VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達IF  Never Give Up~   作:蒼海空河

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別に更新しているSS『進撃の巨人~飛び立つ翼達~』のIFです。
活動報告で原作に追いついてしまった場合の繋ぎで別のSSのアンケートを取っていますが、それとは別でこちらも更新する予定です。

※年代を771年→773年に修正


全ては闇の中、そして――

『てめえに……全てを………………託したぜアオイ――――――』

 

 最期の力を振り絞りリヴァイ兵士長に言われたのはそんな言葉だった。

 不意の事故で怪我を負った彼はその傷が元で病気を患い、数年前に死去した。

 残された俺達は涙を拭う間もなく巨人の徘徊するウォールローゼ(・・・・・・・)で戦い続けた。

 

 しかし、俺は無力だ……どうしようもなく、無力、だ…………。

 

 運命の歯車というものが全ての人に存在するなら、細工師に頼んで修理を是非頼みたい。

 きっと噛みあっていない歯車が存在するはずだ。

 もぎ取ってでも交換が必要だ。

 全財産を投げうってでも修理したい。

 

 俺は転生かログアウト不能か知らないが進撃の巨人の世界に取り残された。

 

 VRゲーム『進撃の巨人~飛び立つ翼達~』――現代日本では大学生をやっていた俺は嬉々としてサービス開始からゲームをスタートした。

 

 しかし俺を待っていたのは現実と遜色ないリアルな進撃の巨人の世界。

 名前は『アオイ・アルレルト』――原作登場人物の一人、アルミンの義兄としてそこに誕生した。

 右も左も判らぬままだったが、一部残されたステータス等の能力や原作知識を駆使し、奮闘してきた。

 これでも少なくない名も無き人達を救ってきたという自負がある…………あった。

 

 全てが狂い始めたのは850年――――あの2人(・・・・)が裏切りエレンとユミルを連れ去った事から端を発する。

 追撃する調査兵団と憲兵団。

 裏切った彼らを説得することは敵わなかった。

 それでも今まで同じ釜の飯を喰ってきた仲。

 きっと想いは伝わるはずと努力してきた。

 

 だがそこで思わぬ悲報が俺達に伝えられた。

 

 

 ――エルヴィン・スミス、ハンジ・ゾエ、アルミン・アルレルト戦死――

 

 

 聞いた時俺は茫然とした。

 10歳くらい一気に老けこんでしまった思うくらい。

 頭の出来がよろしくない自分にとって彼らは人類反撃の糸口になると思っていた。

 頭脳担当のあの3人の戦死は巨人の謎を解明する機会を永遠に逸してしまうと同義だった。

 

 アルミンの戦死にエレンは激情し、巨人に変身するも鎧の巨人の反撃に遭い、連れ去られた。

 ミカサも命令を無視して彼らを追い――ついぞ帰ってくることはなかった…………。

 

 悲劇の連鎖は止まらない。

 

 突如現れた超大型巨人が再度トロスト区に襲来。

 今まで生き残っていた104期メンバーやハンネスさんを失った。

 調査兵団で生き残った主要人物はリヴァイ兵士長と俺だけ…………。

 

 ウォールシーナに撤退は出来たものの人類に生き残る術はほとんど残っていた。

 食糧を奪い合う市民。

 絶食状態で死んでいく兵士達。

 右往左往して碌に役に立たない指導者達。

 

 それでもリヴァイ兵士長と俺は仲間達の敵を討つため何度も出撃し巨人を屠ってきた。

 100体以降はもう数えていない。

 それほど奴らは強大で途方もない数だった。

 

 部下を庇って片腕を喰われたリヴァイ兵士長はその傷が元となって病死した。

 倒れる数日前までは体調不良を押して、若い兵士達に指導していたのが仇となった……。

 元々怪我した以降はベットに横になることも多かった。

 エルヴィン団長が死んだ辺りからは無茶も多くなっていたし俺がもっとしっかりしていれば……こんなことには……。

 

 壊滅状態の調査兵団で俺はたった50人弱の兵を率いる団長となったが……もう人類が巨人に抗する力は残されていなかった……。

 

 

 

 

 

 

『アオイ・アルレルト』

 性別・男 23歳

 所属兵団『調査兵団第15代団長』

 称号『2代目人類最強』

 

 

 LV121

 

