直仁が村正を手に入れた経緯、柔(合気道)を修めるきっかけ。
士官学校への入学、卒業。
「サンダー・・・ボルト作戦?何ですかそれは?」
天宮が素直に直仁へと質問する。彼女にとっては幼年期での出来事であり、当時は一般人であったが故に作戦の事などまるで知らないからだろう。
「体験入隊から数えて二年後に、俺が正式に花組の隊員として参加した作戦だ。作戦の目的はさっきも話した魔神器を回収する任務だった。お前ら、ミカサ記念公園は知ってるよな?」
「は、はい。あの公園は今でも戦艦ミカサが見れる場所として有名ですから」
「そうか、俺はな。そのミカサへ内部調査と魔神器の回収を目的として光武で出撃したんだよ」
「え・・・支配人がですか!?」
「そうだ。二人一組、前華撃団の隊員と組んでな」
二人は更に驚きを隠せなかった。体験入隊だけでは正式な作戦には参加できない。それを知っていた誠十郎は直仁に再び質問する。
「ですが支配人。いくら帝国華撃団に体験入隊して、課程を終えたとしても正式な作戦には参加できないはず、その前に何があったのですか?」
「それ、私も気になります!支配人が武術を嗜んでいるのは分かりましたけど、私を助けてくれた時にあの魔法のように相手を投げ返す技や支配人の剣術には柳生新陰流の面影が見えます。どうしてですか!?」
「そこにも気づくたァ・・・やっぱおめえ等は流石、次世代の帝国華撃団の素質が高えぜ・・・!」
頭を掻き、二人の洞察力に関して素直に脱帽する直仁。少し息を吐くと顔を上げて口を開いた。
「良いだろう。体験入隊後に俺に何があったのか、身上話だが少しだけ話してやるよ」
一口茶を飲んだ直仁は茶菓子の団子を用意し、一つを爪楊枝で刺すと口へと放り込んでモグモグと食べ始めた。
「それで、支配人。貴方は体験入隊後にもう一度戻ってきたそうですが、その前は?」
誠十郎は珍しく話の先を聞きたそうにしている。直仁は団子を飲み込むと茶を軽く飲み口を開いた。
「おめえと同じ、海軍士官学校へと入学したよ。高等学校の受験を蹴ってな」
「士官学校に?」
「ああ、後から聞いた話じゃ米田さんと大神さんが推薦状を書いていたらしくてな。陸軍きっての猛将と言われた米田一基、そして海軍士官学校を首席で卒業し、若干20歳で現役海軍の中尉になった大神一郎、この二人の推薦とあっちゃ士官学校も見逃すはずがねえだろ?」
「確かに・・・・」
陸軍の猛将とも呼ばれる人物と、士官学校を首席で卒業し若輩ながらも中尉にまで上り詰めた人材。この二人からの推薦とあればかなりの優秀さが伺えると誰もが思うだろう。
だが、実績があり推薦されたとしても、それが真実なのかは疑わしいと感じるのもどおり。その推薦者から映像記録を持ち出して来た為、信じざるを得なかったと。
◇
体験入隊後、直仁は故郷へ帰った後に剣術を本格的に学ぶため、柳生新陰流の流れを汲む道場を探し出し、そこで厳しい修行を重ねた。その免許皆伝が許され、再び実家に戻ると今度は海軍からの手紙が来ていると両親が大騒ぎになった。
家族会議にも等しい状態で手紙を開封すると、貴殿の帝国海軍士官学校への入学を求むと書かれていた。
両親からは絶対に入学しろと押されたが、高等学校への入学も考えていたために直仁は迷っていた。一日だけ時間が欲しいと両親を説得し、一日だけの猶予を貰い散歩をすることにした。
「散歩とは名ばかりの遠出だけどね。山に行けば何か得られるかも」
そう言いつつ直仁は筑波にある山を目指し、準備を済ませると登山へと向かった。この時代の登山は、ほぼ命懸けに等しい。直仁は無意識にある山へと趣いていた。
「この先に行こう。いや・・・行かなきゃいけない様な気がする」
しばらく歩いていると鉄を叩く音が聴こえてくる。直仁は体験入隊時にアイリスからの訓練受けていた事で霊的な力が強くなっており、無意識に山へと趣き、己の直感を信じて歩いてきた結果、この庵にたどり着いたのだ。
「誰だ?木の傍に人避けの御札を貼っといたはずだが?」
「え?もしかして、この庵の住人の方ですか?」
