右手の三本指だけが世界最強で、『剣士』なのに刃物を握れない呪いをかけられた俺が、変態少女達と大陸の『覇王』を目指すだけの伝記   作:おま風

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16 冒険者として生きる

 目を開けると、こちらを心配そうに見下ろす二人の姿が見えた。

 

「お嬢様! 大丈夫ですか?」

 

「姉御! 起きてください!!」

 

「っ!? エトナ! ラビ! 生きてたのか!?」

 

 がばっと勢いよく起き上がり、両手で力一杯に抱き寄せる。二人の頬が俺の頬と重なる。肌を通して感じる心地の良い体温に、心が安らいだ。

 

「お、お、お、お、お、おお嬢しゃま!? 良いんですか? 何の御褒美でしゅか!?」

 

「どわっ! 姉御、力強い! 痛い痛い。首が折れるっす!」

 

「幻じゃ、ないんだな・・・・本当に、生きてるんだな・・・・良かった」

 

 自然に涙が溢れてきた。

 

「お嬢、様?」

 

「姉御?」

 

 その異常な様子を察してか、急に静かになる二人。そして、無言のままそっと俺の背中に手を回し、三人で抱き合うような恰好になる。

 

「お嬢様、気を失っている間に怖い夢でも見たのですか?」

 

「ラビたちは、ここにいるっすよ。死んでなんかいません」

 

「あぁ。すまない。取り乱してしまって・・・・もう、大丈夫だ。ありがとな」

 

 仲間の存在を十分に確認した後、俺はそっとエトナたちを解放した。行儀が悪いのは承知で、服の袖を使い涙と鼻水を拭う。

 

 ふと、自分の右手を見ると、傷がなくなっていた。辺りを見回しても、魔法による破壊の痕跡は見つからない。

 

 夢? だったのか?

 

 すくっと立ち上がり、背後にそびえ立つ、アンサルヘイブンの外壁まで歩を進める。そして、手を伸ばした。

 

――――が、指先が触れる寸前で、ばちっと電撃が走り、はじき返された。

 

「痛っ」

 

 手の先から白い煙が上がっていた。

 

「どうしたんすか?」

 

「いや、何でもない。なぁ、エイベルたちはどうしたんだ?」

 

「え? エイベルさんたちなら、もう街に帰っていかれましたよ? あんなに感動的な握手を交わしておいて、もう忘れたんすか?」

 

「あぁ、そうだったな。で、何で俺は気を失っていたんだ?」

 

「それは、こっちが聞きたいっすよ。とりあえず、街道は監視の目があるから森に身を隠そうと、城壁伝いに歩いていたら、突然気絶されたんすよ? 焦りました」

 

「・・・・そうか」

 

「あの、もう大丈夫なのですか?」

 

 エトナが尋ねる。俺は、「あぁ。心配させたな。寝たら元気になったよ」と、ぐっと親指を立ててみせた。

 

「それなら、安心しました。もう少し、休まれても良いと思いますが、いかがしますか?」

 

「いや、日が昇るまでには森に入りたい。行くぞ。改めて、俺達の冒険の始まりだ」

 

「「はい」」

 

 二人の返事が重なる。

 

 シグルスとの邂逅、街の消滅、マーゴットとの再会。そして、大切な友の死。おそらく、全て夢などでなはい。

 この世界は、俺の知らない所で、何かとてつもないことが起きようとしている。いや、現在進行形で起きているのか・・・・

 

 マーゴットは『魔剣』を探せと言っていた。

 

――『我を見つけよ』――

 

 数時間前に聞いた、少女の声を思い返す。確証はないが、確信はあった。きっと、この声の主のことだと。

 

 どこに向かえば良いのかも分からない。何が正解なのかも分からない。

 

 それでも、進むしかないのだ。

 

 もう二度と、大切な仲間を失わないためにも。俺が、強くなるしかないのだ。

 

 遠くの空がうっすらと明るくなり始めていた。俺たちは、三人で仲良く肩を並べて、まだ薄暗い夜の闇を掻き分けていった。

 




不穏な空気を残して、冒険が始まりました。これから、シャーロットたちはどのような運命を辿ることとなるのでしょうか・・・・
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