鬼滅の刃~胡蝶家の鬼~   作:くずたまご

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いつも誤字報告ありがとうございます。

遅れましたが、後編となります。
長くなりましたが、お楽しみ下さい。


第8話 別れ・後編

 今日もまた遅くなった。

 鬼は神出鬼没だ。しかも、活動時間は夜。当然のように生活は不規則になる。

 ようやく任務が終わり、蝶屋敷に着いたのは日の出も近づいた時刻だった。

 玄関は開いていない。誰も起きていないのだろう。

 裏口に回って屋敷に入った。静かだった。

 ――おかえり。

 その声が聞きたい。

 ――ただいま。

 その言葉を送りたい。

 でも、聞かせてくれる人はいない。

 送りたい人はいない。

 おかしい。最初から、こうだったはずだ。ずっとずっとずっと、この先死ぬまでこうだったはずだ。これで良かったはずだ。

 だから、この感覚はおかしい。

 ――()()()なんて。

 何も失くしていない。むしろ、幸せにする手助けができたのだから。誰も誰も、私達と同じ思いはしていない。

 だからお願い。誰かこの気持ちを止めて。

 

 

 

 

 ――胡蝶姉妹と別れて、三日が経過した。

 光の射さない一室で、弦司は机に向かい書類を処理していた。内容は父・弦一郎の経営する会社の経理に関する書類だった。

 日中、外に出られない弦司の仕事と言えば、こういった書類の処理と、来客の対応が主だった。

 今日は雨音を背景音に、黙々と作業を進めていく。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 書類も片付き、一息つく弦司。こうして、ふと息をついた際、思い起こされるのは三日前の出来事だった。

 両親が兄が環が……全てを投げ打ってでも弦司を助けてくれようとした。そして、カナエとしのぶはその想いに負けた。

 弦司の意思が反映される事なく、なし崩し的に生家の不破邸で弦司は暮らしていた。

 不満はなかった。

 誰もが弦司を慮ってくれるし、変に甘やかしてくる訳でもない。弦司でもできる仕事を、毎日振ってくれる。

 未だ不安と憎悪は、弦司の胸の奥にある。しかし、それを家族と環が、上手く鎮めてくれていた。

 だからこそ、少しでも余裕が生まれてると思ってしまう。もう少し、やりようがあったのではないか、と。

 最後に見た、カナエの表情。あそこには笑顔も優しさもなく、ただただ呆然としていた。あんな顔を、弦司がさせてしまった。もっと弦司が現状を正しく把握し、決断を下していれば、こんな後味の悪い事態にはなっていなかっただろう。

 そう思うと、今ここにいる事。それさえも時々、正解かどうか分からなくなる。

 弦司が物思いに耽っていると、

 

 

「弦司様」

「ああ、どうぞ」

 

 

 扉を叩く音に返事をすると、一人の和装の女性が笑顔で入ってくる。

 環だ。弦司がいる生活が余程嬉しいのか、この三日で笑顔以外の表情を弦司は見ていない。

 彼女の手元の盆には、紅茶用の茶器が乗っていた。

 

 

「仕事も一段落終わったようですし、一杯いかがですか?」

「ああ、もらおう」

 

 

 洗礼された所作で、環が紅茶を淹れる。茶葉の良い香りが、部屋中に広がる。

 

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 

 書類を片付けた机の上に、環が紅茶を置く。茶葉の香りに交じって、彼女の香りが鼻腔をついた。

 一口運ぶ。すっきりとした苦みと茶の香りが、口の中に広がった。美味いと思う。人間の時の味覚を取り戻しつつあった。

 

 

「本当に美味くなったな」

「ふふ、ありがとうございます」

「……」

「何を考えてらしたんですか?」

 

 

 環が弦司の顔をのぞき込む。その際、彼女の長い艶やかな黒髪が、流れる様に机と弦司に掛かった。ふわりとして柔らかい。

 彼女の大きな瞳が、弦司の瞳を真っ直ぐ捉える。

 

 

「もう少し、やりようがあったんじゃないかって、考えていた」

「……そう、ですね。私も少々……いえ、かなりやり過ぎました。でも、弦司様もいけないんですよ? 綺麗な女性を二人も連れてきて」

「いや、何もないって事前に散々説明しただろ?」

「分かっているのと、納得するのは違うんです」

「……そうか、すまない」

「他には?」

「……このままでいいのかと、少し思ってた」

「……馬鹿」

 

 

 環は頬を膨らませると、弦司の後ろに回り込む。そのまま、後ろから弦司を抱きしめた。彼女の甘い香りが、胸に一杯に広がる。

 

 

