復活出来た理由を大神が話す。
先行した華撃団一同は皆が驚愕と疲れで肩を落として帰還した。その様子に待機していた組は驚きを隠せていない。
「あの人が・・・そんなはず」
「神山、一体何があった!?」
「そんなはずはない・・・ありえない」
「僕たちの言葉すら聞こえていない所を見ると、よほど衝撃的で信じたくない事があったんだろう」
シャオロンとアーサーは先行した部隊の様子を見て只事ではない事を感じ取り、落ち着くまで情報を整理することにした。
「ランスロット、魔幻空間の中で一体何があった?」
「分からないよ、黒龍って名乗る奴だけがいて・・・ソイツは恐ろしい程強かった」
「伯林華撃団の副隊長さん、俺達にも中での情報を教えてくれないか?」
「わかったわ。魔幻空間中で戦ったのは黒龍と名乗る人間、顔は仮面で隠していて正体は解らなかった。けど・・・」
「けど?なんだよ」
「私達、伯林華撃団の隊長であるエリスは黒龍を知っているようだった。けれど、彼女も神山達と同じ状況で話しかけても無駄よ」
マルガレーテは淡々と事実だけを伝える。問い詰めようとしていたシャオロンに対して先手を打ったのだろう。シャオロンはたじろぎながらも冷静さを保った。
同時に総司令である大神は機密蒸気通信を使い、何処かと話している様子だ。
「はい、そうです・・こちらに来ると?分かりました」
◇
「ああ、俺もそちらへ行く。一時間後にな」
大神が通信していた相手、それは森川であった。森川自身もオペレーターからひみつ道具で手当てを受けた後、黒龍に関する情報を徹底的にかき集め、そして今、最も証拠になる情報が出ようとしている。
「首尾はどうだ?」
「はい、黒龍の仮面の破片から採取した皮膚組織の鑑定結果が出ました」
「それで、結果は?」
「99・999%、遺伝情報がある人物と合致しました。名前は『狛江梨 直仁』です」
オペレーターの機械的な発言を聞きつつ、森川はそうかとだけ返し、煙草に火を点けた。
「・・・まさかとは思っていたが、決定打・・・かよ」
森川は黒龍が撤退した後、残されていた仮面の破片を回収していた。理由は一つ、黒龍の身体の一部を手に入れる為であった。幸いにも黒龍が被っている仮面の下顎部分が僅かに割れて、地面に落ちていた為にそれを手に入れておいたのだ。
森川の手にかかれば情報と名の付くもの、そのほとんどが手に入る。この時代にはないDNA鑑定などもひみつ道具にかかれば簡単にできてしまう。だが、森川自身、なるべくなら外れて欲しいという思いがあったのだが、現実は非情であった。
吸い込んでいた紫煙を吐き、天井を見つめ考える。この事実をどうやって華撃団全員に伝えなければならないかと。
「特にエリスの奴は・・・マズイかもな。俺も心を鬼にするしかないか」
そう呟くと森川は黒龍と直仁に関連する情報が、全て記された書類を手に帝劇へと向かった。
◇
約束の一時間後、森川は作戦司令室にやってきた。華撃団全員が期待の目をしている事から黒龍に関する情報を持ってきたと思っているのだろう。
「最初に言っておくぞ?俺は心を鬼にして、この情報をお前達に公開する。心して聞けよ」
紅蘭が開発していた蒸気スクリーンに一枚の書類が大きく表示される。それは遺伝情報を分かりやすくしたもので、もう一台にも同じものが表示されている。
「これは・・?」
「コイツは生体情報を分かりやすくしたものだ。右が黒龍、そして・・・左が死んだ直仁の生体情報だ。生体情報は人間一人一人、違っている。それが親兄弟だとしてもな。そしてこの二つを重ね合わせると・・・」
森川は心を鬼にしたまま、黒龍と直仁の生体情報を重ね合わせた。
「ピッタリ、一致した!?」
「そんな・・・!」
「嘘だろ!?」
大神の驚きは全員に広がり、動揺が隠せていなかった。無理もないだろう、死んだはずと考えられていた直仁の生体情報と先程まで戦った黒龍の生体情報が寸分の狂いもなく一致したのだから。
その中で、旧・帝国華撃団だけが冷静さを取り戻しており、巴里華撃団はそれに倣って冷静になり、現華撃団は動揺したままである。
「馬鹿な、直仁は死んだはずだ!?アンタ達が言ってただろ!」
「そうだ、僕もそのように記憶している」
「私もそう聞いてる!死んだ人が出てくるなんて!」
「お前等、落ち着け!!」
森川の怒号に全員が口を閉じた。それを見届けると言葉を発する。そんな中、大神は座ったまま目を閉じていた。何かを知っているかのように。
「それとな、黒龍が直仁だという証拠は他にも二つ出ていた」
「え?」
「一つは最初に撃ってきた破邪剣征・桜花放神だ。これを使えるのは俺が知っている中で三人いる。一人は言わずと知れた、真宮寺さくら・・・そして、その父親である真宮寺一馬、最後の一人はその技をさくらから見取った、狛江梨直仁。この三人だ」
「その通りです・・・」
森川の言葉にさくらは肯定しながら頷く。恋人であるという点を抜いていても森川の情報は事実だからだ。
