Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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難産でした。最近シリアスばっかりだなぁ。
主人公の方だけでも緩い雰囲気を保てる勘違い系作者様は尊敬する。


第十三話

ゼノヴィア達と別れ、駒王学園、というかオカルト研究部に足を運んだ僕達。

その場にはリアスしかおらず、出掛けているのかー、なんて益体もないことを考えていると、リアスがおもむろにこっちに近づいてきた。

 

「零、もう大丈夫なの?」

 

「おかげさまでな」

 

「……祐斗を庇ってくれたんですってね。そのことに関しては感謝してもし足りないわ。けど、それで貴方が死んだら意味無いのよ?」

 

「君の気持ちは理解出来るが、何分無意識のことだったからな。気をつけてどうにかなるとは思えん。それに、別に悪いことをしている訳でもないのだから問題はないだろう?」

 

「大アリよ!!……まったく、貴方って人は」

 

怒ったかと思うと、呆れたりと忙しいな。

心配してくれるのは嬉しいけど、そこまで怒ることはないだろうに。

 

「レイが入部したのはレイの身の安全を強化する為の筈なんだけど、その護るべき対象に護られるなんて、ホント何なのさ。本末転倒も甚だしいッスね」

 

「……それに関しては弁明の余地もないわ。あの日の祐斗は精彩を欠いた状態で、私達もあの状態をどうにかしたいと思っているの。恐らく今頃イッセー達が説得のために行動を起こしている頃でしょうし」

 

「あの優男君が精彩を欠くなんて、よっぽどの事情って奴?」

 

「そう、ね。彼自身のことだから私からはあまり言えないけれど、私の眷属として生きることになった理由が、彼をそうさせているとだけ言わせてもらうわ」

 

……なんて言うか、またシリアスな感じがしそうだ。

まぁ、最初から聞くつもりはないからいいんだけどさ。

リアスの時は自分から話してきたから聞く形になったけど、本来そういうのは御法度だしね。

 

「兎に角、今日はみんなが戻ってくるのをここで待っててもらえる?あの子達も貴方のことを心配していたのだから、顔を見せるぐらいはしないと」

 

リアスの言い分も尤もだったので、オカルト研究部に居座ることにした。

居座ると言っても何もすることがないので、適当に三人で話をするだけだったりするんだけどね。

 

「……何の連絡も来ないわね」

 

「先程の言い方だと、別に木場の捜索を指示をしたわけではないのだろう?だったら途中経過の報告がなくても別段不思議ではないと思うが」

 

「そうかしら……」

 

「心配しすぎるのも彼らを信じていない証拠だ。もし間違いをしたなら叱ればいいだけの話だ」

 

納得したのか、頷いて黙り込むリアス。

リアスが優しいことはもう分かりきっていることだし、彼女の心配の理由も分かる。

とはいえ、やはり気に掛けすぎてもマイナスな印象を与えてしまいかねないので、メリハリが大事。

 

「失礼するわ」

 

ノック音と共に、声の主がオカルト研究部に入ってくる。

現れたのは、は生徒会長の支取と紹介の時にいた第二の黒髪眼鏡(長髪)の女性だった。

 

「あら蒼那、どうしたのかしら」

 

「いえ、彼が学園の敷居を跨いだという情報を聞きつけ、来るならここだろうと当たりを付けて来てみたのだけれど、どうやら間違いではなかったようね」

 

ん、僕のことかい?というか、男は僕しかいないから必然的にそうなるんだろうけど。

 

「それで、私に何か用か?」

 

「……生徒会室での約束を、舌の根の乾かぬうちに破る形になってしまいました。そのことで、謝りたいと思っていたんです」

 

「貴方が気にすることではない。今回ばかりは、私が全面的に悪いのだから」

 

「そうよ、確かに護って欲しいとはお願いしたけど、どうしようもない状況だったのはこっちで把握しているつもりだから」

 

はい、ぐうの音も出ませんね。

だが私は謝らない。というか、媚びへつらいません、反省しません。

 

「蒼那、別に貴方に非があるとは思えないわ。寧ろ、私の眷属の問題で彼を不用意に巻き込む形になったという点では、《王》である私が一番責任を負わなければいけないわ」

 

