●ドロップ品と機体改造
赤い閃光と残像を残して敵機が消える。
実際にはただの高速移動で、今までの位置でのカメラでは捉えられないだけだ。
出力向上に伴う膨大なエネルギーで、急加速と急減速。更にはGN粒子によって攻撃力や防御力も向上する。
俗に言うトランザムによって、戦場は危険な水域にあった。
しかし……。
「流石に速い。だが……NPCではな」
いかにトランザムの機動を間違えないNPCでもミスを犯す。
例えばそれ以上の速度で迫る飛来物など想定して居ない。
『馬鹿な。この俺様が……』
普通の機動目標に当てるのも難しいダインスレイヴが、あっさりとNPCサージェスを討ちとった。
NPCのルーチンワークでは、当てられた揚句に装甲を貫通されるなどという、と言う演算が成り立たないのだ。
「埒の外であれば全てが覆されるモノ。ですが、それができるのは、おじさまくらいですわ」
「そう言ってくれるのは有り難いがね。何もかも君達が援護してくれるからだよ。本来のマイスター達にはこれほどの援護はなかった」
言葉は丁寧だが、一周回って頭おかしい。という意味になる。
そう言われたヤクトドーガを操るプレイヤーは、ロックオン・ストラトスも同じことが出来た筈だ……と言う事にした。
00ガンダムの最終ミッションをモデルにした、ストーリーモード。
原作におけるマイスター達のコンディションは、確かに酷いものである。
だからこそ自分の功績では無く、仲間のお陰だと告げたのだ。
「君達なくしてこれほどのペースで太陽炉を狩れなかった。配分の件も含めて感謝しよう」
「当然ですわ! 世が世ならば、わたくし達もマイスターに選ばれた筈。もっとも太陽炉など不要ですけれどね」
傲岸不遜なお嬢様の物言いに、その場に居た者たちは思わず苦笑した。
自分ならば原作主人公達に成り代われるという自信もだが、太陽炉を欲しいと言う人間の前で、『など』と口にする気がしれない。
彼女がソロだったのは、戦い方以前に性格も問題だったのだろうなーと知れた瞬間である。
「まあオレ達もドロップ手伝ってもらうしな。テストもあるから構わねーぜ」
「フラッシュシステムと阿頼耶識だったか。どんな機体に仕上がるのか今から怖いな」
「あら、そんな事はありませんわよ。わたくしのブラウシュ-ペリアの完成は、次のアップデート待ちですもの」
V2とヅダのプレイヤーは、本来ソロで行動して居る。
それがヤクトドーガ二人組のフォースと手を組んだのは、互いが狙うドロップ品が異なるからだ。
ドロップ率はスコアではなく手数や、相手の機体を落としたコンディションも関わるので一時的に手を組んだのである。
疑似太陽炉であればトランザムで焼き切れてしまう為、序盤で倒す方がドロップし易い。
同時にその試行回数が多ければ多いほど……相手が強くて数が多いミッションほど、手に入れ易く成るのである。
「次のアップデート? 寡聞にして良く知らないのだが、そんなに重要な項目があったかね?」
「ふふ。そう思うのも当然ですわ。使いこなせないから、埒の外に置く内容ですもの」
このお嬢様がなかなか憎み切れないのが、頭がおかしいメンバーから自分を外さないことだ。
言外にディスるとしても、その例から自分を除外する事は無い。
……もっとも気が付いて居ないだけで、悪口など言ってはいないつもりなのかもしれない。
「もしかしてパーツの整備性や信頼度ってやつか? 危険なパーツや裏ルートの装備っての」
「それなら見た覚えがあるね。カタログ・スペックだけの装備に成り易い代わりに、コストや性能にバラ付きがでるとか」
「
装備データは完成品なので、カタログ・スペックと実働データは全く同じである。
プラモデルの完成度によって機体耐久度に差は有るが、妨害や破損以外では基本的に能力が変わることが無い。
これに対してアップデートで導引されるデータの中には、幾つかのパターンが存在するらしい。
性能は良いが故障し易い物、コストは易いが直ぐにジャムる銃。
あるいは……使い過ぎると爆発するエンジンである。
「てーことはヅダに土星エンジンを積む気かよ。それ以上速くしてどーすんだ? だいたいトランザムやスーパーモードの方が便利だろうに」
実のところ、瞬間的に速度を上げるだけなら他にも方法がある。
トランザムによる高機動化は、誰でも知っているほどの性能だ。
あまり知られてはいないが、スーパーモードは全ての能力があがるので、使い方次第では強力だ。
特に装備重量に難のあるヅダでは、武装込みでスーパーモードの方が相性が良いと思われた。
「サイコミュ試験型の下半身を使って居るなら尚更、スーパーモードの方が良いと思うがね」
