帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest9 謎の戦士と鬼門

 ガオドラゴン達と和解を果たしてから一週間経った日……陽は日々、変わらない日常を送っていた。

 あの日から、あれだけ息もつく間も無い迄に襲撃して来たオルグ達は、ピタリと無くなった。

 テトム曰く「オルグ達も様子を伺っているかも知れない」と警戒を崩さず、大神も鬼門を探し竜胆市内に潜伏していると言う。

 陽は、あの後、学校を遅刻した理由を「急に体調が悪くなったから」と誤魔化したが正直これ以上、ガオレンジャーである事を隠し通すのは難しく思えてならなかった。かと言って、自分の正体を明かせば祈を始め周囲の親しい者達に危害が及ぶ恐れがあった。

 等と考えながら学校の休み時間……他の友達と話していた猛は、陽に話し掛けて来る。

 

「なァ、陽! これ凄ェよな!」

 

 興奮しながら猛は、スマホの画面を見せてきた。

 陽は何事か、と見てみると、パイプオルガンオルグとガオゴールドが戦っている動画が映し出された。

 

「最近よ、こんな化け物染みた連中と戦う戦士が現れるって噂になってんだ。此処一月だけで、4回以上現れてるらしいぜ!」

 

 猛は興奮気味に語り始める。こう言った話には人一倍、興味津々な性格だから、仕方無いと言えば仕方無いが……。

 

「偶にテレビでやってる、子供向けの特撮番組の撮影じゃ無いのか?」

 

 昇は冷めた口調で話す。確かに、見た感じは特撮映画のそれに近い。猛は驚いた様子だ。

 

「バッカ、これがテレビの撮影かよ⁉︎ 見てみ、凄ェリアルじゃねェか‼︎」

 

 猛が動画を動かすと、今まさにガオゴールドが放った攻撃が、オルグを撃退した瞬間が映されていた。

 

「ネットで拾った動画だろ? これ位の演出なら、最近のコンピュータ技術で、どうとでもなるだろ?」

 

「う……」

 

 昇の痛い所を突いた発言に、猛は言葉を詰まらせる。

 確かに、この戦いは端から見れば現実味に欠けている。テレビの撮影だと言ってしまえば、それでお終いだ。だが……。

 

「なァ、陽! お前はどう思うよ⁉︎」

 

 猛が陽に話を振って来た。陽は苦い顔をする。

 言う迄も無く、この動画に映るガオゴールドの正体は陽本人である。かと言って、其れを自ら明かす訳にも行かない。

 

「……多分、動画に上げようとした人の造ったCGじゃ無いかな。前に無料動画サイトで似た様なのを見た事あるし……」

 

 なんと無くだが、誤魔化しておいた。変に詮索されたら面倒な事になりそうだからだ。

 

「……んだよ〜、もし実際に居るなら会って見てェけどな」

 

「……会って、どうするんだ?」

 

「………サインを貰う?」

 

「……小学生か、お前は……」

 

 呆れ果てた様に、昇は溜息を吐く。

 一方、陽は内心、穏やかでは無かった。戦いをこなす日々で忘れていたが、オルグが現れガオレンジャーとして戦えば当然、世間に認知される。よくよく考えれば今迄、バレなかったのが不思議なくらいだ。

 このままでは、自分の正体がバレるのも時間の問題だ。何とかしなくては……。

 

「(テトムに相談してみるか……)」

 

 陽は一先ず、テトムに今後の対処について話す事を決断した。

 

 

 

