ガンプラ物の短編集   作:ノイラーテム

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 宇宙を切り裂く光の翼。
誰よりも巧みに操り、羽ばたきすらする。
V2ガンダム・ベースのその機体は、バアルゼブルと呼ばれていた。


ガンダムVZ

「さてと、今日は面白い奴が居るかなっと」

 少年風のアバターが手ごろな戦場を探すと、大規模ミッションが行われている。

 

まだ参加が閉め切られて居ないにも関わらず、大勢が決して居た。

少年はそのスコアを見て、たった一つのフォースが他を圧倒して居ることに目を付けた。

 

「いいねえ。そんじゃオレ達も行こうか……」

「ガンダム・バアルゼブル、ゲットレディ!!」

 機械音声がエントリーを告げて、スタートポイントに機体が転送される。

V2ガンダムをベースにした機体が、光の羽で羽ばたきながら飛んでいく。

 

ただ強い敵を求めて……。

 

 

●光る宇宙(ソラ)

 画面上には幾つもの煌めきが宿る。

その一つ一つがビームであり、あるいは爆発する機体だった。

 

「くそっ! ロンド・ヘルの進軍を止められねえ!!」

「手堅い連中だぜ。ちったあ遊び心ってもんを弁えろよ!」

 その戦場を制して居るのは、ジェガンの集団だった。

 

ロンドベル隊をジェガンだけで摸したフォースで、νガンダムやリガズィ含めてすべてがジェガン・ベースだ。

フィン・ファンネルで構築したI・フィールドを軸に、フォーメーションを崩さずにフラッグへ迫っているようだ。

 

「そろそろ支援砲撃が来るぞ! ここは手を組んで連中を叩くぞ!」

「「おう!」」

 対するはジオン系を中心としたフォースと、一部の小規模フォース。

あるいは個人参加の連中が、四方より実弾を叩き込み始めた。

 

「おかしいねえ」

「どうしたんですか?」

 その渦の中で、ジェガン乗りの一人が唸りを挙げた。

 

モニターで表示されるのは軍服をイメージした黒服で、着ているのは厳つい大女のアバターだ。

質問するのも似た様な男のアバターで、マッチョ姿が軍服を圧迫している。

 

「こっちが隊伍を組んでるのに、連中ときたら三々五々に迫って来やがる。こいつあ何か企んでるよ」

「考え過ぎでは? 臨時で手を組んだ奴らです。ポイント争いで必死なのかと」

 大女は舌打ちしたい気分を抑えられなかった。

 

雪深い彼女の国はこういった遊びが盛んで、だからこそ参加人数が多い。

気心の知れたメンバーも居るが、楽天的な見解を聡明さと誤解している者も多かった。

もちろんこれは遊びである、他の連中こそ彼女の様な考えを、凝り過ぎだとか考え過ぎの寝暗なのだと口にして居るのだろうが。

 

「ここは警戒するよりも足を早めて、フラグを回ってしまった方が……」

「P4!?」

 ドウ!

 膨大な光が言葉を遮ったのは、その時だ。

I・フィールドを貫いて、ジェガンが一撃で吹っ飛ばされる。

 

「この威力、GNランチャーか!?」

「ちぃ。言わんこっちゃない。散開しろ! N1は周辺警戒、R1は防壁を一点集中させな!」

「「了解!」」

 大女の指示でジェガン隊が数機一組で分散して行く。

 

例外なのはリガズィ風に改造された機体N1と、νガンダム風に改造された機体R1だった。

高機動を活かして周辺を探索し、あるいはスクエア状のI・フィールドを盾の様に一枚板に変更する。

 

「隕石群の中に一機、その手前に護衛が居ます! 次弾が……いえ、第三射のチャージも確認中!」

「はあ!? 連射ってどんな改造してんだよっ」

「モビルアーマーでも持ち込んだのか!?」

 EWACを兼ねているのか、暫くしてN1が標的を見付けた。

だがその時には、改めて第二射、第三射が見舞われる。

 

防御集中したことで最初は遮って居たI・フィールドも、少しずつゆらぎ始め……。

加えて電源の問題が心配された。

 

「N1、N2を連れて行きな! その間、他の連中を叩くよ!」

「「了解!」」

 大女は少しも迷わなかった。

N2……スターク・ジェガンがN1と共にブースターを吹かし、隕石目指して加速して行く。

 