 筋力 :1022

 敏俊性:1302

 器用さ:1101

 頑強 :1705

 体力 :1492

 知性 :840(+420)

 

 運  :50(普通)

 残ポイント(上昇値10)=20P

 

 【天賦】天才  :成長率特大アップ

 【才能】利発  :成長率中アップ&知性20%アップ

 【才能】激情の守護者:1対多数の圧倒的不利な状況で戦闘を行うと10%の確率で全能力中上昇。『誰かを守る為なら、自らの魂を穢し、野獣になっても構わない』。天賦スキル『リミッター解除』を習得するための必須スキルの1つ。4つの才が会得した時、人は人を超える存在となる。

 

 【体質】微再生 :常人より怪我&病気の治りが早い

 【体質】復活  :1日に一度だけ即死ダメージを喰らっても万全の状態で復活できる

 【回避】生存本能:致命傷になる攻撃を反射的に避ける

 【回避】縦横無尽:上下左右の移動速度10%UP

 【探知】夜目  :暗闇でもよく見える

 【探知】気配察知:30m内の気配を敏感に察知。マップ敵表示可能

 【才能】器具の才能:立体機動装置の扱いがうまくなる。また機械にも強くなる

 【叡智】逆転発想:閃き。知性30%アップ。ときおりとんでもないことを思いつく

 【攻撃】投刃  :ブレード系武器を投げつけるとき命中率上昇

 【生活】狩猟  :狩りが巧くなる。狩るとき隠蔽能力上昇

 

 【天賦】リミッター解除:全能力極大上昇

 【天賦】鬼神奮闘:巨人1体を撃破するごとに全能力5%ずつ上昇(24時間有効)

 【才能】一騎当千:1人で巨人と戦闘行為を行うと筋力&敏俊度&頑強が30%上昇

 【才能】高機動戦闘:戦闘時に敏俊度が20%上昇

 【指揮】全体鼓舞:兵士達の心を焚きつける。指揮下の兵士の全能力小上昇

 【指揮】カリスマ:人心掌握が容易になる

 【指揮】名将  :熟練の指揮能力。兵士達の敏俊度が30%上昇

 【指揮】威圧  :絶対的強者の眼光。巨人の動きを僅かに遅くできる

 

 【運命】希望の変革者:運命の女神は変革を認める。『絶望を希望に変えんとする者よ、遍く未来は定まらず』――スキル効果、ミッション報酬変化。決まり切った未来は訪れない、未来は誰にも分からない。通常以上の成果を得られる場合もあれば、報酬を達成しない方がいい結果を生む場合もある。しかし、時には避け得ぬ絶望すら希望へと捻じ曲げることもある能力。 

 【運命】鎖状の奇縁さじょうのきえん:『縁を手繰り、人は繋がっていく』。見知らぬ人と出会いやすくなる。

 【運命】滂沱の決意ぼうだのけつい:ハンネス生存確定以降、取得可能。『1人の男は悲しみ涙を流し決意する、それを見た子供も悲しませたくないと決意する』。効果無し。死の連鎖に捉えられた魂を救うほど、その効果は真価を発揮する。

  

  等々………………。

 

 

 

 

 

 一般的兵士の平均能力が100台なのでその10倍の能力を有しているが所詮単騎。

 俺が活躍しようと戦況が有利になることは無かった。

 

 いやもう生きるとか言っている場合じゃなかった。

 

「俺は……死ぬのか……?」

 

 腹からは血が止めどなく吹き出ていた…………。

 

 

 

 事の始まりは、いつものように壁外遠征で周辺の巨人達を刈っていたある時のこと。

 俺達はウォールシーナとローゼの中間、トロスト区からは北に位置する調査兵団本部に人類反撃の礎を作る為の拠点を作ろうとしていた。

 調査兵団本部の周辺には各所に背の高い林があり防衛上の観点から見ても有益な場所だったからだ。

 しかし、突如現れた巨人達。

 奇行種も数体いた。

 俺は兵士達に撤退を告げる為に信号拳銃で紫の煙弾を打ち上げ殿を務めたのだが、運悪く馬がやられ逃げるに逃げられなくなる。

 部下達が戻ろうとしたが、

 

『振り向くなっっ!! 俺もちゃんと戻ってくるっ!!』

『しかし団長――――』

『俺を信じろっっ――――人類最強を信じるんだっ! 後の指揮は副団長のウォードに任せる!!』

『く……うぅ……! 団長の勝利を信じています!!』

『ああっ!(懐かしいな……エレンがリヴァイ班に言った言葉と同じか……)』

 