 大神 月麿は1人、バイクを走らせ山道を進んでいた。この町の何処かに、オルグが現れる''鬼門''が存在するらしい。

 前回と違い、オルグ達はどうやら、本拠地とする場所から召喚され、この町に現れている。

 そうなれば、その鬼門を見つけ破壊すれば、オルグ達の侵攻を食い止められる。あわよくば、オルグの本拠地を直接、叩く事も出来るかも知れない。

 大神は元々、一匹狼気質で物事を1人で抱え込んでしまう為、ガオレンジャーが敗北したあの日、己だけ逃げてしまった事を、ずっと後悔し続けていた。

 仲間達は今、どうしているだろう……ただ、それだけが気掛かりで仕方ない。自分は肝心な時に、仲間達を救えない。1000年前もそうだ……当時で最強だったオルグ、百鬼丸の侵攻を食い止める為、自身がオルグとなって百鬼丸を倒した……が、自分の力が至らないが為に、千年の友ガオゴッドは倒され、新たなオルグ『狼鬼』として仲間達に、仲間を封印させると言う苦痛を与えてしまった。

 そればかりか、今度は自分を狼鬼の呪縛から解き放ってくれた仲間達を見捨ててしまい、陽を戦いに巻き込む結果となった。

 

「……俺は……何一つ変わっていない……」

 

 只々、自責の念ばかりが大神の良心を苛める。自分に力があれば……もっと力が……。

 だが何時までも、猛省ばかりしてられない。今は自分が為すべき事をしなければ……。

 

 

 

 山道を抜けた大神は、古びた廃寺へ辿り着く。かなり昔に人手から離れ、荒れ放題と化している。

 かつては高名な寺だったらしいが、人が寄り付かなければ神聖な寺社仏閣も形無し、今では鼠やイタチの温床である。

 大神は廃寺の門を潜り、建物の中に足を踏み入れた。昔は参拝者で溢れていたであろうに、現在は剥がれ落ちた瓦やカビや苔に侵食された柱が、時の流れを物語っている。こんな辺鄙な場所に用も無く足を運ぶのは、余程の物好きか人目を避けたい何かを隠したい者しか居ない。そして、今回は後者である。

 常人には到底、感じ取る事は出来ないだろうが、この廃寺全体から、オルグ特有の邪気が滲み出ている。

 的中、大神は内心で感じた。間違い無く、此処に鬼門が存在する筈だ。

 鬼門は一般人には目視する事は出来ず、オルグが現れた際も空間が歪んだ様になるだけだ。

 しかし、大神は不審に感じる。何故、敵は鬼門等と言う非効率な方法を使うのか?

 まだ人が今より少なかった1000年前なら兎も角、文明が進み人の手が未開の地にも及ぶ様になった現代で、例え一般人に見る事は出来ずとも、視覚的に目立つオルグ達の侵入口として使うには、鬼門はハイリスクだ。

 にも関わらず鬼門を使い、オルグを次から次に送り込んで来る理由は……? 大神は思案しながら、廃寺内を散策して回る。敷地内に充満する邪気の質は、かなり薄い。だが薄い邪気も積もれば、より高密度な邪気となって周囲に影響を及ぼす。そうなれば、オルグを自然発生させる結果に繋がり兼ねない。大神が鬼門探しに熱を入れるのは、そう言った理由があった。

 

 

「何か、お探しかな?」

 

 

 突如、静寂を裂く声に大神は振り返ると、廃寺の屋根に立つ謎の人影が見えた。

 

「誰だ⁉︎」

 

 大神が警戒心を露わにしながら叫ぶ。人影は飛び降りて、大神の眼前に着地した。

 

「なッ⁉︎ お前は⁉︎」

 

 大神は思わず絶句する。眼前に立っていたのは、オルグでは無く紫色のガオスーツにヘルメットを着用したガオの戦士だった。

 

「ガオ……レンジャーなのか?」

 

 大神が驚くのも無理はない。現在、ガオレンジャーはガオシルバーとなる自分とガオゴールドとなる陽、行方不明となるガオレッド達以外に存在する筈は無いのだ。だが、目の前に立つ男は紛う事無き、ガオの戦士の特徴を持つ。

 

「ク……俺は、ガオの戦士じゃない。今はな……」

 