●人外魔境

 中央ではジェガン隊の数が減ったこと、そして支援砲撃を中止させまいと牽制して居たフォースも距離を寄せて来た。

砲撃に巻き込まれない様に輪を形成し、ビームを解禁して釣る瓶打ちだ。

 

 そんな中で二条の光が、隕石群を目指して居る。

 

「……来るか。残り二発、せっかくだから撃たせてくれたまえよ」

「任せとけ。てめえは誤射の心配でもしてな」

 隕石の中に隠れていたのは、ヤクト・ドーガの改造機だった。

ガトリング砲の代わりにGNランチャーを持ち、ファンネルは攻撃性能を持たない、交換用の太陽炉そのものである。

 

今も第四射で使い尽くしたファンネルを切り離し、サイコミュ制御で五発目を装填して居る。

 

「戦うなら中の方が楽なんだが……。巻き込む訳にゃいかねえし、外の方が好きなんだよな」

 護衛に付いて居たのはリックドム・ツヴァイだ。

おそらくはシュツルム・ディアスでも摸して居るのだろう。

シュツルム・ブースターと増加装甲を付け、右手にはクレイバーズを持ち、予備としてMMP80の軽マシンガンを左手で直ぐに抜けるようにぶら下げている。

 

プロペラントを過剰消費して、アフターバーナーの様な使い道で急加速を掛けた。

 

「タリホー! お互い高機動だ、愉しませてくれよ!」

「そうはいくか。N1、ここは私が引き受ける。お前はランチャーを潰せ」

「任せる!」

 リックドムⅡとスターク・ジェガンがもつれあう。

 

サーカスの様に踊るミサイルの軌道を先読みして、パラパラとMMPが火を吹いた。

宇宙には無い筈の煙が周辺を覆い隠したのを見ると、専用で作った煙幕弾なのだろう。

 

「スゲー。ミサイルをあんなに簡単に撃ち落とすとか……。しかもソレを予想して煙幕だとぉ」

「そりゃトップエース同士ならあんなもんだろ」

 見てる方にも技術が必要とされる人外魔境。

往年のチャンピオンシップを思い出させる熱いバトルに、既にやられて脱落して居る連中は唸りを挙げた。

バトルテックに憧れて、やがてバーチャロンで暴れ回った世代なのかもしれない。

 

それでも数人居れば意見も出しあえる。

煙の向こうでバズーカから散弾が放射され、対抗する様にクレイバズーカで前面にのみ道を開けただとか、ニュータイプじみた読み合いになっているようだ。

 

だがそれでも、結局最後の形は一つだ。

ビームサーベルとヒートサーベルのチャンバラが始まった。

 

「十手!? いかん、ということは!」

「そうさ。避けられまい!」

 威力の劣るヒートサーベルを選んだのは、ギミックを仕込むサイズの問題だった。

数本の刃がビームの刃を抑え込み、消して再構築したら、そのまま切り込む勢いだ。

 

そしてサーベル同士が絡み合う中、リックドムの胸元に仕込まれたドリルがジェガンを貫く。

スタークジェガンもバルカンで対抗しようとするが、破壊には至らず、追加装甲をめくったのみである。

 

「勝ったが……。護衛は失敗かな」

「そうだね。こっちも生き残ったが、最後の太陽炉をやられたよ」

 どうやらN1がリガズィ風にカスタムする為に使ったパーツは、切り離して衝角(ラム)ミサイルにできたらしい。

それで第五射を強引に止められ、六発目を装填する前に太陽炉を使った弾倉を看破されてしまった。

 

ヤクト・ドーガはそのままN1を倒したようだが、代わりにランチャーも潰され、支援砲撃が出来ないのでは意味があるまい。

同じ様にリックドムⅡの方も、武装を使い果たしてしまった。

 

「とはいえこのまま見てるわけにもいくまいよ。向こうの援護に行くか、それとも此処で戦うかね?」

 砲撃役や護衛役としては装備が噛みあって無いのは、急造のコンビだからだ。

ヤクト・ドーガには同じ仕様の仲間が居て弾薬交換が出来た筈だったし、リックドムⅡの方も似た様な物である。

 

この二機が所属するフォースが殴りあって居た時に、中央でジェガン隊が猛威を振るったのだ。

あのフォースを協力して阻むと言う事もできなくなった以上、自分達だけでも決着を着けようかと提案したのだが……。

 