 部下達が救援にいけないのは、仕方無い事だった。

 部下と俺の間に巨人達が何体も現れ道をふさいだのだ。

 50名程度では勝つことなど不可能だった。

 

『ホラっ俺を捕まえてみろってんだっ!! 全員ぶっ殺してやる!!』

 

 立体機動で10体余りの巨人を相手にする。

 林が周辺にあったので有利に戦闘を進める。

 

 1体、2体……と数を減らす巨人達。

 

 だが俺は油断していた。

 巨人が10体だけでは無かったのだ。

 

「ぉおぉおぉ――――!!」

「な――ッ!?」

 

 背後からの奇襲。

 気を付けていたはずだった。

 しかし余裕のない戦いは周囲への注意力を緩慢にさせ、不意の一撃を喰らう。

 巨人の小指が俺の顔面を捕らえ、ゴキンと全身に嫌な音が響く。

 だがスキル『復活』が俺にはある。

 1日に1回なら即死から生き返るという化け物スキル。

 瞬時に回復し、反撃し背後の巨人のうなじを削ぎ取り窮地を脱し――――脱したはずだった。

 

 復活時の一瞬のブラックアウト。

 1秒1秒が大切な刹那の時。

 

 目の前に広がる巨人の口。

 

「が、ぁぁぁぁぁ!?」

 

 咄嗟の判断。

 立体機動装置の後部噴出で避けたが浅くない一撃。

 腹に熱した鉛を流し込まれたような錯覚を受けた。

 ぼんやりと意識を手放しかけた――だが。

 

『てめえに……全てを………………託したぜアオイ――――――』

 

 走馬灯か――あの誰よりも気高く強い姿。

 今の俺でも敵わないと断言できる人類最強の漢。

 痛みに飛びかけた意識。

 鉄の味がするほど唇を噛み締め無理やり引き戻す。

 

「死んでたまるか――――リヴァイ兵士長に……頼まれたんだからぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ザシュン――と気づいたら巨人のうなじを切り取っていた。

 

 周囲に敵の姿はもうなかった。

 

「はぁはぁ……はぁ…………糞……血が止まらねえ……一先ず建物の中へ――――」

 

 どくどくと血が腹から流れ続ける。

 ドクドクと心臓が己の生命の危機を警告してくる。

 

 足を引きずりながら俺はボロボロに朽ちた調査兵団本部へ入った。

 玄関から入って調査兵団本部は埃まみれだったが、懐かしかった。

 

 痛みからか、それとも昔を懐かしむ想いからか、視界が不意に滲む。

 玄関の横でオルオさん達と騒いだ事を思い出した。

 内容は初陣でオルオさんとペトラさんが漏らした時の事。

 エルドさんが口火を切る。

 

『いいかげん立ち直れよお前等……。たかが漏らした程度で』 

 

 オルオさんとペトラさんが叫ぶ。

 

『てめえエルドオラァ!! アオイの前で言うんじゃねえ! 先輩の威厳なくなるだろうが!』

『言うんじゃないわよバカアホエルドッ! この前、酒場で女の子口説いていたの彼女にバラすわよ!!!』

『ちょ――ッ!? おま、シャレになんねえからやめてくれッ! あれはだな――――』

『やれやれ』

 

 グンタさんが最後に呆れていた。

 

「懐かしい……な。もう何十年も前のように感じる」

 

 

 

 ある時はエレン達が初めて調査兵団に来た時だ。

 

『すっげーぜ! やっぱ調査兵団だよなぁ~~!』

『ちょっとエレン、目立っちゃってるから騒がないようにしないと!』

『いいだろアルミン。人類の精鋭が集うここにこれたって凄いことじゃないかっ』

『エレンは騒ぎすぎ。私はどうでもいい』

『ミカサは冷静過ぎだろー』

『……頼む……恥ずかしいから騒ぐなって……』

 

 子供みたいにはしゃぐエレンに呆れてたなぁ……。

 鼻水が出る。

 ぐしゃぐしゃになるほど泣いていた。

 胸に残るのは後悔の念ばかり。

 

「う……ぐすっ…………うあぁ……! みんな、みんな死んじまった……! 俺が不甲斐ないせいで……ッ!!!」

 

