鬼滅の刃~胡蝶家の鬼~   作:くずたまご

18 / 29
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

また切るタイミングを失ったのと、長くなったので一旦ここまでで投稿します。
それではお楽しみください。

もう、ゴールしていいよね。


第17話 あなたがいたから・其の参

 ――弦司がカナエに見惚れる。

 形の良い唇も、上気した頬も、弦司を真っ直ぐ映す大きな双眸も。弦司には全てが美しく愛おしい。

 そんな弦司の前で、カナエは不思議そうにコテッと首を傾げる。

 

 

「のぼせでもした?」

「……いや。カナエがいる事に驚いた」

「ふふっ、そうですか。作戦成功です」

 

 

 口を大きく弧を描かせ、カナエは悪戯っぽく笑う。我に返った弦司は、少し面食らう。

 最後にカナエを見たのは、いつだったか。確かすごく忙しそうで、なぜか余所余所しかった。それがなぜか今日はご機嫌で、何となくだが今までで一番カナエが綺麗に見える。

 

 

「いつまで驚いているのー? ほら、座って座って」

 

 

 カナエは自身の隣に座布団を置くと、その上をぽんぽんと手で叩く。釈然としないが、何も悪い事はない。弦司は大人しくカナエの右隣に座った。

 

 

「俺の部屋なんだけどな……」

「細かい事は気にしない気にしない」

 

 

 カナエはテキパキと動いて、弦司と自分の分の茶を机に置いた。ありがとう、と言ってから茶を口に運ぶ。何度も飲んだはずの茶の味が、よく分からなかった。

 隣では肩が触れ合いそうなほど近い距離で、カナエが同じように茶を啜る。

 

 

「ふー……弦司さん、ちょっと長く里にいるみたいだけど、色々あったみたいね?」

「何だかんだで血鬼術の練習する事になってな。とりあえず、今日で練習は切り上げて明日の夜には帰るつもりだ」

「ふふっ、楽しかった?」

「ああ、充実はしてたな……カナエこそ、急にこっちに来てどうかしたのか?」

「せっかく弦司さんがこっちにいるから、来てみたわ。日輪刀の研ぎ直しも近かったしね」

「それだと、俺に会いに来たみたいだな」

「みたいじゃなくて、そうなのよ。こうやって二人きりで、会いたかった」

「……俺も会いたかった。時間を作ってくれて、ありがとう」

「……ど、どういたしまして」

 

 

 ニコニコと効果音がありそうなほど、カナエは上機嫌で眩しい笑顔を弦司に向ける。それでも、やはり直接的な言葉は恥ずかしかったのか、頬がほんのり赤くなっている。

 だが、それは弦司も同じだ。しばらくカナエに会えてなかったのもあるが、どうも今日のカナエはいつも以上に真っ直ぐ気持ちを伝えてくる。もう少し迂遠で、漏れ出るような感情だったはずなのに。

 

 

(いや、これは誤魔化しか)

 

 

 茹った頭でも分かる。

 ――カナエは好意を隠すのを止めた。

 弦司は自身が彼女の心を溶かすつもりだった。それがどういう心境の変化なのか、カナエから仕掛けてきた。この変化は非常に面映ゆい。何より、カナエのような美女から寄せられる明確な好意だ。攻めに転じた破壊力は凄まじかった。

 

 

「…………」

 

 

 弦司は黙ってお茶を飲む。カナエの奇襲にやられて、彼女を完全に意識してしまった。いつもならポンポンと会話が続くのに、今日は中々次の言葉が出ない。

 

 

「…………」

 

 

 カナエも黙ってお茶を飲む。主導権を握ったのだから、そのまま攻めればいいのに、目を伏せて濡れた髪先を弄る。弦司に意識させるために退いた……という事はないだろう。よく見れば、頬だけではなく耳まで赤い。今になって急に恥ずかしくなったのかもしれない。今度は初々しいカナエの姿に、弦司の心をかき乱される。

 落ち着けと弦司は己に言い聞かす。カナエとの関係を進める事も大切だが、他にも話す事はたくさんある。まずは、やる事をやってからだ。そこから先は……もうなるようになれ、だ。

 弦司は空になった湯呑を机に置く。喉は全然潤った気がしなかった。

 

 

「ゆっくりできそうなのか?」

「うん。日輪刀の調整も明日には終わるし、明日の夜に弦司さんと一緒に発つつもりよ」

「じゃあ、今日はゆっくりできるんだな」

「明後日もゆっくりしようと思っているわ。しばらく蝶屋敷も空けていたし、みんなも心配だから」

「そうか。それなら、みんなも安心するな」

「……弦司さんがいてくれて本当に良かったわ。あの日はあんなに沈んでいた蝶屋敷が、今は明るかった」

 

 