 謎のガオの戦士は、挑発する様に笑う。

 今は? と言う意味深な言葉に大神は気になった。彼が、ガオの戦士じゃないなら……何故、ガオスーツを身に付けているのだ? だが、目の前のガオの戦士から放たれる気は非常に凶々しく、とても、ガオレンジャーの気とは言い難い。

 

「ならば、何者だ⁉︎」

 

「フン……知りたければ力尽くで聞き出してみる事だな」

 

 そう言って、謎の戦士は身構える。止む無く、大神も臨戦態勢に入った。

 

「……! ガオアクセス‼︎」

 

 閃烈の銀狼ガオシルバーに変身し、ガオハスラーロッドを振りかざしながら突進を仕掛ける。

 だが、謎の戦士は斬撃を躱し逆に攻撃を仕掛けてきた。だが、戦士の手に握られている武器を見て、ガオシルバーは目を疑う。

 

「そ、それは⁉︎」

 

 謎の戦士の右腕に握られる武器……それは、仲間である、ガオイエローが所有する長剣型の破邪の爪イーグルソードだ。

 

「イーグルソード⁉︎ 何故、お前が其れを持っている⁉︎」

 

「クク……さァ、何故かな?」

 

 余裕の態度を崩さず、イーグルソードで斬り返して来る。その太刀筋は、ガオイエローが用いる技とは異なるが、殺傷力が高く洗練されている。

 

「どうした? 仲間の武器を見て動揺したか?」

 

「チィ……!」

 

 ガオシルバーは舌打ちしながら、目の前の戦士を睨む。

 

「応えろ‼︎ お前は、イエローなのか⁉︎」

 

 信じたくは無い。目の前に立ちはだかる相手が、戦友である事に……。

 

「もしそうなら、どうする?」

 

 謎の戦士はジリジリと近付きながら、ガオシルバーの首筋目掛け刃を振り下ろす。すんでの所で、ガオハスラーロッドで受け太刀するが、容赦無く斬撃の猛襲を浴びせた。

 繰り出される斬撃は辛うじて全て受け切るが、一撃一撃が非常に重く、しかも疾い。

 

「ククク……その程度か? 狼鬼の時の方が強かったな」

 

「! 何故、それを知ってる⁉︎ やはり、お前は⁉︎」

 

「『ノーブルスラッシュ‼︎』」

 

  突然、イーグルソードにエネルギーを纏い、X字状に袈裟斬りを繰り出す。ガオシルバーは吹き飛ばされ、大きく後退した。

 

「その技はイエローの技……‼︎」

 

「まだまだ小手調べだ。これは……どうかな⁉︎」

 

 そう言って謎の戦士は再び突撃して来る。大振りが来る前に、スナイパーモードで狙撃しようとするが刹那……。

 

「『サージングチョッパー‼︎』」

 

 ガオハスラーロッドに左右から衝撃が走り弾き飛ばされる。謎の戦士の手に握られるのは、イーグルソードでは無い。

 

「どうだ? 見覚えのある武器だろう?」

 

「それは……シャークカッター⁉︎ ブルーの破邪の爪を何故⁉︎」

 

 イーグルソードに続いて、ガオブルーの所有する2対1組のナイフ型の破邪の爪シャークカッターを装備していた。

 

「どうしてだ⁉︎ 何故、2人の武器を使える⁉︎ 2人の技までも⁉︎」

 

 いよいよ只者では無い。ガオイエロー、ガオブルーの武器を自在に使いこなし、かつ、彼等の必殺技さえも使用するとは……。

 謎の戦士は高笑いしながら、名乗った。

 

「俺はガオネメシス! 人間共に復讐する為、地獄から這い上がって来たのだ‼︎」

 

「ガオネメシス……⁉︎」

 

 聞いた事が無い名だ。ガオネメシスは、クククと含み笑いをしながら、シャークカッターを構えた。

 

 

 