「何だよ、いきなり」

「幸せじゃないですか?」

「幸せだ。だからこそ怖い。一瞬でこの幸せが手から零れ落ちそうで。鬼の俺がいつまでも、こうしていられるはずがないって」

「零れ落ちても、また私が幸せを拾ってあげます。鬼になろうが閻魔になろうが、ずっとず~っと。だから……絶対に離さないで下さい」

 

 

 環は弦司の耳元で囁く。吐息が耳へかかり、そこから頬へと移る。

 

 

「弦司様――」

 

 

 環は弦司の頬を掌で包むと、無理やり自身の方へ向かせ――そのまま唇を合わせた。

 甘い甘い香りがした。

 

 

「腹減った」

「やり甲斐のない人」

 

 

 

 

「ごめんね~、しのぶ」

 

 

 そう言い、カラカラ笑うのはカナエ。濡れネズミの彼女は寝台に腰かけていた。右腕には真新しい包帯が巻かれている。

 蝶屋敷の診療所で、しのぶはカナエの治療を終えた所だった。

 花柱負傷の報を聞き、慌てたしのぶだったが、実際に蝶屋敷に戻ったカナエは軽傷。最悪の事態を想定していただけに、思わず脱力してしまった。

 

 

「すみません、カナエ様。この度は本当にご迷惑をおかけして……」

 

 

 同じく診療所にいる雨ヶ崎が、カナエに向けて濡れた頭を下げた。

 カナエは笑顔で受け止める。

 

 

「ううん、いいのよ~。雨ヶ崎さんが無事で本当に良かった~」

 

 

 雨天の任務。視界が悪いのは言わずもがな、足場も悪くなる。夜目に優れる鬼に、有利な天候であった。そして、こんな時こそ鬼の動きは活発化する。

 雨ヶ崎の相手は、決して強い鬼ではなかった。それでも悪条件が重なってしまい、足を泥濘に取られてしまった。

 危機一髪のところをカナエが庇った。腕は負傷したものの、鬼はカナエの敵ではなく難なく撃退した。

 傷も数日のうちに塞がり、すぐに任務に復帰できる……それがしのぶの見立てだった。

 だが、しのぶはカナエを疑わしい目で見る。そもそも、カナエがこの程度の鬼に怪我をする事が有り得ない。例え庇ったとしても、無傷で返り討ちできていたはずだ。

 ――弦司が蝶屋敷からいなくなって三日。

 しのぶから見て、カナエはいつも通りだ。今だって、美しい笑顔を絶やさない。でも、何かが違う。

 夢が最後まで叶わなかったから? 夜の蝶屋敷に誰もいないから? 弦司がいないから?

 しのぶには分からない。どれも正解のような気がするし、不正解のような気もする。

 

 

「カナエ様」

 

 

 雨ヶ崎が苦悩に満ちた声でカナエを呼んだ。

 

 

「雨ヶ崎さん、どうかしましたか?」

「……カナエ様、お願いです。不調のまま、任務に出るのは止めて下さい」

 

 

 しのぶが思っていた事を、雨ヶ崎が先に言った。言わせてしまった。継子であるしのぶが、先に指摘しなければならないのに。

 しのぶは慌てて会話に割って入った。

 

 

「姉さん、雨ヶ崎さんの言う通りよ。報告にある通りの鬼なら、姉さんは傷一つつかないで勝ててるわ」

「怪我したからって、そういう意地の悪い言い方はやめてよ。私だって、調子の悪い日ぐらいあるもの」

「カナエ様」

「なに?」

 

 

 雨ヶ崎が口を一文字に結んで、緊張の面持ちになる。何度か口を開閉した後、彼は覚悟を決めたのか、強く拳を握り締める。

 

 

「不破さんの事、引きずっているんでしょう?」

「そんな事ないわよ~」

 

 

 雨ヶ崎の不躾な質問に、カナエは即答した。だが、それはまるで予め用意したような答えだった。

 雨ヶ崎は首を横に振る。

 

 

「カナエ様、それは嘘です」

「雨ヶ崎さん、今日は頑固ね。でも私、柱だから。理由を伺おうかしら?」

「不破さんがいなくなって、俺も後藤さんもしのぶさんも、普通に引きずってますよ。さすがに任務にまでは影響は出していない……いえ、出さないように努力していますが」

 

 

 雨ヶ崎の言う通り、彼も隠の後藤も、そしてしのぶも別れが急すぎて、心の整理ができていなかった。しのぶでさえそうなのだ、カナエが全く問題ないなんて、有り得ない。

 

 

「一番仲の良かったカナエ様が何ともないなんて、嘘ですよね? それとも、そんなに不破さんってどうでも良かったですか?」

「どうでもなんて――!」

 

 

 雨ヶ崎の指摘にカナエは反論しようとして、何を思ったのか途中で口を閉じ俯く。

 何が姉に起きているのか。何を姉が思っているのか。知りたいのに教えてくれない。

 いや、教えてくれなくてもいい。自分が為した事をしっかり理解しさえすれば、カナエは分かってくれるはず。

 しのぶは寝台に腰を下ろし、カナエの隣に座る。

 

