直仁の恐ろしさを次世代花組とシャオロンが知る。
※今回の話はシャオロンと直仁の口調がチンピラレベルといっていいほど悪いです。嫌悪を持たれる方は読むのを控えてください。
その日、「神龍軒」は営業を午後は休みにしていた。その裏地ではシャオロンが得意の拳法の動きを確認している。
「ふううう・・・」
「隊長、本気でアイツと戦うの?」
「当たり前だろ?旧・帝国華撃団だかなんだか知らないが、今や俺達の方が上だって示さねえとな」
「・・・それは、理解できるけど・・でも」
「何か言いたい事があるのか?」
「・・・ううん」
ユイはそう言って厨房の方へと引っ込んでしまう。彼女は直仁に対して最上級とも言って良い程の恐怖を味わった。身がすくみ、息が出来ず、言葉も発せなかった。あの時の殺気を思い返すと今でも全身に震えが来る。
「アイツは・・・ただ強いだけじゃない。何か・・得体の知れない物を持っている」
敵の怖さが解るのは実力のうちだと言われることが多い。ユイはまだまだ強くなれる可能性を秘めていた。
◇
約束の日、午後17時。直仁は出かけてくると帝劇を後にし、再建された築地倉庫で誰かを待っていた。足音に気づき、直仁は振り返る。
「来たか」
「当たり前だ。お前には借りが二つもあるからな」
「胆の小せえ野郎だな?それで隊長とは、たかが知れる」
「なんだと?落ちぶれ華撃団の支配人如きが!」
シャオロンの言葉に直仁は僅かに眉を上げたが、軽く笑った後に目つきが変わり、昨日に味わった濃密な殺気を向けてきた。
「吐いた唾は飲み込めねえぞ、クソガキ・・・!その身体に死んだ方がマシだって思えるくらいに叩きのめしてやらあ!!」
「俺はガキじゃねえ!やれるもんなら、やってみろおお!」
二人は同時に走りだし、一撃を繰り出した後に間合いを取り構えを取った。
「!・・・・(あれが向こうの武術の構えか)」
「・・・・っ!?(コイツ、やっぱり只者じゃねえ・・・構えに隙がない!)」
直仁は合気道の開手に近い琉球空手の構え、シャオロンは中国武術の構えを取っている。
シャオロンは仕掛けに行くが、殴りかかる前に顎と殴ろうとした腕を押さえ込まれ思い切り地面へうつ伏せに叩きつけられた。
「がはっ!?(な・・なんだ・・今の?)」
「どうした?喧嘩はまだ始まったばかりだぞ?」
押さえ込みを解かれるが、シャオロンの見える景色は歪んでいた。それもその筈、直仁が使ったのは空手ではなく、合気道だ。相手の使ってくる力を利用して叩きつけたのだから、その威力は自分の力と直仁の力がプラスされている。
「あ~?聞こえてねえか・・・しばらく待たなきゃ無理だな」
「ぐ・・ううう!」
「聞こえるようになったか?」
直仁はシャオロンの感覚が回復するまで待っていた。感覚を取り戻したシャオロンは立ち上がりつつ弱々しくなりそうな声で怒鳴った。
「今、さっき・・何を・・しやがった!?」
「ん?合気道を使っただけだ。お前らには『柔』って言った方が分かるか?」
「柔・・だと!?」
シャオロンもその武術は聞いた事があった。日本に伝わる伝統の武術、その技にかかると、まるで魔法でも使われたかのように投げ返されてしまうと。
「さぁ、来い・・・つい、合気道を使っちまったが、空手で戦ってやる」
「舐めやがって、後悔させてやる!」
◇
その頃、誠十郎と天宮はオアシスに駆け込んでいた。偶然にも客は居らず、森川が仕込みをしていた為にタイミングが良かったのだ。この時に森川は裏の仕事である情報屋としての行動はしていなかった。
「「大変です!森川さん!!」」
「騒がしいな。何があったってんだ?」
「直仁支配人と上海華撃団の隊長であるシャオロンさんが築地倉庫で喧嘩を!」
「んだと!?原因はなんだ!?」
「そ、その・・・シャオロンが帝国華撃団を解散しろみたいな事を支配人の前で口にして」
誠十郎の言葉に森川は睨みつける勢いで顔を向けた。その目には怒りが見えている。
「その言葉、聞き間違いはねえな?神山・・・!」
「は・・はい!」
「馬鹿が!俺や直仁の前で新旧に関わらず帝国華撃団に関して悪く言えばどうなるか・・・それに、生身で喧嘩してるとすれば、シャオロンって野郎は直仁の恐ろしさを身を持って味わう事になる」
「え?どういうことですか!?森川さん!」
天宮は直仁の恐ろしさという点に疑問を持って、聞いたが森川は答えず出かける支度をしていた。
「お前ら、着いてこい!直仁の恐ろしさをお前らだけでも見ておくべきだ!」
「はい!」
「分かりました!」
そういって森川は誠十郎と天宮の二人を連れて築地倉庫へと急行したのだった。
