな」
森川から聞いた話に対し、腹を抱えて大爆笑している直仁と理想像が音を立てて崩れる天宮、すみれの意外な一面を聞いて一人の人間だったのだと認識できたエリス、三人の反応は異なっていた。
笑ってはいたが、直仁の笑いに淋しさがあったのを森川は見逃していなかった。未練はなくなっても再会したいという思いは何処かにあるのだろう。自分に対して直仁は自分が初めて好きなった相手を奪っていった男として映っていただろう。改めて直仁を見ると次世代を育てるという思い、そしてなによりも隣にいる伯林華撃団の隊長であるエリスが直仁の心を癒しているようだ。
「だから言ったろ?アイツもトップスタァだったが一人の人間なんだよ。ドジだし、おっちょこちょいだし、嫉妬深い。でもな?それがあって当然なんだよ、人間なんだからな」
「森川さん・・・」
天宮自身も己で気付くことがあった。自分は憧れと言っていたが、理想を押し付けていただけなんではと。舞台で輝き、かつて自分を助けてくれたあの凛々しさを見た感動を失いたくなくて押し付けていただけだったのではと。
「次は華撃団としてのさくらさんだな・・・なら、サンダーボルト作戦時にあった聖魔城での出来事を話すか」
しきりに笑った直仁は呼吸を整え、表情を引き締めると話を始めた。戦った魔物の一体である鏡王との激戦について。
少し短めですが、ここまでで。
天宮さくらは嫌いなキャラではないのです、むしろ好きな部類なのですが理想を押し付けるクセがあるのではと思っています。
敢えて理想を壊す事で成長の糧になって欲しいと考えています。
※余談ですが、しっかりと龍にまつわる機体ってスパロボの龍虎王くらいしか浮かばなかったんです。乗り換える機体としてですが、しっかりサクラ大戦の世界にアレンジしたいと思います。
サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)
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倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
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上海華撃団 ホワン・ユイ
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新・帝国華撃団の誰か
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風組or月組メンバー