 刀鍛冶の里に来る前に、蝶屋敷に寄ったらしい。カナエは空になった湯呑を机に置き、悲しそうに目を伏せた。カナエの長いまつ毛が、黒い影を落とす。

 

 

「大変な時にいられなくて、ごめんなさい。雨ヶ崎さんの事で辛いのに、無理をさせてしまったわ」

「いいんだ。これも年長者の務めさ」

「ありがとう。でも、本当に無理しないでね。辛いなら、辛いって言って」

「辛い」

「ふふ……弦司さんのそういう素直な所、好きよ」

「じゃあもう一つ。ちゃんと別れが言えなかったのが、キツイ」

「……うん」

 

 

 カナエの返事が少し遅れた。

 葬儀に出られないのは仕方ない。でも、本来ならあの場……戦場で別れは言えた。風能がやってきて、弦司をボロボロにしたから、ちゃんと別れを言えなかった。

 風能より早く着いていれば、別れだけでもできたと、カナエは未だ己の責任と思っている節があった。

 カナエは眉尻を落として、寂しそうに微笑んだ。

 

 

「いつか、一緒にお墓参りに行きましょう。こはるさんも、きっと喜ぶわ」

「……だといいけど」

「大丈夫よ。だから、お別れはそれまでにとっておきましょ」

「ああ。世話を掛ける」

「いいの。私と弦司さんの仲だもの」

「……」

「……」

 

 

 再び静寂が舞い降りる。弦司はそっとカナエを盗み見る。彼女は流し目で弦司を見ていた。瞳の奥に、熱っぽいものが垣間見える。弦司も、同じような視線を送っているのかもしれない。

 

 

「……」

「……」

 

 

 僅かに視線が交錯して、すぐにすれ違う。

 もう確認する事はないか。もう話すべき事はないか。弦司はない、と判断する。

 カナエも特に何も言ってこない。ここからは、二人の時間でいいのだろうか。

 弦司は寝転がってみる。カナエは特に咎めない。心なしか楽しそうに、微笑むだけだ。

 

 

「どうしたの?」

「……少し気分転換がしたい」

「そう……何か希望はある?」

「鬼舞辻にも見つかったし、外にはしばらくは出られないし……一緒にのんびりしたい。今日は一緒に居てくれないか?」

「ふふ、そんなのでいいの~?」

 

 

 カナエは少し声を弾ませると、同じように寝転がった。

 弦司は寝転がったまま、顔を横に向ける。カナエは体ごと弦司の方を向けていた。長い黒髪が横に流れ彼女の美しい容貌が僅かに隠れる。それが何となく、彼女が乱れているように見えて色っぽい。

 カナエは横になった姿勢で、器用に上目遣いになる。それだけで、弦司の血流が速くなる。カナエに見つめられて、目が離せなくなる。

 

 

「不思議な感覚。なぜかしら?」

「不思議?」

「うん。同じ部屋で転がっているだけなのに、それがすごくムズムズする」

「……俺が寝る事がないからか?」

「そうね。いつも弦司さんがおやすみって言ってくれて、それで終わりだもの……」

「……そうだな」

「だからね……今日は、一緒に……っ」

「……一緒に?」

「もうムリ……」

 

 

 カナエは煙が出そうなほど顔を真っ赤にすると、両手で顔を覆った。どうやら、羞恥に耐えて頑張っていたが、ここらが限界だったらしい。

 カナエの視線から解放され、弦司は僅かに余裕を取り戻す。いつもの悪戯心が湧きだし、カナエが呑み込んだ言葉を掘り起こす。

 

 

「添い寝しようか?」

「……意地悪」

「ごめんごめん」

 

 

 カナエは弦司に背中を向けてしまった。浴衣越しに肩甲骨や腰骨が浮かび上がる。腰に向けて細くなる背中の華麗な曲線が美しい。

 つい、カナエの背中に触れてしまいそうになる。でも、どこまで近づいていいのか。

 カナエは弦司に好意を持っている事を示し、弦司もそれに応えるように対応している。急に恋人未満のような関係になった気がした。

 変化が急すぎて、カナエがどこまで望んているのか、弦司には分からない。あれだけ抱き締め合ったのに、どこまでが許された線引きなのかが分からない。

 すぐに告白でもして恋人関係になれば早いが、まだそこまで雰囲気が整っていない。そもそも、カナエと弦司が同じものを望んでいるのか分からない。

 探りを入れる意味も含めて、指先で肩に触れた。触れた瞬間、ビクリとカナエの体が跳ねる。

 カナエの体は僅かに震えていた。緊張のせいなのか、それとも──。

 指先に伝わるカナエの体温が、弦司の胸の奥を熱くする。だが、感情のまま突き動いてはいけない。カナエの様子から、動くのはまだ早いと判断する。冷静になる意味も込めて、優しく肩を叩いた。

