Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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約一年ぶりの投稿なので初投稿です(自称意味不明発言兄貴)


第三十一話

リアスと支取達のチームで行われるレーティングゲームが、今日ようやく始まる。

観客としてサーゼクスさん達に誘われている身分な為、今回は気兼ねなく仲間内に入ることが出来る。まぁ、戦う訳じゃないんだけどさ。

ぶっちゃけ、凄い興奮しています。外面はともかく、スポーツとかルール良く知らなくても盛り上がれるタイプの自分にとって、こういう催しには心躍るものがある。

将棋とかと似たルールなのは知っている。

最終的に《王》が打ち取られれば負け、例え他の駒が残っていようとも。

単純なルールながらも、やはり鎬を削る戦いとは心躍るものなのか、緊張感と熱気がどことなく伝わってくる。

 

「やぁ、よく来てくれたね」

 

サーゼクスさんとグレイフィアさんに迎えられ、有斗家(ミッテルト命名)の面々はVIPの観客席に足を運ぶ。

 

「この度は、このような場にお呼びしていただいてありがとうございます」

 

「そんな畏まることはない。普段通りにしてくれるとこちらも助かるんだけどね」

 

溢れ出しそうな感謝を言葉に乗せるも、サーゼクスさんはいつもと変わらない調子で接してくる。

 

「何気にレイの敬語って初めて聞いた気がするッス」

 

「体裁を気にしているのだろう。代表である彼は人間で、付き人たる我らも人間と下級の堕天使と、魔王であるサーゼクス殿とは本来なら視線を交わすことさえ贅沢だと言い切れる壁がある。ましてや、ここに来る過程で観客であろう悪魔に見られているからな、ここで下手を起こせばやっかみを受けると思ったのだろう」

 

「そういうの気にしなさそうと思ってたけど……」

 

「彼、というより私達の為だろうな。零は私達の代表だ。その代表が粗相を起こせば、下の者も同様の評価を下されるのは自明の理。故に、どこに目があるか分からないこの状況で無礼を働かないよう動いたと言うことだろう」

 

「レイ……」

 

何かキラキラとした目でミッテルトから見られているんですが、何ですかね。

 

「零君、君の考えも尤もだが魔王である私の友人として招待しているんだ。気兼ねする必要なんてどこにもない」

 

「そう、か?なら、お言葉に甘えよう」

 

僕の考えってなんぞやと思いながらも、取り敢えずいつもの調子に戻すと満足そうにサーゼクスさんは頷いた。

 

「こちらにどうぞ」

 

グレイフィアさんに促され、高級そうな素材の座席に案内される。

目の前にはグレイフィアさんが用意したであろう、紅茶やらお菓子やらがあり、至れり尽くせりである。

 

「しかし、こんな贅沢な催しにイリナが来られないと言うのは、勿体ないな」

 

「天界も結構ごたごたしているらしいからね。ミカエルのお気に入りとなった彼女は、しばらく自由には行動できないだろうな」

 

ミカエルって、あの後光が差していたイケメンだよね。お気に入りって……なんだか事案が発生しそうな感じ。

ミカエルさんは悪くないんだけど、アトラス脳からすれば天使って良いイメージが全然ないんだよね。だからつい、そんなマイナスイメージが先行してしまう。ごめんなさい。

 

「やはり、組織に身を置くと面倒を背負うものだな。零に付いて、よくよく思うようになった」

 

「仕事辞めて主婦になった人みたいなこと言ってると、ババ臭く思われるわよ」

 

「はっは、それはないさ。そも、悪魔だの天使だのいるこの世界で、外見の年齢なんて何の基準にもなりはしない。なら、私がどんな発言をしようともそうは思われないだろうさ」

 

「それが、アンタが人間であるという前提に反していれば、だけどね」

 

のらりくらりとミッテルトの発言を躱すゼノヴィア。

身長差も手伝って、ミッテルトが妹、ゼノヴィアが姉っぽく見える。

それを二人に言えば、間違いなく片方は否定し、片方は面白おかしくノッてくるだろうから、何も言わないでおこう。

 

「さて、もう少しで始まる訳だが……君達は、どちらが勝つと思うかね?忌憚のない意見を聞きたいものだが」

 

「……正直、私には分かりません。リアス達の実力はある程度理解しているつもりではありますが、相手である支取の方は私にとっては未知数です。事前に支取の指揮能力が高いことをリアス本人から聞かされているので、それを考慮するのであれば支取に軍配が上がると言えますが……」

 

「ふむ。ミッテルト君は曖昧な情報を前にすると、これと言った答えが出せないタイプのようだね。でも、話を聞く限り作戦や戦略の重要性を理解している辺り、君自身はシトリーに近い考え方をしているのかな?」

 

「は、はい。私自身、戦闘能力が低いことを自覚していますので、そうでもしないと勝てる相手にも勝てないといいますか……。すみません、曖昧な回答で」

 

しょんぼりするミッテルト。真面目だなぁ、とお菓子に舌鼓を打ちながら外野気分で話を聞く自分。

 

