Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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やっとコカビエル戦が終わるよ!やったねミッテルトちゃん!


第十六話

真紅に歪んだ空を見上げれば、闘争という名の狂気に染まった堕天使コカビエルが悠然と佇んでいる。

そしてそれに対峙するのは、現魔王ルシファーの妹であり、紅髪の滅殺姫とも呼ばれる女性、リアス・グレモリー。

そして、人間でありながら人外である悪魔達と遜色ない力を持つ青年、有斗零の二人である。

 

「フリードの奴が露払いをしてくれたお陰で、邪魔されることなく楽しむことが出来そうだ」

 

純粋なまでに闘争に焦がれる堕天使は、この状況に諸手を挙げて喜びを表現する。

それとは対照的に、リアスと零は緊張感ある顔持ちで臨んでいる。

援軍が来るということではあるが、それでも彼の者をそれまでに抑えきらないと、駒王学園は崩壊してしまう。

その後もここを中心として、ルシファーを急かす材料として破壊活動を行い続けるだろう。

そうなってしまえば、結果的にコカビエルを倒せたとしても、事実上の敗北だ。

故に、ここでの敗北は許されないし、逃げることも然り。

進退窮まった状況での背水の陣は、同時に彼らを精神的に追い詰める要素ともなっていた。

 

「零、貴方の《神器》でアイツをどうにか出来るのかしら」

 

「さてな。だが、奴の言い分を信じるのであれば、私にはそれに値する力がある。ならば、それに賭けるのもいいかもしれん」

 

リアス自身、零の《神器》による力を目の当たりにしていることもあり、コカビエルの言葉にある程度の信憑性があることは分かっていた。

ほぼ瀕死だったとはいえ、不死の名を冠するライザー・フェニックスを一方的な展開で倒したことと、初めて彼の力の一端に触れた時の圧倒的なまでの力の奔流を知っているが故の、思考の帰結である。

人間である彼が、コカビエルの一撃を食らえばタダでは済まないことは考えるまでもないことだ。

しかし、この中でコカビエルを打倒し得る可能性を持つのもまた、彼であることも理解していた。

《赤龍帝からの贈り物》で強化した自身の一撃を軽くあしらわれた現実は、彼女の力不足を嫌でも教えてくる。

ならば、賭けに近いとはいえこの中で最も未知数な存在に全てを託すのも、仕方のないことと言える。

彼に圧倒的なまでの負担を強いることは、非常に心苦しい。それでも信じるしかない。

それに、ここまで来たからには彼を巻き込まないなんてことは不可能。それ以上に彼が乗り気というのも、リアスの諦めを後押しする要因となっている。

彼を五体満足で帰すことも目的とするならば、それこそ出し惜しみは悪手。ならば覚悟を決める事こそ、真に彼を想うことに繋がるだろう。

 

「……信じているわよ」

 

「ああ」

 

交わした言葉は短く。しかし万感の思いを持って告げたそれに、無駄な装飾をつけたところで邪魔でしかない。

 

「ペルソナ!」

 

零の叫びと共に現れたのは、白銀の鎧を纏いし四足の獣、ウルスラグナ。

それを見たコカビエルは、ほう、と興味深げに声を漏らす。

 

「アバドン、ガブリエルと来て、英雄神まで召還するとは、どこまで俺を楽しませれば気が済むのだ、お前という奴は!!」

 

「流石に詳しいな」

 

「ああ。姿形こそ違えど、奴らの力を垣間見たことがある俺からすれば、その名を冠するに相応しい潜在能力を秘めていることは、その存在感だけでも理解できる。だが、ウルスラグナは話に聞くだけの存在だった故、今から戦うのが楽しみでしょうがないのだよ!」

 

「……ならば、その期待に敗北を上乗せしてお届けしよう」

 

そう口にした零は、ウルスラグナに擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を手渡す。

そしてあろうことか、ウルスラグナが素振りする度に擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の形状が変化していく。

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の持つ性質は、形状変化。

自由意思で様々な物質へと変質させることが出来る能力は、本来因子を備えていなければ扱えない筈の代物の筈なのに、ウルスラグナはまるで手足を動かすが如く洗練された動きで、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を操ってみせた。

当然、そんな光景を目の当たりにしてリアスが黙っていられる訳もない。

 

「……どういうこと?まさか貴方も因子を持っていたと言うの?」

 