「だけど……」

 

「私のことを気に掛けてくれるのは有り難いし、感謝もする。だが、リアスにも言ったが今回の件は完全に私の自業自得によるものだ。謝られるよりも、叱られるぐらいが丁度良い」

 

「そういうこと。……でも、今回の件でミッテルトの過剰とも思える心配の理由も、嫌と言うほど理解したわ」

 

僕以外のみんなが、目を瞑ってうんうんとリアスの言葉に頷く。

このアウェー感、なんなんですかねぇ……。いや、理由は分かってるけどさ。

 

「そうだ。零は携帯あるでしょう?貸しなさい」

 

リアスに半ば強制される形で携帯を渡す。

そして自分の携帯とにらめっこする形で、端末を操作していく。

 

「はい、連絡先の交換をしておいたから、何かあったら即電話すること。いいわね?」

 

「あ、なら念のため私も登録しておきましょう」

 

今度は支取に携帯を奪われる。いつの時代も女性は強いです。

 

「そういえば、サジがリアスの眷属――兵藤君でしたっけ。彼と行動を共にしているのを学園内で見たという情報がありましたが、その件で何か知っているかしら?」

 

「いえ、何も。特に行動を共にするほど仲が良かった記憶はないし、一体どうしたのかしらね」

 

「プライベートにまで干渉するつもりはないけど、例の件もあるから少し心配なのよ」

 

支取が何やら気になるワードを口にする。

 

「例の件?」

 

そう問いかけると、リアスと支取は顔を見合わせる。

数秒の間を置き、リアスが口火を切る。

 

「そうね。危険回避という名目でも、知っておいた方が良いでしょう。今、この街に堕天使が来ているわ。エクスカリバーという聖剣を用いて、何かをしようとしている。だから、破壊しなければいけないの」

 

「堕天使……」

 

ミッテルトがぽつりと呟く。

同じ堕天使が、再びこの街で問題を起こしているという事実は、間違いなく彼女を苦しめている。

 

「その事件が、木場の精彩を欠く原因ともなっている、と」

 

「……そうよ。だからどうにかして彼を止めないと、大変なことになってしまう。一応まだ戦力分析出来る程度の理性は残っているようだから、無茶はしていないと思うけど、それも時間の問題だわ。そこは、イッセー達の頑張り次第ね」

 

「サジが兵藤君と共に行動していたのも、リアスの《騎士》の説得に向かったとなれば納得ね。あの子は優しい子だから」

 

サジって誰だろう。上の名前だけじゃワカンネ。

 

「兎に角、朱乃が監視をしているから何か問題が起こりそうであれば、連絡が来る筈――」

 

リアスの言葉は、突如現れた紅の魔法陣によって遮られる。

そこから現れたのは、話題に出たばかりの姫島だった。

 

「あら、零君にミッテルトさん、それに会長までいらしたのですね」

 

相変わらずの調子で姫島は周囲を見渡し、改めてリアスに向き合う。

 

「朱乃、イッセー達はどう?」

 

「イッセー君達はどうやら彼の説得に成功したようです。ですが、それ以降彼のエクソシストと共に何やら行動を起こす可能性が出てきました。恐らく、彼らだけでエクスカリバーの破壊をするのではないかと」

 

姫島の説明を聞くと、リアスと支取は深い溜息を吐く。

 

「もう少し様子を見てから判断しましょう。私達が下手に出張れば堕天使側を刺激しかねないしね。それでもあの子達が馬鹿な真似をするなら――お仕置きが必要ね」

 

蠱惑的に笑うリアスが怖いんですけど。もしかしてリアスって結構S気質?

