ガンプラ物の短編集   作:ノイラーテム

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勝利へのカウントダウン

●ゼダンの門攻略戦

 かつてアバオ・ア・クーと呼ばれた大要塞。

そこに居たのは悪夢の軍団だった。統一された意匠ならぬ装備を付けたファランクスだ。

 

四肢のパーツが規格化されているのはいつもの事だが、今回はもう二つ問題がある。

一つ目はビーム攪乱幕が撃ちまくられ、二つ目は……全機がゼク・アインや陸戦ガンダムをイメージしたコンテナを背負っている事だ。

 

「な、な、な。なんじゃそりゃ!!」

「ふざけんなー!!」

 攻め手側のプレイヤーから怒号と共に、サテライト・キャノンやメガ=バズーカ・ランチャーなどの強烈な攻撃が放たれた。

それもそうだろう。一定時間まで防御側が有利に作られたシナリオなのに、それを助長し、その後の変遷を無力化するような構成になっているのだ。

 

それも気を利かせた一部の連中ならば良い。

だがロンド・ヘルを含めたあの軍団は、配属された殆ど全てがソレを実行している。ただの連合部隊ならば不可能な協議と編成を、身内の利点を活かして平然と実行されては腹も立とう。

 

「しっかしスゲーなあ。言った通りじゃん」

「当たったそのものは大したことねーよ。数の利を活かすにゃ手段が限られる。幾つか考えたが、あの辺が妥当なところだろうさ」

 連中がティターンズ・サイドや連邦中立派を選択するのは簡単に予測できる。

ビーム攪乱幕も自分たちがビーム主体に組み替えたので、懸念事項から考えはした。だが男は敵全員のコンテナ装備までは予想しており流石と言うべきか。

 

「その幾つか考えた案の一つでしかないしな。こっちとしては味方がいきなりブッパすることまでは読めんかったのが残念だ。まあ向こうも対抗したからトントンだが」

 先ほど攪乱幕を突破するサテライト・キャノン等が撃ち込まれた。

直撃すれば相当なダメージになるはずだが、これに対抗する形で内側からも撃たれて威力は大きく減衰している。当りはしたもののそれほど影響は期待できないだろう。

 

「重要なのはそんな事じゃねえ。こっから連中がどう動くかってことだ」

 そこまで行って男は重要なことを説明する。

ここまでの流れは当たっても当たらなくても、それほど意味のない物。あえて言うならば相手の切り札や詳細に対して確信が持てた程度だ。それこそ戦いが進めばどこかで判ったし、複数の予想を立てていたので外れることもあまりない。

 

「連中の装備からして選択肢は二つ。当り障りのない方は、このまま縦深陣を構築して撃ちまくるだけ」

「なるほど当り障りない。では君の予報は違うというのだね?」

 予め打ち込まれたデータMAPは二枚分。

そのうちの一枚は防御は要塞に頼って消耗を抑え、容赦ない攻撃で終始優位に立つというものだ。攪乱幕までは予想していないが、その分防御力は足されるだろう。

 

「まあな。こいつはカン(・・)だから補正でしかねーが。……そんなのつまらねえだろ?」

「ははっ。言えてらあ」

「品の無い言い方をしてもよろしいのでしたら、チキン過ぎますわね」

 有利な条件を最大源に活かすといえば良いが、とても地味な戦いだ。

戦機を自分で作ることもなく、相手が芸なく地味に攻めてくるならば確実に勝てる。攻め手が特殊な作戦を用意するとしても、先ほどのサテライト・キャノンの様に対策チームが居れば対処は早い。

 

だが、それはハッキリ言って面白みもないのだ。

生死を掛け権力奪取が必要な原作とは違う。消極的過ぎると思う者は多いだろう。

 

