Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D 作:花極四季
支取の計らいで彼女の眷属達にもお祝いの品を渡すことが出来た。良かった良かった。
匙君には複雑そうな目で見られたリ、ベンニーアって言うおさげの女の子にジッと見つめられたりとたまに良くわからないことになったりしたが、問題らしい問題は特に起こらなかった。
惜しむらくは、眷属の皆さんの趣味嗜好をこれっぽっちも知らないのでピンポイントで喜びそうなものは渡せなかったことぐらいか。
ま、まぁこういうのは気持ちが大事って言うし?え、それを贈る側が言うのは駄目だって?うるさい。
あと、何かリアス達に謝られた。今度はあんな無様は晒さない、とか言うだけ言って去っていった。
……ああ、レーティングゲームのことね。一応オカ研の一員だから、あの時いなかった自分にも決意表明か何かを聞かせたかったんだろう。
頑張れ、とは言っておいたけどね。寧ろ、唐突過ぎてそれぐらいしか言えなかったよ。
問題と言えば、違うところで起こってました。
それは、アーシアに告白する輩が出た、ということだ。
一誠じゃないのかって?違うよ、残念ながらな!!
ディオドラ=アスタロトっていう、リアスと同じ優秀な若手悪魔の一人らしく、何でも悪魔になる以前より面識があるらしく、冥界で再会したことを切っ掛けにここ最近アプローチが激しいらしい。
ポストに収まりきらないラブレターとプレゼントの猛攻に、アーシアは困り果て、女性陣もそんなやり方に不満がある様子。
好意の押し付けもあるが、高価な贈り物をすれば靡くと思っていそうなやり口が気に食わないらしい。
……最近そこそこ高い贈り物を祝い物で出した自分には、何か言える問題ではありません。と言うか、支取達もそんな考えだったりしたりする?ヤベェよ……ヤベェよ……。
とは言っても、悪いイベントばかりではない。
うちに居候することになったイリナちゃんが、本格的にこちらに滞在することになったことに加え、駒王学園に転入することになったのだ。
学年は二年。ゼノヴィアともっと一緒にいられるよ、やったね!
それと、何かイリナちゃん天使になってた。比喩じゃなくてガチで。
何でも、悪魔の駒と似たシステムで転生したらしい。しかもあのミカエルの傍付きなんだとか。すげぇ。
それでふと思ったんだけど、ミッテルトにそのシステムを使ったらどうなるんだろう。普通に天使になっちゃうのかね。一応、墜ちた天使ってことで元を辿ればそういう訳なんだし。
取り敢えず、当面の問題はディオドラだ。
この話題に関しては、兵藤とミッテルトが特に気合を入れて掛かっており、何故かそれを理由にペルソナの扱いを学ぶことに精力的になっていた。
どうしてそう繋がるのかは知らないけど、ミッテルト曰くディオドラは「ゲロ以下の匂いがプンプンする」奴らしい。
女の子がゲロとか言っちゃダメだよ、アニメに影響されるのも善し悪しだね。
それはいいとして、同じ能力を扱えるもの同士で先輩である以上、それに付き合わない理由はない。
ミッテルトの吸収力は凄まじい。自分のようなゴリ押しじゃなくて、弱いペルソナでも状況に応じて使い分けることであらゆる状況に常に対応出来る、そんな頭の良さがペルソナとの相性が抜群なのだ。
実際、手合わせしている時に手加減してたとは言え、一回普通に負けちゃったしね。こりゃうかうかしてられんわ。
そろそろ自分も、もっと強いペルソナを扱えるようになるよう頑張らないと。
私は苛立っていた。
理由は、今アーシアに付きまとっているストーカー、ディオドラ=アスタロトにある。
あの優男を見たとき、確信した。あの男は、私と同じだと。
自分で言っておいて甚だ遺憾ではあるが、私が言いたい同じというのは、何か意思を持って偽りの仮面を被っているという点だ。
同族嫌悪、と言うべきか。昔に比べたら丸くなってきた実感こそ出てきたが、だからこそ目の前の男が気に食わなかった。
そりゃあ、アーシアが嫌そうにしていることを抜きにしても、この問題はあの子の問題だ。あの子が断固として拒否したならともかく、煮え切らない態度を貫いている現状で私が強く出ることは出来ない。
私は所詮、部外者なんだから。
でも――やっぱり気になる。
アーシアの態度以前に、あの男のあの笑顔。見る人次第では好青年に見えなくもないが、私にしたら不格好で似合わない仮面を付けているようにしか見えない。
その奥側までは流石に見えないけれど、どうせ碌なものじゃないのだけは分かる。
正直な話、このプレゼント爆弾だって相手にとっては小手調べに過ぎない筈だ。
アーシアへと向ける異常とも言える執着。ただの恋愛感情だと言い切れるのか?