 

「姉さん、不破さんがいなくなって、寂しいよね」

「そんな事ない」

「私はそんな事あるわ。日中は私の代わりに家事をやってくれて、暗くなったら夜間訓練に後方支援と戦闘。合間は私の研究に姉さんの相手……寝ないからって、やり過ぎよね」

「……」

「私、姉さんが取られたみたいで、不破さんの事、ちょっと嫌いだったの。でも、今思えばこれだけ私達に尽くしてくれてた……今は感謝しかない」

 

 

 最初は助けていたはずだった。気づけば、しのぶ達姉妹を助けてくれていた。柱合会議以降、人を助けると宣言した通り、しのぶ達を助けてくれていたのだ。

 思い出して、しのぶは思わず頬が緩む。

 

 

「彼だからきっとご家族も婚約者も受け入れてくれたんだと思う。姉さん……寂しいと思うけど、ちゃんと受け入れよう?」

「──て」

「それに見たでしょ。みんな不破さんに再会できて、嬉しそうだったわ。特に熊谷さんとは本当にお似合いだった。きっと、今頃仲良く手を繋いだりしてるんじゃないかしら?」

「――めて」

「も、もしかしたら、もっと大人な──」

「お願いだからやめてよ、しのぶ」

「え」

 

 

 しのぶの言葉に、カナエは拒絶するように膝を抱えて俯く。濡れた艶やかな黒髪が、カナエの顔を隠す。

 

 

「もう嫌だ。弦司さんの事、思い出したくない」

「……何で?」

「……」

「何でよ。答えて、姉さん」

「…………」

「姉さん」

 

 

 しのぶはカナエの肩を掴み無理やり顔を上げさせた。そして、息が詰まる。カナエは顔をクシャクシャにして、今にも泣きそうだった。

 衝撃を受けるしのぶ。だが、振り向かされたのが切っ掛けとなったのか、小さくか細い声でカナエが言う。

 

 

「嫌な事考えちゃう」

「嫌な事?」

「弦司さんは弦司さんのいるべき場所に戻ったのに。私はぎりぎりの所を助けた……それで良いはずなのに」

「……」

「失ったって。まるで私の物だったみたいに思っちゃう」

「姉さん……」

 

 

 一度決壊した感情は止め処なく流れ落ちていく。

 

 

「私は弦司さんを救いたいって思ってたはずなのに。戻ってきてって、私の手で救わせてって、勝手な事ばかり願っちゃう」

「……」

「私、弦司さんの事、夢を叶える道具としか、思ってなかったのかな……」

「それは違うわ。姉さんは本気で――」

「そんな事ない。弦司さんがいなくなって、どんどんどんどん、嫌になる。だから、もう思い出したくない」

 

 

 ――この気持ちを止めてよ。

 

 

 甘くて切ない叫びをしのぶは聞いた。

 

 

 

 

 それから、雨ヶ崎の落ち着かせるべきだ、という意見に従って、しのぶは診療所を出た。

 雨ヶ崎と隣り合って軒下に立つ。湿った空気と静かな雨音が、少し心を落ち着かせてくれる。

 それでも瞼を閉じると、今もカナエの切ない叫びが蘇る。

 

 

「……姉さん、夢が叶わなかったのが堪えたのかな」

「それもあるけど……しのぶさん、恋愛音痴?」

「!?」

「いや、驚いた顔しないでよ」

 

 

 当たり前のように苦笑いする雨ヶ崎。

 恋愛音痴? とにかくダメな感じは伝わった。達人ではないのは確かだが、音痴はあんまりだ。

 しのぶは笑う雨ヶ崎を睨み付ける。

 

 

「いきなり何よ。少なくとも、私はあなたより詳しいです」

「いやいや! どこからその自信が来るの!? そもそも、今のカナエ様見て、片思いしてるって選択肢がない時点で全然ダメだよね!?」

「えっ、もしかして不破さんに!?」

 

 

 しのぶが驚くと、雨ヶ崎がさらに驚く。

 

 

「そうだよ!? むしろ、あれ見て何でそうなるの!?」

「いやだって……二人は付き合ってなかったし……」

「付き合ってなかったら片思いもないって、そっちの方が驚きだよ!?」

「姉さんに惚れられて、付き合わない男がいる訳ないじゃない! そもそも、姉さんだって好きとか惚れたとか、一言も言ってない」

「あ~……そうなる? そうやって捉えちゃう?」

 

 

 雨ヶ崎が困惑気に頬を掻く。

 カナエは鬼殺隊に入る前は、町一番の器量良しだった。習い事だって何だって一番……そんな彼女に惚れられて、夢中にならない男がいるはずがない。はずがないのだが……しのぶの脳裏に思い浮かぶのは、弦司と環の寄り添う姿。