 

 

「ごめんって。揶揄って悪かったよ。お願いだから、こっち向いてくれ」

「……」

 

 

 振り返ったカナエは、真っ赤なままだった。ここまで勢いで弦司に攻勢をかけてきたが、ふと我に返ってしまったのかもしれない。

 

 

「大丈夫か?」

「……弦司さんは緊張しないのね。やっぱり、手慣れているのかしら?」

「いや、これでもいっぱいいっぱいだから」

「本当に……?」

 

 

 疑いの眼差しでカナエは弦司を見る。カナエより慣れているのは確かだが、こういうじれじれのはっきりしない関係に、いっぱいいっぱいなのも事実である。

 どこまでやってもいいのか。どうやって近づいたらいいのか。不安と緊張で探り探りだ。突然、カナエが主導権を投げ渡してくるので、なおさらである。

 それでも、一度高まった熱は中々引かない。このまま、行ける所まで行きたい。ただ、刺激の強すぎるものは今のカナエには、どうも吉とは思えない。だから弦司は少しずつ、段階を踏むように雰囲気を整えていく。

 

 

「本当だって」

「全然、顔色変わってない」

「嘘じゃない。ほら」

「――っ」

 

 

 弦司はさも自然な形でカナエの左手を取った。そしてそのまま、弦司の胸元へ持って行く。それだけで、心臓が早鐘を打つ。

 

 

「ドキドキしてるの分かるだろ?」

「……うん。私と、同じ」

 

 

 弦司が緊張しているのだと分かり、カナエが目に見えてほっとする。少しだけ、落ち着いたように弦司には見えた。もう少し刺激を与えても大丈夫かもしれない。それにせっかくカナエの手を取ったのだ、もっと()()()()()事を弦司はしたい。

 弦司は自身の指をカナエの指の間を通していた――俗にいう恋人繋ぎでカナエの手を握った。

 カナエが大きく目を見開く。

 

 

「弦司さん……!」

「嫌か?」

「……嫌じゃない」

 

 

 カナエは全身をカチコチに緊張させる。繋がった掌からは、カナエの震えが伝わってきた。それでも、弦司が力を込めれば優しく握り返してくる。

 浴衣が乱れて覗いた彼女の胸元は、紅潮して真っ赤だ。これ以上の触れ合いは、カナエとは()()しない方がいいだろう。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 それからはしばらく、二人して無言で手を握ってみたり、握り返されたりしてみる。

 カナエの手は小さく、華奢だった。だが、掌には数えきれないタコができていた。彼女の生きていた足跡のように思えて、弦司は何度も確かめる様に掌を擦り合わせた。

 最初は恥ずかしそうにしていたカナエも、段々と余裕ができてきたのか。タコをわざと強く押し付けたり。気づけば残った手も、指を通して握り合った。

 

 

「……」

「……」

 

 

 寝転がって向き合って、言葉でなくて両手で繋がる。

 二人の体温が伝わり合い、段々と同じ温度になっていき、感覚が混ざり合う。それでも思いがけない僅かな身じろぎが、二人を別々の存在だと知らせる。

 感情が昂る。優しい繋がりが段々とじれったくなってくる。もっと明確で強烈な繋がりが欲しくなる。

 

 

「弦司さん……」

「カナエ……」

 

 

 自然と互いの口から、相手の名前が漏れた。

 カナエも弦司と同じ気持ちなのか、目尻はトロンと蕩けていた。そして、大きく潤んだ瞳で、期待を込めて弦司を見つめる。

 もういいだろうか。カナエも弦司も同じ所まで高まっている……はずだ。

 弦司はカナエの手を強く握った。カナエは応える様に、痛いぐらい強く握り返してくれた。

 覚悟を決める。

 

 

「胡蝶カナエさん」

「はい」

 

 

 弦司は一度、小さく息を吸い込む。心臓が痛いほど、胸を強く打つ。

 彼女の気持ちは伝わっているはずなのに。覚悟だって決めたのに。酷く息苦しかった。これが弦司の弱さなのか。

 それでもあの日――カナエの好意に気づいた日――から抱き続けている気持ちを、そのままカナエにぶつける。

 

 

「俺はあなたに初めて会った時、心は死んでいた。ただ生きるだけの、屍鬼となっていた。あなたが俺を外に連れ出してくれたおかげで、俺の心は蘇ったんだ。それだけじゃない。辛い時は必ず傍にいてくれて、また死なない様に心を守ってくれた。今、俺の胸に宿っている気持ちは、あなたが救ってあなたが育ててくれたんだ」

「…………」

「俺は夢ではなくて、一人の男として近くにいたい。あなたの救ってくれた命で隣に立ち、育ててくれた心であなただけを愛してもいいでしょうか?」

 