「ん?オメエさん、この札の効力を受けずに来ちまったのか?まぁ、いい。こっちへ来な、疲れてるみてえだから休ませてやる」
その人間は老齢といってもいい程の人物だ。男性のようで黒髪に白髪が混じってはいるが、その肉体は何かを鍛え上げてきたかのようにしっかりとしている。直仁は庵の中へ入ると中を見渡した。
「(すごい・・・これみんな、刀?此処に住んで、刀を鍛えているのかな?)」
その庵は刀鍛冶の鍛冶場となっているようで、壁に刀身が飾ってあったり、向かい側には打ち損じたらしい刀が所狭しと言えるほど無造作に置かれている。
「ほれ、茶で構わねえか?」
「あ、ありがとうございます。ふう・・・」
刀鍛冶の男性はお茶の入った湯呑みの一つを直仁の前に置き、自分も一息つくと直仁を睨むようにして口を開いた。
「疲れている所、悪いが名を聞かせろ。つい、庵に上げちまったが怪しい奴なら・・・」
鍛え終えていた刀身が男性の隣にあり、今からお前を斬るとも言える殺気が直仁へと叩きつけられた。刀鍛冶は老齢でも一流の剣客でもある事が多い。この男性もその例に漏れず、一流と称される剣客だったのだろう。直仁は一瞬驚きながらも名を口にした。
「狛江梨 直仁・・・と申します」
「そうかい。オメエさん、素直すぎる性格だな?そんなんじゃ剣を本気で扱うことなんざ出来ねえぜ」
「え?」
刀鍛冶の男性は直仁の言葉を聞かずにしゃべり続ける。それは長年の観察眼による洞察だった。
「剣っての使い手の感情が宿る。狛江梨、オメエさんは素直で迷いやすい性格だ、それじゃ刀も迷っちまう。本当にこの使い手で大丈夫か?ってな」
「う・・・」
「だが、人払いの札の効力を受けずに此処へ来たんだ。何かしら理由があんだろ」
直仁が返答に迷いながらも刀鍛冶へ最初に聞きたかったことを口にした。それは大量にある打ち損じた刀についてだった。
「あの・・・えっと、刀鍛冶さん」
「ああ?そういや名乗ってなかったな。俺ァ正兼ってんだ・・・苗字はねえ」
「正兼さん、お聞きしたい事があります」
「なんだ?」
「正兼さんはどうしてこんなに刀を鍛えているんです?打ち損じに見えて綺麗なものもあるのに」
「ああ、俺はな?千子村正の鍛えたとある一刀を超えたくて刀を鍛えてんだ。だが、未だにその境地には至れねえ、縁を切り、定めを切り、業を切る名刀、怨恨を清算、宿業からの解放へと至らせる妖刀とも言えるなァ・・・」
「その刀って一体・・・?」
「明神切村正・・・俺の生涯で唯一、再現し超えてぇと願った刀よ。だが、それは叶わなかった・・・本質は理解出来ても形にし、それを反映させられなかったんだよ俺には。だから逆に考えたのさ、本質を刀に与えてやれば良いってな」
「・・・・」
妖刀村正。それは戦国時代の武家、徳川家に禍を成したとされる刀だ。この正兼という刀鍛冶はそれを再現し、超えたいと言っていた。だが、再現は出来ても超える事は出来なかったと。
「くだらねえ話を聞かせちまったな」
「いえ・・・ん?」
「どうした?」
「あれ・・・・あの刀」
直仁が指差した先には無造作に投げ捨てられている中に、一本の刀が大地に突き刺さっていた。その刀身は美しい銀色ではなく、血を覆い隠すような黒いもので霊力が覚醒している直仁には禍々しくもあり、神々しくも映っていた。
「っ・・・」
直仁は立ち上がると吸い込まれるようにその刀へと向かっていく。それを見た正兼は大声を張り上げていた。
「馬鹿野郎!!そいつに近づくな!!そいつは村正を再現した影打だが、陰と陽をも取り込んじまった。危険な一本だ!まともな人間が扱える代物じゃねえ!!おい、聞いてんのか!?」
直仁の歩みは止まらない。一歩一歩、直仁が近づく度に黒い刀は浄化されていくかのように黒いもやのような物が晴れていく。直仁は柄を掴み、それを引き抜くと陰陽が互いに和合し、黒く輝きながらも銀箔を太陽に当てているような輝きが僅かに出ていた。
「正兼さん・・・この刀」
「・・・・持っていけ」
「え?」
「持っていけ、つったんだ。長年、刀鍛冶をやってきたが陰陽和合なんざ初めて見た。じゃじゃ馬な
