サクラ大戦~もう一つの視点   作:アマゾンズ

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愛していたから貴方が憎い・・・。


貴女(オマエ)が憎いから愛しい・・・。



憎い・・・憎い、でも・・・。

愛しい・・・愛しい・・、でも・・。




そんな貴方が愛しい・・・!

そんな貴女(オマエ)が憎い・・・!


短編IF 次世代へ託す人間の魂 Dark side編 3 愛憎

司令室を飛び出したエリスは中庭で夜空を見上げていた。今宵は満月、太陽の光が反射し月光が優しくエリスを照らしている。

 

「エリスさん・・・?」

 

戦闘服のままのさくらが近づいていくと、エリスは月を見上げているままだった。すると気配に気づいたのか、月を見上げたまま話しかけてきた。

 

「さくらさん・・・」

 

「はい?」

 

「月は掴めませんよね・・・見えるのに遠すぎるから」

 

「・・・そうですね」

 

「・・・っ私は、本音を言うと嬉しかった。直仁が生き返ったと聞いて、それなのに!」

 

エリスは泣いていた。どんな出来事にも動じなかった彼女が初めて、人前で涙を流したのだ。無論、月明かりに照らされたのを反射していたのが見えただけだが。

 

「敵の操り人形になって・・・」

 

「エリスさん、ですが」

 

「私は・・・あれだけ愛していた直仁が憎い。憎くてたまらない!」

 

振り返ったエリスは泣きながら憤怒の形相をさくらに見せていた。それは愛していた相手に裏切られた事によるものだ。そんな彼女をさくらは説得しようとする。

 

「エリスさん、落ち着いてください!」

 

「私は、私は許せないんだ!」

 

「エリスさん!!」

 

「っ!?」

 

さくらに肩を捕まれ、エリスは動揺しながらさくらの顔を見た。その瞳は明らかに怒っているのが見えている。

 

「落ち着いてください。直仁さん・・・黒龍を憎んでも構いません。ですが、そんな貴女を戦わせる訳にもいきません」

 

「何故だ!?私は・・・!」

 

「まだ、分かりませんか?貴女は本心を押し殺して戦おうとしている。確かに必要な事ですが、今度は自分の手で直仁さんを殺めるつもりなのですか!?貴女は!」

 

「っ・・・そうだ!私がやらなければならない!」

 

「!貴方という人は・・・」

 

「少し、宜しいですか?」

 

二人の間に割って入ったのは巴里華撃団の一人である北大路花火であった。さくらと同じように戦闘服姿ではあるが、恐らくは大神か森川に頼まれて来たのだろう。

 

「花火さん?」

 

「お辛いですよね・・・貴女のお気持ち理解できます」

 

「私の何が解ると言うんだ!」

 

「分かります。私も一度は大切な人を失っていますから・・・」

 

「!!」

 

花火の言葉にハッとしたのはさくらだった。そう、花火は結婚式の最中に婚約者を失っていた。それも、幸せになる寸前に、海難事故によって。

 

「死んだはずの大切な人が生き返ってきた。それが親であれ、兄弟であれ、恋人であれ、嬉しいのは当然ですよ」

 

「・・・・」

 

「ですが、既に死んでいる身だとしてもその手にかけてしまえば、貴女は立ち直ることが出来なくなります。絶対に!」

 

「う・・・」

 

「戦うな・・・とは私は言えません。憎むなとも言いません。エリスさん、貴女は本当はどうしたいのです?」

 

「私は・・わた・・しは・・・」

 

さくらと花火の二人からの言葉にエリスは混乱していた。敵に下ってしまった直仁が憎いのは当然。しかし、花火の言葉にエリスは自分は本当はどうしたいのか、自分でもわからなくなってしまった。

 

「わ・・・た・・・」

 

「自分を律する事は確かに素晴らしい事です。ですが、己を偽って戦っても何も掴めません、もう一度聞きます。貴女はどうしたいのですか?」

 

「・・・私は、直仁に戻ってきて欲しい!もう一度一緒に居たい!」

 

「漸く、偽らない自分の言葉を言ってくれましたね」

 

「エリスさん、私たちも協力します。直仁さんを取り戻す事に」

 

「花火さん・・・さくらさん・・・」

 