「いや、安易に結論を出したくないと言う考えは理解できるよ。だが、別にここでの回答が何かを分ける訳でもないのだから、気楽に答えればいいのさ。まぁ、無理をする必要もない。ゼノヴィア君はどうかな?」

 

「私はリアス・グレモリーの方だな。近くで実力を見てきたからこそ、彼女達の実力はそこそこに理解しているつもりだ。対してシトリーの方はさっぱりだから、答えようもない」

 

「なるほど、自分の目で見たもの以外では判断しないと。分かりやすくていい、が――過信すぎるのも良くない。彼我の戦力差を瞬時に把握出来なければ足元を掬われてしまうよ。まぁ、ミッテルト君があの調子なら、むしろつり合いは取れているし、私が気に掛けずとも問題はなさそうだけどね」

 

「らしいぞ?ミッテルト」

 

「だからって、考えることを丸投げされたら堪らないんだけど」

 

「お、私の考えていることが良くわかったな。同じ釜の飯を長く食っているからか?」

 

「アンタが分かりやすすぎるだけよ、まったく……」

 

サーゼクスさんは二人のやり取りを微笑ましげに眺めていると、今度はこっちに話題を振ってきた。

 

「では、零君。君はこの戦い、どう見る?」

 

「……答えられない。私はつい最近まともにルールを知った競技で勝敗を瞬時に把握できるような慧眼を持ち合わせている訳ではない」

 

「ミッテルト君と同じ回答か、似た者同士という奴だね」

 

「悪いが私には、ミッテルトのような知性ある回答はできないぞ。故に、勝敗に関しての回答を期待されても困る」

 

言い方はあれだけど、つまるところ「僕馬鹿だからわかんない」ってことである。

 

「ただ――レーティングゲームそのものに関して、色々思うところはあったな」

 

「と、言うと?」

 

「それは――っと、始まるようだ」

 

言いかけたところで、リアスと支取のレーティングゲームが開始された。

両陣営ともに、いきなり動き出す様子はない。作戦の打合せ、ないしは再確認をしているのだろう。

 

「見ながらでいいから、説明してもらえるかな?折角比較できる要素が目の前にあるんだ、もしかしたら今後の参考になるかもしれないからね」

 

「私も気になるな、零の考えは」

 

興味深げに催促してくる二人に対して、ミッテルトはこちらを申し訳なさそうに見つめているだけ。

その理由は分からないけど、減るものでもないし説明を続けよう。

 

「単純に私が思ったのは、戦略性に乏しいということだ。言い換えれば、勝利するにおいて帰結するのが全体の戦闘力に比重が置かれすぎている気がしてならないんだ」

 

「レーティングゲームは娯楽と訓練を共有した内容だから、戦闘能力に比重が置かれるのは当然じゃないかな」

 

「つまり、貴方は『実際の戦場で常に同じぐらいの強さの相手と戦える』と思っていると判断していいのか?」

 

「……む」

 

「私が知る限り、コカビエルは強力な敵だった。個人の能力を束ね、策を練って尚、届くか届かないか分からない境地の相手だった。果たして、そんな相手と今後戦わない保証なんてあるのか?」

 

「そんなことはない、とは言えない。けど、あくまで今は訓練的な意味合いがある以上、根本的に戦闘経験が不足している両者には、相応しい組み合わせだと思うよ?」

 

「これはこれでいい。拮抗する実力者が戦ってはいけない訳ではないからな。だが、貴方はレーティングゲームが娯楽だと言った。そこに問題があるんだ」

 

「と、言うと」

 

「例えば、リアスチームとサーゼクスチームがレーティングゲームで戦うとしよう。さて、どちらが勝つ?」

 

「それは……」

 

「言うまでもなく、魔王様の方よ」

 

「その通りだな」

 

三人とも予想通りの回答をくれる。

モニター越しでは、互いの陣営の尖兵が衝突している。

 

「私もそう思う。娯楽である以上、出来レースな展開では観客も喜ばないし、面白くもない。だが、これは訓練的意味合いもあるのだろう?ならば、あらゆる事態に想定した動きが出来るようにすればいいと思わないか?」

 

「それは、《王》の敗北以外にも勝利条件を増やせ、ということかい?」

 

「それもあるが、過程にも手を入れてもいいと思う。例えば、条件を満たすことで能力が上昇するギミックを置いたりとかな。他にも、建物の存在が身を隠す以外に価値のないものに成り下がっているのも気になるな。高位の悪魔にとっては建物に中継拠点としての価値はないのかもしれないが、これが一定の範囲で行われる戦いであるならば、陣取りゲームとしての意味合いも持たせれば、駆け引きが楽しめると思う」

 

とあるゲームジャンルのシステムを参考につらつらと意見を述べていく。

というか、自分の意見って殆どゲームとかの引用なんだよね。まぁ、それ以外の知識なんてからっきしだし、当たり前だけどさ。

 

「なるほど……。娯楽としての側面を強めつつ、戦略性を上げることで実戦においての機転や発想をより高次へとシフトさせる、か。悪くないと思うよ」

 

「それは良かった」

 