 本当に片思いなのか。しのぶは気になって、そわそわちらちら雨ヶ崎を盗み見る。

 雨ヶ崎がため息を吐いた。

 

 

「参考までに聞いて欲しいんだけどさ」

「うんうん、なになに」

「……カナエ様って割と本気で『好きな人が好み』って感じの人でしょ?」

「聞いた事ないから分からないけど。でも、それって普通じゃない? 容姿とかで人を判断するのって、失礼だと思うし」

「う、うん、そういう考えもあるね。まあ、それはともかく、そういう人はどういう人を好きになるかっていうと、強く心を動かされた相手をそのまま好きになる事が多いんだよ」

「ふーん」

 

 

 しのぶは前髪を指先で弄る。いまいち、雨ヶ崎が言いたい事が分からない。

 

 

「つまり、どういう事?」

「不破さんはカナエ様の夢を体現したような男性だよ? 当然、感情が強く揺さぶられただろうね」

 

 

 カナエの夢は平たく言えば『鬼を救う』『鬼と仲良くなる』。

 弦司をカナエが救い、それを切っ掛けに弦司はカナエを信頼した。カナエも懸命に生き抜こうとする弦司を見て、彼の人となりにさらに信頼を寄せ、友人以上の絆を得た。雨ヶ崎の言う通り、カナエにとって弦司とは夢そのものと言ってもいいかもしれない。

 それでも、としのぶは反論する。

 

 

「それだけで惚れたっていうの? 姉さんはそんな安くありません」

「そうだね。でも不破さんとカナエ様の繋がりってそれだけじゃないよね」

「例えば?」

「『おはよう』から『おやすみ』まで挨拶してくれるとこ。鬼殺隊にいるとついつい忘れがちな、有難い日常を感じ取れる言葉だね。これ、行為自体も優しく感じるんだけど『鬼と仲良くなる』って夢と、すごく合致しているんだよね」

「……」

「さらに、毎日些細な事で褒めてくれる。相手の良い所を褒めるって、他人と仲良くなる基本だよね。これ、普通に嬉しい上に『鬼と仲良くなる』って夢と合致してて――」

「うん、もう分かったから!!」

 

 

 しのぶが雨ヶ崎の説明を止める。姉の好感度の上昇がさっきから止まらない。

 

 

「姉さんの心に刺さったのは分かったけど、そう上手くいく? 嫌な所の一つや二つは、普通は目に入るでしょ」

「いや、カナエ様の夢って、滅茶苦茶目標高いよね? カナエ様だって、その認識あるだろうし。そんな目標を歯を食いしばって飛び越えてくれた男性の、嫌な所の一つや二つ目に入ると思う?」

「……」

「不破さんって存在がカナエ様に誠実に接すれば接するほど、カナエ様の心に響くんだ。そこに周囲が囃し立てて、異性として意識してしまう。ただでさえ高い好意を持っているのに、男性として意識してしまったら……心が動くのもしょうがないでしょ」

「……何それ。姉さん特効……」

「まあ、俺の所見だけど。参考にして」

「……うん、参考にする」

 

 

 しのぶは解説されてようやく理解した。

 雨ヶ崎がもう一度、深く深くため息を吐く。

 

 

「問題は二つ。そこまで想ってたのに、割とあっさりと不破さんを取られた事。絆はあったけど、自分が特別じゃないって突きつけられるのは、正直キツい」

「もう一つは?」

「……あの問答聞く限り、カナエ様自身が自分の気持ちに気づいてない事。あれ、自分の夢と好意がごちゃ混ぜになって、感情が複雑骨折してない?」

「ええ……何かいい解決方法はないの?」

「失恋の治療法は新しい恋とはよく言うけど……」

「姉さん自身が気づいてないなら、新しいも何もないでしょ」

「だね。となると、時間かけて癒すしかないよなぁ……」

「負傷したのはいい機会と思って、休むしかないわね」

 

 

 しのぶの結論に、雨ヶ崎も頷く。一体、傷が癒えるまでどれだけの時間が必要か。だが、そんな多くの時間など鬼殺隊に身を置く以上、取れる訳もない。

 困った――そう思っていると、一羽の鎹鴉がしのぶ達の元へ飛んできた。鎹鴉は雨に震えながら、

 

 

「不破家ヨリ伝令! 火急ノ要件ニツキ、至急救援ヲ求ム! カァァッ!」

「っ!?」

 

 

 伝令の内容に驚愕すると同時、診療所からカナエが飛び出してきた。顔色が悪い。雨に濡れて体が冷えた……だけではないだろう。

 

 