「それでなくともこのイベントには、アクシズの衝突やグリプス2の八社がある。俺だったら要塞に籠って心中なんて真っ平だね。だから連中は多分こう来ると思うぜ」

「これはまさか……」

「逆包囲って……嘘だろ」

 男の戦術予想は大胆なものだった。

敵陣は交戦序盤でゼダンの門を放棄。一部が足止めしている間に攻め手側を包囲して、内外からの攻撃で殲滅するのだ。

 

「弾薬やら予備兵装を背負ってるなら別に構わねーだろ? それに攪乱幕やI・フィールドなんざ実弾系の敵にはなんの意味もねーからな」

 だが逆包囲を掛ける段階で、ビーム主体のフォースを中心に攻めれば話は別だ。

優位どころか一方的に戦えるし、数さえ減ればその後の包囲戦で圧倒することも難しくない。

 

問題はそんな作戦を徹底できるはずがないという事だが……。

目の前にいる連中は、殆どが同じチームに属しているのである。

 

●罠は嵌って噛み潰せ!

 細かい推移は別にして概ね予報通りに進んだ。

アクシズ衝突まで要塞内に留まっているはずの部隊が直撃前どころか、遥か前に打って出たのだ。

 

「うわあ!? 敵機多数。至急、来援請う!!」

「またビームが効かなくなったぞ! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」

 再び放たれるビーム攪乱幕。

さらにビームコートやI・フィールドを搭載した機体が前衛に立つことで、ビーム主体で戦っていたフォースを蹴散らしていく。

 

「既に敗走中か。これを支えるのは難儀だろうが……それどころか無視して逆行しろとは無茶をいう物だ」

 予報に沿って建てられた作戦は単純なものだ。

相手の策をスルーして状況を固定した後、混乱する味方を肉壁にして有利な位置を占拠。後は相手が想定している流れを逆用して鴨撃ちするというだけだ。

 

「さて。優先目標は……あれか。見つけたぞ」

「了解。指定時間後にGNバズーカを発射する。気を付けてくれたまえ」

 まずは二機のヤクト・ドーガが先行。

高機動型の一機が戦場の中から問題のある機体を選定。それを報告しつつ可能ならば排除する。無理ならGNバズーカで周囲ごと薙ぎ払う構えである。

 

「R2! 敵だ! こっちに向かって来るぞ」

「迎撃します。ファンネル!」

 戦い慣れたロンド・ヘルとの戦闘。

彼らは敵部隊の中でも精鋭であり中核を担っている。今回の優先排除対象はこの部隊に二つ存在した。

 

「さすがに対応が速いな。こちらも切り札を使わざる得ないか。……トランザム!」

 高機動型のヤクト・ドーガは早い段階でトランザムを稼働。

フィン・ファンネルを排除しながら部隊を攪乱する。これで目標の半分を達成、ゆえに狙うのは隊長機のみである。

 

「トランザムの癖に相変わらずの稼働時間だよ。でも、そいつは何時まで保つかね? 残りの太陽炉はあと幾つだい!」

「全て使っても構わんよ。ここで貴様を仕留めれば有利になる!」

 味方陣営を邪魔しない程度に回り込むことで、味方を壁でありカモフラージュに使用した。

高速機動の連続で消耗する太陽炉を、次々に交換して戦場そのものを翻弄。しかし、それは時間制限付きの優位であり、相手がソレに付け込むのは当然のことだ。

 

そして状況の転機が訪れる。

彼方から膨大なエネルギーの奔流が訪れたのだ。

 

「K! 大変です。この反応はGNバズーカかと!」

「こっちの大砲はどうした! さっきみたいに撃ち返しなって言ってやりな!」

「ダメです! 先ほど別の高速機が突っ込んできており、バレルを交換するまで砲撃に対応できないそうです!」

 本来ならば全員で攻撃し、ここでロンド・ヘルを殲滅しきる予定だった。

だが序盤の撃ち合いを見て、カウンター用の砲撃を潰しに数機が飛び込んでいる。

 