「とは言え、今はこの戦いだ。結果がどうあれ、今は2チームの応援をしようじゃないか」

 

サーゼクスに促され、僕達もそれに大人しく従う。

 

そんなこんなあって終わったんだけど……結果だけ言えば、支取チームの勝利だった訳で。

個の能力は確かにリアス達が一歩どころか二歩は上を行っていたかもしれない。

だけど、力押しに近いリアスチームの戦い方は、支取チームの地形や環境を十分に活かしたヒットアンドアウェイ戦法の前では、暖簾に腕押し。決定打を与えられないまま、長期戦に持ち込まれることになる。

最初からギアを上げて短期決戦に持ち込もうとしていたリアスチームにとって、その状況は最悪の一言に尽きた。

ドツボに嵌るとはこのことで、今更消極的な立ち回りをした所で消耗の差は歴然。結局、支取を早急に撃破することで勝利をもぎ取るしか、リアス達の勝利の芽は残されていなかった。

当然、支取にとってもそれは予測済みだったらしく、支取は自らを囮にリアスチームのジョーカーでもある一誠を匙とタイマンに持ち込ませ、匙の神器の能力で《禁手》を封じると言うファインプレーをしたことが、決め手となった。

辛辣な評価をするのであれば、最初から最後までリアス達は支取の掌の上で踊らされていただけだった。

それでも、流石に地力に差があるのか、あと一歩、いや二歩のところまでは迫ったリアスの采配は評価すべきところだろう。

それに、今回のMVPという意味では、匙以外にも一人いる。そう、まさかのギャーきゅんである。

何がどうしたのか、彼は《神器》をもりもり使いこなして最後の砦であるリアスの護衛をこなしていた。具体的に言うと、ピンポイントな時間停止による敵の魔法を停止させたり、時には敵そのものを止めたりと、大いに健闘していた。

ミッテルトもそれには嬉しそうにしていたが、流石に無理が祟ったのか消耗したところを狙われあえなく退場。ほどなくして、リアスもやられて試合終了。

 

今回の件で、何かアザゼルとミッテルトが激おこだったらしく、リアス達に説教していた。

ゼノヴィアはあの試合を見てから思うところがあったのか、鍛錬の為に同伴していない。如何にも好きそうだからね、ああいうの。熱が伝播したんだろう。

アザゼルはなんかリアス達の戦闘指導なんかしていたらしく、監督役としてはやはり不満のある結果だったんだろう。

ミッテルトは、もっと頭の使う戦いを期待していたというのもあって、リアス達の半脳筋なムーヴには不満たらたらだったようだ。

実際、この説教タイムより前に、アザゼルに色々レーティングゲーム関連のことで聞いていたりしていたっぽいし、それも踏まえての説教なんだけど、なんか自分空気なんでこっそりとオカ研を退出し、買い物に出かけることにした。

何を買うかって?そりゃあ勿論――

 

 

 

 

 

重い静寂が部室一帯に満たされている。

伏目がちなリアスとその眷属達を見下ろすアザゼルと、その斜め後ろで事を見守る零達。

この状況が出来上がった理由は、考えるまでもない。

 

「……言いたいことは分かるよな?」

 

普段のおどけた様子は一切形を潜めたアザゼルの低い声色に、一同僅かに肩を震えさせる。

個性の強いメンバーも、この状況では流石に声を出すことは出来ない。

 

「言いたいことは山ほどある、が――敢えて俺は何も言わん。その代わり、ミッテルト」

 

「は、はい」

 

「お前、言いたいことがあるんだろ?ぶちまけちまいな」

 

「で、ですが――」

 

「どうせ、レーティングゲーム未経験の素人が口出すことじゃない、とか思ってるのかもしれないがな。俺から見れば一回や二回の差なんて誤差にもなりはしねぇ。寧ろ、さっき俺に疑問点を問いかけてきたが、その内容にしても俺の考えと似たり寄ったりだった。それが安全な場所でかつ俯瞰した視点で見て得られた情報を纏めたものだったとしても、そこの部長さんよりかは同じ立場だったら上手く立ち回れていただろうさ」

 

そう告げられ、リアスの拳が膝の上で強く握り締められる。

 

「それに、俺が言うよりもお前が言った方が結構クるだろうしな」

 

「……そう、でしょうか」

 

「まぁ、それでも理解出来ないような暗愚だとは思いたくないがな。そん時はそん時だ」

 

アザゼルに強く背中を押され、ミッテルトは多少よろめきながら前に出る。

一同の視線が彼女に集中する。

不安、期待と言った感情が乗った視線を前に視線を逸らしそうになるが、何とか踏みとどまったかと思うと、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

数秒の間を置き、決意するように顔を上げる。

 

「……アンタ達さ――馬鹿じゃないの?」

 

開口一番。そんな言葉から始まったことで、リアス達は茫然とした。

それを見てイラついた彼女は、もう遠慮はしないと言わんばかりに声を荒げて言葉を続けていく。

 

「はっきり言わせてもらうけど、私はアンタ達が支取達に接触してから五分でアンタ達が負けるって確信したわ」

 