 一方、学校では……。陽は休憩時間の所を、テトムから連絡を貰い、緊急だから出て来て欲しいと言われ慌てて屋上へ向かっていた。暫く、オルグ達も大人しくしていた、と思っていたらコレである。

 

「もう、せめて学校が休みの時にしてくれよ……‼︎」

 

 陽は不満を募らせるが、オルグ達からすれば時間も予定も関係無いのだから届かぬ願いである。

 

「竜崎?」

 

 陽は突如、声を掛けられた為、振り返ると黒髪の肩までのセミロングの女子生徒が立っていた。やや気怠げな感じだが、中々の美人である。

 

「えっと……どなたですか?」

 

 非常時とは言え、惚けた言動を取る陽に対し黒髪の女子は、ハァッと溜め息を吐く。

 

「どなたですか?って、同じクラスの鷲尾 美羽だけど?」

 

 鷲尾 美羽……陽は記憶を辿ってみるが、あまり話した記憶は無い。クラスで仲の良い女子達と連んでいるが少なくとも、それ以上の接点は無かった筈だ。

 

「てか、何処に行くの? 予鈴鳴ったよ?」

 

 陽は口籠る。まさか、ガオレンジャーの事を話す訳に行かないし、言った所で信じて貰える訳が無い。

 ふと咄嗟に浮かんだ言い訳を話す。

 

「ほ、保健室‼︎ ちょっと具合悪くてさ……」

 

「今、走ってたじゃん……」

 

 美羽は呆れ顔になる。流石にキツかったか……。だが、美羽は小さく溜め息を吐きながら…。

 

「竜崎って真面目な奴と思ってたけど、サボりとかするんだね。ちょっと意外」

 

「べ、別に、サボりとかじゃ…‼︎」

 

「ハイハイ、先生には適当に口裏合わしとくから。バレたら知らないけど」

 

 そっけない口調で踵を返しながら去っていく。一先ず、躱せたか? だが、陽は本来の目的を思い出し再び走り出す。

 だが、その後ろ姿を美羽は怪訝な目で見ている事に陽は気が付かなかった。

 

 

 

 屋上に付いた陽は、上空に停止するガオズロックに気が付いた。ガオズロックは、陽の姿を確認すると着陸して来た。

 

「さァ、早く乗って‼︎ シロガネから連絡が入ったの! オルグを、この町に誘い出す鬼門を見つけたって! 」

 

「鬼門? それなら大神さん1人でも……」

 

「詳しく説明している暇は無いの‼︎ さ、急いで‼︎」

 

 全く、この人は……。切羽詰まってる時は、こっちの言葉をまるで聞いてくれない。急かされるままに、陽はガオズロックに乗り込む。ガオズロックは再び浮上を始め、大神の居る場所へと向かって行った。

 その様子を、屋上から小柄の少女が見守っていた。飛び立って行くガオズロックを眺めながら、少女は呟く。

 

「…あの人に私の力を貸すべきかな、ママ…」

 

 そう呟いて、少女は背を向けて姿を消した……。

 

 

 

「クク……此処までだな」

 

 ガオネメシスは圧倒的な強さで、ガオシルバーを追い詰める。あの後、更にガオブラックのバイソンアックス、ガオホワイトのタイガーバトン等と、ガオの戦士達の技を繰り出されて来た。この勢いならば、ガオレッドの破邪の爪をも出し兼ねない。

 

「……聞かせろ……何故、ガオの戦士が、オルグの味方を?」

 

 ガオシルバーは負けるにしても、せめて情報を引き出してやろうと試みた。ガオネメシスは、タイガーバトンで肩を叩きながら笑う。

 

「ガオの戦士が総じて地球の為に戦う訳じゃ無い、と言う事だ。貴様の哀れな仲間達も然りだ」

 

「……あいつ等に……何をした⁉︎」

 

 ガオシルバーは痛みを堪えつつ立ち上がる。そもそも、ガオレンジャー達が使う破邪の爪を、この男が持っているという事は……この男は、仲間達の安否を知っている筈だ。

 