 

 弦司が言い切ると同時に、カナエは目を大きく見開き、燃えるように顔を上気させていく。

 

 

「……ぁぅ」

 

 

 カナエが小さく呻いた。すると、両手を繋げたまま、弦司の胸に頭を寄せた。カナエの表情が隠れ、艶やかな髪しか見えなくなる。

 

 

「待って……今、何も考えられないの……」

 

 

 カナエは上擦った声で言った。弦司の耳がおかしくなければ、その声の奥には喜びが表れている。弦司は逸る気持ちを抑えて、カナエの返事を待った。

 しばらく、カナエは弦司の胸に顔を埋めたり、激しく深呼吸を繰り返したりする。少しは気持ちが落ち着いたのか、弦司の胸に顔を埋めたまま答える。

 

 

「いつも挫けそうになって、それでも立ち上がるあなたに、私は何度も心が震えていました。この気持ちを芽吹かして、花を咲かせてくれたのは、あなたです」

「カナエ……」

「私もあなたをお慕いしています……一緒に、いさせて下さい……」

「……本当に、いいのか?」

 

 

 弦司は馬鹿だと思いながらも、訊き返さずにはいられなかった。

 

 

「俺は……何て言い繕っても鬼だ。カナエを不幸にするような事も起きる」

「それは全然いいの。私はそういう弦司さんを含めて、一緒に居たいし幸せにしたい……逆に弦司さんこそ、本当に私でいいの? 私、すごい嫌な女よ」

「そうか? 俺には最高の女だけど」

「っ……私ね。弦司さんから告白してもらって、すごく嬉しい。なのに、『足りない』って思っちゃう」

「教えてくれ。俺にできる事なら、何でもするから。君を満たさせてくれ」

「……怒らない?」

 

 

 カナエは弦司の胸元から離れると、上目遣いで弦司を見つめる。弦司は即座に頷き返していた。

 

 

「怒るものか。全部受け止めるから、正直に話してくれ」

「……私、弦司さんの『心』が全部欲しい」

「そんなもの、すぐに――」

「本当にくれるの? 環さんを想っていた分も全部、私の物にしていいの?」

「……悪い女め」

「ごめん、なさい……」

 

 

 弦司は苦笑する。

 気持ちをあげると言えば、環への想いはその程度だったのか、カナエも同じように心変わりするのかと詰られる。ダメだと言えば、カナエへの想いはこの程度かと責められ、環へ筋を通せと指摘されるだろう。

 面倒な質問だった。だが、カナエが悪いとは、弦司は思わない。

 環と別れたあの日から、誰も弦司の前で環について触れなかった。弦司も環の事を話さなかった。誰にも、弦司の胸の内を曝け出さず、全て己の中で片づけていた。

 弦司がカナエと一緒になる以上、環との関係は弦司一人の問題ではなくなる。だから、この質問は必然なのだ。弦司が環と完全に別離し、カナエと結ばれるために避けては通れない。きっと何と答えても角が立つ。それでも、弦司は答えなければならない。

 弦司はカナエを真っ直ぐ見返して、はっきりと答えた。

 

 

「いいよ。俺の気持ちを全部、受け取ってくれ」

「……本気、なの?」

「うん」

「今すぐ人間に戻れたとして、環さんの所へは行かない?」

「カナエの傍にいる」

「何で? 弦司さんの誓いって……簡単に変わっちゃうの?」

 

 

 カナエは一瞬、後悔したように表情を崩すと、目を逸らした。言うべきではなかった、とでも思ったのだろうか。だが、弦司はカナエのそういう面も含め、受け入れたい。

 弦司は繋がった手を離し、カナエの酷く熱を持った頬に手を添えた。カナエは逸らした目を、困惑気だが再び弦司に向けた。頬をゆっくり撫でる。

 

 

「ごめんな、不安にさせて」

「ううん、私が面倒なだけだから……」

「いいや、俺が悪い。カナエに俺の胸の内を、何一つ見せてなかったからな。ちゃんと話すから、話を聞いてくれないか?」

「……悪い男。そうやって、すぐに私を甘やかす」

「ごめん」

 

 

 カナエが頬を弦司の掌に擦りつけ、気持ちよさそうに目を細める。彼女の可愛らしい姿に、弦司は小さく笑ってから続ける。

 

 

「俺の小さい頃の話って、した事なかったよな」

「えっ? した事ないのは確かだけど、それがどうしたの?」

「初めて牛鍋を食べた時、子どもの俺がどう思ったか分かるか?」

「えっと……『おいしい』とか『珍しい』とか?」

「『よくこんな糞不味い物を有難がって食べられるな』」

「えっ」

 

 

