帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
「フン……負けたか。使えぬ連中だ」
地下室で、ガオパラディンとゴズ達の戦いを一部始終見ていたガオネメシスは、辛辣に満ちた言葉で吐き捨てる。
「しかし、ゴズとメズに勝利するとは其れなりに賞賛に値すると言う事だな…」
『感心している場合か』
鏡がユラユラと波打つと、禍々しい声と共に人間の頭骨に似た顔が浮かび上がる。
『儂に断りなく、ゴズとメズを使いおって……。しかも、テンマの人間界侵略が遅々として進んで居らぬでは無いか? ガオネメシス! 一体、どう釈明する気だ⁈』
謎の声は怒りに満ちている。だが、ガオネメシスは悪びれない様子だ。
「御言葉だが、何一つ心配は無い。所詮、奴等はまだまだ発展途上。何より……ガオシルバーをこちらに引き入れてみるのも面白かろう」
『ほう? どうやって?』
ガオネメシスから発せられた台詞に、謎の声は興味深げに傾聴する。
「心に迷いのある奴、後悔を背負っている奴は取り入りやすい。それに、奴は未だに己の過去の鎖を断ち切っていない。そこを突けば、赤子の手をひねるより容易い事だ。俺に任せておけ…」
ガオネメシスは邪悪に嗤う。ふと彼が手を伸ばした先にある物を持ち上げた。
「クク…鬼面が1つだけとは限らぬ。これさえあれば、ガオシルバーは俺から逃げられんさ。クク…」
ガオネメシスが手の中には、狼を象った漆黒の仮面が握られていた。
一方その頃……竜胆市の街はずれにある河のダム付近で、ツエツエとヤバイバはヒィヒィと喘ぎながら、頭に工事用のヘルメットを被り、ツルハシを手にダムを砕いていた。
「クソッ、何だってこんな事をしなきゃならねェんだよ⁈」
ヤバイバは腹ただしげに怒鳴る。
「仕方ないわよ、テンマ様の命令なんだから……」
ツエツエも汗だくになりながらも砕いた瓦礫を河に投げ捨てる。
「大体よ、こんな事は、オルゲットにやらせりゃ良いんだ‼︎ ぜってー、デュークオルグがやる様な仕事じゃねェだろ‼︎」
ヤバイバは八つ当たりにツルハシを乱暴に叩き付けた。これ以上に無い位、苛立っている様子だ。
ツエツエとて納得して、こんな土工人夫みたいな真似を勤しんでいる訳じゃない。それもこれも、ガオレンジャーに敗退し続けた事への埋め合わせだ。
数々の作戦失敗から、2人はテンマから完全に愛想を尽かされてしまった。テンマの性格から言って、本来なら極刑も可笑しくない事態だが、ツエツエにはオルグの巫女として、其れなりの有用性がある。
つまり、首皮一枚で繋がっている状態だ。それを理解しているからこそ、テンマも2人を簡単に始末出来るに関わらずに生かしておく決断を取った。
だが、それ以外は役に立つ目処が無い為、こう言った雑用に回しておく、事実上のお役御免だ。
現在、2人が回されているのは、ガオレンジャー討伐任務を任されているゴーゴの補佐である。
補佐、と言えば聞こえは良いが、当のゴーゴから言い渡された命令は1つ…
「川の上流付近のダムを壊せ」
こんな端から見れば無意味な真似を、一週間もやらされている。オルゲット達と一緒にツルハシを振り下ろしてダムに亀裂を入れる……最早、雑用にすらなって居ない。こんな事をして、どうやって、ガオレンジャーを倒せるのか? 不満と疑心は高まる一方だが、これ以上、テンマの機嫌を損ねれば、たちまち縊り殺されてしまう。だから、2人は黙々と任務をこなす他、無かった。
何より不満なのは、この計画の顛末を、ゴーゴから聞かされていない事だ。只々、ダムを不眠不休で壊し続ける……これでは、奴隷である。中間管理職とは言え、誇り高いオルグのする事とは思えない。
「おお! 段々、形になって来たじゃねェか!」
突然、風が吹き抜けたと思えば、ゴーゴが立っていた。
「おい、ゴーゴ! 一体、いつまで、こんな水遊びをさせる気だ! いい加減にしろよ‼︎」
「おやァ? 口の利き方が悪いな、ヤバイバ君。今回は許すが、これからは敬語で話せ。あと、呼び捨ても許さん。ゴーゴ''様''だ!」
「くッ……‼︎」
完全に見下された態度に、ヤバイバは腹を立てた。
先の失敗により、ツエツエ達のオルグ内に於ける地位は下落してしまった。
立場だけなら、お互いにデュークオルグである為、同格なのだが今現在は、ガオレンジャー討伐任務を請け負っているのは四鬼士達だ。詰まる所、今のツエツエ達は、四鬼士達から見ればオルグ魔人以下、雑兵のオルゲット以上と言う屈辱的な地位に甘んじているのである。
「いつまでも、幹部待遇で居られると思うな! 寧ろ雑用として、お前等を使ってやってる俺様の懐の深さに感謝しろ! でなけりゃ、オルゲット以下の立場で扱われたいか、んん?」
「こ、この野郎…言わせておけば…‼︎」
遂に我慢の限界に達したヤバイバが手に持つツルハシを振り上げようとするが、必死にツエツエが宥める。
「ええ、ええ! ゴーゴ様の優しさに痛み入る次第で御座います‼︎ 」
「ふん、分かりゃ良いんだ」
ツエツエの言葉に機嫌を良くするゴーゴだが、ヤバイバは納得が行かない様子だ。
「時に、ゴーゴ様? そろそろ、計画について聞かせて頂きたいんですけど…」
ツエツエは最大限に愛想を振りまいて、ゴーゴに尋ねる。ゴーゴは、ニヤリと笑う。
「よーし、良いだろう。俺様の計画に付いて話してやるから、耳の穴かっぽじって良く聞け。
俺様の計画はな、ガオレンジャーを一網打尽にしてやる為だ」
自信満々に答えるゴーゴに反し、ツエツエとヤバイバは頭に「?」が浮かんだ。
「あ、あの…それと、ダムを壊すのと何の関係が?」
「分からねェか? 文字通り、一網打尽してやるんだよ。町ごとな! 」
「ま、町ごと?」
全く意図の読めない発言に、ツエツエもヤバイバも開いた口が塞がらないでいた。しかし、ゴーゴは続けた。
「そうだ! ガオレンジャーは、この町の何処かに居る‼︎ だったら、ダムをぶっ壊して河を氾濫させてやる‼︎ そうすりゃ、ガオレンジャーは町諸共、お陀仏って作戦だ‼︎ 」
実に単純極まりない作戦だ。自分達は、そんな事の為だけに一週間もダムを壊す作業を従事させられていたのか……。呆れた様な顔で佇む2人に、ゴーゴは不審に思う。
「おい、どうなんだ⁉︎ 何とか言ったら、どうだ‼︎
ゴーゴの怒鳴り声に、ツエツエは我に帰る。
「あ、いえ……計画が壮大な事は分かりましたが……幾ら、ダムを壊しただけで、河が氾濫しますか?