「し、しのぶ……弦司さんは……!」

「姉さん……」

「カナエ様、しのぶさん。蝶屋敷には俺がいるから、とにかく先に現場に向かって!」 

 

 

 準備する時間も惜しい。しのぶはカナエを連れ立つと、そのまま真っ直ぐ不破邸へ向かった。

 

 

 

 

 不破邸は重苦しい空気に包まれていた。

 

 

「待っていたぞ、カナエ嬢! しのぶ嬢!」

 

 

 迎え入れたのは弦十郎だ。弦一郎は仕事で今は不在らしい。

 しのぶは事情を訊きながら、不破邸の中を進む。

 

 

「火急の要件との事ですが、一体何が起きたんですか?」

「それがどうも、全て弦司の差配らしいのだが、詳細が分からん!」

「分からないとは?」

「事情の説明は後回しにし、とにかく救援と藤の花の香炉を焚き、自身を閉じ込めろと言ってきた! 我も下手に詮索する前に、まずは迅速な行動をと思い、君たちを呼んだ次第だ!」

「その肝心の不破さんはどこに?」

「仕事部屋に閉じこもっている! 我らを追い出して、さらには入れぬように内から鍵と家具で閉めているぞ!」

 

 

 しのぶは顎に手を当てて考える。何を彼がここまで駆り立てるのか。

 彼が不破邸にて最も恐れていた事は暴走だ。つまりは、それに類する事態が起きてしまったのではないか。そう考えれば藤の花の香炉を焚くのも、しのぶ達を呼ぶ理由も分かる。問題は弦司程の者が、暴走してしまうような切っ掛け……それが掴めない。だが、それも会えばすぐに分かるだろう。

 しのぶは頭を切り替えて、弦司の元へ向かう。カナエはその間、ずっと俯いていた。

 すぐに部屋の前には着いた。そこら中、香炉が焚かれている。

 

 

「弦司様! 弦司様!」

 

 

 部屋の前では、和装の美女が弦司の名を叫んでいた。環だ。

 彼女はすでに泣いて、扉に縋りついていた。あの時見た嬉しそうな姿は、微塵も残っていない。

 

 

「弦十郎さん」

「うむ! 環、しのぶ嬢とカナエ嬢が来た! 彼女たちに任せて、まずは離れよう!」

「弦司様! 弦司様!」

「ううむ……! お前たち! 気は進まんが、彼女を引きはがせ!!」

 

 

 取り乱す環を、使用人達が無理やり扉から引き離した。

 扉の前が空く。しのぶがカナエに視線を送る。カナエは怯えたような雰囲気を見せると、唇を噛んでゆっくりと扉へと近づいた。

 カナエが震えた声で尋ねる。

 

 

「弦、司……さん?」

「…………カナエか」

 

 

 部屋の中から返事が返ってきた。酷く気怠そうな声だった。しのぶは嫌な予感が止まらなかった。

 

 

「火急の要件と、伺いました」

「……やっぱり、鬼は幸せになってはいけないらしい」

「え? あの、どういう――」

「環は『稀血』だ」

「――は?」

 

 

 弦司の言葉に、しのぶは頭が真っ白になった。

 『稀血』? 環が? 何で?

 そんなしのぶの疑問に答えるように、扉から抑揚のない声が返ってくる。

 

 

「環から、甘ったるい香りがするとは、思ってた。すぐに腹が減るとは、思ってた。さっき茶器を割って、環が怪我をして……全部分かった。環は『稀血』だ」

 

 

 しのぶは膝から崩れ落ちた。嘘だ。嘘だと言いたかった。あんなに愛し合っているのに。助けたいと心の底から思ったのに。

 三日。たったの三日で、理想が崩れ去ったなんて。誰か嘘だと言って欲しかった。

 尋常ではない様子のしのぶに、弦十郎が近づく。

 

 

「しのぶ嬢……『稀血』とは?」

「……人の中に極少数ある珍しい血の事です。鬼にとってのご馳走で……普通の鬼なら、我を失って襲い掛かっても不思議ではない。そんな代物です」

「何っ……!? それでは、環と弦司は――!!」

「もう一緒にはいられません……っ!!」

 

 

 しのぶが答えると、誰かが胸倉を掴み無理やり立ち上がらせる。

 環だった。彼女は涙を流しながら、怒りを露わにする。

 

 

「適当な事言わないで!! 私が、どんな想いで耐えてきたと思っているの!! そんな、それをたったの三日で、こんな――!!」

「お前たち何をやっている!! 早く環を離せ!!」

「なんでなんでなんで!! よりにもよって『血』だなんて!! どうすればいいのよ!!」

 

 

 環は無理やり引きはがされる。

 その際、突き飛ばされたしのぶは、立ち上がれなかった。環の悲痛な叫びが、頭から離れない。

 

 

「環」

「っ! 弦司様!!」

 

 