 思慮の外の言葉だったためか、カナエが小さく口を開けポカンとする。今の弦司からは、想像もできないのかもしれない。よくここまで変われたものだと、弦司は自身の事ながら感心してしまう。

 それでも、あの日の感情は今でも鮮明に思い出す事ができる。自身の家が裕福と理解し、それでも出てきた物が『あの程度』だった時の失望を。

 

 

「当時の俺は何を出しても満足しなかったんだ。もちろん、両親が劣悪な物を出した事なんて、一度もなかった。最高級の物を出してくれた事もある。でも、あの当時の俺の価値観では、何一つ満足できなかったんだ」

「目新しい物にはすぐに飛びつく、あの弦司さんが? 信じられない……」

「ありがと。もちろん、結果的には満足できるようになったのは、全部両親が尽力してくれたおかげで……まあ、今はそこは本題じゃない。問題は満足しなかった俺が、その後に取った行動だ。俺の不満を見抜いた両親は、事細かに尋ね、不満を解消できるように、改修改良をしてくれた。そして、俺は『変化』に心の充足を見出した。でも、実際はもう一つの道があったはずなんだ」

「もう一つの道?」

「俺自身が、満足する物を作れば良かったんだ」

 

 

 確かに『変化』が好きになった。しかし、そんなのどんなに言い繕っても()()だ。

 真に満足したいなら、『変化』など探すのではない。自身で満足する物を探して作れば良かった。だが、弦司はそうはしなかった。

 

 

「あの時、俺の思い描く牛鍋は数十年経たないと作れなかった。だから、俺は生きてる間に手が届かないと思って諦めた。『変化』が好きになったのは、結果に過ぎない」

 

 

 鬼になった時もそうだ。弦司は環の傍で耐え忍ぶ道は選ばなかった。できないと諦めて、苦しみの少ない道へ走った。

 カナエに初めて会った時もそうだ。彼女と分かり合えないと諦めて、ただただ安易な死を望んだ。

 何時でも弦司は、叶わぬと思った願いからすぐに手を引いた。自身の腕の届く距離までしか、手を伸ばそうとしなかった。

 

 

「俺にカナエのように、不可能に立ち向かう強さはない」

 

 

 『あの程度』と全てを断じたあの日から続く、今も克服できない弦司の弱さだった。

 

 

「もう俺は環を幸せにできない事は知っているよな」

 

 

 カナエは悔しそうに口を引き結んだが、その表情こそが全てを語っている。

 蝶屋敷に来てから、鬼の研究に弦司は全面協力している。だが、鬼の治療に進捗はない。画期的な技術革新がなければ、状況は変わらないだろう。今では誰も口にはしないが、環もカナエもしのぶも生きている内に、弦司が人に戻る事はない。

 だから、環が稀血と分かったあの日から、弦司は彼女を手の届かない存在と判断し、全てを諦めた。彼女の幸せを祈るだけにした。

 どれだけ願っても叶わない願いを求めるのは、酷く辛い事だ。だから、すぐに願いを諦める。叶う可能性のある願いに、手を伸ばす。それが、不破弦司という男であった。

 

 

「天に輝く(たまき)に、俺はもう手を伸ばさない。この手の届く美しい(カナエ)が欲しくなる……俺はそんな選択しかできない、弱い男だ」

 

 

 弦司の胸の内を聞いたカナエが固まる。彼女の大きな瞳が不安そうに揺れ、震えた声で尋ねる。

 

 

「私が手の届かない所に行ったら、弦司さんは他の人を好きになるの?」

「……ああ」

「――っ」

 

 

 弦司が頷くと、カナエは一層不安を深くする。弦司はカナエを不安にさせてしまった事を申し訳なく思う。反面、ここまで想ってもらえる事を嬉しかった。

 だが、カナエは一つ思い違いをしている。

 弦司はカナエの頬から手を離すと、彼女の頭へ持って行く。一瞬、ビクリと震えるカナエを無視して、絹のような髪に指を滑らせた。僅かに湿った毛先が、指先をすり抜ける度、気持ちのいい肌触りが伝わる。カナエの頭を撫でて、何度でも彼女の髪を触る。

 

 

「だけどな、決して苦しくない訳じゃない」

 

 

 弦司は鬼となって時、一度全てを諦めた。手に入らないモノを望んでも辛いだけだと、全てを捨てた。そのおかげで、孤独な山の生活を耐えられた。だが、胸を貫いた痛みが、なかった訳ではないのだ。

 今でも思い出す事ができる。ようやく手に入れたモノが、全て砕かれる感覚。当たり前だと思っていた日常が、全て奪われる絶望。あの苦しみは絶対に忘れない。

 思わず、カナエを撫でる手に力が入る。

 カナエは一瞬、怯んだように体を竦ませた。それでも弦司の元から動こうとしなかった。それが狂おしいほど愛おしくて、弦司の気持ちが溢れ出す。

 