「さてな。少なくとも、この状況でそれを詮索するのは些か場違いではないかね?」

 

「……これが終わったら聞かせてもらうわよ」

 

「聞かせても何も、私自身把握していないのだがな」

 

圧倒的強者を前にして軽口を言い合う二人。

それは余裕の表れか、或いは虚勢か。

 

「ならば、せいぜいお前達の望みが叶うように精々気張れ」

 

コカビエルは光と闇の力をそれぞれの掌に収束させ、放った。

それを各自左右に飛び、回避する。

ウルスラグナはその足で空を翔け、コカビエルへと接近する。

リアスはそれを助けるべく、魔力による牽制を行う。

 

「ジオダイン!!」

 

ウルスラグナが手をかざすと、朱乃の放つ雷以上に広範囲のそれがコカビエルへと迫る。

リアスの時のように弾くことはせず、回避に徹するも、光の速さで肉薄するそれは腕を掠める。

掠めた箇所は黒く焼けこげており、ダメージが通っている何よりの証拠として刻まれていた。

 

「やはりな。この場で俺に傷をつけられるのはお前だけ。しかし、それでも俺を倒すにはまだ至らんぞ、有斗零!!」

 

右手を横から振りかぶるようにして闇の魔力をウルスラグナへと放つ。

ウルスラグナは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)をカイトシールドの形へと変質させる。

盾となった擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を前に突き出し、攻撃を受け流す。それでいて尚コカビエルへと迫る速度は衰えることはない。

 

「剛殺斬!」

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を上から振り下ろし、それをコカビエルは障壁で受け止める。

インパクトの瞬間、膨大な力の波動が二人を中心に巻き起こる。

二度、三度と障壁を破壊せんと斬りつける度に響き渡る金属音と旋風。

 

「はっはぁ!いいぞいいぞ、実に愉快!一撃一撃が上級悪魔のそれを上回っている。だが、それでも足りん!」

 

振り下ろした擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を素手で掴み、そのままウルスラグナの懐に飛び込む。

そのままゼロ距離で魔力弾を打ち込むと、その衝撃で地上へと叩き落とされる。

そして、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)もそれに続く形で破壊される。

 

「ぐあああっ!!」

 

「零!?」

 

「先輩!」

 

それに呼応するように、苦痛に悶え叫ぶ零。

地に膝をつき、肩で息をする零へと駆け寄るオカルト研究部のメンバー。

バルパー・ガリレイとフリード・セルゼンとの決着はついていた。

 

「ほう、どうやら痛みを共有しているようだな。ただの召喚かと思ったが、どうにも違うらしい。しかし困ったな、操者が人間だというのであれば、最早それを維持するのも困難だろう」

 

アーシアが零へと聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を掛け、ミッテルトと朱乃が両側に立ちその不安定な身体を支える。

 

「しかし本気の片鱗さえ見せていない状態で潰すのは俺の主義に反する。赤龍帝よ、その力を最大限まで引き上げ誰かに譲渡しろ」

 

「何?」

 

「分からんのか?そうでもしなければお前達では俺に傷をつけることさえ出来んのだ。しかしそれではつまらないだろう?だからチャンスを与えようと言っているのだ」

 

「巫山戯――」

 

「イッセー、やりましょう。悔しいけど、奴の言っていることは事実。そして、奴に対抗できる零はダメージを受けている。ならば、この期を逃すことこそ愚行よ」

 

「部長……」

 

「それに、悪魔である私達が人間である彼におんぶに抱っこなままじゃ、立つ瀬がないわ。今こそ私達の力で、彼を守るのよ」

 

コカビエルを倒すのは、決して零のみが成し遂げる偉業ではない。

オカルト研究部のメンバーが全て揃った今、敗北は決して有り得ない。

コカビエルを打倒せんと強い意志を持って対峙する皆の想いは、完全に一致していた。

リアスと一誠は手を取り、最悪の敵へ放つ力を圧縮させる。

限界まで、否。限界を超えて赤龍帝の力を溜め、それをリアスへと譲渡した。

瞬間、リアスの身体から膨大な力が溢れ出す。

リアス・グレモリーの潜在能力に上乗せした赤龍帝の倍化効果は、コカビエルへと届く領域にまで昇華していた。

 

「す、凄い力だ……」

 

「クハハハハ!!兄に負けず劣らず才能はあるようだな。最上級悪魔に匹敵するぞ、その力!」

 

