右手の三本指だけが世界最強で、『剣士』なのに刃物を握れない呪いをかけられた俺が、変態少女達と大陸の『覇王』を目指すだけの伝記   作:おま風

18 / 18
17 備える者たち

~オズワードヴァンネス王国の隣国、グロバルキア帝国内のクロフォード領~

 

「アルマ! 大変だよ! って、うわぁ! ごめんなさい!」

 

 高級素材で造られた各種家具が並ぶ、煌びやかな寝室。多種多様な装飾品で彩られた大扉を勢いよく開け放って、身長三メートルをゆうに超える大男が飛び込んできた。

 

 かと思うと、すぐさま身を翻して縮こまってしまった。

 

「なんじゃ? フランシスか? 女子の寝床にノックもせずに入ってくるとは、お主も随分と漢になったものじゃのう?」

 

 部屋のど真ん中に配置された、黄金色に輝く浴槽に浸かる美女が、愉快そうに笑い声をあげる。

 

「ごめんなさい。まさか、こんな時間にお風呂に入ってるなんて思わなくて・・・・あの、もう服着た?」

 

「そう急くな。まだ、浴槽から出てもおらんわ」

 

「うぅ、ごめんなさい・・・・」

 

 ばしゃっと、大量の温水を纏いながら立ち上がる。その肢体は一つの芸術品のように美しかった。

 

 しばらくして、部屋の入口でうずくまる大男に声をかける。

 

「良いぞ」

 

「う、うん」

 

 大男が振り返る。が、

 

「うわぁ! 服着てよ!」

 

 すぐさま、先程と同様に身を翻して縮こまってしまった。

 

「かっかっか。愉快じゃのう。実に愉快じゃ」

 

「もう、絶対に信じないからね!」

 

 美女は、滴り落ちる水滴を一切拭うことなく、入浴用に設けられた大理石の床を超え、ひたひたと絨毯の上を歩いてベッドまで辿り着くと、そこに腰をおろした。

 

 と、大男の隣から、一人の女性が姿を現した。隆々とした筋肉が印象的な赤毛の女性であった。

 

「アルマ、あんまし私の弟を苛めないでおくれよ。フランシス! あんたも男ならもっと堂々としな!」

 

「うぅ、ごめんなさい。お姉ちゃん・・・・」

 

「全く、でかいのは図体だけかい」

 

「フィリスか、姉弟そろってこんな夜更けに領主の部屋へ何の用じゃ?」

 

「あ? 何をとぼけているんだい? あんたも気付いただろ?」

 

「・・・・あぁ、もちろん。アンサルヘイブンのことじゃな」

 

「そうだ。また、『覇王』が、街を一つ消し飛ばしたみたいだね」

 

「事後処理は、管理者の誰かがうまくやったみたいじゃが・・・・一体シグルスは何を考えているのじゃろうな」

 

「『魔王』の大量虐殺に、街の破壊。何か、嫌な予感がして仕方ないよ」

 

「ふむ。そうじゃの。わしらも闘いの準備をしておく必要があるかもしれんな」

 

「私も弟も、『覇王』に太刀打ちするために必要な称号はあと一つ。急いで習得しないとね」

 

「信じておるぞ。わしの可愛い『大英雄』様よ。かっかっか」

 

「その期待に応えてみせるよ。我が主、『帝国の魔女』アルマ・クロフォード。がっはっは」

 

「ぼ、僕も、できるだけ頑張るよ。足手まといにならないように・・・・えへへ」

 

 アンサルヘイブンの壊滅とその隠蔽。

 

 一握りの実力者のみがその真実に勘付く中、煌々と光を放つクロフォード邸の一室で、領主の不気味な笑い声と、赤毛の女性の豪快な笑い声、そして大男の控えめな笑い声が、奏でられた。

 

 




これにて、第一章完結です。

引き続き、第二章を執筆していこうと思います。
評価、感想、ブクマ、レビュー等よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。