ただひとつ言えることは――今のままでは、最悪の事態に対応できない。
珍しくレイは今回の件に関して深く関わってくる様子はない。
彼なりの考えがあるのかもしれないが、それならそれであまり彼を頼るのも悪い。
だけどせめて、ペルソナの練習にだけは付き合ってもらう。間近で彼の強さを見てきたとはいえ、学ぶ点はまだまだ多い。
ペルソナの耐性や使えるスキルの把握に留まらず、そのペルソナだからこそ出来る動き方も研究する必要がある。
自衛できる程度には間違いなく強くなりたいし、欲をかくならばレイの隣で一緒に戦えるぐらいにはなりたい。
魔王様達の企みで、近いうちにレイの存在は公に晒されることになる。そして、良くも悪くも注目を集めることになるのは確定している。
遅かれ早かれそうなっていただろうことは、割と前の段階から予想はついていたので、こちらが進言する前に手を打ってくれたのは正直ありがたかった。
だが、そのせいで彼の傍で暮らしている私達は、より一層彼を護るべく警戒を厳にする必要が出てきた。
如何に三勢力の後ろ盾があると言っても、それが万全に機能する保証はどこにもない。
特に《禍の団》のようなテロリスト組織の存在がちらついている今、寧ろ人間であるレイを人質なりなんなりして弱みを握ろうなどと言う蛮行を働かないなんて誰が言い切れる?
万が一が起こった時、即座に対応することが出来るのは私達ぐらいのものだ。
しかし、それだけでは駄目だ。
対応できるだけでは、足りない。オーフィスの下に集う精鋭を仮想するならば、ヴァ―リのような反則がごろごろいると前提にするぐらいが丁度良い。
私の想像を超える化け物がいると想定するなら、今の私達では圧倒的なまでに実力不足。
それを補って余りあるほどにレイのペルソナが強いのは分かる。しかしそもそも、護衛対象に頼ることを前提とする時点で間違っている。
だから、強くならないといけない。レイの力を頼らずとも、彼を護ることが出来るのだと証明できるぐらいに。
ゼノヴィアも、最近木場と剣術の訓練をよく行っているし、自主訓練にも精を入れている。彼女もまた、同じ気持ちなんだろう。
イリナもミカエル様の指示とは言え、彼に助けられた恩もあってか使命以上の感情を乗せて取り組んでくれている。
そうさせるのもやはり、彼の人徳の賜物なんだろう。
だから、アーシアには悪いけど今回に限ってはあまりあの子に構っている余裕はなさそうだ。
それに――あの子はどうにも、苦手だ。
嫌いではない。寧ろ好意的な感情さえある。
何というか、その好意的な感情に裏打ちされた善性があまりにも眩しくて、一方的に私が苦手意識を持っているだけに過ぎない。
善性、と言う点ではレイも同様だけど、彼の場合は危なっかしさの方が先行するせいで、そんな感情を挟む余地がない。
それに、彼は心の隙間に入るのが上手い。自然に、さも当たり前のようにいつの間にか傍に居ることが普通になっている。そんな立ち位置を保ち続けることが出来る、天性の人たらし――いや、人外たらしか?