 

「二人とも、今日はもう帰って良いわ。それと零、貴方は病み上がりなんだから、明日は休みなさい。ミッテルトは、彼が心配なのは分かるけど明日は学園に来るように。学園の生徒となったからには、学生としての本分から外れた行動は厳禁よ」

 

「……分かったわよ。レイ、明日は大人しくしててよね」

 

僕は我慢の出来ない子供か。いや、成人してないから子供だけどさ。

取り敢えずここでいいえを選択して怒らせるのはアレなので、頷いておく。

 

「……やっぱりサボっちゃ駄目?」

 

「駄目。気持ちは痛いぐらい分かるけど、もう一日分欠席してるんだから、ね?」

 

過剰に心配するミッテルトに申し訳なさを感じながら、それからまもなく解散となった。

 

 

 

 

 

そんな感じで次の日。

安静にしろ、と言われたけど安静にしてたから何だ、って言うみんなの優しさを踏みにじる思考をしながら、部屋で待機しています。

そして、何も出来ないのに律儀にログインしている自分も大概か。

 

「お久しぶりですな、お客人」

 

そんな感じで家で一人ぶらぶらと歩き回っていると、ベルベットルームに拉致されたでござる。

いや、暇だったからいいんだけどさ。でも、いきなりあの長鼻の面妖な姿が目の前に現れたらビビるって。

 

「どうやら着実に絆を育んでおられる様子。ですが、その本来の扱い方を未だきちんと理解出来てはいないらしい。無意識の内に行った辺り素質は充分。ですので、ワイルドの本領――絆をひとつに集約し、新たなペルソナとする技術。合体の方法を教えましょう」

 

そうイゴールは言い出すと、抽象的な説明で合体についての説明をしてくれた。

いやだって、具体的にああしろこうしろって口頭での説明だし、教本のような物があるわけでもないから、どうしても感覚的なものになっちゃうんだよ。

でも、歴代ペルソナ主人公だって合体は何の障害なくやり遂げているし、意外と簡単なものなのかな。

……というか、このタイミングでイゴールの説明が入るって事は、つまりそういうことだったり?

 

「イゴール。この部屋は貴方一人だけしかいないのか?」

 

説明が終わった辺りで、前から疑問に思っていたことを聞く。

 

「はい。ベルベットルームの住人は他にもいるのですが、各々が別のお客人との対応に出ておりまして、僭越ながら私め一人でお客人の相手をしている次第でございます」

 

あー、それってもしかしなくても歴代の主人公達?随分細かく設定作ってるんだなぁ。

 

「そうです。もしお客人の方で私の仕事を手伝ってくれる伝手がございましたら、勧誘して見てはもらえないでしょうか。何、ずっと拘束するという訳でもありませんし、条件を呑んでくれればその方にも相応の報酬を支払うことを約束しましょう」

 

ポン、と手を叩きイゴールがそんな提案をしてくる。

そんなこと言われても、ねぇ。

 

「報酬に関しては、具体的にはどの程度の融通が利くのだ?」

 

「余程の事象変化でも無い限り、大抵のことは」

 

「そもそもその相手はどうやってここに連れてくればいい?」

 

「その者の手を取って、この部屋のイメージを頭に浮かべれば大丈夫です。さすれば、その者も正式な客人としてこの場に通すことが出来ます」

 

案外簡単なんだね、ここに来るのって。

僕は今のところ強制拉致でしかここに来られてないから、逆に拍子抜けだ。

というか、原作と違って一定の場所にベルベットルームに通じる扉があるとか、そういうタイプじゃないんだもん。勝手が分からなくて当然だ。

 

「まぁ、考えておこう」

 

「期待して待っておりますよ」

 

イゴールの胡散臭い笑いと共に、ベルベッドルームからはじき出される。

瞬きした瞬間には元の場所に戻ってるんだから、面白いよね。

実は網膜に焼き付いてる映像を見ているだけとかだったりして。……有り得そう。

 

ともあれ、合体のやり方については理解した。

後はそれを実践するだけなんだけど……流石にここじゃあマズイよね。

だけど、外に出るなって言われてるし……。

いや、買い物に出掛けるぐらいならセーフだよね。

その段階で何が起きても、不慮の事故で済むよね?仕方ないよね?俺は悪くねぇ!!

 

「よし、行こう」

 

ごめんなさい。許してくれなんて言わない。

でも、ミッテルトはともかく、リアスとかは欲望に生きる悪魔なんだから僕の気持ち分かるよね?だから怒らないでね?