「リスクは完成度の向上で下げるにしても、程度というものがあるものだしね」
ヅダを更なる高機動にするため、彼女のマシンは下半身が大型ブースターになっている。
サイコミュ試験型の下半身を流用して居るのだが、この機体にはビーム砲が設置されているのだ。
元からビームを運用した機体ゆえにエネルギー配分は、妥協できる範囲に収まるだろう。
そしてスーパーモードはビームの方向を収束させたり拡散させて、闘気のように使ったり、出力・移動力を底上げするモノなのである。
「それでは当たり前のことしかできないではありませんの。わたくしが欲しいのは、瞬間的な速さではなく、常在戦場の速さなのですわ。例え危険と引き変えにしてでも!」
「熟語の使い道を少々間違えている気もするが……気持ちは判らなくはない」
ビームとスーパーモードを使うだけなら、最初からサイコミュ試験型で良い。
それこそEX-Sガンダムのパーツでも使えば、良い物ができあがるだろう。
しかしそれでは当たり前の性能であり、当たり前で収まるのは好みではないらしい。
「まーヅダは分解の危険と隣り合わせってのがロマンだしなあ」
「ツダのロマンはむしろ、生命を掛ける決断にこそあると思うがねぇ」
ヅダが原作で見せるオーパーツじみた超性能。
それと引き換えにした、オーバーロードと分解の可能性は語るに尽くせないロマンがある。
ありえない性能にしても、命を掛けて同胞を守ると言う志にしてもロマンには違いあるまい。
「それはそうと貴方の方はどうするつもりですの? 秘密であれば聞かないでおきますけれど」
「別に構わねーぜ? こないだのブーツアタックで閃いただけだしな」
「なるほど。V2はあれで量産予定だったという設定だ。フラッシュ・システムで集団運用というのは悪くない」
その言葉を聞いた少年は心外そうな顔で首を横に振る。
そしてニヤリと笑いながら、悪戯っ子の笑顔を浮かべたのである。
「そんな使い道はしないぜ? だいたいオレは数で攻めんの嫌いだしよ」
「ふむ。ますます興味が募るね。私達でよければ、周回後にテストプレイを務めよう」
心外そうな顔は他のメンバーに移った。
しかし他所のフォースの事は詳しく聞かない物だ。
それに戦う事になれば、否が応でも見ることに成るのだから。
●ガンダム・バアルゼブブ
試作の終わったV2は若干の意匠変更を伴っていた。
黒い塗装への変更もあって……まるでクロスボーンx1がx2に変わったかのようだ。
「さて、新しいV2ガンダムの性能を見せてもらおうか」
「いいぜ来なよ! ガッカリはさせないからさ!」
緑色のヤクトドーガを操るプレイヤーは違和感を覚えた。
ビームの収束率が下がっており、以前に見た盾や翼を巻き込むような動きがないのだ。
これではあくまでキットの能力を、スキルで拡張した程度。
やはりフラッシュシステムを導入したことで、スーパーモードを外しているのかもしれない。
「私も白兵型だから対応は変わらないが……。まさかそのままでは済まないのだろう?」
「当たり前だろ! ここからが本番だぜ」
勝負は三体三。
フラッシュシステムはフォースの予備機を戦力に換算できるというメリットもある。
大規模フォース戦では袋叩きにあるので役に立たない事も多いが、こうやって少人数の戦いではNPC以上の性能を持つ事もあった。
だが今回は相手が悪い。
二機分のトップリム・ボトムリムを四機の戦闘機にしていたが、次々に撃墜されて行くのだ。
「さすがに本体の操縦はマシですけれど、これでは拍子抜けですわ」
「隠している能力を見るまで……。いや、口にするのも無粋か」
「そうさ。このくらいの状況で出せなきゃ、ミッション中でも使いこなせねえからな!」
改装されたヅダの方も、エンジンとシステムを新調したばかりで、本調子ではないのか今までの精彩が無い。
だがそれでもV2ほど停滞は無く、暴れ馬を乗りこなそうと、不規則な加速の手綱を絞って居た。
そして二機の様子を見守って居た赤い方のヤクトドーガも、ここに来て参戦。
範囲の方も強烈なGNランチャーを、味方であるヅダは巻き込まず、平然とV2だけに当てて来たのである。
「相変わらず。スゲーなあ! だが、真骨頂はここからだ。来いよ、アサルト……バスター!!」
「何!? 破壊されたトップとリムが……」
「そうか、フラッシュシステムはこの為か!」
トップパーツとボトムパーツが、それぞれ複数のパーツに別れて飛翔を開始した。
内部に組み込まれたフラッシュシステムと、追加されたアポジモーターでバランスを取りながら移動する。
そして破壊されたV2のパーツと交換され、不規則な装備ながらもアサルトバスターが完成したのだ!