「サーベルだけで一騎打ちってのも悪かないが……。同じことするなら向こうの方が面白そうだ」

「ほう。向こうもほぼ白兵戦だけか」

 以前としてジェガン隊の猛威は続いていたが、それでも囲んで居る数が多い。

 

それに全員が結託した訳でもなく、中にはジェガンに協力したり、無視してどっちも狩っている連中も居るから当然と言えば当然と言える。

 

「お祭り騒ぎに参加させてもらうか。……で、どっちに付く気なのかね?」

「そりゃ、弱い方に決まってんだろ!」

 戦うなら強い奴が良い。

助けるなら弱い奴が良い。

 

プレイヤーの多くがそうは思っても、実行できない所だ。

だが二人はそういうタイプであり、依存は無かった。

 

●乱戦

 中央の戦場では、次第に数が減って行った。

残っているのは自フォースの勝利条件を果たした者と、とっくに失敗してヤケクソで戦っているバトル・ジャンキーだけだ。

 

「今度はこっちかい! てめえはどっちの味方だ!」

「数で潰すのが嫌いなだけだよ。そういう意味では、あんたらも敵だ!」

 ジェガン隊が囲まれていた時は味方に付いて居たV2ガンダムが、今度は敵に回った。

 

光の翼を自在に振るい、多少の攻撃ならば跳ねのけてしまう。

最後には白兵戦になってしまったのも、この機体の影響かもしれない。

 

「世の中は所詮、数の暴力なんだよ!」

「あんたも強いんだろ? なら部下に囲まれてないで本気を出しなよ!」

 もし自爆覚悟で突っ込まれたら、とっくに勝負は決まっている。

だからこそV2を操るプレイヤーは、笑って大女を挑発した。

 

二本のビームサーベルを振り回し、たった一機でジェガン隊を蹴散らしながら。

それも仕方あるまい、この機体は最初から白兵戦のみで戦い抜く事を考慮されている。

撃ち合いが出来なくなれば、圧倒して居ても仕方あるまい。

 

「悪いね! 数を操った方が強い、性に合う奴も居るんだよ!」

「嘘だね! 最初はそうでも、最後には強い奴が残る! その方が楽しく成って来るのさ!」

 煌めく二本のビームサーベルが、次々に敵を切り裂く。

隙を狙うジェガンを蹴り飛ばし、撃破狙いでは無く激しい戦いをこそ好む。

その様は蝶のようではあるが、優美と言うよりは、荒々しさすら感じられた。

 

ラッシュラッシュ!

そして牽制の弾を光の翼で弾き、戦場を引き裂いた。

 

「K! そいつはV2じゃない、バエルです! バエルの戦闘スタイルだ!」

「惜しい。正確にはGガンも入ってるけどな。つーかクィーンじゃねーのかよ」

「チェスの駒だよ! コールサインってやつさ」

 二本のサーベルだけで高機動。

白兵戦主体で射撃を笑いながら回避し、圧倒的な戦闘力を見せる。

 

確かにその戦いはガンダム・バエルであり、その強さはGガンダムのようであった。

 

「まあ……そんなにクイーンが見たいなら、見せてやるよ! R2、指揮を引き継ぎな(キャスリングだよ)!」

「了解! 御武運を!」

「これはEXAM? いや、NT-Dか!」

 隊長機の装甲が割れて行く。

左右に割れるというよりは、抑えつけていた装甲をパージしているのか。

言われてみるなら、機体強度的にも、変形するより使い切りの封印にした方が楽なのかもしれない。

 

剥離(パージ)する装甲の中より現われるガンダムフェイス。

煌めく光は全てサイコミュではなく、加速と出力を挙げる物だ。

NT-Dの準AI制御はここでいかんなく発揮され、ともすればプレイヤーが制御しそこなう超速機動を何なく制御してみせた。

 

だが……。

 

「手こずらせやがって!」

「はっ! 最適解過ぎん(みえみえなん)だよ!」

 AI制御は諸刃の剣だ。

V2ガンダムは予測軌道の反対側から、回避行動も含めるコースで巨大な光の剣を振るった。

 

反撃を予想して咄嗟に動きをずらした大女だが、その長大なブレードに驚きを隠せなかったのである。

 

「馬鹿な。盾を……光の翼を吸収しただと!?」

「言ったろ。こいつはGガンでもあるってな! ガンプラは自由だ!!」

 V2ガンダムは時おり、ビームシールドをサーベルと合一して居た。

そしてこの攻撃に至っては、フルドライブした光の翼をも統合して居る。

 