などと誰にも届くことのない下らない脳内謝罪で免罪符を得た気になりながら、颯爽と家を出る。

取り敢えず適当な人気のなさそうな場所で、ペルソナの確認をば。

そう思って知らない道をすいすいと歩いていくと――

 

「紫藤……?」

 

人気のない道端で、ボロボロになった戦闘装束と思わしき衣装を着たイリナが倒れていた。

思わず駆け寄り、イリナの上半身を起き上がらせる。

 

「おい、しっかりしろ」

 

軽く揺すってみるも、起きる気配はない。

というか、ボロボロ具合が結構ギリギリなんだけど。バイサー以来の危機感を煽る光景だよ。

 

「ん~?お~やおやおやおや。クソ悪魔を釣る餌にそのビッチを放置したってのに、釣れたのは雑魚ってのはいただけないですねぇ~」

 

何とも独特なイントネーションの語りと共に現れたのは、白髪の青年。あれ、どっかで見たことあるような……。

 

「っと、よく見たらあの時俺様が誤って斬っちゃった凡人君じゃないですか~!何で生きてるの?あの時庇った悪魔に助けられちゃった系?あ~それは駄目ですねぇ。それは最早悪魔に魂を売ったも同然。よって、俺様の狩りの対象けって~い!」

 

ハイテンション極まりなくおしゃべりを続ける残念なイケメン。

そういう設定のキャラなのか、ロールプレイなのか、判断に困る。

どっちにせよ、僕の敵であることには変わりはなさそうなんだけどさ。

 

「折角だし、そこのビッチから奪ったこの擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の試し切りでもしちゃいましょうかねぇ~?」

 

残念なイケメンが持つエクスカリバーは、まるで意思を持ったかのように不規則に形を変えている。どうやらやる気のようだ。

ミミックって言うと宝箱が真っ先に思い出されるけど、実際は語源である擬態を指しているのだろう。

こっちこそ折角だから、新しいペルソナの実験台になってもらおうかな。

 

「……?オイオイ、まさか《神器》持ちかよ。でも、どんな《神器》でも使わせる前にやっちまえばいい話だよねぇ~!!」

 

残念なイケメンが僕へと肉薄してくる。

だが、遅い。ただでさえ距離が空いているのに、こっちは発動まで一工程しか挟まないのだ。

 

「――ペルソナ!!」

 

タロットを握り潰し、叫ぶ。

僕の前に立ちふさがるように現れるは、《破壊者》または《滅ぼす者》と呼ばれる堕天使。七つの災厄の五番目に該当するイナゴの王。

巨大な緑色の顔に前足が生えたような歪な体躯に、それに相応しい大口を開けている。

 

「……おいおい、何だよこの化け物はぁ!」

 

「アバドン、アギダイン!」

 

人間一人を軽く覆える大きさの炎が残念なイケメンへと迫る。

 

「あっっっっづううううううう!!こんのぉ、調子に乗ってんじゃねーぞぉ!」

 

残念なイケメンは身体を地面に擦りつける形で炎から逃れ、怒り心頭な様子でアバドンに向けてエクスカリバーを振るう。

しかし、エクスカリバーはアバドンの身体に沈み込み、逆に呑み込んでいく。

物理無効のスキル。聖剣なんて言うから破魔属性かと思ったけど、どうやらそうじゃないらしい。

 

「チェンジ、オロバス」

 

消滅したアバドンの身体に呑み込まれていたエクスカリバーが、僕の足下に向けて転がり落ちる。

それを拾い、残念なイケメンと向き合う。

 

「……エクスカリバーを手にしたからって俺様に勝てると思ったか?ソイツは因子持ちじゃねーとただの剣と変わらないんだっつーの!」

 

「スクカジャ!」

 

残念なイケメン――ああ、もう言いにくいから残念君でいいや――は新たに神父服の懐から剣を取り出す。

直感的に嫌な予感がしたので、速度強化を発動させる。オートスクカジャが欲しいです。

瞬間、目にも止まらぬ速度で剣を振り下ろす残念君。

しかし、通常時ならいざ知らず今の僕なら余裕で捌ける。

 

「うぉっ!天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)と同じ速度で動けるって反則じゃないっすかねぇ!」

 

それでも軽口は尽きない辺り、意外と余裕なのかな?