 弦司が部屋の中から、環を呼んだ。それだけで、環の表情に笑顔が戻る。だが、それもまた一瞬で絶望へと叩き落される。

 

 

「今度こそ、お別れだ」

「――えっ」

「最後の最後まで振り回して、ごめん」

 

 

 それは別れの挨拶だった。しかも顔を見せない、声だけの。もう顔を合わせる事さえ容易ではない……それがまた、しのぶの心を抉った。

 環が絶望し、大粒の涙を流す。

 

 

「そんな、やめて、弦司様……! 捨てないでぇっ……!!」

「……こんな俺を、ここまで想ってくれてありがとう。この三日間、本当に幸せだった」

「聞きたくない! そんなの、聞きたくない! もう、食べてもいいから、一緒にいさせて――!!」

「兄上、後を頼みます」

 

 

 弟の悲痛な願いに、弦十郎は悔しそうに歯を食いしばる。

 

 

「鬼とは、何と惨い存在よ……! お前たち、弟の覚悟を受け止めろ! 環を連れていけ!!」

 

 

 弦十郎の命令に、今度こそ環は連れていかれた。不破邸のそこかしこから、すすり泣く音が聞こえてくる。

 こんなの有り得ない。弦司は懸命に頑張り、鬼であっても家族の元に戻れた。幸せになった。そう、幸せになったのに。

 鬼が人の心を持つとは、人の元に戻るとは、ここまで困難なものなのか。こんなに不幸せにするものなのか。

 涙が止まらなった。望んだ幸せが、むざむざと壊されたことに。そして、自分では救う事のできない無力さに。

 

 

「カナエ、しのぶ、入ってくれ」

 

 

 すぐそこの扉から聞こえるはずの弦司の呼び声が、酷く遠くに聞こえる。

 

 

「しのぶ」

「……うん、分かってる」

 

 

 しのぶは涙を拭い立ち上がる。どんなに辛くとも、前に進まなければならない。

 カナエが扉の取っ手に手を掛ける。簡単に扉は開いた。

 

 

「うぐっ……! すまない、早く入ってくれ」

 

 

 藤の花の香が入ったのか、部屋の中から苦し気な声で弦司が促す。カナエとしのぶは素早く部屋に入った。

 弦司は部屋の隅で椅子に深く腰掛けていた。一見、落ち着いて見えるが、それは装っているだけだろう。顔には隠し切れない焦燥。加えて、部屋の中が非常に荒れていた。

 割れたという茶器はそのまま床に放置されており、さらには机は真っ二つに割れていた。さすがに最初は荒れたのだろう、他にも家具やら小物やらがそこかしこに散らばっていた。

 いつもは穏やかな彼では想像できない部屋の様相に、カナエとしのぶが揃って言葉を失っていると、弦司が殊更気怠そうに切り出した。

 

 

「何度も何度も本当にすまないが、また俺を引き取ってもらえないか?」

「弦司さん……その、環さんの事は残念だけど、何もここを出て行かなくても──」

「それじゃあダメなんだよ」

 

 

 弦司が吐き捨てるように否定する。声には隠し切れない憎しみ、そして怒りが込められていた。

 弦司は続ける。

 

 

「ようやく分かったんだ。鬼は立ってるだけで幸せはすり抜けて行くって」

 

 

 しのぶもカナエも反論できなかった。

 弦司は何も悪い事をしていない。むしろ、自身が有益な存在だと何度も何度も証明してきた。なのに、人の時には当たり前にあった幸せが、次から次へと失われていた。全て鬼であるからこそ起きた悲劇だ。

 弦司は悲壮な覚悟を告げる。

 

 

「もうこんなのたくさんだ。俺はもう一度幸せを掴むために、必ず人になる。生きるために戦うんじゃない。人になるために戦う」

 

 

 それを聞いたカナエは、何も言えないでいた。しのぶは動けない姉を一瞥してから、弦司の目の前に立つ。

 弦司の気持ちは分かった。弦司が酷く傷ついているのも分かった。それでも、しのぶには言いたい事があった。

 

 

「どうして熊谷さんに『待って』って一言言わないの? 彼女なら、きっと待っててくれる」

「終わりの見えない苦しみに、どうして環を付き合わせないといけないんだ」

「一番苦しいのは不破さんでしょ? 彼女なら、あなたの重石の半分を背負ってくれる」

「それは俺の願いじゃない。俺の願いは、できるだけ長い時間、彼女が幸せであってくれる事だ」

「でも、それは彼女の願いじゃない。それに不破さんがいなくて、幸せになれると思うの?」

「鬼である限り、俺の幸せはない。だけど人の彼女なら、幸せは一つじゃないはずだ」

 

 