それでいて、普段の様子を見たら一切そんな特別を感じられないぐらいに平凡を極めているせいで、絶妙な距離感が完成しているのだ。
ある意味、彼の最大にして最強の武器はペルソナでも何でもなく、その人心掌握術にあるのかもしれない。
対してアーシアは、誰が見ても明らかなほどに清廉で、秀麗で、尊い。
目はぱっちりくりくりしており、肌はつやつやのもちもち、髪も絹のようにさらさらで、非の打ちどころがない。
それでいて、リアスや朱乃のような雲の上の存在ではなく、誰もが触れ合える気安い距離で接することが出来るので、とても身近な存在に感じられるのもポイント。
異性に好かれる要素をふんだんに秘めておりながら、同性からの嫉妬心さえ抱かせないほどに純粋で打算の無い優しさを持ち、寧ろ性別年齢問わずに小動物的な保護欲を掻き立てられる、ある意味での完璧超人。
表現するなら、そう。彼女こそ天使と呼ぶに相応しい。それこそ、種族:天使なだけの奴らよりもよっぽど相応しい。
そして、私は……多少は見れる見てくれではあるが平凡の域を出ず、堕天使になってからは色々と不摂生が祟ったこともあって、髪も肌も綺麗とは言い難い。
嘘の自分を演じてきたことで他者との距離を維持し、その心は打算や計算に塗れている。
その演じるキャラクターも、気安さこそあれど万人受けするほどではない。それどころか、距離感を誤ればウザがられるタイプのそれだ。
仮に私が清楚タイプを演じたところで、鼻で笑われるのがオチだ。それは私が一番分かっている。
同じ女なのに、こうも違う。
羨ましいとか、そういうのではない。ただ、そんな彼女の隣に立つにはあまりにも私はみずほらしくて、彼女の振りまく光を遮る帳となっているのではないかと、不安になるのだ。
アーシアは私に親身に接してくれている。それが、誰にでも向けられるものと同じ価値だとしても、繋がりが深いことだけは確かで。だからこそ、一緒に居る機会も自然と多くなる。
私が進んでそうしているのではなく、アーシアから近づいてくるのだから、どうしようもない。
突っぱねる気はない。そんなことをしてあの子が傷つくような真似をしてみろ。私が私を許せなくなる。
私は一度、あの子を絶望まで追いやった。それが未遂で間接的要因でしかないとしても、そんなものが言い訳になるなんてこれっぽっちも思わない。
あの子は幸せになるべき人間――いや、悪魔だ。少なくとも、小悪党な私なんかと比べるのも烏滸がましいぐらいに、彼女は幸福に浸る権利が、義務がある。
だけど、彼女はそれを許容しないだろう。自己より他者を重んじるからこそ、アーシア・アルジェントなのだから。
「――隣、いいですか?」
「アーシア……うん、いいッスよ」
噂をすれば影。どこか疲れた様子のアーシアが、寄り添うように私の隣に座る。
「……まだ、続いてるの?ディオドラからのプレゼント」
「はい……。私自身、こんなに好意を向けられたことがなくて、今も戸惑っています。気持ちは嬉しいのですけれど、好意を受けたくてあの方を癒した訳ではないので、複雑な気分です」
虚ろな目で俯くアーシアの姿は、どこか痛々しい。
普段から明るい彼女が落ち込んでいるというのは、やはり違和感しか感じられない。
そして、そんなことも露知らず一方的な好意の押し付けをして満足しているディオドラが、ますます嫌いになっていく。最初から好きになる要素はゼロだが、最早普通の評価に戻るようなことは金輪際訪れないだろう。
「だったら、そう言えばいいのに。アーシアは優し過ぎるッス。八方美人を否定する訳じゃないけど、嫌なものは嫌だって否定しないと、結局みんなが傷つく結果になることだってあるんだから、スパッと拒否するぐらいしないと、それだから相手が付け上がるのよ」
「……そう、でしょうか」
「間違いないッス。アーシアだって、口にしないだけで迷惑だと思っているんでしょ?なら、意思を見せなきゃ。アーシアがそんなだから兵藤一誠とかゼノヴィアが躍起になって護ろうとしているって、自覚したら?」
アーシアからの返答はない。
少し言い過ぎたか……そう思った矢先、彼女は満面の笑みを私に向けて来た。
「ありがとうございます。こんなに強く言ってくれたのは、ミッテルトさんが初めてです」