「そ、そんな――」

 

「そもそも!!」

 

誰かが漏らした声を遮るように、ミッテルトは叫ぶ。

 

「そもそも、無警戒が過ぎるのよ。非公式含めて二回目のレーティングゲームだっていうのに、しょっぱなから攻めすぎ。支取が戦術面で特化しているって理解している癖に、会敵したからと言って打倒することに専念しすぎなのよ。それに、王を除いたとして支取チームの眷属の数は9、対してそっちは6。数の差では圧倒的不利なのに、どうして纏まって行動することを重視しないのよ!明らかに相手は戦力を分散させることを意識していたことぐらい分かるでしょうが。それとも何?非公式の時に数の差を何とか出来たから、実力なら上回っている今回ならイケるとでも思ってた訳?そうだって言うなら、負けて当たり前よ」

 

一旦間を置いて、一人一人に視線を向ける。

 

「まず、リアス。アンタは間違いなく慢心していたわ。相手の実力やコンセプトを理解していながら、術中に嵌るような選択を早々に取ってしまった時点でアウト。ブラフでもいいから、相手にこれしか手はないと思わせないようにするだけでも、理詰めが得意そうな支取の戦略を削ることが出来て、活路が開けたかもしれない。まぁ、そもそも――さっきも言ったけど、ただでさえ数が少ないのに戦力を分散させるような戦術を取った時点で駄目だったのよ。とは言え、数が少ないからこそ押し切られる前に、というやり方を否定する訳じゃないわ。結局の所、引き際を見極められなかった他のメンバーにだって責任はある訳だしね」

 

次に、姫島へと向かい合う。

 

「次に、朱乃。最初はリアスと着かず離れずを保って良い具合に相手を牽制することが出来ていたけれど、一度に相手取る数が増えていくに連れて、リアスへの護りが疎かになってたわね。相手が攻め切れていない、と判断していたんでしょうけれど、それを逆手に取って戦線維持による増援を待っていたことを読めなかったのが最大のミスね。これに関して言えば、多少の無茶をしても許される場面だったと思うわ」

 

そして、小猫。

 

「小猫は完全に罠に嵌っていたわね。突出しすぎ。あの時アンタがやるべきだったことは、味方と足並み揃えて互いにフォローを入れられる状況で立ち回ることだったのよ。特に、数的不利が分かっているなら、無理をしないで兵藤一誠を護りながら《赤龍帝の贈り物》でも何でもいいから逆転の芽を掴むべきだったわ。こういう時に戦車の耐久力を活かさないでどうするのよ」

 

木場には多少優しめの声色で紡ぐ。

 

「木場、アンタは前衛組の中では一番頑張ってたわね。個人戦績でもトップだったと思うし。所々小猫や一誠を気に掛けていたのは見てて分かったし、剣を飛ばしたり斬り込んだりと攻防一体の堅実な立ち回りが出来ていたのは良かったと思うわ。……こればかりは分野が違うから言いにくいことだけど、やっぱり単純に威力を底上げするかそれこそ一撃も喰らわないような速度を身に着けないと、臨機応変な対応が難しいんじゃないかしら。特に騎士であるアンタなら、後者を伸ばした方が翻弄するだけでなく囮になったり偵察として立ち回ることだって出来るだろうし、戦略に幅が広がるんじゃないかしら。まぁ、こればかりは間が悪かったとしか言えないわね」

 

アーシア、そしてギャスパーと一瞥する。

 

「二人に関しては、私からは正直あまり言えることはないわね。アーシアの神器は優秀だけど、現状味方に触れていないと作用しないようでは戦略に組み込むこと自体が困難な上に、数的不利を考えたら完全に立場がなかった訳だしね。こればかりは、今後の成長次第になるんじゃないかしら。ギャスパーは……予想外に活躍して驚いたわ。ピンポイントな時間停止でリアスを護っていたことを考えたら、今回一番健闘したんじゃないかしら。でも、まだ神器に慣れ切っていないと言うか、実戦不足もあるせいか消耗が激しくてすぐにダウンしちゃったから、力の加減を上手くなる必要があるわね」

 

そして、目を細めて最後に見やるは、一誠。

他のメンバーに向けるそれとは違い、明らかな失意を感じる。

 

「アンタはさぁ……何なの?匙だっけ、彼の挑発でタイマンに持ち込まれるわ、彼の神器の効果でそっちの自慢の《赤龍帝の籠手》の禁手も封じられるわで、いいとこ無しじゃないの。単純な肉弾戦でも劣ってて、気合と根性だなんて不確定要素に頼らないと敵一人下せないんじゃあ、白龍皇に相手にされないのも当然よね。アンタは誰かと体張って戦うんじゃなくて、仲間のフォローに回りながら常に《赤龍帝の籠手》によるブーストを続けていれば良かったのよ。《赤龍帝の籠手》を抜きにしたアンタは確かに弱いけど、そうじゃなきゃその限りじゃない。存在するだけで相手にプレッシャーを与えられる上に、放置すればとんでもない爆発力を生み出すアンタの存在は、ジョーカーそのものなのよ。事前情報があるなら、必然的に相手はアンタを最優先に倒さなければならなくなる。どんなに戦力差があろうとも、それを覆せるポテンシャルをアンタは持っているんだからね。そんな相手の心理を突いて動くだけでも、相手にとっては厄介極まりなかったでしょうね。殴るだけが能じゃないんだから、少しは頭使いなさいよ」