 

「幸せを破壊される瞬間の痛みは、今だって覚えている。俺はもう、あんな思いはしたくない……!」

「弦司さん……」

「カナエ、前提条件が違うんだ。他の人を好きになるって事は、俺の幸福がぶち壊されるって事だ。カナエが手の届かない所に行く? 誰がそんな事させるか」

「きゃっ」

「この手に幸せが届くなら、俺は絶対に離したりはしない」

 

 

 溢れた想いが止まらず、弦司は想いのままカナエを抱きしめた。それでも壊れないように優しく、持てる力全てで、カナエの体を掻き抱く。

 弦司の突然の行動に、カナエの体は固まっていた。それでも、徐々に力を抜いてくれた。それが、まるで弦司を受け入れてくれている様で、嬉しくてたまらなくて、弦司は欲望のままカナエの耳元で囁く。 

 

 

「行かせるぐらいなら、俺は(カナエ)をかごの中に閉じ込める」

「っ!?」

「ようやく捕まえたんだ。絶対に逃がさないから、覚悟してくれ」

「――」

 

 

 カナエは一際、体を硬直させると、しばらくしてから弦司に身を預ける様に脱力した。

 

 

「……カナエ?」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 

 弦司の呼びかけに返事はなく、代わりに耳元からカナエの荒い呼吸音が聞こえる。それが弦司の頭を少し冷まさせた。

 やり過ぎた。そう思い力を緩める弦司だが、謝罪を口にすることはできなかった。

 

 

「うおっ!?」

 

 

 突如、体に衝撃が走ると、強制的に身体が仰向けになる。

 弦司の顔に、長い黒髪が掛かる。髪の先には、カナエの顔があった――ただし、その目は妖しく、ギラギラとさせて。どうやら、弦司は押し倒されたらしい。

 カナエは弦司を穴のあくほど見つめながら、ゴクリと唾を飲み込み喉を震わせた。あまりに妖艶な姿に、今度は弦司の頭の中が真っ白になる。

 

 

「えっと……」

「げ、弦司さんが悪いんですから! 変な事、言うから……!」

「わ、悪い!」

「私だって……私だって――!」

 

 

 カナエの顔が近づいてくる。蕩けた瞳が大きくなる。そして、唇と唇が触れ合うほど近づき……触れ合う直前、すれ違う。

 今度はカナエは弦司の耳元に唇を置くと、熱い吐息を掛けながら囁く。

 

 

「弦司さんが傷つくぐらいなら、私が閉じ込めて飼いたい」

「――っ」

 

 

 ――ゾクリ。

 そうとしか表現できない、歓喜とも驚愕ともつかない衝撃が、弦司の全身を駆け巡った。今世でも前世でも、こんな感覚は知らなかった。ただただ、カナエに与えられた刺激に弦司は翻弄される。

 

 

「弦司さんこそ覚悟して。あなたと幸せになるために、()()()()()()()()()。こんな重くて面倒な女から、逃げられるなんて思わないで」

「――っ!」

 

 

 カナエは弦司の耳に息を強く吹きかける。弦司はまるで電流が全身を駆け巡ったような感覚に襲われる。未知の感覚だった。

 その間も、カナエは止まらない。弦司の小指をカナエの小指が絡め取り……もう一度囁く。

 

 

「指きりしましょ」

「なん、て……?」

「命と体は、前の約束で預かったから。後一つ、預かっていないモノ、あるわよね?」

「…………」

「あなたの心。ちゃんと約束しましょ」

「……ああ」

 

 

 弦司は気づけば了承していた。

 耳元に小さく息がかかる。カナエが微笑んでいるのが、何となく分かった。

 そしてカナエは、

 

 

「でも、これじゃあ不公平よね?」

「そう、なのか……?」

「うん。だから、私も弦司さんにあげる――」

 

 

 ――命と体と心を。

 

 

「指切りげんまん」

 

 

 息が荒れて、心臓が暴れた。

 眩暈がした。雰囲気といい、状況といい、カナエの言動が全て刺激が強すぎて、まるで快楽を直接打ち込まれたかのように、快感が頭から湧き出て止まらなかった。

 弦司は動けない。あまりに今が心地よ過ぎて、動くという選択肢さえ思い浮かばない。

 弦司が固まっている間に、カナエが耳元から動く。吐息は弦司の頬に掛かり、唇に掛かり。

 吸い込まれるように、カナエと弦司の唇は合わさり。

 ――モサリ。

 

 

「うっ」

 

 

 どちらとなく呻くと、カナエは慌てて飛び起きた。弦司が見上げると、カナエは無表情で弦司の上で佇んでいた。ただし、その口にはカナエの黒い長髪が含まれていた。

 カナエは弦司を押し倒した。当たり前だが、重力に髪は引かれる。弦司もカナエも興奮しすぎて、その当たり前に気づかず、接吻した際に二人して重力に引かれたカナエの髪を食んでいた。