「そんな事を聞いて、どうする? これから死ぬ貴様が。心配しなくて良い、すぐに他の仲間も送ってやるさ。あの世で仲間同士で抱き合って泣くが良い‼︎」

 

 勝ち誇った口調で、ガオネメシスはタイガーバトンを振り下ろした。だが、それを防ぐ様に、バトンは光弾に弾き飛ばされた。

 

「…チィッ‼︎ 来たか⁉︎」

 

 ガオネメシスは忌々しそうに毒吐く。空より飛来したガオズロックから、ガオゴールドが飛び降りつつ、ガオサモナーブレットを向ける。

 

「シルバー、ごめん‼︎ 遅くなった‼︎」

 

「……いや、謝るのはコッチだ。鬼門はそこにあると言うのに……」

 

「フン……鴨がネギを背負って来たか。態々、探しに行く手間が省けたわ」

 

 ガオネメシスは相変わらず、余裕を崩さない態度で臨む。ガオゴールドは怒りを露わにしながら、ネメシスを睨む。

 

「お前は何者だ‼︎ ガオレンジャーじゃ無いのか⁉︎」

 

「ククク……俺は……復讐者さ。貴様等、蛆にも劣る人間共に対しな……」

 

「復讐者……⁈」

 

 意味が分からない。テトムが、ガオズロックより呼び掛ける。

 

「ガオネメシス‼︎ 一体、貴方の目的は何なの⁈ 人間に対し復讐? ならば、貴方に力を与えたのは?」

 

「クク…クハハハッ‼︎ 貴様等に、これ以上、話す必要は無いさ! 此処で貴様等は死ぬのだからな‼︎

 

 そう言って、ガオネメシスは指をパチンと鳴らす。すると、彼の背後に禍々しく空間が、うねり始めた。

 

「それが鬼門か⁈」

 

 ガオシルバーは叫ぶ。すると、ガオネメシスが手をかざす。その時、鬼門からオルグが2匹、飛び出して来た。右の白いオルグが馬に似た鬼、左の黒い鬼が牛に似た鬼だ。

 

「こいつ等は⁉︎」

 

「鬼地獄より召喚したヘル・デュークオルグ、ゴズとメズだ。今迄、戦ったオルグ達とは比べ物にならない迄に強いぞ。心して掛かるんだな‼︎ そら、オマケだ‼︎」

 

 続いて、多数のオルゲット達も召喚されて行く。ガオネメシスは、その様子を尻目に、鬼門の中へ入って行く。

 

「ま、待て‼︎ レッド達をどうした⁉︎」

 

「フン…そいつ等より強ければ教えてやっても良い……生きてたらな! ハッハッハッハ……‼︎」

 

 ガオネメシスは高笑いを上げながら、鬼門の中へ消えて行った。ガオシルバーは後を追いかけようとするが、ゴズが金棒を振り下ろして行く手を阻む。

 

「グフォッ、グフォッ‼︎ 此処から先は通さんぜ‼︎」

 

「バヒィッ、バヒィッ‼︎ 通りたければ、俺達を倒してからにしな‼︎」

 

「シルバー‼︎ こいつ等を倒すのが先決だ‼︎」

 

 ガオゴールドは攻撃を仕掛けて来るオルゲット達を蹴散らしながら、ガオシルバーに呼び掛けた。

 

「俺達を倒す? 舐められたもんだな、ゴズの兄弟⁉︎」

 

「おうよ、メズの兄弟! ヘル・デュークオルグの力をみせてやろうや‼︎」

 

 そう言ってゴズは棘が突き出した金棒を持ち上げ、メズは同じく棘付きのフレイルを回転させる。

 

「どっせい‼︎」

 

 メズが振り下ろしたフレイルが、ガオゴールドに目掛け迫って来た。間一髪で避けるが、背後にあった風化し掛かけの石灯篭が粉々に粉砕された。しかし、続け様にゴズが金棒を右往左往に振り回しながら突進して来る。

