ひとりの女性との出会いが、その運命を大きく変えた。
支配人室の一室で、支配人の直仁、天宮さくら、神山 誠十郎の三人が座っている。
直人はお茶を一口飲むと話を始めた。彼が帝国華撃団に入隊したきっかけ、そして留まる事になった任務を。
「あれは丁度、十年前だ。その当時、帝国華撃団の副司令に出会ってな」
◇
狛江梨 直仁、当時十九歳。彼は一般市民として高等学校(当時の大学)を受験するかの瀬戸際であった。早生れであり、実家は裕福に近いものではあったが、両親の反対を押し切り、学問のために上京してきたのだ。
「うーん、今日もいい天気だな。バイトは休みだし、銭湯にでも行こうかな」
「そこの貴方、少しいいかしら?」
「え?僕の事ですか?」
当時の直人はまだまだ青く、一人称が僕であった。話しかけてきた女性が彼の運命を変えた本人でもある。
「そう、貴方、なかなか良い
直仁からすれば帝国華撃団と聞いて、知らない筈がなかった。目の前で軍服を着ている女性がその副司令ならば、帝国華撃団は軍隊なのだろうと考える。
「はぁ・・・」
「そして、有望な子には帝国華撃団への一ヶ月の体験入隊をお願いしているの。どうかしら?もし、貴方が選ばれたら体験入隊する気はある?」
あやめの言葉に心臓が高鳴った。帝国華撃団への体験入隊、一ヶ月だけだとしても帝都を守る部隊に入る事が出来る、正義感の強い直仁は返事を返そうとした。
「とは言っても、まだ、正式に決まった訳ではないのよ。全国を回って、その中で貴方の素質が一番高いとなったら、手紙を送るわ。その時はよろしく頼むわね」
そう言うとあやめは去っていった。自分の中で帝国華撃団の体験入隊の候補者に選ばれた事に驚きを隠せない。
興奮を冷ます為、銭湯へ行き身を清めた後、桶に貯めた冷水を頭から被った。
「普通の高等学校じゃなく、士官学校を受験しようかな」
などと思い始め、湯船に浸かり、休日を楽しむ事にする。休日を終えて学校やアルバイトをこなしつつ、二ヶ月後、下宿に手紙が来ていた。
「手紙か、どこからだろう?!これって・・!」
開封すると中には手紙が一枚入っていた。他には何もなく、中を確認しても何も入ってはいない。
【貴殿ノ帝国華撃団ヘノ体験入隊ヲ願フ 帝国華撃団 米田一基】
「まさか、本当に選ばれたのか?民間人の僕が・・・あの帝国華撃団に。夢じゃないよな?」
直仁は自分の頬を抓ってみたが、痛みが夢ではない事を教えてくれる。
「痛てて、でも・・・選ばれたのなら全力でやるしかないな。バイト先にも連絡しておこう。大帝国劇場の手伝いをするって」
総自分に気合を入れると荷造りを始めることにした。これが、彼にとって闘いの幕開けでもあった。
◇
「それが、帝国華撃団との出会いだった・・・」
「支配人、その・・・藤枝あやめさんって、どんな方だったんですか?」
天宮の素直な言葉に直仁は少しだけ笑みを浮かべ、口を開く。まるで、懐かしんでいるかのようだ。
「総ての華撃団の基礎となった帝国陸軍対降魔部隊に所属していた人だ。優しくも厳しく、以前の帝国華撃団の副司令で、メンバーをスカウトした人でもあったんだ。護身術の達人でもあったよ」
そう言って直仁は一枚の古びた写真を見せた。髪をポニーテールに結って、なにかの戦略を黒板に笑顔で書こうとしている一人の女性の一面が撮影されている。目線は撮影器具に向いている様子だ。
「わぁ・・・綺麗な方ですね?」
「ああ、客観的に見てもかなりの美人だな。もしかして、写っているこの女性が?」
天宮と誠十郎は古びた写真に写る女性を見て、素直に褒め、誠十郎は疑問を直仁にぶつける。
「そうだ。その人が藤枝あやめさんだ。その写真は当時16歳のものらしいけどな」
「支配人、どうしてこんな写真を持っているんです?」
「貰ったんだよ。本人から・・・今となっちゃ形見みたいなもんだけどな。(もし、その当時で出会ってたら告白してたけどな)」
「え?」
「どういう事です?」
「・・・・・悪いが、素面じゃ話せねえ。この話はな、あんまりしたくねえんだよ」