 カナエはペッ、と自身の髪を吐き出す。

 

 

「……」

「……」

 

 

 二人して無言になる。盛り上がった雰囲気はどんどん霧散していく。昂った体と心が沈んでいく。先のような昂ぶりは、今日は戻ってこないだろう。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 自身の失態で雰囲気を壊したと思ったカナエは、ふらふらと部屋の隅に行くと、膝を抱え俯いた。

 

 

「何でもう私は学習しないのよぉ……興奮するとダメダメだって分かってるのに~……」

 

 

 ぶつぶつと言いながら落ち込むカナエ。彼女には悪いが、弦司は内心ホッとしていた。

 あのまま場の雰囲気に流されていたら、どうなっていたか。分かるのは、絶対に歯止めが効かなかったという確信だけだ。先を考えるだけで恐ろしい。それに『鬼殺隊をやめる』などという爆弾発言を、カナエはさらっと言い放っていた。その件については、ちゃんと膝を突き合わせて話し合う必要がある。

 とはいえ、このままではあまりにカナエが惨い。想いを伝えあったのに、自分の軽率で雰囲気を壊したとなると、今後の付き合いに影響が出る可能性もある。別の思い出で上書きしようと、弦司は何時でも渡せるようにと、荷物からとある物を取り出した。

 

 

「カナエ」

「……恋愛弱者に何か用ですか?」

「本当の弱者は、彼氏もいないっての。それはともかく、贈り物があるから受け取ってもらえないか?」

「えっ」

「お土産買ってくる約束していただろ?」

 

 

 緊急任務に行く直前、カナエにお土産を買って帰る約束をしていた。

 カナエが顔を上げる。すでに笑顔になっていた。

 

 

「弦司さん大好き」

「こら。そういう事すると、何かあったら物で釣るぞ」

「弦司さんがくれる物なら、何でも大丈夫よ」

「ひょっとこは?」

「私、そんな安い女じゃないの~」

「はいはい。しっかりと厳選させていただきますよ、お姫様」

 

 

 先とは違う、軽くて、それでもしっかりと繋がりを感じるやり取り。燃え滾るのもいいが、こういう温かい時間も良かった。

 弦司が贈り物を背中に隠して近づくと、カナエは期待の眼差しを向ける。

 

 

「夜店で買っただけだから、あまり期待するなよ」

「うん、分かったから早く早く」

 

 

 カナエに促され、弦司は緊張しながら贈り物――簪を取り出す。

 虹色……とでも呼ぶべきか。七つの色を使った色彩豊かな花簪であった。カナエの羽織によく似た色合いだったため、つい手に取ってしまった品物だ。

 いつもは蝶の髪留めがある側頭部に、そっと簪を差し込む。華やかなカナエには、これぐらい派手な彩でも良く似合う。

 カナエは、はにかみながら笑い、何度も指先で簪に触れる。

 弦司は気恥ずかしさから、つい防衛線を張る。

 

 

「気に入らなかったら言えよ。今度はちゃんと欲しい物を買うから」

「気に入ったら、もう次はくれないの?」

 

 

 上目遣いでカナエは口元を緩ませて言う。機嫌は直ったようだ。

 一安心し、弦司は長く息を吐く。

 

 

「あげるが、その発言はどう聞いても悪女のそれだぞ」

「はーい。気をつけます~」

「ホント、分かっているのか……まあ、しばらくは鬼殺以外で街は歩けないから、俺は選べないし。気に入った物があったら遠慮なく言えよ」

「今度町に行った時、選ぼうかな~。うーん、でも貰ってばかりだと悪いから、何か弦司さんにお礼を……あっ」

 

 

 カナエが声を上げると、慌てて視線を泳がせた。弦司は目敏く、彼女が最初に目を向けた場所を確認した。何やら部屋の隅に袋があった。

 

 

「どうした?」

「何でもないわ! 本当に何でもないの!」

 

 

 カナエは焦った様子で答えた。どう見ても、何でもありそうな様子だ。

 そっとしておくか、それとも原因を究明するか。束の間、弦司は悩んで袋に向かって飛びつく。これまでのカナエの言動を考えると、慌てている時は大抵良い事ではない。即座の処置が必要だ。

 カナエはぎょっと目を見開いた。そして、弦司を止めようとカナエは弦司にしがみ付く。

 

 

「待って!! 本当にダメなの!!」

 

 

 弦司の背中に飛びついたカナエの顔は、真っ赤で涙目だった。弦司はこの判断は正しいと確信する。

 袋を開けた。中に入っていたのは、黒いぶ厚い、固定具の付いた帯。長さや太さから帯革ではなく――首輪。

 

