サクラ大戦~もう一つの視点   作:アマゾンズ

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体験入隊の終了。

士官学校への推薦。


第四話 終了と推薦

体験入隊も、本日で終わりを迎える。最後は花組の皆さんがさよならパーティを開いてくれた。前日にはこれまでの訓練の集大成を見せるテストも行われた。

 

「今日で最後か・・・充実していた一ヶ月だったなぁ」

 

「直仁さん、みんな待っていますよ。さぁ、行きましょう」

 

寝泊まりしていた宿直室の掃除を終えると、楽屋へ案内される。さくらと歩くのもこれが最後だ、考えてみれば帝国華撃団の花形女優と一緒に歩いていること自体が貴重な事なのを忘れていた。ちらりとさくらの横顔を見ると寂しそうな目をしていた。

 

楽屋に到着するとさくら以外の花組のメンバーを含め、米田、大神、あやめ、椿、かすみ、由里までもが来てくれていた。

 

「一ヶ月よく頑張ったね、お疲れ様。君の頑張りは俺も見習うべきものがあったよ。直仁くん」

 

「大神さん・・・」

 

「おめえがこの後、どういう身の振り方をするか知らねえが、いつでも力になるぜ?なんだったら、このまま帝劇で働くか?」

 

「ありがたいですけど、考えさせて下さい。ありがとうございました。米田さん」

 

「貴方には貴方の進むべき道があるわ。此処で得たものはきっと、その道でも何かの力になるから、頑張って・・・!」

 

「あやめさん・・・はい、頑張ります!」

 

それからというもの、新しい旅立ちを祝うという号令の下、さよならパーティーは盛り上がった。花組のメンバーから、また会えるという言葉を受け止めて。直仁は忘れ物はないかと確認した後に荷物の入ったカバンを手にして帝劇の出入り口へと向かった。モギリの服は返そうとしたが、選別だといって米田さんから頂いてしまった。

 

「帝国華撃団・・・か、また来れるといいのにな」

 

「直仁さん」

 

「え?さ、さくらさん。どうしたんですか?」

 

「直仁さん、私の訓練、頑張ってくれてありがとう。これからも、日々の鍛錬、忘れないでくださいね」

 

「はい・・・!それじゃ」

 

直仁は一度、故郷へ帰省するための汽車に乗る為、さくらへ挨拶を済ませると駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「大神、俺とお前からの推薦状が出来たな。あやめくん、確認を頼む」

 

「はい」

 

「しかし、直仁くんを俺と同じ海軍士官学校へ推薦するなんて驚きです」

 

「一番、華撃団と縁が強いのはそこぐらいのもんだからな。それに大神、アイツがおめえの後輩になるんだぜ?おめえという縁が結ばれた事でな」

 

「はあ・・・」

 

直仁が去った後に帝国華撃団の司令官、副司令官、そして花組隊長としての三人が支配人室に集まっていた。

 

この三人が集まっている理由は米田が使っている机の上にあった。それは海軍士官学校への推薦状であった。

 

無論、ただの一般人を推薦した訳ではない。帝国華撃団の仮入隊メンバーである直仁が光武実験機を制圧したという実績を大神本人の証言と記録されていた蒸気通信、映像を出す事で証拠を見せ、推薦状を書いたのだ。

 

当然、直仁自身はそれを知るはずがない。これは彼が帰省してから行われた事だからだ。

 

「ったくおめえは・・・そういえば、話を変えるが、さくらの奴と何を話していたんだ?」

 

「ああ、直仁くんが乗る汽車を教えたんです。彼は俺にだけ話してくれてましたから」

 

「なるほどな・・・へへ」

 

「?」

 

「次回の公演のチケットを渡してくれないかって、さくらが私達に言いに来たのよ」

 

「さくらくんが?」

 

「なんだかんだで、アイツも帝劇の立派な一員になってたってこった」

 

「そうかもしれませんね」

 

大神も笑顔を見せると公演でのモギリに行く為、支配人室を後にした。開演前でかなりの時間があるが会場入りのお客のチケットをモギっていると、一人の女性のお客に話しかけられた。

 

「あら?もう一人のモギリの方は今日はいらっしゃらないのですか?」

 

「ええ、彼は短期のアルバイトでしたので、何か御用が?」

 

「これを・・・彼にお返し、したかったんです。彼の使っていたハンカチと同じ物の新品です」

 

そういって女性はハンカチを大神に手渡した。同じ帝劇の職員ゆえに渡して欲しいという事なのだろう。

 

「何故、これを?」

 

「あの日、私は着物を着ていたんです。草履の花緒が切れてしまい、もう一人のモギリの方が直してくれたのです。自分の持っていたハンカチを引きちぎってまで・・・」

 

それを聞いていかにも彼らしいと心の中で笑みを浮かべた、表情に出す訳にはいかないと考えたうえでだ。

 

「そうでしたか、なら彼に渡しておきます」

 

「お願いしますね」

 

そういってドレスの婦人は劇場の客席へと入っていった。大神は渡されたハンカチを見ながら笑みを浮かべ、ハンカチを仕舞って再びモギリの仕事に戻った。

 

 

 

 

 

直仁は汽車の切符を買い、自分が向かう方向への汽車を待っていた。帝都からは少し離れてしまうが、それでも汽車を使わなければ帰れない距離だ。

 

「そろそろ、汽車が来る時間だな」

 

「直仁さん!よかった、間に合わないかと思っていました」

 

「!さくらさん?どうして此処が?」

 

「大神さんから聞いたんです。この汽車に乗るんだって、あの・・・渡しそびれちゃった物があるんです。はい、これ・・・」

 

さくらが差し出したのは一枚の公演チケットであった。

 