ああ、なんて自分は愚かだったのだろうか。自分を受け入れてくれた上でこんなにも手を差し伸べてくれる人達が身近にいたのに。愛した人が敵に回ったというだけで感情的になっていた、でも・・・。

 

「それでも・・・私は直仁が憎い・・・憎くて憎くてたまらないんです!」

 

すがるように二人に抱きつくエリス。幾ら動じない精神の持ち主であっても一人の人間だ、弱さや辛さがあって当たり前だ。それを顔や態度に出さないようにしているだけなのだから。

 

「愛憎反転・・・強く愛していたからこそ、その想いが逆転して憎くなってしまっているのですね」

 

「ですが、直仁さんは未だ敵の手中・・・。それに私に対して直仁さんは少なからず憎く思っているでしょうね・・・」

 

 

 

 

さくらはかつて、築地倉庫の事件があり森川と恋人になった日の翌日の事を思い返していた。その日、さくらは彼から直仁が自分を異性として好意を持っていたことを聞かされた。

 

「そ・・そんな、森川さんと直仁さんが大喧嘩したのはあたしの事で・・・?」

 

「アイツは奥手だったからな・・・言い出せなかったんだろう」

 

「!じゃ、じゃあ・・・森川さんが言っていた直仁さんに残酷な現実を教えてしまったというのは!?」

 

「お前が俺を守ろうとして飛び出した時だ。奥手だとしても察するのは早かったからな。おまけにお前の告白の現場を目撃してたとあれば尚更だ」

 

「・・・・っ」

 

話を聞いてさくらは俯いてしまった。良き友人であった直仁が自分に好意を抱いていたなんて、考えた事もなかった。だが、思い当たる節はいくつかあった。お礼を言った時に顔を赤くしていた事、一緒に出かけた時に彼が緊張していた事、鍛錬時に受けた怪我の手当てをした時に顔を見せてくれなかった事、思い起こせばあれは自分に好意があった事を隠していたのだろう。

 

「あたし・・・あたし・・・知らないうちに思わせぶりな事をして、直仁さんを傷つけていたんですね・・・」

 

「さくら?」

 

「憎まれても仕方ないことばかりして、あたし、どんな顔をして直仁さんに会えば・・・」

 

「暫くはギクシャクするかもしれねえが、普段通りで居るしかねえだろう」

 

「森川さん・・・」

 

「アイツからすれば、俺はお前を奪っていった男だ。それに、お前に対しては愛憎反転してるかもしれねえ」

 

「愛憎・・・反転?」

 

「愛憎反転ってのは読んで字の如し、愛していたのが憎くなる事だ。その逆もあるがな、直仁はお前に愛情を持っていた。それが反転して憎しみをぶつけられる事になる」

 

「え・・?」

 

「想っていた分、つまり愛情が大きければ大きい程その分の憎しみは大きい・・・それを肝に銘じておけ」

 

「はい・・・」

 

告白の日から翌日、直仁は気にしていない様子だったが明らかに無理をしていた。森川の言った通り、さくらに対しての接し方に僅かながらぎこちなさがあったのだ。

 

「おはようございます。直仁さん」

 

「おはようございます、さくらさん・・・」

 

挨拶だけでもどこか、一線を引かれている感じが抜けなかった。そう思い返している中で、今のエリスはかつての直仁と全く同じだと考えていた。

 

 

 

 

 

 

「黒龍、お前の魔装機兵を改修した。偵察は抜きで徹底的に叩き潰せとの命令だ」

 

「御意・・・」

 

「・・・術を強めるか?否、ただ強めるだけでは意味はないな。ならば」

 

煉獄が懸念したのは黒龍が直仁としての意識を取り戻してしまう事だ。そこで煉獄は一つの結論に達した。

 

黒龍にはかつて愛した人間がいた。その人間に対す愛こそが人間の力になる。ならばその愛を反転させようと。

 

「黒龍よ・・・」

 

「?ぐあああああああ!!!?」

 

「憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め憎め、恨め、憎め、恨め!」

 

「ぐ・・・おおおおおお!」

 

「これをくれてやる。お前には必要だろう」

 

そう言って煉獄は黒龍の首に白色の勾玉を首にかけた。それはまるで、何かを封じ込めているようだ。

 