直仁は年甲斐もなく、僅かに震えていた。それはかつて、自分が味方だった相手と戦った経験から来るものなのだろう。それを思い出してしまい、僅かに震えていたのだ。
天宮と誠十郎の二人は、目の前にいる相手が過去に何かあったのを感じ取っていた。
「次の話をしていいか?二人共」
「あ、は・・はい」
「すみません」
「それじゃ続けるぞ?それからは手紙が来て二日経ってからだ・・・」
◇
いつも見慣れている大帝国劇場、此処に歌劇を観に来たわけではなく、華撃団の体験入隊も為に来たのだ。
「観に来ているだけだったけど、今回は違うからなぁ。えっと・・・」
受付に向かうと赤い服の女性が案内をしてくれた。事務所に行けば支配人室へ案内してくれるとの事だ。
事務所の女性は薄い紫色の着物を着た落ち着いた雰囲気を持っていた。手紙を見せるとすぐに案内をしてくれた。
支配人室の扉をノックし、中に入る。そこには支配人と思わしき老齢の人物が座っていた。
「おう、よく来たな!あやめ君から話は聞いているぜ。まぁ、一ヶ月という短い期間だが、体験入隊を頑張ってくれ!だが、まずはこの書類に目を通してくれ、簡単な手続きのためだ。あやめ君が見つけて来た人材だ。まず、間違いはねえと思うが、一応規則なんでな」
「はい」
帝国華撃団に関する守秘義務に関する書類を読み、書類の手続きを済ませると同時に雰囲気が柔らかくなる。
「よし、まあ、そう固くなるな直仁よ。今回の体験入隊で良い成績を残せば、将来の隊長候補として考えても良いと思ってる。一ヶ月という短い期間だが、頑張ってくれ。期待しているぜ。よし、それじゃあ、大神、後はよろしく頼んだぜ」
「はい。自分は大神一郎少尉、帝国華撃団・花組の隊長だ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします。僕も・・・隊長になれますかね?目標にしたいんです」
「そうだね。頑張り次第とも言えるけど、俺としては追い抜くつもりでいてくれると嬉しいかな。ハハ・・・。じゃあ、花組のみんなにキミを紹介しよう。着いて来てくれ」
花組の隊長。体験入隊だとしても目指すべき最大の目標である。だが、現隊長である大神は自分を追い抜くつもりでいて欲しいと言った。隊長で止まるようではまだまだ、だとそう言いたかったのだろう。
大神の後に着いて行くと、サロンらしき場所に案内された。そこには六人の女性が椅子に座っていたり、壁にもたれかかっていたり、立っている者もいる。
「みんな、集まっているな。今日から一ヶ月間、花組に体験入隊することになった。直仁くんだ」
「皆さん、初めまして。狛江梨 直仁言います。一ヶ月という短い期間ですが、よろしくお願いします」
直仁は大神から、自分の名前と一ヶ月間の体験入隊をする事になった旨を伝えられた。直仁も真面目に挨拶をし、花組メンバーからも歓迎された。
「それじゃあ、直仁くん。君の霊力を測定するから着いて来てくれ」
「分かりました」
大神の後に着いて行き、地下へと案内される。そこには格納庫らしきものがあり、その隣にはシミュレーターのような装置があった。
「此処に座って、機体を選んでくれ」
「はい」
指示された通りにシミュレーター座り、各隊員の光武の機体データが表示された。
「(ここは、剣に覚えがあるからさくらさんの機体で行こう)」
さくら機をセレクトすると、敵である脇侍の姿が現れた。まだ、始めの合図がない為に動かない。
「(いきなりで戦えるだろうか?いや、やるしかない!)始めて下さい!」
「うん!始め!」
合図と共に装置が起動し、脇侍が先制攻撃で射撃を放ってくる。直仁は咄嗟に防御の構えを取るが、距離を離されている為に攻撃が届かない。
「ぐうううう!なら!」
とっさの判断で真横への移動をする事で、回避にに専念するが依然として脇侍は射撃の手を緩めようとしない。
その様子を大神は真剣に見ている。海軍出身である彼にとって一般人の直仁がどれだけ奮闘するかを知りたいのだ。
「えっ・・・と。ぐう!」