 弦司の答えは、どこまでも鬼に対する憎しみと劣等感、人に対する憧れと希望……そして慈しみが溢れていた。きっとしのぶとカナエが何を言っても、弦司は意見を翻さないだろう。それだけの覚悟を感じた。

 しのぶは踵を返す。

 

 

「姉さん、後は任せるね」

「しのぶ、どこへ――」

「熊谷さんの所。先に帰ってていいから」

 

 

 それだけ告げると、しのぶは部屋を飛び出した。

 使用人に環の居場所を聞き、部屋まで案内をしてもらう。

 彼女に会って何をするのか。何ができるのか。何も分からない。でも、鬼のせいで悲しんでいる人がいる。絶望している人がいる。何かしたかった。

 環は寝台で呆然と腰かけていた。環の自室なのだろう、部屋にはどことなく生活感がある。寝台の脇に置かれた弦司と環、二人の笑顔の写真が物悲しい。

 あやのと弦十郎もいた。だが、環に何も言葉を掛けられず、ただただ立ち尽くしていた。そして、彼らもまた憔悴しきっている。

 しのぶの胸に冷たい鈍痛が広がる。それでも環の前に立った。

 

 

「……熊谷さん」

「しのぶさん、ですか? 何の用、でしょうか?」

 

 

 鬼を殺す以外、救う方法を知らない己に何ができるのか。そんな自問自答を繰り返す。

 しのぶにできるのは、毒を作ることだ。薬学だ。それ以外は、全て姉のカナエに劣っている。

 それでもしのぶにできること。

 それは――。

 

 

「薬を作ります」

 

 

 自然とその言葉が口から出ていた。

 その時、焦点の合っていなかった環の瞳が、しのぶを捉える。

 

 

「鬼を治す薬を作ります。不破弦司さんを必ず治します」

「……それができるのは、いつですか? 明日? それとも明後日? 来年?」

「っ、それは……」

「そんな慰めにもならない言葉……あなたは何のために来たの!! 出て行って!!」

 

 

 環は激昂すると、声を上げて泣き始めた。

 一体、自分は本当に何をするために来たのか。しのぶは己の無力さに後悔の念ばかり沸き立つ。

 しのぶは辛うじて頭だけを下げて、部屋を出て行こうとすると、

 

 

「しのぶ嬢」

 

 

 しのぶの背中から呼び声が掛かり、振り返る。弦十郎だった。あやのは環を慰めている。

 

 

「環も落ち着けば、今回の件も感謝するだろう! あの言葉は気にしなくてもいい!」

「……はい。ありがとうございます」

「それと我が弟だが、今後どうするつもりだ!」

 

 

 しのぶは弦司が家を出て行くこと。人となるために戦う決意をした事を説明する。

 弦十郎は深々と頭を下げた。

 

 

「本当に申し訳ない! 我らが意地を張らず君たち姉妹に任せていれば、今のような事態は避けられていただろうに……! 詫び……ではないが、支援の件については何でも相談をしてくれ! 私たちにできる事は何でもしよう! だから……弦司の事を頼む!」

「……はい。任せて、下さい」

 

 

 しのぶはそれだけ答えると、足早に部屋を出て行った。弦司が生きているのに。誰も悪くないのに。誰もが彼が鬼である事に苦しんでいる。もうこれ以上、ここにいたら泣いてしまいそうだった。

 

 

 ――絶対に強くなる。殺すだけの剣士じゃない。人を救えるほど、強くなってみせる。

 

 

 しのぶはそれを胸に強く刻み付け、不破邸を後にした。

 

 

 

 

 カナエは弦司と二人で蝶屋敷へと向かっていた。すでに雨は止み、空には月が昇っていた。月明かりが弦司を照らし、端正な容貌を夕闇に映し出す。その表情には、覚悟が浮かんでいた。

 カナエはその横顔を見ていると、

 

 

「カナエ」

「……」

「カナエ?」

「っ、はい!? な、何でしょうか!?」

「いや……何かいつもより、距離取ってないか?」

 

 

 弦司の問いかけに、カナエはギクリと体を震わせる。

 失ってしまったと()()()()()()()。それが再び、何もせずに隣にいる。こんな想いはダメだと言う自分と、何もせず戻るのは自分の物だという証拠、と言う自分。

 カナエはもう色んな感情が綯い交ぜになって、弦司との距離感が分からなくなっていた。

 だが、弦司にはカナエのそんな内心など分からず、ある一点で視線が止まる。

 

 

「おい……それ、怪我か!? 何があった!?」

「えっ、これは、その……ちょ、ちょっと失敗しちゃって」

「もしかして、鬼にか!? 本当に大丈夫なのか!? って、もしかしてこれを隠すために距離取ってたのか!?」

「いや、そうじゃない! そうじゃないのよ!?」

 

 