狂気に身を委ねた笑いは、駒王学園一帯に響き渡る。

どんなに窮地に及ぶ可能性も、コカビエルにとっては闘争により刺激を加える要素でしかない。

同時に、それはコカビエル自身が自分の力に絶対の自信を持っている裏付けにもなっていた。

 

「喰らいなさい!!」

 

腕を交差させ、両手に集中させた魔力を解放する。

膨大なまでの魔力が解放されたことで、空間そのものが軋み上がる。

 

「面白いぞ、リアス・グレモリー!フッハッハッハッハッハ!!」

 

しかし、それを受けて尚コカビエルの余裕が崩れることはない。

それ程までの実力差。決して一朝一夕には埋められない溝。

それはひとりで賄うにはあまりにも深すぎる、溝。

 

「部長、加勢します!!」

 

だが、決して一人にあらず。

彼女には、眷属という信頼できる仲間がいる。

朱乃の雷がコカビエルへと肉薄する。

 

「ぬうっ」

 

二つの交わらざる力が集まり、コカビエルを初めて押し返す。

それはほんの僅かな前進。だが、確かに実感できる一歩でもある。

 

「成る程、流石はバラキエルの娘。悪くない力だ……!」

 

「私の前で……あの者の名を口にするな――!」

 

普段は温厚で笑顔を絶やさない朱乃が、目を見開き叫ぶ。

憎悪を孕んだ眼光が、自らの放つ雷と共に貫かんと迸る。

 

「バラキエル――雷光の二つ名を持つ堕天使の幹部だったか。だが、彼女は――」

 

ゼノヴィアの疑問は、二つの力の均衡が破れた音によって遮られる。

負けたのは――リアス達の方だった。

 

「愉快愉快、実に愉快。リアス・グレモリーよ、実に個性的な眷属を揃えたようだな。赤龍帝に、聖剣計画の犠牲者、そしてバラキエルの娘までもが悪魔に墜ちていたとは。いやはや、何をどうすればここまでのゲテモノを揃えられるのか、教えてもらいたいものだな」

 

「私の眷属をゲテモノ呼ばわりするな!!」

 

「そうだ、このクソ堕天使!テメェみたいな戦争狂が俺達をどうこう言う資格なんてねぇし、何よりお前に価値を示される謂われはねぇ!」

 

一誠の心からの叫びと共に、《赤龍帝の篭手》が光り輝く。

 

「みんな、イッセーを護るわよ!」

 

「言われずとも、そうさせてもらう」

 

リアスの言葉に始めに反応したのは、ゼノヴィアだった。

それに続く形で、祐斗、小猫が一誠の盾となるべく飛び出す。

聖剣《デュランダル》を扱える天然の因子を持つゼノヴィアと、聖と魔の融合という矛盾を超えて出来上がった魔剣創造(ソード・バース)の《禁手》、双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)で創造した聖魔剣。その両方がコカビエルの光の槍に阻まれる。

そして両手が塞がったコカビエルへ向けて一撃を叩き込まんと小猫が上空から強襲する。

しかし、その一連のコンビネーションはまるで羽虫を払うが如く一薙ぎで否定される。

三人は宙を舞い、ボロボロの身体を受け身も取れずに地面に叩きつけられる。

 

「まだ、だっ……!!」

 

祐斗は膝をつきながら、魔剣創造(ソード・バース)により魔剣の雨を降らせる。

四方八方から襲いかかった魔剣は、硝子のように儚げな音と共に砕かれる。

しかし、それは所詮布石でしかなく、魔剣に意識を取られている間に聖魔剣で斬りかかる。

一撃防がれても、片手が残っている。片手が封じられても、口がある。

それぞれの部位に聖魔剣を創造し、三度目の一撃でようやく頬を掠める。

無茶な動きが祟ったのか、大きくバランスを崩す祐斗。そしてそこに追撃せんと放たれる一撃。

それを《デュランダル》を盾にフォロー。文字通りコカビエルの一撃を切り裂いた。

 

「エクソシストの力、中々に侮れんな。だが、ここで残念なお知らせといこうじゃないか」

 

「残念な報せだと……?」

 

「何、単純なことだ。これはかなり上位の部類に入る秘匿義務が課せられた内容なのだが、どうせ戦争が起こるのだから、せめて冥土の土産にでも教えてやろう」

 

そこでコカビエルは一呼吸置き、不適に嗤うと、

 