脇侍からの攻撃を回避したり、防御する事だけに気を取られ操縦もうまくいっていないが、腕を動かす為の操縦桿、蒸気噴射による移動などのペダルの操作方法などを動かす度に直仁はそれを体で覚えていく。
「装甲限界は?まだ後少しは持つかな?僕は・・・僕は負けたくないいいいい!!」
「な、なんだ!?」
瞬間、直仁の霊力が爆発的に上昇し始める。直仁の霊力が上昇する為の心の動きは「負けず嫌い」と「負けん気」だったのだ。
「うおおおおお!」
刀を抜き、脇侍との間合いを詰めていく。今の彼はシュミレーターとはいえど己が死ぬかもしれない恐怖と己の感情に支配され、極限にまで追い詰められていた為、ゾーン状態になっていた。所謂「ノってきた」という状態である。
「直仁さんの霊力値、上昇を続けています!110、120、135!」
「なんだって!?」
「うわああああ!」
剣に覚えがあるといっても幼少期にチャンバラの物真似をしていた位のものだ。だが、脇侍が振り下ろした刀を受け止めると鍔迫り合いに持ち込む。その硬直状態を狙って、脇侍は片手に装備してあるマシンガンの銃口を直仁へと向けた。
「っ!」
本能的というのだろう。直仁はヤクザキックを脇侍へ打ち込み、脇侍との間合いを僅かに離した。放たれたマシンガンは上空へと空撃ちになってしまう。
「ふぅ・・ふぅ!フー、フー!」
「150、165、180、200、250!ま、まだ上昇しています!」
「いかん!装置を止めるんだ!これ以上は負担が!直仁くん!もういい!もう止めるんだ!」
「っう!?」
シミュレーターが止まり、装置が外されていく。直仁は大量の汗をかき、呼吸も荒いままでその場で震えていた。
「はぁ、はぁ!はぁ・・・はぁ・・・!」
「大丈夫かい?直仁くん」
「はぁ・・はぁ・・・大神さん、僕は・・・」
「気にしなくて大丈夫さ、君の霊力測定は終わっているよ」
「ぼ、僕・・・怖くて・・・夢中で・・・何が何だか解らなくなって」
直人は自分の震える手を見つめながら、大神に胸の内を明かしていた。大神はその不安が痛いほど分かっていた。仮想とはいえど、いきなり死ぬかもしれない恐怖を味わうことになったのだから。
「ほら、立てるかい?」
「はい・・」
シミュレーターから立ち上がると事務所にいた女性、藤井かすみ。案内と事務所担当の榊原由里、売店担当の高村椿を紹介された後に、スケジュール帳を渡され一ヶ月間寝泊りする部屋を案内された。
「それじゃ、一ヶ月間。頑張ってくれ」
「はい、ありがとうございました」
直人はスケジュール帳を確認しつつ、これから始まる帝国華撃団での生活に期待と不安を隠すことができなかった。
◇
「大神一郎、入ります」
「おう、入れ」
支配人室に入る大神、そこには支配人である米田一基、その隣には藤枝あやめが立っていた。
「支配人、あの・・・直仁くんの事なのですが」
「ああ、火事場の馬鹿力だったみてえだが、とんでもねえ霊力を叩き出しやがったみてえだな」
「霊力値500以上・・・アイリスにも匹敵する霊力よ。最も本人は目覚めてはいないみたいね。今の状態の霊力もその余波なのでしょう」
直仁の霊力測定の結果、通常時で95、火事場の馬鹿力状態でその5倍以上の数値となる事が分かったのだ。
「ですが、まだ完全に制御できていないのが現状です。彼の霊力が火事場状態でなら即戦力になることは間違いありません」
「この一ヶ月でどれだけ引き出せるかだな」
「さくらくん達も協力を惜しまないと言っています」
「頼むぜ、大神。次の世代へと繋いでいくにはお前だけじゃない、もう一人必要だ」
「はい!」
「狛江梨、おめえもだ。大神と並んで戦えるだけの実力者になってくれよ」
米田の言葉はまるで期待の表れのように風に乗り、花びらを伴って届けられていった。
直仁くんはまだ大神さんが隊長だった時期には完全には目覚めていません。
いうなれば眠れる力はあるが、覚醒することが出来ていない状態です。
それでも、光武を動かすことぐらいは出来るレベルではあります。
彼の力は「見取り」です。
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