◇
「はっ・・!なんだよ、やはり大した事ねえな!」
「ぐ・・う」
空手に切り替えてからの直仁はシャオロンに苦戦していた。空手は確かに威力は高いが、中国拳法ほどの対応力がないのだ。
「これで終わりだ!」
「ぐはっ!?」
シャオロンは踏み込みと同時に掌底打ちを直仁の腹へと撃ち込み、倉庫の壁へとめり込ませた。直仁はそのまま倒れ込んだまま動くことがない。
「支配人!!」
「なんだ、仲間の登場かよ。今終わったぜ?」
「!支配人が!」
「そんな・・・」
三人がが到着した時にはシャオロンが帰宅しようとしている所で、直仁は壁をに背に倒れている。
「これに懲りたら出しゃばる真似するなよ?帝国華撃団」
「おい・・・小僧」
「なんだよ、アンタ」
「感じねえか?この圧倒的な殺気をよ・・・お前、また触れたぜ?アイツの逆鱗にな」
「な・・・!?」
森川が言葉をシャオロンへかけた後、直仁がゆっくりと立ち上がったのだ。瞬間、直仁は上半身のみを生身にして、ゆっくりと歩き出した。
「ん?なんだよ・・・まだ、やれるってのか?だったら!シャアアア!」
走った勢いを利用し、中国拳法の拳を直仁へ打ち込んだ瞬間、パンッ!と何かを弾く音が響いた。
「な!?」
「ま・・まさか!あれは・・!」
「神山は知っているようだな。天宮・・・よく見ておけ、アレこそ俺が直仁を恐ろしい奴だといった要因・・・『無形の形』だ」
「無形の・・・形?」
シャオロンが攻撃を仕掛け続けているが、直仁はそれをシャオロンが受けていた形で防御し始めている。その動きに気づいたシャオロンは焦りが見え始めていた。
「次は俺の・・・番だな」
直仁が繰り出してきたのは中国拳法だった。それはシャオロンが得意としている拳をメインに使い、戦うものだ。荒削りではあるが、それを日本武術で鍛えたものを応用して使っている。
「ぐ・・うわ!?こ、コイツ!俺の技を・・・荒削りながら覚えているのかよ!?この戦いの中で!」
「確か・・・こうやるんだよな?」
「っ!?ぐあああ!?」
指の第一関節だけを握りこむ形でシャオロンに当て、そのまま第二関節を打ち込み、直仁はシャオロンを吹っ飛ばした。使ったのは寸勁と呼ばれる近距離用パンチだ。
「ぐ・・寸発勁まで!」
「こうやって、演舞するのか?この武術は」
「な・・!」
さらに直仁はシャオロンが披露していた中国拳法の演舞を粗さは残るが再現してしまった。それを見ていたシャオロンは驚きを隠せないが、離れた場所で見ている天宮も目を見開いていた。
「す・・すごい!相手の技、型まで全て覚えてる!粗さはありますが、それを余り補っている程ですよ!?」
「あれが無形の形だ。それに言っただろ?直仁は恐ろしい奴なんだよ、俺だってもう二度と敵対したくない相手の一人だ。アイツと敵対した奴、特に何かを極めている奴ほど不利になる。なにせ自分が積み上げてきた研鑽を一瞬で無かった事にされるんだからな」
森川の言葉は的確であった。如何に直仁でも神域に達しているとされる程の達人クラスの動きを全て『見取る』ことは出来ない。だが、修行者や師範代クラスであれば粗さが残りつつも覚えてしまうのだ。
「これで終わりか?来いよ、俺に後悔させてやるといった勢いはどうした?」
「ぐ・・この!」
「止められた蹴りを利用してでの掌底打ち・・・」
「なっ!?」
「次は手刀、貫手、足技と来て・・拳からの肘鉄か」
「こ、この連続攻撃も防がれた!?」
「もう、お前の技や型は『見取って』いるからな」
「ぐ・・・」
シャオロンも分かっていた。自分が得意とする武術の全てを、直仁に見取られているという事。その結果自分の技は、もうこの男に通用しないという事にほかならない。
「なら!」
シャオロンは側にあった棒を手に演舞を披露すると構えを取った。棍術と呼ばれる中国拳法のうちで武器の一つだ。
「武器か、それなら」
直仁も同じ長さの棒を手にするが、その演舞の仕方が違う。頭上で棒を回転させた後に構えを取った。森川の目には今や引退したかつてのトップスタァであり、帝国華撃団の中で薙刀を使っていた一人の隊員の姿と重なった。
「あれは!すみれの型か!?」
「え?す、すみれさんの型!?」
「そうだ、知っていると思うがすみれは薙刀を武器に使っている。それと同時にアイツは神崎風塵流と呼ばれる薙刀の流派の免許皆伝者だ。まさかとは思っていたが、すみれの型まで体得していやがったとはな・・・」
「じゃ、じゃあ!直仁さんは・・・旧・帝国華撃団の皆さんの武術の型を全て体得しているって事ですか!?」
