キン肉マン~転生したらカナディアンマンだった件~ 作:やきたまご
そして国辱マンとなった!!の巻
俺は、会社への通勤途中いつも通る踏切の近くまで来た。
現在、赤信号を知らせる音が鳴り響き、踏切のバーも落ちている状態だ。
仔犬が線路の真ん中にいる。
電車はすぐそこまでせまっている。
俺はとっさに踏切のバーをくぐって走り出した。
犬の体を抱きかかえたが、もう電車はすぐそこまで迫っている。
逃げても間に合わないと思い、犬を投げ飛ばした。
電車が目の前まで迫った瞬間意識が途絶えた。
気が付けば暗闇の世界にいた。
俺は電車にひかれて死んだんだな。
特に何も立派なことは成し遂げられなかった人生だが、俺の大好きなキン肉マンに出てくるテリーマンのように子犬をかばって電車の前に立った。そう思えばいい死に方を出来たと思う。
やがて、暗闇が少しずつ明るくなり、自身のいる場所が明らかになった。まわりにはリングがたくさんあった。そして俺の知っているキャラ達が死んでいた。キン肉マン、ネメシス、五王子、ザ・マン、その他強豪の超人達……
「なんだこれはっ!? 俺は悪夢でも見ているのか!っ?」
ふははははは
顔のよく分からない男達が邪悪に満ちた笑い声をあげていた。
「ピースは全て揃った。今こそ超人を絶滅させる時だ!!」
正体不明の男達の持ったピースが宙に舞い、大きな球体となった。その球体は虹色の光線を放った。
「あれはカピラリア光線、うわぁあああああ!!」
俺はその光の中に消えてしまい、意識がフィードアウトした。
目が覚めた。はっきりとした意識や感覚がある。俺は生きているのか? そういえば周りには木々がいっぱいある。どうやら森の中のようだ。俺は電車にひかれたから、恐らく線路か病院にいるはずだよな……。手にずしりとした感触を感じる。俺は斧を持っていた。凄く重い斧のようだが、不思議と軽く感じる。そして自分の腕が赤と白のカラーリングだった。
「おい、嫌な予感しかしないぞこれ……」
大のキン肉マンファンである俺はここまでの情報で一つの解答を弾き出した。すぐ近くに小屋があった。自分の姿を見れるの鏡はないかと小屋の中を探した。姿見の鏡があり、自分が一体何者かであるかを確かめ驚愕した。
「げぇ――――――っ!! カナディアンマン!?」
そう、俺は死んでキン肉マンのカナディアンマンに転生したのだ。
「本当にキン肉マンの世界に来ちまったみたいだ……」
今は懐かしい真空管の大きいTVをつけたら超人オリンピック特集なるものがやっており、優勝候補筆頭のロビンマスクの姿があった。小屋に合ったカレンダーの西暦を見たら1975年。つまり、キン肉マンの時代で言うと超人オリンピック第19回目間近の時である。
「ということは俺にも参加の知らせが?」
小屋の近くにあった郵便ポストの中を見ると、超人オリンピック参加の招待状が届いていた。確かカナディアンマンは原作ではこの超人オリンピックでベスト8に残り、ロビンマスクにあっさりと敗北している。
「というか、この後の人生をカナディアンマンとして過ごすのかよ……また死んで良い超人に転生とかできないかな……いや、カニベースあたりとかになる可能性もあるからやめておこう……」
キン肉マンファンだからこそ分かる。カナディアンマンがどんどん転落していき、挙句の果てに国辱マンとまで呼ばれる始末になることを。生みの親である横浜市の沢田君はどんな思いで自分の超人を見ていたのだろうか? まあ最近パイレートマン相手にかなり頑張ったから読者のイメージは大分良くなったと思うが、いや、そんなことはどうでもよい。
「今後ろくなやられ方しないし、パイレートマン相手にもぐろいやられ方したし、どうせなら超人様みたいなゆるい世界に行きたかった――――――っ!!」
一人で嘆いても山の中でこだまが響くだけ、嘆いても仕方がない。こうなったらカナディアンマンとしてましな生き方をするにはどうすれば良いかを考えよう。
「まず火事場のクソ力を身につけるところからかな……」
カナディアンマンはまずキン肉マンと対戦したことがない。だから最近のシリーズでもクソ力特有のぼわぁができなかった。ベンキマンでさえもぼわぁができたんだ。俺もキン肉マンと対戦さえできれば……でもこの時代のキン肉マンに対戦しろって言っても臆病だし怖がってまともに対戦してくれなさそうな気がするな……。
「そうだ!」
俺は第19回超人オリンピック招待状の差出人の住所へとすぐに向かった。超人委員会である。東京にその本部があった。
「何? キン肉マンを超人オリンピックに出せじゃと?」
委員長ハラボテが驚いた表情を表す。
「えぇ、確か日本代表のウルドラマンは今大会を辞退しているはず。ならばキン肉マンを出すかというところですが、キン肉マンのダメ超人ぶりの評判からして、出さない方がましといったところと委員長は判断しているでしょう」