 

一人一人に言い終えたミッテルトは、改めて一同を見回す。

 

「――はっきり言って、アンタ達が敗北するなんて大抵の奴らは考えてなかったと思うわ。現魔王様の妹が王であり、眷属には禁手持ちもいれば神滅具さえも所持している者もいるチームがまさか敗北する、なんて詳しい事情を知らない人からすれば思いもよらないに決まってるわ。冥界は実力主義なんでしょ?王はそんな部下をまともに扱えない無能、兵藤一誠に至っては歴代最弱の出来そこないの烙印を押されても不思議じゃない、最悪なスタート。その意味が分かる?」

 

リアスは無言で首を横に振る。

それを見て小さく溜息を吐くが、その次に出た言葉は優しいものだった。

 

「評価が最底辺からのスタートってことは、もう後ろを振り向く必要なんてないってことよ。どんなに短い歩幅でも、確実に上を目指して、駆けあがっていけばいい。勿論、今回みたいな敗北は二度と許されないのは当然として、出来れば全勝が望ましいわね。欲張りすぎもアレだけど、今回のマイナスを吹き飛ばせるような快挙が出せるようになれば、寧ろそのマイナス効果も手伝ってかなり評価を得られるようになるんじゃないかしら。私はそう判断しているわ」

 

言いたいことは言い終えたと、アザゼルの背中にそそくさと隠れる。

調子に乗って言いたいことを感情に任せてぶちまけたこともあって、罪悪感やら不安やらが冷静になって今更一気に押し上げられてきたのだ。

らしくない、と思う反面、胸の内はスッキリとしていることもあり、複雑な気分になっている。

 

「……ってことだが、お前ら。この言い分に対して何か意義はあるか?俺だって鬼じゃない、申し開きがあるっていうなら耳を貸すことだって吝かじゃないぞ。まぁ、これは言った本人に向けることだから、俺には関係ないがな」

 

アザゼルの煽りで、視線がミッテルトに集まると、先程とは打って変わってビクリと肩を震わせる。

彼女は小心者だ。そして、自身の弱さを誰よりも理解している。

だからこそ知恵を使い、発想を膨らませ補おうとする。

知識と言うのは、才能に左右されない誰でも扱える究極の武器だと認識した上で、それを基盤に行動するのが彼女の流儀だ。

だけど同時に、知識がまったくの無意味な状況を前にすると、途端に獅子を前にした小動物のように委縮していく。

つまり、自分の理解が及ばない事象にとことん弱いのだ。

そして、今。こうしてただ視線が自分に集中している状況を打開する術を、彼女は持たない。

何を言われるのか。怒られるのか、馬鹿にされるのか、見下されるのか――悪い可能性ばかりが脳裏に過る。

何せ、レーティングゲーム素人以下で実力も劣っておりかつ部外者の癖に、偉そうなことを上から目線で語ったのだ。

過去の境遇もあって、自分への自信というものが欠落している彼女にとって、今の心境は断頭台の上で刃が首に落ちるのを待つ罪人と同じ。

 

「――ミッテルト」

 

静かに響くリアスの声。

ただ名前を呼ばれただけなのに、それが酷く恐ろしい。

 

「ありがとう」

 

「――え?」

 

貞淑な笑みでそう返され、ミッテルトは茫然とする。

当然だ。罵詈雑言が来ることを前提に構えていて、その逆を行かれたのだ。混乱するのも無理はない。

 

「貴方の言う通りよ。全部、ね。彼が安全かつ俯瞰した視点だからこそ纏められたもの、と言っていたけれど、そんなの言い訳にならないわ。どんな状況でも理想的な判断を下せる冷静さと判断力が、実際の戦場では求められる。眷属の能力を十二分に発揮出来るかどうかは、私の采配次第だと言うのに、私はソーナが相手だってことで気が緩んでいたんでしょうね。ライザーやコカビエルに比べたら大したことない――そう嘗めて掛かったからこそ、負けてしまった。皆は十分良くやってくれたわ。責任があるとすれば、私一人よ」

 

「そんなこと――!!」

 

「んな訳ねぇだろうが」

 

一誠が反論しようとした所を、アザゼルが一蹴する。

 

「俺から見れば全員連帯責任だ馬鹿。それは、監督した俺にも言えることだ。誰が良い、悪いだなんてドングリの背比べしたところで強くなれるか?眷属が可愛いのは分かるが、責任を全部背負って問題をなあなあにするのは優しさでもなんでもねぇ。ただ甘やかしてるだけだ」

 

「…………ッ!!」

 

「お前らに問うぞ。――悔しかったか?」

 

アザゼルの言葉に、誰もが強く縦に首を振った。

 