それにしても、何か楽しくなってきた。こんな互角の近接戦闘なんて久しぶりだから、あっちもそうなのかもしれない。

オロバスとのタンデムをすればこっちが有利なんだろうけど、折角の緊張感有る戦いをあっさりと終わらせたくはない。

それにしても、さっき残念君がこのミミックを自由に動かしていたけど、どうやってやるんだろう。

因子持ちがどうのって言ってたけど、取り敢えずものは試しだ。

思い浮かべるイメージは、ソードブレイカーの凹凸の幅を拡げたもの。

残念君と鍔迫り合いをした瞬間、篭手返しの要領で左手を軸に相手の剣先を地面に落とす。

予想外の出来事にバランスは崩れ、更には速度も上がっていることから、体勢を立て直すのは不可能。

前のめりに倒れようとする残念君の腹に、思いっきり膝蹴りを喰らわせる。

 

「ぐげぁあ!」

 

潰れた蛙の鳴き声のようなものを叫んだ残念君は、当然怯む。

そして、呼吸もままならないであろう彼の側頭部に容赦なく回し蹴りを叩き込む。

タルカジャのような攻撃力強化とはいかずとも、速度が増した攻撃はそれだけで遠心力という名の恩恵にあやかれる。

つまり、人間である残念君を気絶させるぐらい容易いということだ。

さっきのアギダインのダメージもあるからね、仕方ないね。

 

突如、背後から紅色の光が発光する。

振り向くと、そこには木場を除いたオカルト研究部メンバーが揃っていた。やっべ。

 

「蒼那の眷属から、紫藤イリナが倒れているなんて情報が来たから飛んで駆けつけてみたら、零!貴方、どうしてここに」

 

「偶然居合わせただけだ」

 

「偶然って――そもそも外出しないようにって言った筈よね?」

 

笑顔とは本来攻撃的な意味合いを持つものだって良く聞くけど、その通りだと思う。

美人顔が怒ると、余計に怖いね。何でだろう。

 

「部長、それよりもイリナが!」

 

イッセーがイリナを抱きかかえリアスに呼びかける。有り難う、君のお陰で当面の危機は去った!

 

「酷く消耗しているわね……。あそこで伸びているフリード・セルゼンの仕業かしら」

 

「というか先輩、何で聖剣を持っているんですか?」

 

小猫ちゃんの指摘に、一同が僕の手にあるエクスカリバーに注目する。

てかあの残念君、フリードって言うんだ。心の中のライバルとして覚えておこう。

 

「それって、イリナの持ってた奴だよな。何で先輩が」

 

「恐らく、これが紫藤を襲った理由だろう。一度彼女は奴に敗北し、これを奪われていた。それを取り戻しただけの話」

 

「零君、もしかして天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を持ったフリードにたった一人で勝ったのかしら?」

 

「ああ、中々に面白い使い手だった」

 

「マジかよ……病み上がりの人に負けたとか……」

 

何故か兵藤と小猫ちゃんが絶望している。僕、悪いことしてないよね?多分。

そして、突如現れる白銀色の魔法陣。そこから現れたのは、支取とロング黒髪眼鏡さんと生徒会室で見かけた金髪の青年の三人だった。

 

「蒼那、来てくれたのね」

 

「自分の眷属からの情報なのに、出て行かない訳にもいかないでしょう。それより、彼女の容態は?」

 

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)で傷の回復はさせましたが、体力ばかりはどうしようも……」

 

アーシアが酷く落ち込んだ様子で答える。

 

「……私の家なら治療設備があります。椿姫!」

 

「はい」

 

支取の指示で、黒髪ロングさんがイリナと共に魔法陣の中に消えていく。

今日は知らない人の名前が沢山出る日だなぁ、なんて空気の読めない思考が巡る。

 

「さて、フリードは彼が倒してくれたようですし、他の聖剣の回収も――」

 

「流石にそれは容認できんなぁ、シトリー家の娘よ」

 