 

「えっ」

「ああああああああっ!!」

 

 

 意味が分からない弦司に対して、カナエは絶叫する。何に……いや、()()使おうとしていたのかは、一目瞭然だ。

 弦司は悶絶するカナエと向かい合う。雰囲気とか、空気とか今はどうでもいい。これは絶対に話し合わなければならない案件だ。

 

 

「これは一体何なんだ」

「待って! 説明させて頂戴!」

「言ってみろ」

 

 

 全身発汗したカナエが、引き攣った顔でバタバタと身振り手振りをする。

 

 

「弦司さんの頚が斬られかけたでしょ!? そんな事が二度と起きない様に、頚を守るために作られた防具が……これよ! あのゲスメガネ前田君に花柱が直接作成依頼した、弦司さん専用特注品! なんと隊服の倍以上の頑丈さを持った品で、しのぶの突きぐらいなら一度は耐えられるのよ! すごいでしょ!?」

「……」

 

 

 カナエが商品説明染みた口調で述べる。というか、嘘でなければ驚くべき性能である。着ける以外の選択肢はない。

 

 

「ねっ! だから、全然おかしくないの!!」

「……」

 

 

 カナエは汗を拭いながら、早口で捲し立てた。おかしくないならば、もっと落ち着いて語ればよいだろうに、冷静さの欠片もない。むしろ、もっと怪しいと弦司は感じた。

 弦司は袋をさらに漁る。今度は一回り小さい物が出てきた。

 カナエはさらに目を大きく見開く。

 

 

「ほう……これは何だ?」

「さ……さあ?」

「大きさから、ちょうど女性の首ぐらいの太さだったら、ピッタリに着けられるように見えるが?」

「……後生ですから、もう詰らないでぇ……!」

「だったら、全部正直に話しなさい」

 

 

 土下座するカナエの頭を上げさせてから、弦司は説明を求める。

 

 

「一時の気の迷いだったんです……!」

「本当に気の迷い? 捨ててもいい?」

「……」

「分かったから捨てないから。とにかく、どういう目的か話しなさい」

「……弦司さんの頚が斬られかけたから、頚を守るための防具が必要だと思って、作ろうとしたのは本当」

「そうなのか。うん、そこまではありがとうな」

「うん……それから形を思案していたら、中々良い形がなくて。前田君がとりあえず作りましたって、これを渡してきて……」

「渡してきて?」

「これだったら、疑似的に飼うような倒錯感が得られるなぁと、考えてしまった次第で……」

「考えてしまった次第か……じゃあ、何でお前の分まであるんだよ」

「首はちゃんと守らないと──」

「カナエ」

「……興味本位で、つい」

「……ふぅ」

 

 

 弦司は頭が痛かった。誰だ。こうなるまでカナエを放置してしまったのは……弦司だった。

 カナエにとって弦司は夢であり、想い人だ。そんな特別な感情を持つカナエに対して、半年で弦司は何度心配をかけた事か。もっと早くしっかりと対応していれば、ここまで拗らせなかったかもしれない。

 それでも、弦司は二人で幸せになると決めた。ならば、これも受け入れて進まねばならない。

 

 

「今日はとことん話し合うぞ」

「えっ、えっ……!? ちょっと待って、頭が追い付かない!」

「お互い好き合っているとはいえ、俺達は全く別の存在だ。やりたい事は全然違う。この首輪がいい例だ」

「はい……すみません……」

「怒っている訳じゃないって」

 

 

 これまでの経験上、カナエにあまり我慢を強いると碌な事にならない。適度に発散させるためにも、願望はしっかり聴き取らなければならない。それが例え、倒錯した感情であってもだ……もちろん、倒錯している感情は弦司の中にもある。カナエには、それをしっかり受け止めてもらわなければならない。

 

 

「何で私って、恋愛が絡むとこうなるの……」

 

 

 大きく肩を落とすカナエ。弦司は不憫に思うが、お互い捻じれに拗れた感情を抱く者同士。将来のためにも、ここらで一つ清算が必要だ。カナエのためにも、そして弦司のためにも。

 

 

「カナエだけが悪いって訳じゃないさ。俺もカッとなって滅茶苦茶言ったし……お互いホント、変に拗らせちゃったな」

「それは……うん、そうね」

「でも、割れ鍋に綴じ蓋ってよく言うだろ。俺達がこれでいいなら、それでいいんだよ」

「……馬鹿」

 

 

 こうして、恋人同士になった弦司とカナエの初めての夜は、至極真面目な話し合いに終始した。何とも締まらない初日となったが、少なくとも今の弦司とカナエは、この何でもない日常を過ごせて幸せだった。

 ──ちなみに、翌日から二人の首には新しい防具が着くようになった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。