その正体はGガンダム系に使われているビーム制御だ。

ビームを闘気の技として制御する技術を使って、制御して居たのである。

 

バエルの戦闘スタイルとGガンの技術。

それこそが、このV2の秘密であった。

 

「御機嫌じゃねえか。混ぜてくれよ!」

「ヒャッハー!!」

「いいぜ。遊ぼうぜ! 残った奴らみんなでお祭り騒ぎだ!」

 双方の消耗も待って駆け付けた、金星狙いを笑って迎撃。

収束させていた光の翼を開放し、回転しながら超弾覇王電影弾を掛け始めた。

 

「「「爆発!!(ぶぁーくはぁつっ)」」」

 その陽気な騒ぎにモニター越しに、コメントが無数に打ち込まれたと言う。

 

この日の戦いは残った機体で一騎打ち(トーナメント)

流石に消耗し尽くしたV2が撃破された所で、お開きに成ったと言う。

 




 唐突にガンプラ物が書きたくなったので、短編を載せてみます。
連載とかはせずに、思い付いた小ネタを時々追加して行く感じになるでしょうか?

●レギュレーション

1:ベース機体は宇宙世紀の機体に限る
(練習用やストーリー・モードなど個人使用は問題無い)

2:ドロップしたパーツは使っても構わない
(太陽炉や阿頼耶識など)

3:ランキング・ポイントはフォース規模で考慮される
(個人や少人数でも、大規模フォースと競えるようにする為)

●登場機体

『ガンダムVZ』
 V2ガンダムをベースにした機体で、愛称はバアルゼブル。
Gガンダム系に使用されている、ビームの射出位置で闘気をコントロールするプログラムを採用して居る。

 ビームシールドを取り込んでビームサーベルを大型化。
更に光の翼を取り込んで、超大型ビームサーベル斬山剣と化す。
だがその本質は、匠に翼を操って羽ばたく事。
原作で見られた攻防一体の戦闘力を再現する事である。

 とはいえ改造可能な場所、スキルなどの都合もあり他の装備が設置できない。
よって白兵戦のみを主体として切り込む、突撃仕様となっている。
参考にしているのはガンダムバエルで、二本のサーベルのみで戦闘する。
(なお兄弟機のバアルゼブブは、ターンXをモチーフにして居るとか)


『ロンド・ヘル』
 ジェガンだけで構成された大規模フォース。
パーツは全て共有可能で、ソレに抵触しない範囲でなら改造も認められて居るとか。
その為、ロンドベルに所属する各機や、チェスの駒をモチーフに役割分担に応じた改造をしているらしい。

・K→Q
 NTーDを仕込み、上に増加装甲と通信機器を付けている。
消耗が激しくコントロールが難しいので、基本的には指揮官機。
変形しないのはパーツ共有の為であり、変形すると構造が脆く成る為。

・N1
 リガズィをモチーフにした高機動機。
とはいえ本体には接続パーツが追加されているだけで、ガワ以外は仲間とパーツ共有出来る。
またガワにEWACやランチャーを取りつけることで、戦闘方法が変わる。

・N2
 スターク・ジェガンを普通のジェガンで再現して居る。
よってこの機体も接続パーツ以外は、仲間と共有可能。
とはいえバズーカの弾などを変更するくらいで、高機動マシーンというのは変わらない。

・R1
 νガンダムをモチーフにした防御系の機体。
フィン・ファンネルで仲間の防御を担当する。

・R2
 指揮官機と偵察機を代行可能なマルチ機体。
通信機とレーダーを追加し、プログラムで連動できる様にしている。

『ヤクトドーガ88』
 太陽炉の交換をサイコミュで行うヘビーガンナー系の機体。
GNランチャーをぶっ放し、白兵・防御系の相棒とファンネルは共有。
相棒はトランザムを連続使用するタイプだったが、早々に倒されたらしい。

『SRD』
 リックドムⅡをベースに、シュツルムブースターや増加装甲を付けている海兵隊仕様。
大盾を持った機体、ナックルシールドで白兵主体の機体の仲間がいたが、こちらも早々に撃破されている。
生き残った機体は様々な武装を使いこなすタイプで、フラッシュビームの代わりに、ドリルを追加して居た。

『モヒカン』
 実はSDで、簡単にやられる外部パーツはオマケ。
やられたフリをして生き残る……ということになっているが、バレバレだったり、あまり強くないので賑やかしである。

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