「え?てっきりリアス辺りからはこれぐらい言われてると思ってたけど」
「部長は……何といいますか、完全にディオドラさんを敵視しちゃってるらしくて、この件で魔王様に現状の対策を訴えています。アーシアは心配しなくてもいいからね、って……」
あの馬鹿、何呑まれているんだか。
こういう時こそ、王であるリアスがアーシア自身にも問題があることを指摘しないといけない場面でしょうが。
「だから、嬉しかったんです。私って優柔不断で引っ込み思案だから、どうしてもこういう時にはっきりと言いたいことが言えなくて……それで迷惑を掛けることが多いことも自覚しています。ですが部長さんやイッセーさんとか、皆さん私に良くしてくれて、それが嬉しくて好意に甘えてしまっている自分が情けなくもあると同時に、恵まれているという実感が得られて、それをもっと享受したいと考えてしまうんです。……でも、そんな駄目な私をミッテルトさんは叱咤してくれて、でもそれがただ怒っているだけではなくて、私を心配してくれているんだってことが分かるから、余計に嬉しくて……。えへへ、自分でも何が言いたいか良く分からなくなってきました」
そうはにかんで答えるアーシアは、どこまでも自分の知るアーシアで。
私のこんな他愛のない会話でさえも、天の恵みであると言わんばかりに仰々しく受け答えしてくれる。
それを見て――ああ、少しは私も役に立てているのかな、なんて自己満足の感情が満たされていく。
「――だけど、これだけは言えます。私、ミッテルトさんとお友達になれて、とても幸せです!」
花が咲いたような笑顔と共に、そう答えた。
しかし、私の中では動揺が走っていた。
「トモ……ダチ?」
「はい!」
トモダチ、ともだち、友達……。私の知る限り、それを意味する言葉はひとつしかない。
友達?アーシアと私は、友達?
こんな天使のような子と、欲望の為に墜ちることを是とした私が、友達だって?
――有り得ない。そう、聞き間違いだ。きっとそう。
私なんかが、この子の友達を名乗る資格なんてない。
ない、のに――どうしてこんなにも心が暖かいんだろう。
理解の及ばない感情が、私を混乱させる。答えるべき言葉はとっくに決まっているのに、それを口に出せない。
理性と本心がせめぎ合い、無意味に時間が流れていく。
「――あ、部長さんが帰って来たようです。お出迎えに行ってきますね!」
「あ――――」
ぱたぱたと足音を立てて去っていくアーシアの幻影を掴むように、差し出された手は虚空を掴むだけに終わる。
言えなかった。
『私も、アーシアと友達で良かった』
ただそれだけの言葉なのに、言えなかった。
嬉しかったのに、全然嫌じゃなかったのに。私は、何かにつけて自分で言い訳して、そんな当たり障りのない言葉さえ紡げなかった。
――ああ、そうか。私はいつだって受け身だったから、自分で手を伸ばして受け入れるのが怖くて堪らないんだ。
裏切られたら、失望されたら――なんて、そんなあの子に限って有り得ない可能性に怯えている。
少しは変われたと思っていた。レイと共に歩んで、駄目な自分を少しは変えられたと勘違いしていた。
結局、私は昔と変わらない。私の時間は、レイナーレ姉さまと共に在った頃から止まったままなんだ。
「私はっ……!!」
悔しさと情けなさを必死に堪える。
時間が経てば、またいつものミッテルトに戻れる。
だから、もう少しだけ……その時が来るまで、こんな愚かな自分を忘れないように心の痛みと共に刻みつけよう。
そう、いつもの私を演じれば、みんな何も変わらない。いつも通りの日常に戻れるから――
Q:主人公ェ……
A:ミッテルトがどうしたって?
Q:まさかのベンニーアにフラグ?
A:マイナーなキャラを推していくスタイル
Q:零君って何のためにいるの?
A:今は雌伏の時……!
Q:ミッテルトがアーシア好きすぎる問題
A:誰だってそうなる、俺だってそうなる。
Q:ミッテルト良く曇るね
A:作者が曇らせるの好き……げふんげふん。今の彼女はコンプレックスの塊で、生来の扱いからネガティブシンキングになりやすい、よわいいきものだからね。でも、それを乗り越えればきっと……!