「先の三つ巴の戦争で、四大魔王と共に神も死んだのだよ!!つまりお前達のような神を信じている者は、すべからく存在しないものを信仰していたということなのだよ!!」

 

とんでもない爆弾を投下した。

 

「なん……だと……?」

 

「そ、そんな……嘘ですよね……?」

 

主という存在を信じていたゼノヴィアとアーシアにとって、それは決して蔑ろにして良い言葉でなかった。

それに、神が死んだという事実は、この場においてコカビエルしか知らなかったことであり、それ以外の者達にも等しく衝撃が走った。

 

「出任せを言わないで、そんなこと聞いたこともないわ!!」

 

「当たり前だろう?神なんて者を信じている者達に、神が死んだなどと耳に届くようなことをしてみろ。たったそれしか拠り所のない連中は、すべからく信仰心を失い、果ては秩序の崩壊へと繋がる。それを分かっていて公表する筈がなかろう?」

 

「そ、れは……」

 

「それに、悪魔も天使も堕天使もあの戦争で多くの優秀で貴重な人材を喪った。純粋な天使は生まれず、悪魔も限りなく同じ状況。人間という脆弱な存在に頼らねば維持さえ困難なほどに、どの勢力も落ちぶれた」

 

天に向かって吠えるように真実を露呈していくコカビエル。

 

「故に、その事実を封印したのだ!!神を信じさせ、秩序の維持とそんな盲目的な人間を利用する為にな!!」

 

「そんな……そんな……!!なら私達は一体何を信じていたというのですか――!!」

 

アーシアは聞きたくないと言わんばかりに強く耳を塞ぎ頭を振る。

しかし、どこまでも響く声がそれを良しとしない。目を背けることは、出来ない。

 

「お前達が信じていたのは神ではなく、その代役を務めているミカエルだよ。何とも律儀なものじゃないか。いや、信仰心を利用してお前達を謀っていたという意味では、奴もまた鬼畜外道よ」

 

アーシアの絶望を見届けたコカビエルは、地面を踏み抜く勢いで苛立ちを吐き出す。

 

「だがな、俺にはそんなことどうだっていいんだよ!!俺がしたいのはあの時と同じ戦争、闘争の渦の中で己の力を全力で発揮したいだけだというのに、アザゼルの野郎も戦争はしないなんて言う臆病風に吹かれやがって。秩序の維持だか何だか知らないが、あのままやっていれば勝ったのは俺達だったというのに!」

 

自らの掌を握り潰す勢いで力を込める。

コカビエルの怒りは、臨界点まで突破しようとしていた。

 

「まぁ、そこにいる聖魔剣使いを見れば分かるだろうが、聖と魔のバランスが崩壊しているからこそ、あのような矛盾を体現することが出来るということだ。本来なら、まかり間違ってもそんなことは有り得ないからな」

 

祐斗の《禁手》は、皮肉にもアーシア達の絶望を加速させる象徴となっていた。

あまりの絶望にアーシアはその場で意識を失い、ゼノヴィアもまた思考に理解がおいついていないのか呆けた表情を続けている。

 

「よって!俺が再び戦争の撃鉄を鳴らす!リアス・グレモリー、貴様の首を手みやげになァ!!」

 

誰もが非現実的な現実を前に、動揺を隠せない。

心が震え、身体が動かない。

信じていたものを失い、非常な現実を突きつけられ、立っていられる訳がない。

 

 

 

 

「――それが、どうした」

 

 

 

それでも、たった一人。立ち上がる者がいた。

 

「零……!!」

 

「レイ!!」

 

「零君!」

 

「有斗先輩!」

 

「先輩!」

 

「先輩……!」

 

絶望に伏していた誰もがその姿を見上げていた。

どんな絶望を前にしても依然として揺らぎ無く、決して揺るぐことのない強き意志を秘めた青年。

彼だけがコカビエルの言葉に一切の動揺をせず、自らの足で立っていた。

 

「どうした、とは面白い返しだな。神が死んだのだぞ?」

 

「その程度のことで、何故驚く必要がある。神なんてものは所詮、人間にとってひとつの拠り所に過ぎない。存在していようがしていまいが、それが人の手に届かないのであれば、そのどちらとて何の意味もない。実際、神が死んだからといって私達が死ぬわけでもないし、知らずに生きていける程度には秩序が維持出来ている。ならば、神の存在に何の意味がある?」

 