 弦司がカナエの心配をする。し過ぎるぐらいする。心配されて嬉しいのか、心配させて悲しいのか。もうよく分からなくて、カナエは曖昧に笑った。それがどういう風に受け止められたのか、弦司は顔を顰める。

 

 

「俺はそんなに信用ならないか……」

「だから、そうじゃなくて! あの、私、環さんの質問に答えられなくて、それで……!」

「質問?」

 

 

 つい口を衝いた言葉は嘘ではなかった。

 本当に弦司を救えるのか覚悟を問われ、カナエは答えられなかった。弦司を託す相手もなく、鬼殺に殉ずるなと彼女に言われた気がした。

 弦司の隣にいる資格はない……そうも思っているから、近づけなかった。

 

 

「私、あれだけ救うって、守るって言って……でも実際は、そんな覚悟も全然なくて。もう、私は弦司さんと一緒にいない方がいいんじゃないかって、思って――」

「何で急にそうなるんだよ」

「……この怪我もそうだけど、鬼殺隊にいればいつ死ぬか分からない。救うって言いながら、先に私は死ぬ。そんな無責任な事、これ以上は……」

「でも鬼殺を止めるつもりはないんだよな」

「……っ」

 

 

 カナエが足を止める。遅れて弦司も止まった。

 カナエは弦司の顔を見れない。お前を救わないと言ったようなものだ。何と思われてしまったのだろうか。知るのが怖い。

 弦司は身を屈めカナエと視線を合わせる。カナエは慌てて視線を逸らした。

 弦司のため息が聞こえる。呆れられたのだろうか。そう思っていると、指を差し出された。弦司の小指だった。

 

 

「カナエは鬼殺を止めたくない。俺はカナエに協力してもらって人になりたい」

「……うん。それで、どうすればいいの?」

「預けた俺の命、お前のために使う」

「えっ」

 

 

 意味が分からなかった。弦司の言葉の意味もそうだが、心拍数が上がる自身の状態も理解できなかった。

 

 

「俺はカナエに死んで欲しくない。なら、俺のために預けた命、カナエのために使うぐらいしか俺にはできないだろ」

 

 

 説明された。何か屁理屈を捏ね繰り回して、さらにとって回した言い方だが、要は――。

 

 

「体を張って、私を守る……って事?」

「そんな気障なものじゃない。俺のために、カナエには鬼を使ってでも生き延びろって事」

「えぇ……何が違うの?」

「全然違う」

 

 

 何が違うのだろうか。全く分からない。だが、弦司にはそれが重要らしく、譲ろうとしない。

 

 

「えっと……それじゃあ、私は」

「いい。元々今までは不公平な約束だったんだ。これぐらいさせてくれ」

「でも――」

「今のカナエは何か頼りないからな。これぐらいがちょうどいい」

「~~酷い! 私、こんなに悩んでいるのに!」

 

 

 カナエが怒ると、弦司はニンマリ笑う。気遣いのつもりだろうか。それにしては、酷く失礼だ。カナエは悩んでいるのが馬鹿らしくなった。

 カナエは自らの小指を、弦司の小指へ絡めた。

 

 

「分かりました。じゃあ、弦司さんの体は胡蝶家のモノだから。扱き使うから、そのつもりでいて」

「は? そこまでは言ってないだろ!? 俺を使って、生き延びろって言ってるだけで、そんな――」

「指切った! はい、約束した! これで弦司さんはもう『胡蝶家(うち)の鬼』! 覚悟して!」

 

 

 カナエはそう宣言し、指を離すと駆け出す。慌てて追いかける弦司の気配を感じる。それだけで、何となく心が軽くなった。

 とはいえ、この『約束』で何か解決したかと言えば、何も解決していない。

 弦司は恋人と別れ、また幸せを一つ失った。

 弦司の言う通り、彼は生きているだけで幸せを失っていく。そんな弦司をカナエは果たして救う事ができるのか。今回の件で、ごっそり自信は無くなった。

 さらに、カナエの中に巣食う感情の正体は何なのか。それもよく分かっていない。

 何もかも上手くいかない。それでも残った事実は、弦司はカナエの隣にいる。何があっても、弦司はカナエの傍に()()()()()。そんな事ばかり考えてしまう。

 

 

 ――胡蝶家の鬼

 

 

 こんな時に何を考えているのかと思う。でも、言葉が頭から離れてくれない。

 

 

 ――胡蝶家(わたしだけ)(もの)

 

 

 今はこの気持ちを噛み締めて。

 月明かりの下を二人で進み続けた。




ここまでお読みくださりありがとうございました。

短編分を一部としたら、ちょうどこの辺りが第二部となります。第二部完です。色々課題ばかり目立ちますが、何とかここまで来ました。
物語もちょうど折り返し地点となります。
ここから少しずつ、ラストへ向けて走っていこうと思います。

それではまた次回、よろしくお願いいたします。

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