「合体! アサルトバスターってな! バアルゼブルはバアルゼブブのオニーサーン!」
「モチーフはターンXですの!? くっ……この範囲は予定外……」
バアルゼブルを他所者が呼んだ蔑称がバアルゼブブなのだが、この際気にしてはいけない。
あくまでターンXをモデルにしたと言う方が重要なのである。
しかも機体構成は残ったパーツや、戦術に合わせて変更できるらしい。
本来は左肩のビームスプレーポッドや、機体各所のマイクリミサイルポッドを増設。
強烈な弾幕を展開して、ヅダの移動半径全体にバラまいたのである。
「これはいけない。間に合うか……」
「構いませんわ。あちらが隠していた力を見せるならばこちらも見せるまで! アラララLALALA!!」
ヅダは強過ぎる上に、分解しかねない土星エンジンをフルスロットルで起動。
更にパイロットはアバターのドレスに手を掛け、一気に引き裂いたのである!
「目覚めなさい! 阿・頼・耶・識!!」
ビキニのアバターに計器が接続される無駄に凝った画像。
縦ロールの金髪がアップの夜会巻きに変更されるところなど、どうしてそんな所にこだわって居るのか判らない。
だが本人のノリが全てであり、この方が集中できるならば重要な事なのだろう。
阿頼耶識に寄る巧みなコントロールは、機体制御サイコミュ以上の動きを見せる。
これまで跳ね馬の様な動きであったが、実に滑らかな動きで弾幕の間をすり抜けて行った。
弾幕ゲーの世界でも、きっと当り前の様に微笑んで居るに違いあるまい。
「甘いぜ! 超信地旋回!」
「甘いのはそちらですわ! やるなら……既存の装備全てを見直すべきでしたわね!」
たかだがビームシャワーが二倍に成った程度!
回転によって変化するビームの軌道を、巧みにかわしながら避けて行った。
いつものようなスーパーモードでビームがホーミング化しないのであれば、十分ではないが、避けることが出来る!
もちろん全ての直撃を避けられる訳ではない。
だがヅダは次々に装備や装甲をパージしながら、可能な限り被弾率を下げて急速機動。
衝撃の伝達を最低限に落として、V2へ肉薄したのである。
「ちぃ! だがそれじゃあロクな装備が残らねえぜ」
「以前も言いましたわよね。モビルスーツには腕があると!」
そこから先は以前の焼き直しだ。
体当たりが来るのは予想できるし、分離して再構成するのも予想済み。
ならば勝負は土星エンジンが暴走するまでに捉えられるか、それとも先に倒してしまうかの差であった。
「勝利の差は今までの延長か、それとも新規アイデアの差かね?」
「どうだろうね? 彼女も言っていたが、完全な新規アイデアであればまるで変わって居たかもしれないよ」
最終的にヅダが僅差で勝った後、暴走を迎えて危険状態に成る。
だがコレはフォース戦であり、緑のヤクトドーガならば追いつける範囲だ。
アイデアが固まって居ないことで、熟練度の差で決着が付いたのであろう。
もし出力やエネルギーロスを覚悟の上で、スーパーモードも併用して居たら逆転していたかもしれないのだ。
とはいえ互角であり、二人の差は若干であるとも思われた。
と言う訳でプラモの方に別アバターを作ってみました。
今回は感想欄にあったネタを元に、信頼性の怪しいパーツなどを導入。
(コスト制ミッションなどに、直ぐ壊れる裏ルート装備など)
せっかくなのでV2の兄弟機を出してみました。
●追加機体
『ガンダムV2バアルゼブブ』
メソポタミアの神バアルゼブルが、キリスト教徒などにバアルゼブブと蔑称された事を元に、別装備のバリエーションを作成。
実際には兄弟機として、フラッシュシステム対応型のバアルゼブブを作成した。
(いわゆる、蝿の王ベルゼブブのこと)
能力はトップリム・ボトムリムを連れておき、パーツを自在に交換すると言うモノ。
イメージ的にはターンXをフラッシュシステムの制御を使う事で、V2で再現したと言っても良い。
フラッシュシステムでの残機は小規模フォースの事情にもあい、彼には有って居る。
装備を自在に調整できるとか、やられてもやられても立ち上がれると言う意味では彼の性格にもあっていたらしい。
とはいえ装備も組み換えで合体と言う、男の子のロマンを求め過ぎて失敗。
装備の増やし型をもっと意欲的に変更するとか、スーパーモードも同時併用したら勝って居たかもしれない。
(なお、システムを2つ併用すると、他のモノが搭載できなくなるので、躊躇っていたらしい)
『高機動ヅダ・ブラウシューペリアver.2』
高性能な代わりに使い続けると暴走する試作型土星エンジン。
そして阿頼耶識を搭載することで、その制御を完全な物にしている。
機体制御サイコミュと違って時間制限はあるが、速度は変わらないので採用したらしい。
通常時の制御が難しい? そんなモノは慣れれば大丈夫と言う力業である。
かなり無茶な機体設定ではあるが、熟練度をそのまま活かせるので、今回僅差で勝利した。
跳ね馬状態の制御も、そのうち乗りこなして見せると豪語して居る。