VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達IF  Never Give Up~   作:蒼海空河

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職人のプライド

 信じていた……彼らとは判りあえるはずだと。

 信じていた……話しあいの余地はあるものと。

 

 だが全ては俺の独りよがりな妄想だった。

 あいつらはアルミンやエレン、ミカサを奪っていった。

 さらに無理やりトロスト区の大岩を破壊し、多くの同期達の死でもって答えてきた。

 俺がさっさとアイツら殺しておけば――そう何度も後悔して眠れない夜を過ごしてきたことか。

 問答無用でその首筋に刃を叩きつければよかった。

 俺だったら綺麗に削ぐことができるはずだから。

 だからこそ迷わない。

 

 明確な敵ならばやることは1つだけ。

 殺すこと、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の意見は苛烈なものだと自覚はしている。

 この作戦……要は巨人信奉者という膿を無理やり叩きだすという非道なものだからだ。

 邪魔者は消してしまえ……という訳だ。

 ただ純粋に信仰心を持っている人もいるかもしれないのに。

 話せば判ってくれる、救える人もいるかもしれないのに。

 

 でも俺は意見を翻ることはしない。

 敵を見誤った結果がどういうものか…………心が引き裂かれるほど痛い目にあってきた。

 迷う道理などなかった。

 

「…………ぬぅ」

「………………」

「……俺は……」

 

 3人の様子を見る。

 迷っているようだった。

 作戦にはこの3人の協力が絶対必要だ。

 特に作戦の肝である――――

 

「……私は彼の作戦に賛成するわ」

「エレナ!?」

「いいんですか?」

「ええ、シガンシナ区には一杯友達がいるもの。それに愛する人と将来を誓い合った場所でもある。それを巨人とかその信者達に穢されたくないわ!」

「…………エレナがそう言うなら俺も賛成かな? どの道、死んだ人扱いでほいほい出てくるわけにもいかねえし。ちゃんと理由があったって事にしたいしな」

「君たちがそう決めるなら俺が横やりを入れることもない。賛成だ」

「ありがとうございます」

 

 頭を下げながらお礼を言う。

 違う……俺は狙ってやった。

 エレナさんが端を発したシガンシナ区の悲劇をもっともらしく、大袈裟に伝えた。

 エレナ・マンセルという女性は記録には残っていない。

 小説の知識からそういう話をでっちあげた(・・・・・・)だけ。

 エレナさんが決定打だったのは事実だが『愚かな女性』とか『人類の反逆者』なんて記載はない。

 ただ彼女の決心を促す一材料として俺は言っただけだ。

 もしかしたらそういう事を言われているかもしれません、という事。

 

 彼女がヒースさんを愛しすぎてるほど愛していてよかった。

 シガンシナの人々を好きでいてよかった。

 こちらの思惑通りに進んでくれるのだから。

 

(巨人信奉者は逃してはいけない…………敵は消しておかないと……)

 

 あの悲劇はもう、繰り返したくないから。

 俺もう未来に帰ることは出来ない。

 一緒に戦うことは出来ない。

 ならば未来のエレン達に俺が出来ることはただ一つ。

 

 

 

(人類に圧倒的戦力、物資を用意させ、危険を限りなく排除する!)

 

 目標は未来でのウォールマリア陥落を防ぐ。

 ウォールマリア健在ならそれだけ人類の力を増すことは可能だ。

 その為には超大型巨人の襲来もものともしない戦力の拡充がいる。

 俺は暗く、静かに、決意を胸に秘め戦い続けることを誓った。

 

 

 諦め悪い馬鹿な男の物語。

 絶対に諦めない、ただ人類に勝利をもたらす。

 

 

 

 親友達の未来を勝ち取る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコン

 

 作戦を煮詰めている最中にノックの音で中断を余儀なくされた。

 ホルヘ団長が扉越しに対応する。

 

「誰だ」

「職人のアンヘルとゼノフォン様が調査兵団を訪れているのですがどうしましょうか?」

 

(アンヘルにゼノフォン!? 立体機動装置に関わった人達じゃないか!!)