言い切った。

ばっさりと、神の存在を必要ないものだと、彼は何の躊躇いもなく切り捨てた。

 

「――クッ、ハハハハハ!!成る程確かに、その通りだよ。不安定とはいえこうして何とかなっている時点で、神に固執する理由はない。――だが、それでも。そこにいる悪魔共が動揺しているのを尻目に、お前は神の死に対して一切の感情の揺らぎを見せていない。そんなこと、まともだったら有り得んよ」

 

「つまり私は狂っている、と?」

 

「分かっているんじゃないか、この狂人が!!だが、だからこそ俺はお前が愛おしくさえ感じる。俺を満足させてくれるのは、やはりお前だけだと、真に理解出来た!!」

 

諸手を挙げて歓喜の悲鳴を上げるコカビエル。

 

「ならば問おう。神さえ信じぬお前は、何を信じてこの場に立っている!!」

 

「そんなの――決まっている」

 

虚空に手をかざし横に振る。

その軌跡の跡には、四枚のアルカナタロットが浮いていた。

それらは四角を描くように四点を描き、静止する。

 

「――()と一緒に戦ってくれるみんなとの、絆だ!!」

 

瞬間、膨大な魔力が零を中心に巻き起こる。

 

「――《クロス・スプレッド》」

 

四点を描いていたタロットがひとつになり、手元へと導かれていく。

 

「――ペルソナ!!」

 

そしてそれを、握り潰した。

淡い光と膨大な魔力の奔流と共に現れたのは、十の角と七つの頭を持ち、体は豹、足は熊のような風体で、頭には王冠のようなものを乗せた獣だった。

 

「人は一人では生きられないが、それは決して神に依存していたからではない。誰もが自らの意思で信じるべき者を選ぶ権利があり、そこには神の意志なんてものは介入する余地はない。ならば、神は信仰の対象であれど、絶対の存在に非ず。故に、神が死せど世界は廻ることを止めない。人間も悪魔も天使も堕天使も神も、等しくこの世界を動かす歯車に過ぎない」

 

「天使も、神も、等しく世界の歯車……」

 

ゼノヴィアが零の言葉を無意識に反芻する。

 

「人は神に縋らずとも生きていける。自分にとっての大切さえ持っていれば、それが希望となり、生きる上での道しるべとなる。故に俺は、その大切を――みんなとの絆を持って、お前を倒し、それが正しいことを証明する!!」

 

「やってみろ、有斗零。お前が言う絆とやらの力、俺に見せつけろ!!」

 

零へ向けて放たれる魔の力は、彼が召還した獣によって意図も容易く防がれる。

圧倒的な程の力が内包していたそれは、獣に触れた途端綺麗に霧散したのだ。

 

「何ッ!?」

 

初めて見せるコカビエルの動揺した表情。

そこに付け入るかの如く、獣は視認できない速度でコカビエルへと突進する。

魔法陣による防御さえ意味を為さないと言わんばかりに、獣はコカビエルを防御の上から吹き飛ばす。

 

「マスターテリオン、ミリオンシュート」

 

零の指示で、獣の口から無数の光弾が放たれる。

亜音速に匹敵するそれを認識してから回避するのは、極めて困難。故に護りに入るしかない。

先程の例もあることから、コカビエルは無意識の内に防御に力を注ぐ。

その甲斐あって今度は破られることはなかったが、それでも身動きすらままならない程の連続攻撃に、立ち往生するしか出来ないでいる。

 

「凄い……」

 

それは、誰が漏らした言葉だったか。

六人の力を合わせた攻撃さえも軽くあしらって見せたコカビエルが、たった一人の人間を前に防戦一方を強いられている光景は、夢ではないかと疑いたくもなるものだった。

 

「調子に――乗るなよ、人間風情がアアアアア!!」

 

光弾が止んだ途端、激昂し反撃に転ずるコカビエル。

二度目の停止は許さないと言わんばかりに肉薄する姿を、零はただ静かに眺める。

 

「人間だと見下した時点で、貴様の敗北は必定のものとなっていると、その驕りが何故理解出来ん?」

 

「そんなもの、知るかァ!俺はこの程度では決してやられんぞ!!」

 

「そうか――なら、俺の仲間を傷つけた罪を抱き、潔く去ね」

 

「ぬ、ぐおおおおおおおおおお!!」

 