「そうなるな・・・相変わらず恐ろしい奴だ。(上海の小僧・・・・お前は一人で大神、さくら、すみれ、カンナといった武術経験者の相手をしなくちゃならねえぞ?)」
「こちらから行くぞ?」
直仁は素早く刃に値する鋒を振り下ろすように棒を振り下ろしてきた。それを受け流そうとしたシャオロンだが、鋒に当たる部分の速さが尋常ではなく、受け止めてしまいその重さが腕にのしかかる。
「ぐっ!?速い・・・!それに重い!」
「神崎風塵流は優雅さ、美しさ、そして速さを求められる。速さこそが神崎風塵流の美しさなのさ」
とても薙刀術の動きとは思えない速さと、舞のように優雅な動きに天宮は目を奪われていた。武術にもこんな美しさがあったのかと。森川も内心はキレ気味ではあったが、直仁の薙刀術の動きを見ていて笑みを浮かべていた。
「あの動きは、すみれが帝国華撃団の隊員として現役だった時の動きだな。なるほど相当頭に来ているな・・・直仁の奴は。動けば動くほど、すみれの虚像と重なって見えやがる」
何故、直仁はシャオロンに対し神崎風塵流を使う事にしたのか?それは帝国華撃団に飽き足らず、直仁個人だけでなく、帝劇を護り続けているすみれすらもお前は馬鹿にしたのだと自覚させるためであった。
「くそっ!え・・・?」
間合いを外し、構えを直した瞬間シャオロンの目には直仁の姿に帝国華撃団の戦闘服を身に付けた当時19歳の神崎すみれの姿と、神崎重工の職業婦人として気品に満ちた今の神崎すみれの姿が直仁と同じ構えで薙刀を持ち左右に立って、ゆっくりと重なっていくのが見えていた。
「なんだよ今の・・・幻か!?」
「いや、幻じゃねえ。直仁は『今のすみれ』と『帝国華撃団だったすみれ』二人のすみれと共に戦ってやがんだ。小僧…お前は今と昔の帝国華撃団だけじゃねえ・・・帝劇を支え続けている今の神崎すみれすら、馬鹿にしてたんだよ」
「っ!?」
森川からの突然の言葉にシャオロンは息を呑む。直仁の真意を森川が代弁してしまったが、シャオロンは動く事が出来ない。直仁の後ろに次々と知らない誰かの姿が浮かび上がってくるからだ。
帝国華撃団・司令であり隊長。そして海軍の先輩でもある大神一郎。
森川の恋人であり、直仁の初恋の相手だった北辰一刀流の使い手である真宮寺さくら。
先程まで見えていた帝劇のトップスタァであり、神崎風塵流薙刀術の使い手である神崎すみれ。
冷たい瞳の中に仲間に対する熱い思いを持つ銃の名手マリア・タチバナ。
幼くとも華撃団随一の霊力を持つイリス・シャトーブリアンことアイリス。
霊力は低くとも天才的な閃きで科学を駆使する李紅蘭。
華撃団一の力強さを持ち、皆を盛り立てるムードメーカーであり琉球空手の達人である桐島カンナ。
欧州星組の元メンバーで世界的女優であり優雅に霊力を使いこなすソリッタ・織姫。
織姫と同じ欧州星組のメンバーでバレエの天才でもあり、戦闘技術の追随を許さないランスの使い手であるレニ・ミルヒシュトラーセ。
旧・帝国華撃団のメンバー達が戦闘服の姿で直仁の背中を見守っている姿が浮かび上がる。それを見たシャオロンは棍を手放し、その場で膝をついてしまった。自分と直仁では背負っているものが違いすぎる事を理解してしまったのだ。直仁は新旧だろうと関係ない、自分の居場所となり第二の家族とも言える帝国華撃団を守るという覚悟の強さが桁違いだったのだ。
「俺の・・・・負けだ」
「お前も家族や大切な居場所を馬鹿にされたら黙っていられないよな?少しは分かったか?」
「ああ・・・」
「そこにいる男性・・・森川さんや花組メンバーにも謝っておけよ?俺は許してもあの人は許さねえかもしれねえからな」
そう言って、直仁は脱ぎ捨てていた服を着直すと棒を片付けた後に森川、天宮、誠十郎の三人に挨拶して帝劇へと帰っていった。
それからシャオロンは森川を含め、帝国華撃団のメンバー全員に謝罪した。森川からは「今後気をつけろ」と釘を刺されてしまったが元々、裏表のない性格である為に謝罪は受け入れてもらえた。華撃団大戦では負けないと宣戦布告したようだが、意気込みとして聞いておいたようで帝国華撃団のメンバー達もやる気に火がついた様子だった。
今回は背負っているモノの違いという形にしました。
シャオロンもシャオロンで未来に目を向けるべきという事を伝えたかったのですが、言葉が見つからなかったんでしょうね。
しばらくは新サクラ大戦の時間を動かします。じゃないと乗り換えができないので(汗)
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