支取の言葉は、どこからともなく聞こえてくる渋く厳かな声に阻まれる。

空は紫色に染まり、どこか歪んだ空間を形成していく。

そしてその中に降り立つ、十枚の黒翼を背に持つ闖入者。

 

「その翼の数――幹部クラスね」

 

「ご明察だ、グレモリー家の娘よ。我が名はコカビエル」

 

「御機嫌よう、堕ちた天使の幹部さん。私はリアス・グレモリー、どうぞお見知りおきを」

 

「リアス・グレモリー。お前の兄、サーゼクス・ルシファーと同じ紅の長髪。見ていて反吐が出るよ」

 

ん?このコカビエルって堕天使はサーゼクスさんと因縁があるのだろうか。

リアス一家は何かと因縁持ちですね。たまげたなぁ……。

 

「あのエクソシストを餌にお前を呼び寄せたのは他でもない。貴様を倒し、サーゼクスが出ざるを得ない状況を創り上げる為だ」

 

「何ですって!?そんなことをすれば、戦争では済まないわよ!」

 

「その戦争を俺は欲しているのだよ。戦争が終わり、三勢力が牽制し合うだけの生ぬるい現状にはもう飽き飽きしているんだ。アザゼルもシェムハザも、戦争行為には消極的でつまらん。だから、俺が自ら引き金を引く。至極自然な流れだろう?」

 

「完全な戦争狂ね」

 

「それに、今日は思わぬ掘り出し物も見つけた」

 

リアスに向けていた視線を、僕に向ける。

 

「人間よ、名は?」

 

「有斗、零」

 

「有斗零よ。フリードを下した実力もさることながら、お前が召還したあの醜悪な化け物――アバドンと呼んでいたな?俺の知る限り、アバドンとはあのような化け物の姿はしていなかった。だが、奴に追従する力をあの化け物は内包していた。ならば、お前が召喚したものは何だ?」

 

「敵となるであろう相手に手の内を晒す程、お人好しではない」

 

「くくっ――そうだな」

 

コカビエルは愉しそうに笑う。

戦争を望んでいる、か。つまり、戦いたいってことだよね。

僕が来る以前のこのワールドのことは分からないけど、コカビエルが言ったとおり刺激はかなり減ったのかもしれない。

いや、以前が無法地帯過ぎただけで、その三勢力が秩序を維持していると考えると、今の在り方こそ理想であり、コカビエルのやろうとしていることこそ、悪と見なされるのだろう。

 

「俺の見立てでは、フリードとの戦いですらお前の本気ではあるまい。お前の全力を知りたい。少なくとも、現時点でもリアス・グレモリーやシトリー家の娘など歯牙にも掛けない強さを持っているのは明白。ならば、戦わない道理はあるまいて!!」

 

「随分と高く評価されたものだな」

 

「その評価の証として、お前に擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を預けよう。そしてお前を倒し、取り戻す。そうすることで俺は更なる闘争の渦中に身を置くことが出来る。最高じゃないか!!」

 

コカビエルは両手を拡げ、叫ぶ。

フリードも大概だったけど、この人もテンション高いね。

 

「戦いの場は、お前達が通う学園にさせてもらった。ルシファーの妹、リアス・グレモリー。そしてレヴィアタンの妹、ソーナ・シトリー。そして有斗零!お前達が通う学舎ならば、さぞ混沌とした魔力の奔流が期待出来るだろう。戦場としては申し分ない」

 

「巫山戯たことをっ……!」

 

「楽しみにしているぞ。最高の戦場で、また会おう」

 

リアスの憤りも暖簾に腕押し。コカビエルは倒れているフリードと共に消えていった。

それと同時に、視界が夕日の色を取り戻していく。

 

「……まさかここまでとんでもない事になるとはね」

 

「こうなってしまった以上、一刻の猶予もないわね。幸か不幸か、相手がどこにいるのかは把握できていることだし、早急に対策を立てないと」

 

「そうね。……それよりも、零」

 

「何だ?」

 

「どうして外に出たの?それが原因でコカビエルに目をつけられるわで、本当に貴方って……」

 

「だが、紫藤を護ることが出来た。いや、正確にはあれ以上の被害に遭うのを防ぐことが出来た、程度のことだが」

 