「そして、決定打になったのは黒龍が俺の技を相殺させる為に放ってきた『鏡反相殺斬』だ。この技を使えるのはこの世で直仁ただ一人だった・・・この意味が解るだろう?」
旧・帝国華撃団も巴里華撃団も口を閉ざし、現華撃団は俯いてしまっている。森川は更に追い打ちをかけるように現実を突きつける。
「直仁が蘇ってきた理由は俺の口から説明してやってもいいが、それ以上に大神からの方が良いだろう」
「森川さん・・・」
「聞かせてやれ、大神。直仁が黒龍として何故、生き返っているかをな」
「・・・・」
大神は意を決して立ち上がると、全華撃団へ視線を向けて話し始める。
「過去の戦いを振り返って考えた結果、直仁くんは『反魂の術』で甦させられた可能性が高い」
「反魂の術!?」
「なんですかそれは?」
「俺も聞いた話でしか無いが、死者を蘇らせる秘術の中の秘術とされているそうだ」
「死者を蘇らせる!?」
「そんな馬鹿な!」
「残念だけど・・・実例はあるんだ。さくらくん、辛いだろうけど話しても構わないかい?」
「はい、構いません・・・」
なぜそこで、さくらが出てくるのだろうか?巴里華撃団と現華撃団は疑問に思う。
「反魂の術で蘇ったのは今回の件も含めて四人いる。一人は黒之巣会の総帥、天海。もう一人は黒鬼会の鬼王であり先程、森川さんが話したさくらくんの父親である真宮寺一馬大佐。その同僚であり、光武などの基本設計を考案した山崎真之介少佐。最後に黒龍、狛江梨直仁くんの四人だ」
「で、ですが・・・その術をどうやって!?」
「反魂の術は本人の身体の一部があれば行えるんだ。それが例え髪の毛一本だけでもね」
「ま、まさか!?」
大神の言葉に反応したのは誠十郎であった。直仁が死んだとされる降魔皇城の一室に激戦の跡があったのを思い出したからだ。
「恐らく、何らかの方法で直仁くんの髪か何かを手に入れたんだろう。そして上級降魔が反魂の術を行い、手駒として使われている」
「・・・っ!」
「エリス!」
耐え切れなくなって飛び出してしまったのは伯林華撃団の隊長であるエリスであった。マルガレーテの引き止めも聞こえていなかった様子だ。
だが、誰も責める事はしなかった。彼女は直仁の恋人でありそれは華撃団の中でも周知の事実。ましてや生き返ってきた恋人が敵の操り人形となって、自分達と敵対しているとなれば耐え切れるものではないだろう。
「エリスさんの気持ち・・・あたしは分かります。あたしはお父様と戦ったから・・・」
「あの時、戦ったのが現実になっちまうとはな・・・それも最悪な形で」
やりきれない思いを抱え、森川は大神に向き直り、その意図を察した大神は頷いた。
「さくら、エリスの所へ行ってやれ。場所は俺が教える」
「え、あたしがですか!?」
「今、この面子の中で一番エリスの心を理解出来るのはお前だろうさ。頼む」
「分かりました・・・」
さくらはエリスが飛び出していった方向へと歩いて行き、森川は大神と話を始めた。
「厄介な事になったな・・・」
「ええ、直仁くんが敵になったのなら尚更・・です」
「・・・・」
旧・帝国華撃団は殺女や鬼王といった経験がある為に、顔見知りと戦う事が出来るだろう。
だが、巴里華撃団、紐育華撃団、そして次世代の華撃団は戦う事が難しいだろう。
特に次世代は大半が直仁に鍛えられていた。つまり、次世代の戦闘技術は直仁に対して全く役に立たないのだ。
「・・・新しく鍛えるしかねえか?」
「それも難しいです・・・直仁くんは俺達の技のほとんどを使えますから」
大神の言うとおり、直仁は新旧華撃団の技の殆どを使う事の出来る人間だった。それが敵になり、妖力を与えられているとしたら。
「・・・・(特典技を教える訳にいかねえしな・・・いや、あれくらいだったら大丈夫か?)」
「森川さん?」
「ああ、すまねえ・・・それとな?敵さん、直仁に厄介な力を持たせていたようだぞ」
「え?」
「悪魔王サタンと鬼王としての力・・それに加えての直仁の実力が上がってやがる」
「!なんだって!?」
「・・・最大最強の敵だな。今のあいつは」
森川は空いていた席に座り、ふぅと息を一つ吐くのであった。
次回、黒龍VSエリス。
サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)
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倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
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上海華撃団 ホワン・ユイ
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新・帝国華撃団の誰か
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風組or月組メンバー