 

「ふんぬゥ‼︎」

 

 勢いよく突っ込んだゴズの巨体により、寺の門が押し潰された。ガオシルバーは辛うじて躱すが、あの巨体による突進や鈍器で叩きつけられ様ものなら、無事には済まされない。

 2匹だけでも厄介なのに、多数のオルゲットがノミのように集って来る為、集中出来ない。

 

「グフォフォ‼︎ どうした、ガオレンジャー‼︎ まるで歯応えが無いじゃァねえか‼︎」

 

 ゴズは金棒を叩きつけながら挑発した。

 

「バヒィヒィ‼︎ 只々、逃げ回るだけじゃ勝てんぜ‼︎」

 

 メズもフレイルで肩をトントンと叩きながら囃し立てる。確かに今のままでは、一方的にやられてしまう。

 ガオゴールドは何とか打開策を考える。

 

「…オルグ2匹はパワー型、正面からは対峙出来ない。オルゲット達は多勢に攻撃して来て、集中力を欠く…先に雑魚を片付けたい…‼︎」

 

「何をチンタラしてやがる⁉︎ 来ないなら、こっちから行くぞォォォ‼︎」

 

 業を煮やしたゴズが金棒を振りかぶりながら、突進して来る。ガオゴールドはガオサモナーブレットを右手に、ドラグーンウィングを左手に構え飛び上がる。

 

「図体が大きければ、それだけ的になりやすい‼︎」

 

 そう言って、ガオサモナーブレットでゴズの目を狙った。

 

「イデェ‼︎」

 

 目をやられたゴズは視界を奪われ、メズに金棒を振り下ろした。

 

「ゴズ‼︎ どこを狙ってやがる⁉︎」

 

 メズは怒鳴るが、今の奇襲で連携を壊してしまった。

 

「ガオシルバー、今の内だ‼︎ オルゲット達を‼︎」

 

「分かった! スナイパーモード‼︎」

 

 ガオゴールドの不意打ちで敵の注意を引いている間に、ガオシルバーはガオハスラーロッドを銃形態にして、オルゲットを狙撃していく。

 

「オルゲットォォォ⁉︎」

 

 成す術なく、オルゲット達は泡となって倒されて行く。ガオゴールドも援護射撃にて、的確に倒して行った。

 

「ウガァァァ、テメェ等、よくも‼︎」

 

 ゴズは視力を回復させ、態勢を整える。メズも同様だ。

 

「メズ、やるぞ‼︎」

 

「おうともよ‼︎」

 

 ゴズはメズの脚を掴んで、力一杯にジャイアントスイングし始めた。メズはフレイルを直立に持つ。

 

 

『オルグ殺法! 地獄竜巻‼︎』

 

 

 遠心力を利用して、回転し始める2人を中心に竜巻が発生する。竜巻は辺りを見境無く破壊し始めた。

 

「く! これじゃ、攻撃が当たらない‼︎」

 

 ガオゴールドは、ガオサモナーブレットを撃つが竜巻により弾き返されてしまった。このままでは、自分達も竜巻にやられてしまう。

 

「ゴールド、ドラグーンウィングを横にして構えろ‼︎」

 

 ガオシルバーが指示を出す。言われるままに、ドラグーンウィングを横にして構えた。その上に、シルバーが飛び乗った。

 

「そのまま、持ち上げろ‼︎」

 

 空中に回転しながら飛び上がるガオシルバー。竜巻の中心地には、勢いよく回転するゴズはメズが確認出来た。

 

「上は隙だらけだ‼︎」

 

 そう言って、ガオハスラーロッドでオルグ2匹を狙撃した。集中力を乱されたゴズは回転を止め、メズを離してしまう。

 

「ち、畜生め! 」

 

「ゴズ、早く立て直しを‼︎」

 

