※新サクラ大戦の夜叉に関するネタバレがありますので注意してください。
地上では二組に別れた次世代華撃団と森川が戦闘を始めていた。だが、次世代の華撃団達はたった一人の伯林華撃団隊員に苦戦していた。それもその筈、グラーフのアイゼンイェーガーはグレネード、ヘビィガトリング、そして彼女が考案したパンツァーファウスト、フリーガーファウストという重火器の中でも群を抜く砲口を携えているのだ。
グラーフには先見の明があった。特に銃火器に関する事に関してはズバ抜けており、拳銃は小銃へ、小銃は機関銃へ、機関銃は機関砲へと進化させていく過程を発見、確立してしまったのだ。
無論、これは伯林華撃団内部での極秘事項になっており開発方法などは外部に一切知らされていない。使い捨ての兵器であるパンツァーファウスト、フリーガーファウストには爆薬を暴発しない位置に仕込んであり、撃ち終えたらそれを撃って爆発させ隠滅する。
「きゃああああ!」
「うあああ!くっ、神山!アイツ、とんでもねえぞ!近づけねえ!」
「火力が違いすぎる!これが後方支援の機体だなんて、信じられない!前線に立っても通用するレベルだ!」
「帝国・・・・華撃団・・・・排除・・・」
グラーフは強引に着けられた仮面の呪縛から逃れられていない。彼女自身の意識が奥底に封じられてしまっているからだ。更には夜叉という降魔との繋がりが彼女の意識の復活を阻んでいる。
パンツァーファウスト、フリーガーファウストを撃ち尽くしたグラーフは残骸にも等しいそれを華撃団の居る位置へと投げつけ、アイゼンイェーガーに標準装備されている腕のガトリングでそれを撃ち抜き爆発させた。
「うあああっ!」
「きゃあああ!」
「あざみ!クラリス!!」
「キャプテン、彼女は曲がりなりにも伯林華撃団の一員よ。彼女の戦略は私達を上回っていると考えるべきだわ」
「重火器を効率良く扱える。一人で軍隊のようだよ」
アナスタシアからの言葉に誠十郎は戦意を失っていない目で苦笑していた。だが、他の華撃団メンバー達も戦意を失っていない。
「私だって・・・まだやれます!」
「武器がなくても、拳さえあれば・・・アタシは戦えるぜ?」
「私もです・・・!グラーフさんの目を覚ましてあげないと!」
「みんな・・!そうだな、此処で弱気になってたら先代の皆さんに叱られる!特に直仁さんのカミナリは怖いから」
直仁のカミナリと聞いた瞬間、誠十郎以外の全員が背筋をピンとしてしまった。天宮は自分の羨望を、初穂は感情を剥き出しにして向かった時を、クラリスは自分自身に対して悲観していた時を、あざみは自分の技術に自惚れていた時を、アナスタシア隠していた真実を見抜かれた時を思い出したからだ。
「直仁支配人の・・・」
「カミナリは・・」
「絶対に・・・」
「もう二度と・・・」
「落とされたくないわね・・・」
次世代の花組全員が一心同体とも言える程、直仁のカミナリに対してトラウマを持ってしまっていた。無論、彼自身もトラウマを植え付けてしまった事に責任を感じている。だが、それ以上に悪い事をしたら叱られるという事を花組は忘れていた。余りにも悲観的、自分勝手、詰の甘さに直仁がカミナリを落とした事はまだ記憶に新しい。
「でも、今は俺達が出来る事をやる!それがグラーフさんの救出だ!行くぞ!」
「「「「了解!!」」」」
『頑張ってくれ、神山くん・・・!』
「え?」
「誠十郎さん?どうしたんですか?」
「いや・・・何でもない」
そう言って誠十郎は男性らしき誰かの声が聞こえたのを感じつつ、グラーフとの戦闘に集中した。
◇
同時に別の場所で夜叉と戦ってる森川も、幻都の封印が弱まった影響で発現した夜叉の力である「幻装・武御雷」の力に手こずっていた。
「アハハ!どうしました!?手も足も出ないじゃないですか!森川さん!」
「・・・・」
森川はただ嘲笑しながら刃を向けてくる夜叉に対し
「ああ、吐き気がする・・・。
「俺はよ。それを視る「眼」は持ってねえ・・・だが、限りなく近い事くらいは出来るぜ」
「何を言っているのです?」
「直死──死が、俺の前に立つんじゃない!
森川が斬ったのは「幻装・武御雷」に必要な魔力の流れであった。無敵の外装を剥がされた夜叉は驚愕している。
「何・・!?幻装・武御雷を断ち切られた!?」
「ついでにこれは、異国の果ての伝説に記された言葉だ。それを聞かせてやる・・・!『死なくして命はなく、死あってこそ生きるに能う。そなたの言う永劫とは、歩みではなく眠りそのもの。災害の影、人類より生じた魔よ。破壊を望んだその思考こそ、汝を排斥した根底なり。魔に堕ちた破邪の欠片へ幽谷の淵より暗き死を馳走しに参った』」
再び
「お前をそこから引きずり出さなくちゃな?」
「異国の伝説を聞かせ、私に暗き死を馳走するなどと・・・!!貴様ーーー!」
怒った夜叉は突撃してくるが、森川は
「青い輝きは本来、俺の輝きじゃねえ…アイツに相応しいものだ。だが、今だけはお前の輝きを借りるぞ!直仁!最果てに至れ。限界を超えよ。彼方の王よ、この光をご覧あれ!