瞬間、獣の姿が消えたかと思うと、コカビエルは悲鳴を上げていた。

堕天使の幹部でさえも認識できない速度での高速移動から来る攻撃は、まるで空間そのものが刃となって襲い掛かっているような錯覚さえ与える。

 

「――空間殺法」

 

それが獣が使用した技だと理解する時には、既にコカビエルは翼をもがれ、為す術もなく地面へ向けて落下していた。

どさり、と乾いた音が響き、誰もがようやくあのコカビエルが地に伏したのだと理解した。

しかし、理解はすれど意識は追い付かず。あまりにも呆気なく終わってしまった現実と、自らの無力を認めたくないという無意識からの反抗心が、現実を理解したくないと駄々をこねているに過ぎない。

そんな中一人、零はコカビエルへ向けて足を運ぶ。

今やコカビエルが、零を見上げる形となっていた。

 

「強い――な」

 

「私が強いんじゃない。私とみんなとの絆を形にしてくれるこの《神器》が強いだけなんだ」

 

「謙遜するな。少なくともお前も弱いなんてことはない。愚直だが、お前は自分の言葉を現実にした。そこに弱さなんてありやしない」

 

「――そうか」

 

まるで旧来の友と会話するかのように穏やかな雰囲気のコカビエル。

つい先程まで狂気に支配されていた男の姿とは、到底思えなかった。

 

「負けたというのに、何故か心が晴々としているよ。あの戦争でも、ここまで一方的にやられることは無かったというのに、このザマだ。逆に清々したのかもしれんな」

 

「……それで、満足したか?」

 

「今だけは、な。だが、所詮それも一時的なものに過ぎん」

 

「ならば、その時は再び相手になってやる」

 

「――そうか。そいつは嬉しい」

 

「――悪いが、それは二度と叶わないだろう」

 

憑きものが落ちたように語るコカビエルと、いつもの調子を取り戻した零との会話は、駒王学園を覆う結界が破壊されたという事実に遮られる。

暴風に舞う結界の残滓に紛れて、満月を背に悠然とその翼を拡げる白き鎧を纏いし者が、そこに存在していた。

 

「あれは――白い龍(バニシング・ドラゴン)か!?」

 

「白い龍……?」

 

「知らんのか?赤龍帝と対となる存在。二対の赤と白が出会った時、戦う運命にあるとされている」

 

「つまり兵藤の存在に惹かれてきた、ということか」

 

「それもあるだろうが、それ以上に――――ッ!?」

 

コカビエルの言葉は、自らの声にならない悲鳴によってその意味を失った。

遙か上空にいた筈の白き龍は、地上に落ちた筈のコカビエルの懐に拳を叩きつけていた。

 

「ペルソナ!!」

 

状況を理解した瞬間、反射的に零はベルフェゴールを召喚。白き龍に向けて拳を振り抜いた。

それを同じ拳を持って止める白き龍。

拳と拳によるラッシュの応酬により響き渡る轟音と暴風。

熾烈の一言に尽きる一瞬は、白き龍の距離を取る行動で終わりを告げる。

 

白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)で半減出来ない、だと?――まぁ、いい。どうやらお前がコカビエルを倒した男のようだな」

 

「それがどうした?」

 

「半信半疑ではあったが、赤龍帝をも超える力をまさかただの人間が所有しているとはな。成る程、アザゼルが興味を抱く訳だ」

 

「アザゼル……ということは、お前はそのアザゼルの小間使いということか」

 

「否定はしない。今の俺はアザゼルの傘下にいるようなものだ。それに、ここにいる役目も、そこの勝手が過ぎた堕天使を連れ戻す命令を受けたからだしな」

 

「ぐっ……貴様ァッ」

 

白き龍の言葉に反抗するように、コカビエルがよろめきながら襲いかかる。

コカビエルが放った光の槍は、白き龍の掌から放たれた光と相殺するかのように消え去った。

 

「コカビエル、お前には半減効果がきちんと付与されている。それを糧に俺は更なる力を得ている以上、お前に万が一にも勝機はない」

 

それだけ言うと、白き龍はコカビエルの腹を拳で貫く。

その勢いで一切の法則なく空を翔け、遂には再び地面へと叩きつけた。

コカビエルは、最早ぴくりとも動かない。

 

『……随分と礼儀がなっていないな、白いの』

 

『そっちこそ、随分と未熟な持ち主に選ばれたものだな』

 

「んだとぉ!?」

 