「でも・・・」
「刀鍛冶ってのは神に捧げる刀を鍛える事もありゃあ、人に頼まれて鍛える事もある。だが、それ以上にイイもんを見せてもらった。その、礼代わりだ。言っちまえばソイツは影打だからな、持って行ってもなんの影響もねえよ。少し待ってな」
正兼は斧と鉈を手に大きな籠を背負って山奥へと行ってしまった。しばらくして戻ってくるとその手にはかなり太めの木の枝を持っていた。
「それは?」
「俺の見立てだが、樹齢千年はくだらねえ仙人樹の枝だ。しっかり拝んで切らせてもらった」
「それで一体何を作るんです?」
「あ?決まってんだろ、鞘を作るんだよ。
正兼は鞘の制作を勝手に始めてしまった。火による焼き入れ、あらゆる種類の鉋による削り出し、その工程を見ているだけで直仁は自分の中にある迷いが晴れていくように感じた。
刀鍛冶の制作現場は滅多に見られるものではない。今回は鍛える現場ではなかったが鞘を作るのにも魂を込める正兼の姿に迷っている自分が馬鹿らしく思えてきたのだ。
考え事をしているうちに鞘が完成したようで、最後に雲掛けと呼ばれる塗りを施し、基本色は黒とし、その上に赤雲と呼ばれる紋様を筆で書き込んでいく。
「ほら、刀を貸しな」
「はい」
正兼は刀を受け取るとその刀身を静かに収めていった。まるで女孫を嫁に出すような表情で直仁へ鞘に収められた刀を差し出した。
「俺の子供を頼んだぜ?狛江梨」
「はい!」
「選別だ。これも持っていけ」
渡されたのは刀袋だった。山の素材で作られているらしく、土の色が目立つが丈夫さを伺えるものだ。
「ありがとうございます・・・俺、気持ちが吹っ切れました」
「そうかい。これからどうするかしらねえが、戦いに赴くなら刀自身に頼るようなことをするなよ」
「はい!」
◇
下山し、そのまま実家へと帰宅すると同時に両親へ海軍士官学校へ入学する事を決意したと報告した。
両親は直仁の変わりように驚いていたが、海軍に入るという言葉に賛同した。その後、海軍士官学校へ入学すための勉学を必死になって行い、帝劇の推薦も使い入学する事になった。
海軍士官学校へ入学後は正に体験入隊以上の過酷さであった。帝国華撃団の隊員に鍛えられていたとは言えど、軍の訓練は生半可ではない。大神との訓練がなかったらリタイアしていただろう。
直仁は大神に海軍の訓練を叩き込まれていた為、基礎訓練だけは余裕とまで行かないがついて行けるレベルまでにはなっていた。
そして、入学後の訓練で直仁は肩で息をしていたが、膝に手を付くことは禁止されている為に必死になって耐えた。
「はぁ・・・はぁ・・・まだ、終わらないからな」
肉体の訓練、射撃、剣術、柔術、勉学、あらゆる訓練は終わらない。そんな中、柔術の担当教官に呼び出され、その方の師という人物と出会うことになった。
「貴様の柔術は力ではないと見えた。私の師であり、柔(合気道)の達人である植芝盛平(うえしば もりへい)先生にお越し頂いた」
「は、はい!」
「遠慮せずに打ち込んできて良いぞ」
「お願いします!たあああ!」
直仁は体験入隊で学んだ琉球空手霧島流の正拳突きを繰り出すが、直仁は簡単に吹っ飛ばされてしまった。傍から見れば、直仁が老齢の盛平に押されたようにしか見えないだろう。
「ぐはっ!?」
「ほう?空手か・・・しかも、琉球空手を学んでいる者がこの学校に居たとはのう」
地面に叩きつけられたが、カンナとの訓練で受身を学んでいた為に直仁へのダメージは緩和されている。これが受身を覚えていない状態で打ち込んだとしたら間違いなく、大怪我を負っていただろう。
「う・・うう・・・(な、なんだ今の?まるで軽く返されて、投げられたような)」
直仁は立ち上がると、カンナから教わった空手の基本の構えを取り対峙する。自分でも分かっている、この人には絶対に勝てない、それでも一矢報いたいという思いから基本に返り、構えを取ったのだ。
「ふむ・・・立ち上がる、か。良いぞ、いくらでも打ち込んでも」
「っ・・・!いやああああ!」