それは…かの湖の騎士が持った輝き、そして友が持っている輝きだ。カウンター気味に入った青い刀身の一撃は神滅を切り裂き、夜叉を中から引きずり出した。
「うあああああ!よくも・・・ヨクモーーーッ!」
仮面が剥がれ落ちたその顔は機械と人間が合わさったようなものであり、目は赤く染まり抜いていた。それでも、刀を振るってくる夜叉に一本の刀を出現させ、迎え撃つ。
「やはり、直仁の推察は当たっていたか。たく、相変わらずアイツはとんでもねえ勘をしてやがるぜ」
「キサマ・・・・!!ヨクモ、ヨクモオオ…!」
「剣には剣で幕を閉じてやるよ、夜叉。だが、この流派を学んだアイツならきっと、この境地へたどり着くだろうな・・・」
森川にしては珍しく、居合抜きの構えを取る。その瞬間、暴走した夜叉が闇雲に斬りかかってきたが一瞬の隙を見つけ出す。
「いざ。剣は生死の狭間にて大活し、禅は静思黙考の内大悟へ至る。我が剣に、お前は何れを見るものか。
無念無想の域、剣禅一如の一刀。その一撃は夜叉を完全に捉え、同時に倒れた。森川は刀身を鞘に収めながら言葉を口にする。
「この境地に俺が至っているとは言い難いが・・・限りなく近い位置だ。もう二度と俺の前に現れるなよ」
「ゲン・・・ア・・・・ン・・・・サ・・マ」
夜叉が消滅した後には見覚えのある束ねられた髪が落ちていた。森川はそれを震えながら手にするとやはりという表情になった。
「さくらの・・・髪・・・!」
森川は手にしたさくらの髪を握り締めると何かを堪える様に強く拳を握り続けた。夜叉がさくら本人ではなかった事に対する安堵と、利用していた幻庵に対する憤怒が同時に起こっているのだ。
「・・・・お前は居るんだな。それが確信出来ただけでも充分だ。う・・・宝具を使いすぎた、な」
目に光るモノを見せながら森川は煙草を取り出し、火を点けた。強いものではなく、愛飲している煙草を。それと同時に壁に背を着けると同時に座り込んでしまった。無理もないだろう、攻撃力の高い力ばかりを優先して使った代償に全身疲労が絶え間なく襲ってきているのだから。
「決着は付けた・・・からな」
◇
地上の上、上空では雀武王が追い込まれ、南峰が焦りを見せ始めていた。互いの最終奥義が雀武王よりも龍虎王の方が深めに入っていたのだ。
「ぐ、北峰!武雀王だ!武雀王に転身しろ!む、北峰!どうした!?」
「すまぬのう。武王機からの拒絶が凄まじい・・・どうやら、龍虎王からの一撃を受けた時に汚染が浄化されたようじゃ」
「な、何!?」
北峰自身も穏やかではあるが南峰同様、ある仙人の力の欠片を取り込んだ上級降魔の一人である。更には雀王機と武王機を汚染させていた魔の呪術が龍王破山剣・逆鱗断の一撃で浄化され、その影響が広がってきているのだ。
「くそっ!」
「余裕が無くなってきたようだな?南峰!」
直仁はあえて挑発的な態度で南峰を刺激する。南峰の武器はその冷静さだ、北峰からの呪術の浄化侵食、更には追い込まれていることもあって苛立ちを隠せない南峰の冷静さを取り戻させない為だ。
「うるさい!黙れ!」
「直仁、あれを見ろ!武王機と呼ばれている胸元に合体している機体を」
「ん?」
エリスからの言葉に視線を移した直仁が見たのは武王機から僅かながらに流れていた涙だった。『自分達を倒し、どうか介錯して欲しい』という懇願のようであった。
「・・・エリス」
「なんだ?」
「雀武王を解放する為に全力で行く、霊力を貸してくれ」
「ああ、分かった」
二人の間に余計な言葉は無用だった。雀武王の装甲の一部が黒から朱へと変わっているのを見つけ、強引に制御されていたのだと気づき、解放する気持ちは一緒だったからだ。
「破山剣、招来!降魔久世魂剣!!行くぞォォ!」
「雀武王!避けろ!!」
だが、雀武王は動かない。龍虎王が突撃してくるのを待っているかのように。南峰は動かそうと呪術を強めるが間に合わない。
「な、何故だ!何故、避けない!?」
「でやああああ!!」
龍王破山剣の形状が変わり、雷と嵐を纏ったかのように龍虎王は雀武王へ剣での連撃を加えていく。連撃の締めとなる刺突を雀武王に繰り出し、そのまま剣を逆風の向きへと変えた。
「龍虎王が超奥義!龍王破山剣!!天魔!降伏斬!!!」
「ぐあああああああ!おの、れ!まだ終わっていない!降魔皇の下へ行けば!」
雀武王を斬り上げ、完全な致命傷を負わせる。瞬間、かけられていた呪術が完全に解け本来の姿に戻った二機であったが、南峰のみが脱出し、北峰が爆発するまでの間直仁達に声をかけていた。
「これも理か・・・善哉、善哉。青龍、そして白虎の操者よ。我らが皇はまもなく復活するだろう」
「何!」
「どういう事だ!?」
「聞きたければ幻庵の下へ行くが良い。さらば」
雀王機、武王機と共に運命を共にした北峰は意味があり気な言葉を残して消えた。後に残ったのは龍虎王と搭乗している直仁とエリスだけが残った。
「行こう、エリス。みんなと合流しなくちゃいけない」
「そうだな、行こう」
龍虎王で地上を目指し、仲間と合流する地点へと向かう二人。だが、二人の中では北峰の言葉が引っかかっていた。
『我らが皇は、まもなく復活するだろう』
皇とは降魔皇の事だろう。そうだとしても不安を拭えないままだ。それを抱えたまま直仁とエリスは合流を急ぐのだった。
次回は降魔皇復活(不完全)前の会話です。
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