「そうだ、俺だって悔しいさ。つまり、俺達の心は今一つに纏まっている。敗北を切っ掛けに、俺達は本当の意味でチームになろうとしているんだ。分かるか?」

 

「……はい!」

 

「ミッテルトの言う通り、今はどん底だ。ワースト一位のドベだ。だからこそ、後は上を見上げるだけでいいんだ。前後不覚で始まるより、よっぽど楽でいいじゃねぇか。それに、爽快だと思うぜ?最底辺だった俺達が、トップに上り詰めていくに当たって、見下していた奴らが掌返してくる様を見るのはよ?」

 

「――はは、確かに。その通りだ」

 

気の緩んだ笑みで、一誠が笑う。

それは他のメンバーも同様で、先程まで沈んでいた表情はどこにもない。

 

「やってやろうじゃねぇか、他のチームをごぼう抜きにして、鼻を明かすぐらいはしてやろうぜ、みんな!!」

 

「――そうだね。それに、今回の敗北は良い経験だったと思うよ。半端に勝ち星を挙げた所で負けようものなら、下手すると二度と立ち直れなくなっていたかもしれないし、良い機会だったんじゃないかな。僕自身、彼女に言われた通りまだまだ足りない所ばかりで、それを見直す良い機会だったよ」

 

「今回の試合、負けて当然のものではありませんでしたわ。ミッテルトの言う通り、私達の油断、慢心がシトリー眷属達に付け入る隙を与えてしまったのは紛れもない事実です。――だから、次は勝ちます。絶対に」

 

「私も、今のままじゃ駄目だってはっきり実感しました。せめて足手纏いにならないぐらいに神器を扱えるようになりたいです」

 

「……僕は、先の戦いで神器をようやくモノに出来そうになりました。だけど、このままじゃ宝の持ち腐れになっちゃいます。もっと、もっと強くなりたいです!!」

 

「……次は、負けない」

 

各々が決意を新たに、言葉に乗せる。

確かに、今回は負けた。だが、それは終わりではない。

敗北の果てに歩みを止めた時が、本当の敗北なのだ。

なら――彼らは決して、終わってはいない。

 

「改めて、ありがとうミッテルト。貴方に言われたからこそ、私達が纏まることが出来た。本当に感謝している」

 

そう言って、深く礼をするリアス。

そんな殊勝な態度に出たリアスの反応を前に、慌ててミッテルトは反論する。

 

「ちょ、ちょっとおかしいわよその反応!普通、もっとこう――皮肉のひとつだって言う所でしょうここは!下級堕天使の癖に、とか!」

 

「いえ、今回の件ではっきりしたの。貴方の頭の回転の良さは、私の遥か上を行っている。ソーナに引けを取らない程度には、間違いなく貴方は優れているわ。アザゼルだって、貴方に代弁させるぐらいにはその辺りを信用していたことは、先の会話で分かったしね。寧ろ、これから貴方から学ばせてもらうことだって多くなるでしょうね」

 

「え、えええ……」

 

混乱が加速するミッテルトの頭を、ガシガシとアザゼルは撫でた。

 

「お前はどうにも、謙虚すぎるきらいがあるな。確かに戦闘力なら負けるかもしれねぇが、経験も浅い癖にあれだけの観察眼を持っていることを考えたら、将来性も加味すればソーナ・シトリーを超える可能性だって有り得る。俺が保障する」

 

「は、はあ……」

 

納得がいかないなりに、渋々と同意する。

そんな中、アザゼルが悪戯を思いついたような表情をする。

 

「俺が見るに、お前がレーティングゲームで求められるポジションは《女王》だな。王になれるほどのカリスマはないが、王を支える為に必要な能力の大半はもう持っているからな、これ以上うってつけなものはないだろうよ。しかしそうなるとお前が仕える王は誰になるんだろうな~。誰彼構わずに押し付けたところで能力を発揮できるとは思えんし、やっぱり信頼できる唯一無二の存在に託すのが一番だよな~」

 

「な、何が言いたいんですか……」

 

「ま――まさか、アザゼル。貴方――」

 

リアスがアザゼルの意図に気付いたのか、明らかに動揺した様子で食って掛かる。

 

「おう、こうなったらアイツにも――有斗にもレーティングゲームやらせてもいいんじゃねぇか?って思ってな」

 

「え――えええええええ!!」

 

思わず叫ぶミッテルト。

叫ばないにしても、リアス達にも同程度の動揺は広がっていただろう。

何せ、レーティングゲームは悪魔の催し。それを推薦すると言うことは、つまり――

 

「おっと、勘違いするなよ?別にアイツに悪魔になれと言うつもりはない。確かに現レーティングゲームは悪魔のゲームだ。だが、三大勢力の和平締結を切っ掛けに各神話体系勢力との緊張緩和・協調体制への移行を目的とするにあたって、将来的には天使・堕天使を始めとした他勢力チームの参加も出来るようにしようって流れになってるのさ」

 

「そんなの、全然聞いてないですよ!」

 