「華撃団・・・・一人残らず・・・殺す・・・」

 

「くくく・・・人間の感情とは面白いものだ。一つ傾けるだけで色が変わるのだからな」

 

煉獄はしばらく笑い続けた後、黒龍を送り出した。せいぜい駒になってくれよという視線を向けたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、黒龍は手当たり次第の破壊を行っていた。浅草に現れ、浅草神社を破壊している。魔幻空間を展開せず、まるで目につく物が全て破壊の対象になっているようだ。

 

「そこまでだ!」

 

「「「世界・帝国華撃団!参上!!」」」

 

「華・・撃・・団・・・殺・・す!!」

 

すぐに闇神威を呼び出し、搭乗すると同時に突撃してきた。以前あった冷静さは皆無であり、刀を手に斬りかかってきた。その標的になったのが真宮寺さくらであった。その行動に気づいたさくらは太刀を鞘から抜き、黒龍の唐竹を受け止めた。

 

「!ふっ!」

 

「さくら・・・真宮寺・・・さくら・・・殺す!」

 

「一度死んだ身でも・・・忘れていなかったんですね・・・ごめんなさい、貴方の心を傷だらけにし続けていたのは私です・・・でも、今のあなたに殺される訳にはいかないんです!!」

 

「殺す・・・殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」

 

まるで呪詛のようにただ「殺す」としか言わない黒龍。死ぬ前に染み付いていたさくらへの恋情が反転させられ、憎悪となっているのだ。愛情深く想っていた程、反転した時の憎しみは比例して大きくなる。かつて、森川が言っていた言葉が正に現実となっていた。

 

「黒龍ーーーーッ!!」

 

「!!」

 

叫びながら剣を振り下ろしてきたのは、白色のアイゼンイェーガーだ。銃器を主力とする伯林華撃団としては珍しいもので、さくらとの競り合いから抜け出した闇神威は白色のアイゼンイェーガーと対峙する。

 

「黒龍・・・お前は私が引導を渡してやる!」

 

「殺・・・す!伯林・・・華撃団!」

 

「さくらさん、此処は私が戦います・・・!」

 

「エリスさん・・・大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫とは言えません。ですが・・・これだけは譲れない!」

 

「エリスさん・・」

 

白色のアイゼンイェーガーは黒龍の駆る闇神威へ突撃し、剣戟を始めてしまう。激しく、荒々しくも何処か悲しくなる舞台を見ているかのように。

 

そう、それはまるでオペラ曲の一つ。「ニーベルングの指環」の公演のようだ。裏切られたブリュンヒルド(エリス)がシグルズ(直仁)を殺そうとしているワンシーンそのものであるからだ。

 

「何故、何故何故何故、私の心を裏切ったのですか!!」

 

「殺・・・す・・・エリ・・・ス・・・ぐぐ・・・殺す殺す!」

 

「貴方を殺すのはこの私だ!黒龍・・・!いや、直仁!!」

 

「エリ・・・ス!殺すゥゥ!!」

 

その様子を見ている誠十郎はその場で固まっていた。黒龍こと直仁が異常なまでに暴走している事に疑問を持っていたが答えが出ない。

 

復活した当初は極めて冷静であり、的確な判断と技量を併せ持った相手になっていた。だが、今は殺意のみに凝り固まった人形そのものだ。

 

「こんな・・・こんな姿になった直仁さんを見たくはなかった。ただ狂った直仁さんを」

 

「誠十郎さん・・・」

 

新旧及び世界の華撃団が出撃している中で、誠十郎は今の黒龍の姿が悲しく思えていた。例え敵に回っていたとしても、超えるべき相手であったはずの男が理性を失った獣になっている姿を。そして・・・。

 

「うああああ!!」

 

「がああああ!!!」

 

エリスと黒龍の剣戟は終わらない。しかも、誰も邪魔をするなと言わんばかりに周りの瓦礫が粉々になっていた。

 

初見の目から見れば、凄まじい戦いだろう。だが、二人の仲を知ってしまっている者からすれば悲しい戦いにしか映らない。愛していたから憎い、憎いのに愛している。そんな悲劇とも言える愛憎の戦いだからだ。

 

「直仁ォォォ!!」

 