 

「ふむ、発明王と前発明王のあの2人か……要件はなんだ」

「工場都市の案内を任されているソルムの面会なんですが……どうも巨人殺しに関しても知りたがっている様子なんですが、どういたしましょうか? 兵器開発に携わる職人として是非知りたいと言われると無碍に追い返すのも……」

「う~む、タイミングが悪いがアイツらの腕は一流だからな……。下手な対応はシガンシナ区の職人全員を敵に回しかねないが――」

 

 ちらりと俺の方に顔を向ける。

 これはいいチャンスだ。

 これからの計画上、彼らの協力は絶対必要であり逃す手はない。

 俺は頷いて了承の意を示す。

 

「判った。彼らを団長室に来るように言ってくれ」

「了解しました」

 

 兵士の足音が遠くなっていった。

 直に件の2人も来るだろう。

 ホルヘ団長は俺の真意を窺うように見つめる。

 

「いいのか?」

「はい。彼らの協力は是非必要です。俺の事も含めて話そうかと」

「ちなみに何故か聞いてもいいか?」

「勿論です。何故なら彼らは――――」

 

 俺はテーブルの隅に置いてある立体機動装置を見ながら言う。

 

「立体機動装置の製作者ですから」

「……なるほど、発明王と前発明王……技術力なら彼らが作れると考えるのは至極当然、か。それは是非協力して貰わないといけないな」

 

 アンヘル・アールトネンは立体機動装置の基礎部分を製作し氷爆石のガス利用、ワイヤー部等多くの設計に関わる。

 ゼノフォン・ハルキモは超硬質ブレードの元となったブレードを黒金竹で製作した。

 この2人無くして立体機動装置の完成はない。

 俺は彼らがやってくるのを静かに待っていた。

 

 

 

 

 

 まもなく室内に招待されたのは、細身ながらも筋肉が付いているとわかる金髪の男性と、職人というより眼鏡をかけた科学者といった風体の白衣の男――――アンヘルとゼノフォンだった。

 

「未来からなんて、とても信じられないんだが……」

「私としてはどうでもいいことですね。この『立体機動装置』というものは素晴らしい。1つの芸術品といっても過言ではない!」

「いやゼノフォン、疑問に思わないのかよ。未来なんて」

「別に未来から来たことなどどうでもいいのです。物があるのが重要なんですよ。ほら見てみなさい、この光輝く重厚は装置を! ブレードは薄く強度を削った代わりに一振りで両断できる切断力! 細かなギミックを搭載した装置本体! 人間の体重の充分に支えられるワイヤー! これを未来の私達が製作したのですから自分で自分をほめてやりたいくらいですね」

「お前って意外と単純なんだな……」

「柔軟性があるといいなさい。普段は私のことを堅物と言っている割に納得がいかなそうですねぇ」

「マジで柔らかすぎるだろうがお前……」

 

 アンヘルはしかめっ面をしつつ見せられた立体機動装置を調べている。

 ゼノフォンは喜色満面でギミックの数々を賞賛していた。

 彼らに頼みたいのは立体機動装置の早期量産だ。

 幸いアイテムボックスにはまだ装置がある。

 折りを見てサンプルとして渡せば製作は用意のはずだ。

 

「それで、アンヘルさん、ゼノフォンさん。立体機動装置の量産――その製作をお願いできないでしょうか? 少しでも早く立体機動術を兵士達に広めることができれば人類の未来を変えることも可能なのかもしれないんです。お願いします!」

「こんな素晴らしい装置の製作――私は勿論OKですよ」

「ありがとうございますゼノフォンさん!」

「気に……いらないな」

「え?」

 

 ゼノフォンさんは心良く了承したのとは逆にアンヘルさんは険しい表情だった。

 どうしたんだ?

 何かいけなかっただろうか?

 

「それは、どういう……」

「それが判ってない時点でテメエは糞ってんだよ!」

「――ぐ!」

 

 突如アンヘルさんが首根っこを掴んで俺を壁に押し付ける。

 いきなりのことで周囲も一瞬騒然としてしまった。

 

「アンヘルっ!」

「止めるんじゃねえ! …………アオイさんよぉ。確かにアンタの人類の為って大層なお考えは素晴らしいぜ。こんな凄い装置引っさげて量産してくれって必死に頼むのもすげえわ」

「ぐ……だ、だったら、何故……」

 

 ぐいっと強い力で更に押し付けられる。

 

「発明王って呼ばれた俺の気持ちが判るかってんだよ!! 触っただけで判る……この装置は数多くの職人達の汗と血と涙と……魂で出来てるってなぁっ! それをカンニングみてえに作ってくれだぁ? それで俺とゼノフォンはまた発明の天才ってもて囃されるってわけだ。この装置に込められた多くの職人達の想いを無視してっ! ノウノウとさも俺達が考えましたって売りだすわけか、ふざけんじゃねえっっっ!!!」

 

 ガンッ!!