「そりゃそうだ。サーゼクスなりミカエルなり、各勢力のトップぐらいしか知らん極秘事項だからな」

 

「その極秘事項を何平然とぶちまけてるんですか……」

 

「信頼の証だよ。まぁ、それを前提にしないと話が進まないからってのが一番だが」

 

「行き当たりばったりが過ぎる……」

 

ミッテルトが肩を落とす。

同じ堕天使として、これが上司でいいのかとか思わなくはないが、そもそも今は実質無関係だったことを思い出す。

 

「でも、それはあくまで三大勢力のみの話でしょう?人間である彼はその枠外にある筈だけど」

 

「尤もな疑問だな。でも、アイツは人間だが普通の人間じゃあない。下手な悪魔では相手にならないレベルの猛者だ。そして同時に、三大勢力のトップに懇意にされていると言う、有り得ない待遇の存在だ。今までは存在を秘匿出来ていたが、今回のレーティングゲームの観戦をさせるにあたって、サーゼクスはワザとアイツが周囲に認知されるように振舞った。アイツ程の存在をこれ以上隠し通すなんて無理だ。だから先手を打って、アイツの存在を公にしたんだろう」

 

「お兄様、まさかそんな考えで……」

 

「アイツは人間だ。如何に強くても後ろ盾がないなら幾らでも漬け込める。そこで、俺達三勢力のトップが唾付けているってポーズを取れば、一気に安全が保障される。それは、アイツのお手つきであるミッテルトやゼノヴィアにも言えることだ」

 

「お、お手つきって……!!」

 

途端に顔を真っ赤にするミッテルト。そんな様子をどこか不満げに眺めるリアスと姫島。

 

「兎に角、アイツが三勢力にとって特別だってアピールすることが出来れば、余程の馬鹿でもない限りアイツを無下に扱うことはなくなる。そして特別ついでに、レーティングゲームの例外として無理矢理捻じ込めるって心算よ」

 

「そんなに上手く行くのでしょうか?確かに零君は知る人からすれば優秀であると分かってはいますが、未だ和平が成って不安定な状況でそんなことをすれば……」

 

「姫島の言うことも尤もだ。当然、今すぐにって訳じゃあない。あくまで今回の顔見せは牽制だ。それに、レーティングゲームするにしても、まだ必要なものさえ揃っていないのにどうやってやれって言うんだ?アイツが人間のまま王になれる方法をサーゼクスの方で根回ししているらしいが、それを抜きにしても信頼できる仲間が不足している。ある程度は知人から眷属を借りることでフォローできるが、絶対にどうにか出来る保証はない。アイツのペルソナが如何に強かろうと、本質は人間だ。人海戦術で攻められればひとたまりもないだろう。だからこそ、半端な数の眷属じゃあ勝負にならない可能性さえあるんだ。……アイツが本気になれば別かもしれねぇがな」

 

最後だけは聞こえないぐらいに小さな声で呟くだけに留まる。

しかし、近くにいたミッテルトの耳には届いていた。

 

「まぁ、あれだ。そういう考えが上の方で進行している、って事情だけ覚えておけば今はいいさ。……って、今気付いたがその当事者はどこにいった?」

 

「あれ、本当だ……いない」

 

部屋中見渡しても、零の姿は確認できない。

話の間で抜けたことは理解できるが、タイミングがさっぱり分からない。

 

「まさか、俺達に失望して出ていったんじゃ……」

 

「あのお人好しがそうするなんてあまり考えられんが……まぁ、思う所があるなら改めて謝罪なりなんなりしに行けばいいさ。取り敢えず、今日はもう解散だ。休んで次からの鍛錬に備えておけよ」

 

アザゼルが両手を叩き、事態を収束させたところで解散となった。

 

 

 

 

 

生徒会室に静かに響く筆を動かす音と、小気味良い判子を押す音。

レーティングゲームを終え、事後処理を済ませた私は再び支取蒼那としての責務を果たすべく、残り少ない夏休みを生徒会の溜まった仕事の処理に勤しんでいた。

今日も手伝いはいない。レーティングゲーム後の疲労やダメージが未だに尾を引いている者もいれば、私が断ってそんな彼らの回復をサポートするようにしたせいでこの場にいないものもいる。

 

レーティングゲームは、私達の勝ちで幕を下ろした。

嬉しいと思うよりも、終わったことで得られた虚無感の方が印象強かった。

思えば、リアスに勝ちたくて必死になりすぎていたせいで、試合中の過程も漠然としている。それぐらい、夢中になっていたのだ。

兎に角、勝ちたかった。自分の持てる全てを吐き出して、リアスとぶつかりたかった。

そして、証明したかった。私の眷属に特別はいなくても、決して劣る訳ではないと言うことを。

私の夢は、冥界のような実力主義が蔓延る世界でもしっかりと存在できるのだと、私の夢を否定した者達に見せつけたかった。

 

「……どうぞ」

 

ドアのノック音が部屋に響く。

既視感を感じたそれを迎えると、やはりと言うべきか、そこには零君がいた。

しかし以前と違うのは、手荷物を抱えての登場と言う所だろうか。

 