 両膝をつく。

 自分の意思でしたのではない。

 力が抜けた。

 ドサリと前に倒れ込む。

 腹からジワリと生温かい液体が広がり「おねしょでもしてるみたいだ……」と関係ないことを呟いていた。

 視界が暗くなる。

 

 何故だ……まだ夕方……明るいはずなのに……。

 

「くそ……くそ……くそぉ……ッ。もう、駄目なのか――――人類に勝利は、ないのか……ッ」

 

 無念だった。

 皆を救おうとしてこのザマだ。

 残酷な未来を変えようと東奔西走した俺は神様からみたら、舞台で踊るピエロそのものだろう。

 掌から命という名の砂は零れおちたままだった。

 

 でも……それでも……俺は、皆に生き残って欲しかった…………ッ!

 

「……せめて……もう一度…………みんな、を……助け……チャンス………………――――――」

 

 冷たい体。

 俺は静かに……意識を手放した――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■  ■  ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 暖かい……。

 

 ポカポカと体を光が包みこむ。

 

 トクン……トクンと心臓の鼓動が聞こえる。

 

「はッ!? ……え、傷がない?」

 

 跳びはねるように体を起こす。

 俺は腹を見たが傷などは見受けられない。

 

「夢……? いや確かに俺は死んだと……でもここにいるし――ってかここどこだ?」

 

 周囲は緑に囲まれ、時折、鳥の鳴き声が遠くから聞こえていた。

 先の見通せないほど鬱蒼と茂った草木。

 少なくとも調査兵団本部ではなかった。

 天国とも地獄とも言えない場所。

 それとも案外あの世とは現実と変わらないのだろうか。

 

「いやもしかしたら現実に……日本に帰ってきたとか? ……でも俺の部屋じゃねえし、なあ」

 

 VRゲームでログインしたときは自室だった。

 そのあとは元の世界に戻ることもできなかったので、もしログアウト不能という事態に陥っていたのなら病院に搬送されている可能性はあるが――

 

「どう見ても自然100%、だよな。こんな病院があったら驚くぞ俺は。つーか死んだらまず現代に戻れるんじゃって考える方が普通だよな……よっぽどあの世界に馴染んでいたんだなぁ」

 

 最初はログアウト不能でゲームから出れなくなったのかとも考えていた。

 転生なんて都市伝説どころか、ファンタジー過ぎるし。

 死んだら元に戻れるのかなとも思っていたが、リアル過ぎる現実。痛覚も何故か設定されている状況で死ぬほどの苦痛なんて味わいたくない。

 なんだかんだと生き続けていた。

 

 死んだら周囲は森で誰もいないという不思議現象に遭遇しているわけだが。

 

「装備は――調査兵団の兵服はあるし、立体機動装置もあるな。アイテムボックスは――――」

 

 ポンとメニューからアイテムボックスを開く。

 

 

《アイテム一覧》

 

・肉類×12

・パン×50

・水×15(革水筒)

・立体機動装置×12

・ガス管×106

・火打ち石×5

 

 

 アイテムボックスは10種類のアイテムしか持てないが最大要領は無限に入る。

 よくあるVRゲームと入れたものはそのままの状態でいられる。

 暖かいスープならずっとそのままという訳だ。

 今は6種類入っている状態だから、もう4種類アイテムは入る。

 

「食糧も幾らかあるな……ちゃんと出し入れできるし。使うかは判らないけど兎に角、人を探そう」

 

 ここがあの世か現実か不明だがまず話の通じる相手を探さないといけない。

 太陽の位置からして正午だろうか。

 気温も丁度いいし春か秋ごろか?

 移動手段である馬はいない。当然か。

 

 遭難したときは迂闊に動いてはいけないというガイドブックはあるが、そもそも救助がくると思う方がおかしいだろう。

 倒れた俺を誰かが運んだと考えても不自然過ぎる。

 周囲は森で家も人がいた形跡もない。

 腹の傷や服も元通りだし意味が判らない。

 

 俺は混乱しつつも、とりあえず状況を知るために歩きだした。

 

 念のため立体機動装置の鞘部分からカッターに似た形状の超硬度ブレードを引き抜く。

 

 今更だが説明すると、立体機動装置とは人類の天敵である巨人を殺す為の兵器だ。

 