「そういえば、イッセーから聞いたわよ。貴方、ゼノヴィアと紫藤イリナと接点があるそうじゃない。何て言うか、貴方って歩く度にイベントを起こすわよね」

 

「そんなもんだろう」

 

「そのイベントが天使とか堕天使とか、そういう関係のばかりだから頭が痛いのよ……」

 

リアスがオーバーリアクションと言うに相応しいぐらいに、溜息と共に肩を落とす。

そんなこと言われても、知らんがな。

 

「部長。それよりも零君のことをどうするのですか?仮に擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を取り上げても、コカビエルが彼自身との戦いを望んでいる以上、彼を巻き込まないというのは非常に困難になりましたわよ」

 

姫島は僕に視線を移しながら、リアスに問いかける。

 

「そうね……。零、こうなったからには貴方も同行するしかないわ。寧ろ別行動を取る方が貴方が危険になるでしょう」

 

仕方ないからという理由で渋々同行を許すリアスの態度に、少しだけムッとしてきた。

仲間はずれにされるのは、どんな理由であれ簡単に納得できるものではない。

 

「……そもそもリアスは何故そうも私を遠ざけようとする?」

 

「それは、貴方は人間で、これは悪魔の問題だから――」

 

「悪魔の問題だろうと、自分が人間だろうと、それを理由に仲間が傷つくのを静観できるほど、私は薄情にはなりきれん。私のことを大事に思ってくれるのは痛いほど分かる。だが、それで君達が傷つき、私だけが指をくわえて待機だなんて、自分の立場でそれを強要されたら納得できるか?」

 

「……それは」

 

「《レーティングゲーム》の時は、私が人間だからという理由で静観することしか出来なかったが、今回は違う。姫島が言うように、コカビエルから狙われる立場になってしまったからには、全力で立ち向かう。だが、そうでなくとも私は君達と共に戦う心算だった。だが、君達は私のことを思ってか必要以上に情報を与えようとしなかった。もしそれで事後に全てを知ったら、私は悲しみを背負うだろう。それは果たして、優しさと言えるのか?」

 

「零君。もう、そこまでにしましょう」

 

姫島が、言葉で僕の制止を促す。

柄にもなく熱くなっていた。

 

「貴方の言い分も理解出来ますが、それ以上に私達が貴方のことを大事に思っていることを、どうか理解して下さいませ。……ですので、私達も貴方の意思を尊重します」

 

「あのコカビエルって堕天使が何者かは知らねぇけど、先輩が一緒に戦ってくれるって言うなら、負ける気はしねぇぜ!」

 

「私達が先輩を護ります」

 

「零先輩。一緒に頑張りましょう!」

 

姫島、イッセー、小猫ちゃん、アーシアの順番でそれぞれ想いを告げる。

 

「……そうね。思えば貴方には一方的なお願いばかりしてきたわね。大抵受け入れてくれなかったけど。でも、それで私が貴方の意見を聞き入れないなんて、虫が良すぎる話よね」

 

言葉ではまだ納得していない風だけど、リアスの表情を見れば言葉とは裏腹なのが分かる。

これで、真の意味でオカルト研究部の輪の中に入れたのだろうか。

そうだったら、嬉しいな。

 

「行きましょう、駒王学園へ」

 

そう言って、リアスが手を差し伸べてくる。

僕はその手を、迷わず取った。

 




Q:イリナはポロリしてたの?
A:この世界はAT-X版ではありましぇん。

Q:何でエクスカリバー使えたの?
A:理由が語られる前にエタらないといいね。

Q:エクスカリバー預けたままじゃ色々と不都合あるんじゃないの?
A:それはバルパーの都合で、コカビエル的にはあまり重要じゃないからいいんです。

Q:アバドン>オロバス
A:ソロモン72柱の一角だからしょぼいなんてことはないんだよ……それもこれもアトラスの陰謀です。まぁ、それでもアバドンのが圧倒的に凄いんだけどさ。

Q:コカビエル……戦闘狂……安元……うっ、頭が。
A:その身を持って教えてやろう、最強の暴力を!!

アバドンのステは次話で纏めて出します。
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