「その通りじゃ、そこまで分かっているならこの話は終わりじゃ。わしは忙しいんじゃ」
「待ってください。今大会の注目はロビンマスク、キン肉マンを上手く使えば彼の引き立て役に使えるかもしれません。つまり超人オリンピックの盛り上げに貢献、いわば超人委員会の利益にもつながるのですよ!」
「ほう、そういう考え方もできるな」
ハラボテの表情が変わった。先ほどまで煙たがっていたかのような感じだったが、今はこちらの話を興味深く聞いてくれている。この時代のハラボテはハラグロといっても良い感じの性格だったからな。
「そこで私が彼を超人オリンピックまでの間鍛え上げて、ロビンマスクの噛ませ犬になる程度まで鍛えてあげましょう」
こうして俺はキン肉マンのスパーリングパートナーとなった。
「ふむ、まあいいがなぜそんなことするのじゃ? お前がそんなことしても何の特にもならない」
うっ、なんか良い言い訳ないかな……。
「ふふふ、大人の事情って奴ですよ」
「ほう、そういうことか……」
こう言えばハラボテは大方、俺がロビンマスクの関係者から金銭を頂いたと思われるだろう。俺のイメージは悪くなるが、今はそれでも良い。とにかくキン肉マンと闘うという機会が欲しいのだ。
俺は東京の上空を飛びながらキン肉マンを探していた。キン肉マンハウスの方やマリさんがいる幼稚園のほうにもいったが、それらしき姿が見当たらない。
「待てよ、もしかして地下鉄の方に行けば……」
俺の勘は当たった。原作通り、地下鉄の中にキン肉マンが潜り込んでふて腐れていたところだった。
「王子! 何あほなことやってんですか!」
「いやぁ、地下鉄で寝ていたらそのまま巨大化しちゃったみたいでのう」
ミート君とキン肉マンが賑やかなやり取りをしている。今はすっかりバトル漫画と化しているが、こういう原作初期の雰囲気もファンになると良いなぁと思えてくる。どうやらあちらも俺の姿に気づいたようだ。
「初めまして、俺はカナダの超人カナディアンマン、君がキン肉マンだね?」
「そうじゃが何の用じゃい?」
「超人オリンピックの話は聞いていると思うが、もしかしたら君が出場できるかもしれないんだ」
「そ、それは本当か!」
キン肉真弓が突然マンホールから飛び出してきた。マジで驚いたぞ! でもギャグ漫画だからこれぐらいは当たり前か?
「大王様もどこから出られているんですか!」
ミートがすぐにツッコミを入れた。あ、いかんいかん、このペースに付き合いすぎてはだめだ。早く本題に入らないと。
「ただしキン肉マン、俺とのスパーリングを毎日続けてある程度の力をつけてもらうというのが条件だ。どうだい?」
「面倒じゃ、参加しなくてもいいや」
キン肉マンは鼻をほじりながら面倒そうでかつ間抜けな顔をしていた。
(だぁ~! この当時のキン肉マンならこういうキャラだったわ! 奴との実戦経験は今後の俺のためには必要不可欠! 何とかしなければ! そうだ!)
「ふふふ、この近場の幼稚園でマリ先生という綺麗な女性を見かけたんだ。俺はその人をデートに誘おうかなと思っている」
「なにぃ!」
キン肉マンが目の色を変えた。この当時はマリ先生にぞっこんだったからな。マリ先生いつのまにか消えたキャラとなったけど……。
「ほう、君も気があるみたいだね。どうだい? マリ先生をかけてガチンコのスパーリングというのは?」
「ようし! やったろうじゃねえか!」
よしよし乗ってきた!
「では死ぬ気でかかってきな! 本当に死んじまうからな!」
ぐいっ
俺はそういって先手でキン肉マンの身体を持ち上げて、カナディアンバックブリーカーをかけた。俺はプロレス経験はないが、身体が何となくカナディアンバックブリーカーをどうかければいいか分かっているようだ。俺は上下に揺らしてキン肉マンの背骨にダメージを与える。
ぐきぃ ぐきぃ
「のわああ!! 背中が折れるううう!!」
(やっぱこの時代のキン肉マン弱いな……自分で言うのもなんだがカナディアンマンごときの技でピンチになるとは……)
「王子! ここが踏ん張り時です! 頑張って下さい!」
「スグル――――――!!」
「踏ん張り時か、よ~~し!!」
ぷぅ~~~
「くっさ!! がはぁ!!」
キン肉マンが放った屁の予想以上の臭さに俺は技を解いてしまった。
「今だ!」
キン肉マンが俺の背中に回り込みバックドロップを放った。
ずだぁん
「くそ、まさかこんな間抜けな負け方をするなんて……」
正直俺はこの初戦で勝てるだろうと思っていたが、俺はキン肉マンに負けてしまった。この一件で俺は早くも国辱マンと呼ばれるようになってしまった。前途多難な転生生活の始まりであった。
打ち切り確定の物語は今始まった!!