 

 火花が散る。

 殴られたのだと数瞬して判った。

 

「ぐは……ッ!」

「兵士なら効率重視だろうからな、そりゃとにかく強い武器があればいいだろうよ! でも……職人はその1つ1つの武器に命かけてんだよ! 職人の道進んで3年の俺でもそれくらい判んだよ! あんまし舐めてんじゃねえぞ!!」 

「…………」

 

 アンヘルさんは、怒りと哀しみがないまぜになった表情で俺を睨み付けていた。

 

 ……正直に言えば彼の言うことの判る部分もあるが理解できない部分もあった。

 強い武器あった方がいい。ただそう思っての願いだった。

 でも、

 

(そりゃそうだ…………自分が苦労して思考錯誤して製作したからこそそれは輝く。武器でも芸術でも運動でも……なんでもだ。それをいきなり完成型を見せてじゃあこれを作ってくださいってお願いする。……そんなの模造品(コピー)と一緒じゃないか……職人として誇りを持っているアンヘルさんからしたらふざけるなって、言いたくなるのも当然だ…………)

 

 少し策を弄したりして得意げに内心で語った矢先にこれだ。

 本当に馬鹿野郎だ。

 自分の気持ち先行で周囲の気持ちをまったく考えていない。小学生かっての。

 しっかりしろアオイ! 

 ちゃんと考えて行動しろってんだ!

 

 俺は猛省しつつ両膝を付いた。

 

「お、おい……」

 

 自分なりの最大限の謝罪方法なんてこれしか思いつかない。

 誠意を見せるなら態度から……彼らには是非協力して欲しい。

 土下座しながら頼み込む。

 

「……貴方の職人としての誇りを踏みにじってすいませんでした……でもお願いします。立体機動装置を、人類の武器となる兵器を、作ってください。…………未来の親友達を、もう死なせたくないんですッ!! この通り、お願いします!!」

「てめえ……」

「おいアオイ君そこまでしなくても」

「……私が思っていた以上に彼は真摯だった、ってところですかね」

「これじゃ俺が悪者みたいじゃないかってんだ。オラ起きてくれって。怒っちゃいるが別に作らないって言ってるわけじゃないんだからな!」

「……すいません、ありがとうございます」

 

 なんか謝罪とお礼ばっかり言っている気がするが……。

 とりあえずアンヘルさんも収まってくれたようだった。

 バツが悪そうにしながらも俺を正面から見つめる。

 

「とにかく、だ。アンタの態度が若干気にいらなかっただけで、製作する分には問題ねえ」

「それじゃあ――!」

「ああ条件さえ飲んでくれたらな」

「やった――って条件、ですか?」

 

 そこでニヤリと笑う。

 何故が獰猛な肉食獣を連想させた。

 

「1つは立体機動装置の発案者をアンタって事にする。俺とゼノフォンは協力者として名前を連ねるだけだ。この装置を作ったのが未来の俺が、とか関係ない! 俺はこんな棚ボタで成果を得るような職人じゃないからな。ゼノフォンもいいだろう!」

「私としては1つでも成果を得たいところですが、まあ職人としても誇りも判りますしいいですよ」

「もう1つは、未来で完成した装置の知識を洗いざらい吐くことだ!」

「未来の?」

「そうだ! ちょっとしたヒントでも作り上げてやる! アンヘル・アールトネンの名に掛けて全ての発明品を同等――いやそれ以上の性能で完璧に作ってやる! お前の言う未来の技術班なんて目じゃないくらいにな!!」

 

 ビシッ! と指さしてドヤ顔のアンヘルさん。

 俺としても願ったりかなったりだった。

 

「勿論です! 最高の発明品じゃないと困りますよ!」

「ハッ! 当然だ。ジャンジャン作って未来なんて吹き飛ばしてやるからな!」

「吹き飛ばすんじゃなくて変えるって言ってくださいよ」

「同じようなものだろう」

「やれやれ、熱い人達ですねぇ」

 

 こうしてアンヘルさんとゼノフォンさんの協力を得ることは出来た。

 同時に俺の使う立体機動装置は3人の共同で作り上げた試作品という形にした。

 同レベルの品を作るにはまだ材料も設備も足りないが、大概は黒金竹と氷爆石で作り上げることが可能なのに違いはない。

 工場都市に1週間行くそうなのでその機会に色々試作品を作るつもりのようだ。

 ついでに彼らが工場都市に行く道中で襲撃に遭う可能性を伝えておいた。

 あくまで小説の知識なのでどこまで起こりうるかしらないが、警備は増強するとのこと。

 着実に準備は整いつつあった――――

 

 

 

 

 




アンヘルさんが原作以上に熱い人に……(^_^;)

でも最初の彼は結構余裕がある風だけど、いろんな人の死を境に落ち着いたというか、しんみりしていくし、まあアオイ君が死なさせるわけないので、よしとさせてくただけると助かります<(_ _)>
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