 メズが急き立てるが、時既に遅い。ガオゴールドとガオシルバーは各々の武器を構え、砲撃した。

 

 

「破邪聖火弾‼︎ 邪気…焼滅‼︎

 

  破邪聖獣球‼︎ 邪気…玉砕‼︎」

 

 

 ガオサモナーブレットから炎の竜を模した弾がゴズに、ガオハスラーロッドから撃ち出された3つの宝珠がメズに直撃した。

 

 

「ブルゥァァァッ!‼︎」

 

 

 2匹のオルグ達は互いの爆発に巻き込まれ大爆発を起こした。

 

「やったな、シルバー‼︎」

 

「ああ、また助けられたな……」

 

 ガオシルバーは申し訳無さそうに言うが、ガオゴールドは手をパーにして開いた。

 

「仲間だろ? 当たり前さ!」

 

「……まあな」

 

 平和に慣れた少年だと思えば、何時しか自分を仲間として激励する頼りのある相棒となっていた……ガオシルバーは、その手にパンッとハイタッチした。

 

 

「2人共、油断しないで‼︎ まだよ‼︎」

 

 

 テトムの声がヘルメット内に木霊した。2人は振り返ると、濛々と立ち昇る爆煙の中で巨大化していく2つの影……。

 

 

「グオオッ、ブチ切れたぞォォ‼︎!」

 

 

「捻り潰してやる‼︎」

 

 

 ゴズとメズは巨大な姿となって2人の前に立ちはだかる。ガオゴールド、シルバーは無言で頷き合い、破邪の爪を天に向けた。

 

 

「幻獣

  百獣召喚‼︎」

 

 

 ガオサモナーブレットから3つの宝珠が天に向けて撃ち込まれ、ガオハスラーロッドで3つの宝珠を天に向け弾く。

 宝珠が光り輝いたかと思えば、6体のパワーアニマル達が駆け付けた。

 

 

「幻獣

  百獣合体‼︎」

 

 

 2人の掛け声に合わせ、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが、そしてガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッドが同時に合体し精霊王と姿を変える。ガオゴールド、ガオシルバーは体内に吸収されて行く。

 

 

「誕生!‼︎ ガオパラディン

  &ガオハンター‼︎」

 

 

 2体の精霊王とオルグ……両者は睨み合いながら、先に仕掛けるのはガオハンターだ。

 

「ハンマーショット‼︎ ウルフアタック‼︎」

 

 ガオハンターの連打攻撃を受けるが、ゴズはビクともしない。

 

「グフォフォ‼︎ そんなヘナチョコパンチ、痛くも痒くも無いぜェェ‼︎ ウルァァ‼︎」

 

 嗤いながら、ゴズはガオハンターの腹部にパンチを入れる。それに合わせ、メズがフレイルでガオハンターの脚を叩き付けた。

 

「うわァァァ!⁉︎」

 

 猛打を受け、ガオハンターの内部では衝撃と火花が走る。先程の戦闘で受けた傷の為、ガオソウルが不足しているガオシルバーでは、ガオハンターの力を出し切れないのだ。

 

「ああ! ガオハンター‼︎」

 

 ガオゴールドは叫ぶが、瞬く間にガオハンターは大地に倒れ伏した。ゴズとメズは、次にガオパラディンに狙いを定める。

 

「よォし、メズ‼︎ 次はこいつを料理するぞ‼︎」

 

「よし来た、ゴズ‼︎」

 

 2対1に持ち込まれてしまう。2人共、パワー型のオルグである為、攻防バランスの良いガオパラディンでは的確なダメージを与えられない。

 その時、ガオシルバーの声が、ガオゴールドに聞こえて来た。

 

「ゴールド‼︎ ガオウルフとガオハンマーヘッドの力を使え‼︎」

 

 そう言うと、ガオハンターの両腕が分離し宝珠の姿てなって、ガオパラディンの元に飛んで来た。吸収された宝珠を手に取り、ガオゴールドは頷く。

 