「ちっ。そういう事かい! R2! まだいけるか!?」

「数器は残っていますが……。予備を動員するのは間に合いません!」

 一機目のヤクト・ドーガがロンド・ヘルを留めつつ、特にフィン・ファンネルを排除。

そこへ二機目がGNバズーカで薙ぎ払い、部隊を壊乱させることで周囲に居る部隊を押し留める作戦に見えた。

 

このロンド・ヘルは状況に合わせて動ける精鋭だ。

様々な装備を揃えているし、対応してきた数が違うから練度がケタ違い。ゆえにここ停止させる意味は大きかった。

 

「仕方ない! R1、指揮を引き継ぎな! 予備のファンネルはあたしがコントロールするよ!」

「「了解!!」」

 一同が背負っているコンテナの一部から、次々にフィン・ファンネルが飛び出していく。

移動する防壁として設置できるので、嵩張る大きさとはいえ予備を用意していたのだ。それを操るために隊長機は、内部のNT-Dを稼働する。

 

NT-Dのサイコミュ・ジャックならば連携の一手間を省いて直接防御に出れる。

それこそがロンド・ヘルの防御の要だったのだろう。GNバズーカの二射目には間に合わせて、見事に後続の攻撃を防ぎ切った。

 

「戦術予報とはよく言った物だ。面白いくらいに予定通りだ。こちらも帰投する」

「了解した。もう一発放ってから撤退する。ソレに紛れてくれ」

 ここまでの攻防は一進一退だが、全て予定されたものだ。

先んじて対応することで状況を固定し、相手の流れではなく、こちらの流れに持ち込むためのものである。

 

「こちらも帰投しますわ。やはり予報士としては優秀ですのね」

「そいつはどうも。本当なら俺も無事のはずだったのになあ。一足先に観戦させてもらうぜ」

 高機動ヅダが撤退する中、撃破された機体が爆散する。

状況は読んだものの彼の方は精鋭同士の戦闘対応できなかったので、大型砲を潰しに行く過程で倒されてしまったのだ。

 

「それにしても……。対ビームで固め、対サイコミュを用意している相手にビームとサイコミュで攻め入ろうとは、良い度胸ですわ」

 相手の予想を上回るなど早々都合よくできるはずがない。

だからこそ、今回の作戦は相手の想定を変更しない。策そのものはスルーして状況だけは固定。守りの有利さを捨てて攻め手の有利さを取った相手に対し、時間稼ぎで対応している。

 

そしてフォースとしての切り札は……。

相手が『これ以上の防御を用意するのは効率が悪い』という考えを逆用したのだ。

 

「ねえちゃん、準備が出来たってよ!」

「見ているとも。舞台の幕が上がる。いや、終わりの始まりというべきか」

 超高速で駆け抜ける二体。

V2ガンダムをモデルにしたガンダム・バアルが光の翼をはためかせながら先行。その後ろを追いかけてゲー・ドライが侵攻する。

 

たった二機。

二匹の蝶が戦場を蹂躙するのだ。これを笑わずしていつ笑うのだろうか。

 

「光の翼、最大展開! こっから大掃除の始まりだ!」

「マザーファンネル。アイン、ツヴァイ、ドライ。連続解放!」

 ビームで構成された巨大な翼が文字通り掃除を始めた。

最初は何が起きているか判らなかっただろう。なにしろ、ビーム攪乱幕が消耗し、あるいはエネルギー流で流れゆく光景など誰も見たことも探知したこともないからだ。

 

「さぁ。踊れファンネルたち。捧げよ閃光、今宵は破壊の宴なり」

 マザーファンネルより無数のファンネルが射出された。

それらが一斉に砲撃を開始し、光の帯が戦場を覆う。次々と上がる爆破によって、ようやくビーム攪乱幕が消えた事実に気が付いた者もいるはずだ。

 