「零君、今日はどうしましたか?」

 

「ああ、大したことではない」

 

そう言って部屋に入ってくる零君。

真っ直ぐと私の前まで近づいてきたかと思うと、小さな箱を差し出してくる。

 

「レーティングゲームの勝利祝いだ、受け取って欲しい」

 

「あ――――」

 

予想外の対応に、言葉が詰まる。

しかし、受け取らないのは失礼に当たると、無意識にそれを受け取っていた。

 

「開けて、いいですか?」

 

「是非」

 

丁寧に傷つかないように梱包を解いていく。

そうして優しい手触りを楽しみながら中身を取り出す。

 

「これは、ハンカチ?」

 

贈り物の内容は、シルバーホワイトで彩られたハンカチだった。

 

「正直、女性への贈り物なんて殆ど経験がなくてな。何を送れば良いか悩んでいた時、君が汗を流しながら仕事をしていたことを思い出したんだ」

 

「なるほど、それで……」

 

ジッとハンカチを見つめる。

安物のそれとは一線を画した素材を使用しているのは分かるが、相当値が張るだろうそれをまさか接点の薄い自分に平然と渡すなんて、流石に予想外だった。

だが、嬉しくもあった。

眷属間だったり対外的な所で勝利を祝われたりはしたが、それとは無関係な所でこんな形で祝われたのはこれが初めてだ。

それだって、シトリー家との繋がりを得ることが目的だったりと、政治的な絡みが殆どで心の底ではいつも通りのヨイショだと適当に流していた。

でも、彼は違う。

シトリー家の娘でも、生徒会長としてでもなく、ただ一人の友人として祝ってくれている。

立場によるしがらみに常に身を置く私にとって、彼が私に向ける態度はとても心地の良いもので、だからこそ素直に感謝の言葉を言える。

 

「ありがとうございます。大事にさせて頂きますね」

 

「喜んでくれて何よりだ。それとなんだが……これを、君の眷属達に渡して貰えないか?」

 

残りの手荷物が机の上に置かれる。

大きさこそまばらだが、誰宛てかを沿えたカードを見る限り、これも私同様祝いの品だと言うことにすぐに気付いた。

 

「どうしてです?私のように直接渡せばよろしいと思うのですが」

 

「君と違って、眷属の方とは接点が薄いからな。接点の薄い相手がいきなり押しかけて祝いの品だけ渡しても困るだけだと思ったんだが、渡さない訳にもいかないからな。せめて君が仲立ちして渡してくれた方が、素直に受け取ってもらえると思ったんだ」

 

「……いえ、それは貴方がきちんと渡すべきです。言い分には納得できますが、誠意は見せるべきです。それこそ、真に祝おうと思っているのでしたら猶更です」

 

「む……」

 

困ったように表情を歪ませる零君。

こんな表情を見るのも、思えば初めてかもしれない。

知っているようで知らない彼という存在が紐解かれていくのが、見ていてどこか面白い。

 

「何でしたら、私が眷属達に伝えて根回ししますよ。不安でしたら、私も随伴します」

 

「いや、そこまでしてもらわなくても――」

 

「いいんですよ。これはあの子達の為でもありますし、それぐらいの労力は惜しみませんよ」

 

「……なら、お言葉に甘えても?」

 

「是非」

 

そうして、暫定的な予定だけでも立てて彼は生徒会室を後にしたのを見送った私は、再びもらったハンカチを眺める。

 

「あら……?」

 

裏面を見てみると、地味とも取れる色合いの中に、申し訳程度に刺繍が施されているのが確認できた。

丸くなって寝ている猫と、隣り合うピンク色の尻尾のような草が描かれており、配色の関係でピンク色がとても目立つ。

気分転換も兼ねて、そのピンク色の草に関して調べてみる。

 

「猫柳、ですか」

 

それらしき資料を漁り見つけたそれは、刺繍のそれと瓜二つだった。

そして、ピンク色のそれが何を意味するかも、すぐに理解した。

 

「『努力が報われる』――」

 

ピンク色の猫柳が意味する花言葉のひとつを口にした途端、胸が締め付けられるような気持ちになる。

苦しい。だけどそれさえも心地よく感じるという、倒錯的な感情。

分からない、分からないが――とても暖かい。

資料を仕舞い、仕事に戻る。

一瞬だけ硝子に移った横顔は、自分でも見たことの無いぐらいに花が咲いていた。




Q:何で投稿した、言え!
A:気にするな!

Q:本人の知らない所で重大な話が進んでいくスタイル
A:真面目な話する時、主人公は邪魔なんだよ(直球)

Q:寧ろミッテルトが主人公じゃね?
A:もうそれでいい気がする。

Q:会長可愛すぎ
A:眼鏡属性のない自分が認める数少ない眼鏡女子ですからね。実はミッテルトよりも先に好きになった。因みに他に好きなのはタバサと山田真耶と朝田詩乃とコウサカ・チナかな。なお、男になると五倍以上に膨れ上がる模様。

Q:また投稿したってことは、再開するってこといいんだよね?
A:(無言の脱走)
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