 両腰に長方形の箱みたいな装置を釣り下げ、ワイヤーを射出することができる。

 ワイヤー2つあり、1つは拳銃のトリガー部分に似た形状のものに繋がっており、2つのトリガーがある。

 もう1つのワイヤーは、そのトリガーを引くと腰の立体機動装置からワイヤーに繋がったアンカーを射出――――壁や木に突き刺すことができる。

 トリガーには2つあることは言ったが、もう1つはアンカーを巻き取る為のモノだ。

 これを駆使すればアンカーをそこかしこに突き刺し3次元的な機動をとることができる。

 アンカーの射出には氷爆石というこの世界特有の鉱石を使っている。

 氷みたいだが火を付けると燃える――これから発生するガスを立体機動装置につなげ射出できるのだ。

 逆を言えばガスが無くなれば、この長方形の立体機動装置は棺桶よりも役に立たなくなる重しとなるのだが……アイテムボックスにガス管を大量に備えているのでしばらくは大丈夫だろう。

 

 そしてブレード――立体機動装置に4対8本まで装備でき、トリガーの先に固定できる。

 巨人の皮膚は非常に硬く高温で、通常の鉄の剣では傷を付けることも敵わない。

 しかも生物の常識を覆すかのような回復力を持ち、頭を吹き飛ばしても生きているほどだ。

 

 弱点はただ1つ――首の後ろのうなじ部分。縦1m横10cmのそこを再生する間もなく、切り取れば殺すことができる。

 

「巨人が居ない事を願うばかりだけど……」

 

 俺はマップ表示をしてみた。

 チート級の能力だが、使えそうで微妙に使えない場合もあったりする。

 ゲームのように周囲の敵味方を知ることができるのだが、その日の体調やスキルの有無で効果範囲(約半径1km)が変動する。

 しかも夜や霧、森林地帯だとハテナマーク(識別不明)やそもそも探知しなくなったりと危険が増す。

 まあそれでもハテナマークはあるのでなにかがいる可能性は一応察知できるが。

 

 スキル『気配察知』はあるので30m圏内なら100%探知できるが巨人相手にそれは短すぎるので頼りたくないなぁ……。

 

 ピコンッ!

 

「ん……これは……500m先にハテナの集団……?」

 

 運がいいのか悪いのか。

 敵味方かは識別できないが、なにかの生き物がいるらしい。

 どうすべきか……。

 

「いや向かってみよう。巨人は基本群れないし、人の可能性が高いはず!」

 

 巨人は人を喰らう。

 人類の天敵と言っているから当然と言えば当然だが、こいつらは数メートルから十数メートルの巨体に反して、知能は人間の半分もない。

 ただ人を喰って吐く(消化器官がないから)だけ。

 他の生き物にも興味を持たない。

 

 頭がすこぶる悪い奴く、喰うだけ。

 通常種ではなく、奇行種ならまた違った行動をする奴もいるが、戦い方を間違えなければまず負けない。

 脱線した。

 

 こいつらは人に近い姿こそしているが群れるとかの行動もできない。

 知性のある巨人が命令を下すと、群れてきたりしてやばいのだが、あいつらがこんなところにいるはずがない――いないことを祈ろう。

 見つかったら全速力で逃げる。

 立体機動ならガスが続く限り、全速力の巨人でも振り切れるくらいの速度は出せる。

 

「よし――いくか!」

 

 カキンッ――バシュン!!

 

 ガスを噴出しアンカーを前方の木に突き刺す。

 もう1つのトリガーで巻き取り俺はサーカス団の空中ブランコ乗りよろしく、森の中を飛翔する。

 

 

 

 

 立体機動で進むと10分も立たないうちにハテナマークの近辺まで来た。

 

 ――はや……ッ!――

 

 ――……逃げろ!――

 

「――おッ声だ! いよし、様子を見ないと――?」

  

 切羽詰まった声の間に知性の無い獣のような咆哮も聞こえてきた。

 

 まさか…………。

 

「ォォォォォォォォォォォォォォ!!」

「くっそぉ!? やめ――やめろォォ!!」

「チィッ! 巨人か!」

 

 相手は3体。

 10m級、7m級、8m級――か。

 馬鹿そうな面でその内の1体が喰い殺そうとしている。

 ベテラン兵か髭の生えたソイツは捕まれ暴れているが強靭な力で抑え込まれ逃げれない。

 通常ならそいつが喰われている内にうなじを削ぎ落すのがベターかつ安全だが……。

 

(俺は全てを助けると誓った!! 誰も見捨ててたまるかぁ!!)