「チケット?」

 

「次回の公演のチケットです。是非、見に来て下さいね!」

 

「ありがとう、さくらさん!」

 

「約束ですよ。『また、会いましょう』ですからね!フフフ」

 

「はい、いつかまた!」

 

直仁は汽車に乗り込むと、さくらに向かって手を振り、姿が見えなくなるまで見送りの感謝を述べた。

 

 

 

 

 

「これが、俺の体験入隊の話。帝国華撃団と帝国歌劇団との関わりの始まりだ」

 

「体験入隊・・・一ヶ月だけとは言え、かなり厳しかったんですね」

 

「ああ、並の特訓なんか物足りなくなるくらいにな」

 

「でも、今は・・・」

 

「今は簡単に男女でも霊力の強い奴らは見つかるからな。体験入隊自体は無くなっちまったよ」

 

「そうなんですね・・・」

 

「なんで残念そうなんだよ・・・」

 

天宮は体験入隊の話を聞いて、自分も誰かを鍛えることが出来るのではと期待したが、現実は非情であった。

 

「支配人、やっぱり支配人が実験機暴走事件を解決した人だったんですね?」

 

「そうだ、あれが俺にとって霊子甲冑を使った・・・正真正銘、初めての実戦だった」

 

とぼけた様子もなく、鋭い目つきをして答える直仁。そんな直仁に対し、誠十郎はもうひとつだけ、気になる事を質問した。

 

「じゃあ・・・その後、サンダーボルト作戦と呼ばれる作戦には?」

 

「そこも突っ込んでくるか・・・。ああ、サンダーボルト作戦は正式に花組に入隊し、初めて受けた任務だ。その任務の目的は魔神器の回収だ」

 

聞きなれない言葉を聞き、二人は同じような顔で疑問符が浮かぶ。特に魔神器という言葉に関してだ。

 

「魔神器?」

 

「なんですか、それ?」

 

「魔神器ってのは、今や失われた古の祭器だ。持つ者の性質に反応して莫大な力を持たせる物だ」

 

「失われた?どうしてです?それがあれば降魔なんて簡単に」

 

「壊したんだよ。大神さん・・・つまり、前の花組司令官であり支配人だった人がな」

 

「どうして!?」

 

魔神器の存在を初めて知って、なぜそれを壊したのかと納得できない様子で詰め寄る誠十郎だったが、直仁はそれを手で制した。

 

「魔神器ってのはな?その名の通り、『魔』と『神』の力、両者の性質を持ってんだよ。その莫大な神の力を発現させるには何が必要だと思う?」

 

「力を使う為に必要なもの・・・もしかして!?」

 

「天宮は感づいたようだな?誠十郎、答えてみろ」

 

「発現者の霊力、つまり命を捧げる・・・事ですね?」

 

「その通りだ。俺も文献でしか知らないが、対降魔部隊の一人である真宮寺さくらさんの御父上である真宮寺一馬大佐が魔神器を使って、第一陣の降魔を封印したって話だ」

 

「そんな・・・・」

 

天宮は魔神器の話を聞いて驚きを隠せなかった。魔神器があれば降魔の脅威から帝都を守れると考えたが、その代償があまりにも大きすぎるからだった。

 

「それに魔神器は『破邪の血統』を継ぐ者でなければ発動できないとも聞いた。さくらさんは自分の命を犠牲にしようとしたが、大神さんがそれを止めて壊したって事だ」

 

「一人の命で大勢が助かるのなら・・・それもやむ得ないって気もしますが」

 

誠十郎の言葉を聞いて直仁は思い切り激怒し、顔を真っ赤にして怒鳴った。

 

「馬鹿野郎が!!確かに戦術面では正しい判断だ!だがな、犠牲の上に成り立った勝利なんてのは敗北も同然だ!!自分を慕ってくれる仲間を助けず命を駒と考えるなら、花組の隊長なんざ辞めちまえ!!」

 

「っ・・・!そんな言い方はないでしょう?」

 

「じゃあ、思い浮かべてみろ。この場に魔神器があるとして・・使えば平和が訪れるが、その代わりに天宮の命を犠牲にしなきゃならない場面をな、考えてみろ!」

 

「う・・・」

 

直仁の言葉は非常に心に突き刺さるものであった。曲がりなりにも自分を慕ってくれている天宮さくらの命を犠牲にしなければならない、そんな事を考えた事もなかったのだから。勝利する為なら善であろうと悪であろうと関係ないという価値観を見事に壊されたのだ。

 

直仁がこのような言葉を口にしたのは、当時の副司令だった藤枝あやめの妹である藤枝かえでの言葉が大きい。彼女は死ぬ事を決して許さず、全員が生きて帰ってくる事を約束させるほどであった。

 

「支配人・・・もう」

 

「ああ。じゃあ・・・なんで俺が死なせるような真似をするなと言った理由はな。サンダーボルト作戦が切っ掛けだったんだ」

 

直仁は二人に対し、かえでと出会ったサンダーボルト作戦に関して話すのだった。




体験入隊編は終了です。

魔神器はサクラ大戦2で壊されているので、言葉だけの存在になっています。

直仁くんが死に関しては過敏になっています。かえでさんの影響もありますが、今の状況によってナーバスになりかけの状態です。

何せ、自分が慕っていた人間すべてがいませんので。

次回はサンダーボルト作戦編です。

サクラ大戦と言えばヒロイン別ルート!※やはりヒロイン別ルートが必須かと思い次のルートは誰が良いかアンケートします(正ヒロインはエリスですが)

  • 倫敦華撃団 副隊長 ランスロット
  • 上海華撃団 ホワン・ユイ
  • 新・帝国華撃団の誰か
  • 風組or月組メンバー
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