「ああ。あぁ。それでも立ち向かって来るか。良いだろう。こうでなくてはね。

 弟よ! 聞こえているな!」

「判ってるさねえちゃん。ようやくオレの出番だぜ!」

 ビーム攪乱幕が消えても一撃で致命傷になりはしない。

中にはビームコート処理を行っている機体だっているのだ。精々がライフル・レベルのファンネルなど物ともしまい。

 

もちろん、そこに待ち受ける機体が居なけばという前提が必要なのだが。

 

「あんたら判りやす過ぎだっつーの!」

 バアルは光の翼やビームシールドを、全てビームサーベルに統合した。

スーパーモードによるビームコントロールにより、巨大な闘気の剣と化して立ち塞がる敵を両断する。ここまでの威力があればビームコートなどないも同じである。

 

だが敵も猿モノひっかくモノ。相討ち覚悟で放たれる十字砲火!

シールドも攻撃に回したために、避け切れない弾丸を次々に食らって少なからぬ損害を受けた。

 

「ねえちゃん。アレ行くぜ!」

「任せておけ。各パーツ分離。NT-D起動!」

 ゲー・ドライの増設ブースターや追加火器として接続したパーツを分離。

それらはサイコミュ制御でV2ガンダムのトップやボトムとして利用できるようになっており、いわゆるブーツ・アタックを仕掛けられるようになっている。サイコミュ・ジャックで短縮するのは先ほどのロンド・ヘルと同じ時短技だ。

 

「十二王方牌……」

「大車併ドッキングだ!」

 無数のパーツをぶつけながら、幾つかのパーツを使って補強。

バアルの完全復活とはいかないが、戦闘力そのものを取り戻すことに成功した。重要なのは直撃を食らっても倒されずに戦えるという事だ。これが量産機ならまだしも、エースゆえに意味が大きい!

 

「さっきビーム防御高い奴が先頭だったしな。後は楽勝だぜ!」

「ここで油断するとは未熟。未熟千万! だから貴様は阿保なのだ。奴らは集団戦のプロ。先に私が薙ぎ払っておく」

 ゲー・ドライがサイコミュ・ジャックを疑似的なスーパーモードとして使用。

繊細な位置コントロールこそできないものの、ファンネルによる射撃を束ね、高密度のビーム・シャワーに変えた。ビームコートを有する大型シールドなども残っているが、大火力で吹き飛ばし一気に翻弄していく。

 

それでも残った機体が懸命に戦線を立て直そうとするのだが……。

ビーム攪乱幕やI・フィールドが無くなったことに気が付いた各フォースが、引き返して戦闘に復帰した。

 

例え消耗戦と連携に優れた部隊であろうとも、こうなってはおしまいだ。

乱戦に突入することで秩序は無意味化した。ゼダンの門での戦いをモデルにした大規模ミッションはここに幕を閉じる。

 

「任務完了ですわ」

「いえーい!」

「ふっ……」

 ガッツポーズの代わりに親指を立てて勝利の凱歌を祝う。

所詮は大規模ミッションを有利に戦ったというだけに過ぎない。

しかし、一騎当千の活躍をしたことに満足して戦場を去った。




 という訳で大規模ミッションで引っ張ったネタの終了回です。

今回は戦術予報士がガンプラでの戦いに存在したら?
というのをポイントに置いています。

基本的にゲームですから能力に上限・下限はあります。
それとは別に発想は自由だし、負けても権力・命が奪われたりしない。
その辺を読むことができる人が、ガンプラでの予報士と言う感じですかね?

●システム的な物
『NT-D』
高性能AIおよび、サイコミュ・ジャック。
今回は後者を重要視し、強制だから敵……ではなく、味方の装備を利用。
管理権の以上とかその辺を無視して、一時的に借用としています。
まあ意味あるのはフィン・ファンネルとかくらいですけどね。

『スーパーモード』
 Gガンダムでの闘気はビームとしています。
ビームの位置をコントロールし、好きな位置・タイミングで使用。
そう考えればロボットが闘気を出す理由にもなりますしね。
このストーリーでは絞って威力を向上・幅を広げたりとかに使用。
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