  

 仲間の命を囮に倒すなど言語道断!

 意識を集中する。

 脳内で体のリミッターを解除していく。

 

『リミッター解除』

 

 火事場の馬鹿力――――人間は本来30%程度しか力を使っていない。常時発揮すると己の肉体が自壊してしまうからだ。

 

 それを意図的に外すことができる人間がいる。

 リヴァイ兵士長とミカサ――――そして俺だ。

 何度も解除したおかげで俺の肉体はそれに適応するかのように頑強になった。

 周囲の景色がスローになっていく――――

 

(まず手前の10m級を殺し、捕まっている人を助け後は奥の2体を殺す!)

 

 アンカーは既にうなじをロックオンしている。

 

「――――死ねや馬鹿面ぁぁぁぁ!!」

 

 ザシュン!!

 

「おぉぉ――――?」

「な、なんだぁ――――!」

「鳥…………いや人間が――飛んでいる!?」

「お、おい巨人が――」

 

 ドスンと巨人が両膝を付き倒れ伏す。

 男はなんとか喰われる前に逃げだしたようだ。

 

 後2体。

 丁度一直線にうなじを晒している。

 

 かちゃっと両手を立てとんぼのように広げ、俺は奥の巨人にアンカーを刺す。

 相手はまだ反応できていない。

 全力でガスを噴出。

 最高速度に達し、アンカーを巻き取る。

 回転するためにワイヤーは瞬時に立体機動装置の中に戻った。

 慣性の力で既に俺の体は奴らに飛びかかるには十分な加速は付いているが後部噴出口を吹かしながら全身を回転させた。

 

 ザザシュン!

 

 確かな手ごたえ。

 命を刈り取ったと確信できるほど深くに刃は達し、相手のうなじは宙を飛ぶ。

 2体同時討伐完了。

 

 ガスをうまく吹かしながら俺は地面に下りる。

 

 ドオンと後ろで巨人達が倒れる振動音がした。

 これでもリヴァイ兵士長に次いで人類最強と呼ばれていた。

 この程度なら造作もない。

 

「っと余韻に浸っている場合じゃないな。すいませーん!」

 

 巨人がいるのは判った。

 俺は奇跡的に助かっていたのかは不明だがとりあえずここは壁外には違いないと確信した。

 もたもたしてると新たな巨人が出てくる。

 兵士達と情報の統一を図りすぐ行動しなくては。

 しかしそんな俺の思惑とは裏腹に彼は何故か茫然としたまま巨人を見つめていた。

 

「し、死んでいる……巨人って、死ぬの、か?」

「俺達は夢を見ているのか? もしかして既に巨人に喰われてて」

「いやそれよりこの蒸気はなんだ!? もしかして毒なのか!?」

 

 驚きすぎて呆けてるのか?

 団長としては喝を入れないとな……。

 

「おい呆けてないでしゃんとしろッ! 巨人が殺せるなんて当然だろうが!」

「お、お前は誰なんだ! どうして巨人を殺せる!?」

「はぁ?」

 

 何を寝ぼけてるんだ?

 うなじを切り取れば殺せるのは常識(・・)じゃないか。

 それに俺のことを知らないのか?

 これでも調査兵団団長なのに…………ん、相手の兵服の紋章は自由の翼――つまり調査兵。

 

 まて俺はこいつらを見たことがない。

 たった50人弱しかないあいつらの顔を見間違えるはずがない!

 

 俺は警戒度を一段階上げて相手を詰問することにした。

 よく見ると立体機動装置すら付けていない。

 民間人が調査兵団の兵服を盗んだのか?

 兵士の服を無断着用は即牢獄行きだぞッ!?

 思わず大声を上げる。

 

「お前達は誰だ! 俺は調査兵団団長アオイ・アルレルト!! 見たことの無い顔だが、民間人の兵服の無断着用は重罪だと知らないのか!」

「ば、馬鹿を言うな! お前こそ誰だッ。俺は調査兵団班長ヒースだがお前のような奴を見たことも聞いたこともないぞ! それに調査兵団団長の名前はホルヘだ! 寝言は寝て言え罪人めッ!」

「なッ――!」

 

 どういう事だ……?