「分かった‼︎ ガオパラディン、頼む‼︎」

 

 

 〜任せろ‼︎ 〜

 

 

 ガオゴールドが宝珠を台座にセットすると、ガオパラディンの両腕が分離して右腕にガオハンマーヘッドが、左腕にガオウルフが武装された。

 

 

 〜俊速の力を持つガオハンターを支える2体のパワーアニマルが、ガオパラディンに百獣武装される事により、新たな精霊の騎士王が誕生します〜

 

 

「百獣武装‼︎ ガオパラディン・アナザーアーム‼︎」

 

 

「小癪な‼︎ 腕を挿げ替えた所、結果は同じよ‼︎ 行くぜ、兄弟‼︎」

 

「おうよ‼︎ 『オルグ殺法! 地獄大竜巻‼︎』」

 

 

 ゴズは再びメズをジャイアントスイングして、より巨大な竜巻を引き起こす。竜巻による余波で、周囲が次々と破壊されて行く。

 

「ウォォォ、挽き肉にしてやるぜ‼︎」

 

「ガオパラディン、飛べ‼︎」

 

 迫り来る竜巻を、ガオパラディンは軽々と飛び越える。いつも以上に身が軽い。

 

「なんて素早い身のこなしだ‼︎ 凄いぞ‼︎」

 

 ガオゴールドは感嘆した。竜巻は再度、ガオパラディンに迫るが、ヒラリヒラリと躱す。

 

 

「ウォォォ……くそ、躱してばかりで……畜生、疲れた……!」

 

「オイ、ゴズ‼︎ 止まるな‼︎ 」

 

 メズが叫ぶが、流石のゴズも疲労困憊で動けなくなってしまう。胸部のガオドラゴンが唸る。

 

「よし、行くぞ‼︎ 来い、リゲーターブレード‼︎」

 

 ガオパラディンが手を伸ばすと、ガオハンターの側に転がっていたリゲーターブレードが飛んで来て、ガオハンマーヘッドの口に収まった。そして、その状態で、ガオパラディンは高々とジャンプした。

 

 

「悪鬼突貫! ホーリースパイラル‼︎」

 

 

 高所からリゲーターブレードを投擲する。ブレードは高速で回転しながら、ゴズの胸に突き刺さり、大爆発を引き起こした。

 

 

「グアァァッ! これで勝ったと思うなよォォ……‼︎」

 

「俺達、ヘル・デュークオルグは不死身なのだ! 覚えてろォォォ……‼︎」

 

 爆炎に巻き込まれながら、2体のオルグの断末魔が響き渡った。爆炎が収まると同時に、ゴズとメズは姿を消し鬼門も消滅した。

 

「やったぞォォ‼︎」

 

 ガオゴールドは勝利を確信し喜んだ。

 

「やりィ‼︎」

 

 テトムも、ガオズロック内でガッツポーズを取る。側では介抱された大神も無言で笑顔を見せた。

 

 

 ガオパラディンも、勝鬨を上げながらリゲーターブレードを掲げた。デビュー戦以来、最高の完全勝利だった。

 

 

 〜最高の連携と逆転劇で、ヘル・デュークオルグ達を見事に蹴散らしたガオパラディン。しかし、謎の戦士ガオネメシスの狙いは一体、何なのでしょうか?〜




ーオリジナルオルグ
−ゴズ&メズ
ガオネメシスに、鬼地獄より召喚されたヘル・デュークオルグ。
ゴズは牛の姿を、メズは馬の姿をしている。
力に物を言わせた戦い方を好む典型的なオルグだが、単純な力だけならハイネスデューク、シュテンを上回る。鬼地獄のオルグ故、不死身。
必殺技はゴズが、メズの脚を掴んでジャイアントスイングしながら起こす「オルグ殺法 地獄竜巻」
自力での巨大化が可能(その際、必殺技が地獄大竜巻となる)。

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