それから何度も打ち込み続けたが、直仁は簡単に投げ飛ばされ、気づけば自分はボロボロ、初老の盛平は全くの無傷という状態が出来上がっていた。
「が・・・はぁはぁ・・・」
「そこまで!」
「良い資質はあるが、まだまだ未熟じゃのう・・・」
「ぐ・・・ううう」
直仁は痛みの残る身体をおして立ち上がり、その場で正座すると盛平に向かって一礼した。
「どうか、自分を・・・弟子にしてください!」
「貴様!師匠に容易いぞ!」
「はっはっはっ!良い良い。傷を受けてもなお立ち上がる根性、その気概、大いに気に入った!儂はしばらくここに滞在する。その間に鍛えてやろう」
「あ、ありがとう・・・ございます」
「今日はもう、戻りなさい。傷の手当てをしておくように、それと・・・その琉球空手、大事にしておきなさい。ハハハハッ!」
◇
「それが、俺のこの村正・鬼包丁を手に入れた経緯と・・・天宮、お前を助けた時に見せた武術、合気道を学ぶ事になったきっかけだ」
直仁は近くに置いてある鞘に収められたままの村正を二人に見せた後、畳の上に再び置いた。
「合気道・・・そんな武術があったんですね。初めて聞きました」
「だろうな、どうした?誠十郎、口を開けたまま驚いて」
「これが驚かずにいられますか!植芝盛平と言ったら海軍将校を退けた伝説とも言われる武道の達人ですよ!?そんな人を支配人は師事していたんですか!?」
「まぁな・・・俺もそれを知ったのは士官学校を卒業してからだからな。あの時は本気で驚いたんだぞ?」
飄々としているが嘘を吐いている様子はなく、事実なのだろう。迫る勢いだった誠十郎は座り直すとお茶を飲んだ。
「さて、そこから俺は海軍士官学校を卒業し、合気道の師匠の下でも免許皆伝として卒業した。それで帝国華撃団・花組に入隊になったって訳だ」
「そこでサンダーボルト作戦に参加したんですよね!?」
「ああ、だが・・・今でもサンダーボルト作戦から生還できたのは一つ目の奇跡だと思ってるんだよ。俺は」
直仁自身、脇侍などの怪蒸気に慣れているものの、降魔を始めとした地下に眠っている大和や聖魔城などから生きて生還して来ているからこそ生きている実感が嬉しいのだろう。
「そこまで、その作戦は厳しいものだったんですか?」
「ああ、ミカサから始まって海に再び眠った呪われた大地である大和、降魔の拠点となった聖魔城・・・それに俺は魔界にまで行ったからな。正確には魔界の最下層と繋がる扉の前までだが。この作戦はすみれさんも知っているぞ」
「「!!!!!!!?????」」
魔界という言葉に二人は一瞬で驚愕した。あらゆる降魔が生きているとも言われる魔界、そこから生還したと直仁自身は言ったのだから。更にはそのサンダーボルト作戦に陰の支配人である神崎すみれまでもが参加していたと聞いた瞬間、二重の意味で驚きを隠せなくなってしまった。
「魔界へ行くまでに、魔神器に対応したそれぞれの上級降魔とも戦った。前置きは抜きで話してやる。俺が戦った魔界の王・・・サンダーボルト作戦の決戦である魔界王との戦いを、な」
はい、武器を手に入れた経緯と武術を収めた経緯の話でした。
直仁くんは基本的に武器と霊力以外は努力で手に入れています。
次回はサンダーボルト作戦の決戦です。
降魔王は新サクラ大戦で出てくる言葉と全くの別物です。サンダーボルト作戦のネタバレ全開ですが、次回もネタバレのオンパレードです。
※新サクラ大戦、発売されましたね。自分も買いました。PS4が無いので買う予定です。この作品に新サクラ大戦の次世代の他の隊員を出す予定はないのか?と言われると出す予定ではあります。
努力チートになっている直仁くんですが、彼は第一線を退いているので次世代との戦いは基本的に模擬戦や向かってきた相手を迎撃するだけのスタイルになります。
植芝盛平氏は実在の人物で、新サクラ大戦の年代だと50歳の中盤か後半あたりの年齢です。あくまでも師匠ポジなのでこの話の限定です。
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