 

 ここにいる兵士達数十人は皆警戒するように俺を半包囲している。

 皆真剣な表情で嘘を言っているようには見えない。

 状況が読めない。

 なにか――なにか情報を――?

 

(待て……ヒース……ホルヘだと……?)

 

 記憶の意図が僅かに手繰りよせたのはどこかで聞いた名前。

 

(まさか……いやでも…………試してみるか――)

 

 俺の勘が正しければこれは非常に厄介な事態だ。

 ブレードを納める。

 両手を万歳するように上げ俺は両ひざを付く。

 

「悪い……どうやらお互いに情報の食い違いがあるようだ。とりあえずこちらに害意は無い。拘束しても構わないから話を聞いて貰ってもいいだろうか?」

「――――おい」

「はッ!」

 

 ヒースが視線で施す。

 2人の兵士が俺の後ろに周り両腕を拘束する。

 これでも筋力も常人を凌駕するほどある。

 やろうと思えば拘束を解くことは容易だが、先行きが不透明な以上、数の多い相手に従った方がいい。

 それに剣を持った状態じゃお互い冷静に話すのは難しいだろう。

 鞘に剣を納めないかぎり会話もままならない。

 巨人らしき生物反応も近くにないし情報をすり合わせないと……。

 

「――それで話を聞いて貰ってもいいだろうか?」

「ああ」

「では……ヒース、班長。貴方の奥さんはもしかしてエレナ・マンセルですか?」

「は……? 確かに俺の妻はエレナだが……エレナの知り合いか?」

「いえ、名前だけ聞いた事があるだけです。大層美人だって噂で聞いただけで」

「お、おう! 俺の自慢の妻だ」

 

 俺の中で疑惑が革新に代わりつつあった。

 エレナ・マンセル――ある有名な人物の母親だ。

 ヒースとホルヘという人物にも心あたりがあった。

 

 もういい、一発で判ることを聞こう。

 

「すいません……今って858年ですか?」

「あ? なに言ってるんだ……今は773年(・・・・)だぞ?」

「まじか…………」

 

 思わず天を仰いだ。

 773年……俺は進撃の巨人の原作が始まる約80年前にタイムスリップしてしまったようだ――――

 

 

 

 

 

 




原作を知らない人の為に補足。


エレン……「駆逐してやる!」で有名な原作主人公。母を目の前で食い殺されたショックから巨人討伐に執念を燃やす猪突猛進型。思慮は足りないが、困難な状況でも諦めない不屈の精神力の持ち主。

ミカサ……エレンとアルミンの幼馴染の女の子。巨人殺しの腕は兵100人に匹敵すると称された天才少女。過去に両親を殺されて絶望したときはエレンの尽力で自分を取り戻し以降彼のことはとくに気にかけている。ヤンデレの気があり、エレンに近づく女性や、傷つけようとする存在にはいろいろ削ぎ落とすことも辞さない。

アルミン……原作主人公エレン、幼馴染ミカサ、とならんで主要人物の1人。兵士としての能力は高くないが頭脳面では天才的で数々の窮地を作戦面から支えてきた。

エルヴィン団長……多少の犠牲は覚悟しても作戦を断行する方。非情さもあるが人類の為と最善を求めた結果の行動でもある。失敗を恐れるより、失敗を覚悟しても作戦を敢行できる有能な指揮官。

リヴァイ兵士長……人類最強でみんなの兵長。小柄だが巨人殺しの腕は天下一品。潔癖症。鋭い目つきと相手を突き放すような言動をするが瀕死の部下には励ますような言動をする情に厚い一面も。兵長と呼ばれているが正式には兵士長が正しい階級名である。

ハンジ分隊長……何故か原作では性別不明。巨人の研究になみなみならぬ情熱を燃やしその執念にまわりを振り回すことも。頭の回転が速く、巨人の真実にもっとも近いている人物の1人。

キース教官……アニメ1話では人類をなめるな! と言いながら巨人と戦う姿が描かれていたりする人。「貴様は何者だ!」のセリフは各所(MAD)で使われている模様。エレン達104期メンバーでは訓練教官を務めている。1話では髪があるのに、2年経った3話では禿げていて視聴者のなかには同一人物と気付かない方々もいたりする(作者も最初気づいてなかった)。


小説の3巻をまだ読んでいないので設定ミスがあったら随時修正していきます。

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