「ぬぐあああ!?」

 

白色のアイゼンイェーガーの斬撃は闇神威を切り裂き、中から黒龍が転げまわる様にして出てきた。が、黒龍は闇神威から投げ出されたと同時に、頭を抱え尋常ではない様子で苦しみ始めた。

 

「うあああああーーーッ!?」

 

「な、何だ!?」

 

「があああ!・・ううぐあああああああああ!!!」

 

しばらくの間、苦しみ続けると黒龍の面の左目部分が割れてしまった。ゆっくりと顔を上げた黒龍は白色のアイゼンイェーガーへ向かって話しかけた。

 

「エ・・・リス?」

 

「!直・・仁・・直仁っ!!」

 

エリスは思わず白色のアイゼンイェーガーから飛び出し、直仁へと駆け寄っていく。だが、それを見たマルガレーテが声を上げた。

 

「エリス、だめぇ!!」

 

「直仁、正気に戻ってくれたのか!?」

 

「エリス・・・・俺は・・・一体・・?」

 

「いいんだ、直仁・・私は・・貴方が・・」

 

瞬間、直仁の掌に妖気が集まり、直仁を抱きしめていたエリスに撃ち込まれた。瞬間、エリスは何故?と言いたげな表情で座り込む形で倒れる。

 

「あ・・・・何を・・・俺は・・・エリスに・・・?」

 

それを見ていた華撃団全員が突撃し、エリスの救出に向かってくる。直仁は倒れ込んでいるエリスを助けようとしていた時だった。

 

「エリ・・・ス?・・・!!うはぁ!!ぐああああああああ!」

 

『憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、恨め、憎め、殺せ、華撃団を、エリスを殺せェ!』

 

黒龍へと立ち戻り、それと同時に凶刃を振り下ろしたがそれをさくらが止めた。華撃団の中で最上の霊力を持つアイリスが叫んだ。

 

「ちい兄ちゃんから、悪いものを感じる。身に付けている珠を壊して!!」

 

「ふぅ・・・ふぅ・・殺・・・す!」

 

「珠?胸元のあれは・・・白い勾玉!?あれが彼の理性を失わせているの!?」

 

マルガレーテの言葉に全員が黒龍の身に付けた勾玉を狙おうとするが、闇神威に乗り込まれてしまう。

 

「くっ・・・!」

 

「マルガレーテさん、貴女はエリスさんの救出を!他は闇神威を取り囲むんだ!」

 

「「「了解!」」」

 

大神から指揮権を委託されている誠十郎は素早く状況判断をこなし、闇神威と刃を交えた。

 

「逃がさない、絶対にな!」

 

「ぐ・・うああ」

 

「所詮は人形か・・・理性を溶かせば役には立たぬな」

 

「何者だ!?」

 

闇神威の隣に現れた異形のとも言える姿の上級降魔らしき男。華撃団へ礼儀正しく紳士的なポーズで挨拶した。

 

「初めまして、我が名は煉獄・・・降魔皇様にお使えする六道魔の一人」

 

「煉獄だと!?」

 

「黒龍を回収しに来たのだよ。それでは、また会おう」

 

「ま、待て・・・直・・・仁!」

 

「エリス、安静にして!」

 

「我は・・・黒・・・龍・・・直・・仁では・・ない」

 

「お喋りは不要だ」

 

煉獄は印を切ると魔法陣を出現させ、黒龍、闇神威、そして自分自身を沈めさせ撤退していってしまった。

 

「直・・・仁・・直仁ーーーー!!うっ・・・」

 

直仁の名を呼び、エリスは気絶してしまった。黒龍からの妖力の一撃が直撃していたのだから無理はない。

 

「ぐ・・・くそおおおおお!」

 

無限から降りた誠十郎は悔しさのあまり、地面を殴った。戦術的撤退をされた時点でこちらの敗北は明らかだった。

 

黒龍を取り戻せず、協力体制になっている華撃団一名が負傷。これが敗北でなくてなんというのか。破壊され残った浅草神社の鳥居だけが華撃団達を見ていただけであった。




次回は、決着。

サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)

  • 倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
  • 上海華撃団 ホワン・ユイ
  • 新・帝国華撃団の誰か
  • 風組or月組メンバー
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