その惨状の中、《赤龍帝の篭手》から声が発せられる。

それに応えるように、白き龍からも別の声が響く。

当然それに一誠は怒りを露わにする。

 

『相棒は確かに未熟だが、お前が思っている以上に相棒の潜在能力は凄まじいぞ。油断していると痛い目に遭うぞ』

 

『そうか、それはこっちの相棒も喜ぶだろう。とはいえ、今は未熟な赤龍帝よりも、彼の人間に執心しているようだがな』

 

白き龍は身体を零の方へと、向けて一歩前に出る。

 

「名は何という?」

 

「有斗零だ」

 

「その名、しかと覚えた。遠くない未来、再び見えることだろうが、その時まで更に力をつけると良い。そこの未熟な赤龍帝もな」

 

「ま、待て!!」

 

それだけ言い残し、コカビエルを抱えた白き龍は飛び立っていった。

一誠の静止の言葉は、白き龍に届くことはなく、虚しく響き渡るだけに終わる。

 

ここに、ひとつの騒動は終結する。

しかし、赤と白の邂逅、そしてその白に目をつけられた一人の人間を中心に、新たな波乱が巻き起こることをこの場にいる誰もが確信していた。

 

 




Q:これ、原作の流れなぞりすぎじゃね?
A:(オリジナリティがなくて)すまんな。

Q:ウルスラグナスキル変わってね?
A:レベルアップしました。他のペルソナも逐次変わっていく予定です。

Q:ウルスラグナが聖剣使えたり、半減効果は効かないし、でもダメージは共有しているしで何なの一体。チートなの?適当な設定なの?
A:主人公の性能はペルソナにも付与されるけど、相手からの状態異常は直接本体に当てないと発揮しません。スタンドみたいなもんだよ。

Q:マスターテリオンってペルソナにいなかったよね。オリジナルは使わないんじゃなかったの?
A:女神転生にはいたから問題はない(目逸らし)

Q:マスターテリオン→もしかして:ロリコン
A:なんでや!公式チートの癖にUXでランカスレイヤーに簡単にぼこられた人は関係ないやろ!

Q:マスターテリオンを採用した理由は?
A:『黙示録』において「人類は滅亡した後、神に選ばれた者、仔羊の印を持つ者だけが復活し、千年王国に住んで永遠の命を永らえる」という記述があり、それに反逆する者、つまり敵としてイシュタル・サタン・テリオンの三体の悪魔が書かれているんですけど、主人公の神の存在を否定し、同時に神の束縛からの解放の象徴として、採用しました。イシュタルで良かったじゃんとか言うな。

Q:ミッテルトちゃん出番全然ないね。
A:次のストーリーから本気出す(結果が結びつくとは言っていない)



ウルスラグナ:新スキル構成

ジオダイン、マハジオンガ、剛殺斬、暴れまくり、チャージ、マハタルカジャ



アバドン

アルカナ:塔

耐性:斬打貫火氷雷風光闇
   無無無耐   弱無

スキル:アギダイン、オールドワン、テトラカーン、マカラカーン、物理無効

黙示録に記された奈落の主。
害虫の大群や疫病を率いる魔王だとされる。
元来はイナゴが大発生して人里を食い荒らす天災が神格化されたものと言われている。
どうでもいいけど、アバドンの見た目よりミルたんの顔の方が末恐ろしく見えるのは私だけだろうか。



ガブリエル

アルカナ:女帝

耐性:斬打貫火氷雷風光闇
       反 耐反弱

スキル:ブフダイン、マハブフダイン、氷結ハイブースタ、メディラマ、神々の加護


上級第一階位の天使・熾天使の一人。
その名は「神は我が力なり」という意味をもつ。
カトリック教会が公式に認める大天使の一人。
見た目は原作と異なり、髪がリアスと同じ紅の長髪となっている。あと巨乳。
ティターニアの氷結バージョンと考えてもらえば分かり易いが、こちらの方が攻撃寄り。



マスターテリオン

アルカナ:月

耐性:斬打貫火氷雷風光闇
      無無  弱無

スキル:二連牙、ミリオンシュート、空間殺法、玉砕破、毒ガスブレス


詳しい説明は上に書いているから割愛。
アレイスター・クロウリーが名乗った別名でもあるとされている。
アルカナを月としたのは、月のアルカナの逆位置とマスターテリオン召喚時の状況が似ていた(気がする)から。
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