それに万が一、ガオレンジャーが町に居なかったら、どうするんです?」
「ふん……余計な心配無用だ。既に計画は最終段階だ‼︎ そして、最後の締めに移りつつある‼︎」
堂々と力説するゴーゴは、余程の自信があるらしい。とは言え……計画にしても穴だらけだ。最も、自分達は異形の存在オルグである。人間が何百人と死のうが知った事では無い。寧ろ人間社会を破壊して回るなら、今回のガオレンジャーを一網打尽にする為の無差別攻撃も納得が行く。
だが、ガオレンジャーを一網打尽にするならば、こんな明らさまで大規模な計画より、それこそ水面下で計画を推し進めるのが効率が良い筈だ。
「……ですが、ガオレンジャーとて馬鹿ではありません。町そのものを水没させるとなれば、奴等が気付かない訳が……」
「…ツエツエ…お前も、しつこい女だな。俺様は意味のある事しかやらねェ。俺は、メランの様な武力一辺倒じゃ無いんだ。これ以上、余計な詮索をして俺を苛立たせ無い方が、身の為だぞ‼︎」
「…は、はい…」
これ以上、詮索して、ゴーゴの機嫌を損ねれば、いよいよ自分達の首を繋ぐ薄皮は引き千切られてしまう。
ツエツエは仕方無く、今は黙って付き従う事にした。
「おらッ! 分かったら、ダムをもっと派手に怖さねェか‼︎ 」
ゴーゴに急かされ、2人は再び、ツルハシを降り始める。何しろ人使い、ひいては鬼使いの荒いゴーゴなのだ。これ以上、無理難題を押し付けられたら堪らない。不満を抱えながらも、黙々とダムを砕き始めた。
「(へへヘ、これで、ガオレンジャーを倒せば、俺様の地位も跳ね上がるってもんだ…! しかし、あいつも上手い事を考えたもんだぜ……!)」
そう考えながら、ゴーゴは鬼ヶ島を出る際の出来事を思い出していた。
『ガオレンジャーを町ごと潰すだァ?』
鬼ヶ島にて、ゴーゴが話をする相手。それは四鬼士の1人、ヒヤータだ。将棋に似た基盤遊戯を指しながら、彼女はやんわりと笑った。
『ええ、私の配下のオルグ魔人を貸し出しましょう。それを上手く使って、やりなさいな』
取って付けた様な笑みを浮かべながら、ヒヤータは提案してくる。ゴーゴは怪しみながら、彼女を見る。
このヒヤータと言う女、腹の内が読めないかなりの曲者だ。全てに於いて計算尽く、一手もニ手も先を読んだ戦い方を好み、相手の裏を掻く。よく言えば計画的、悪く言えば陰険だ。
『何だって、俺様にそんな事をする? 罠がありそうだ』
ゴーゴは疑り深げに、ヒヤータを見る。
他のオルグなら兎も角、この女が何の打算も無く協力を申し出るなんて有り得ない。
何か企んでいるに違いない。同族とは言え、所詮はオルグ。信用する義理は無い。
されど、ヒヤータは笑みを浮かべるだけだ。将棋の駒を動かしながら、優雅に扇子を開く。
『罠なんて無いわ。ガオレンジャーを倒すのは、オルグ達の悲願。貴方が、ガオレンジャーを倒すならば、それに力を貸すのは必然では無くて?』
ゴーゴは考える。この女は信用ならないが、ガオレンジャーを倒しさえすれば、後はどうとでもなる。
ならば利用するだけ利用してやり、ガオレンジャーを倒した後は用無しだ。ゴーゴはニヤリと笑いながら返答する。
『……良いだろう。お前の策に一つ乗ってやるよ。どうすれば良い?』
一旦、ヒヤータの提案を受け入れる事にした。ヒヤータは、ニッコリと微笑む。
『良いでしょう……先ずは……』
回想を終えたゴーゴは、ニヤニヤとほくそ笑んでいた。
「へへへ、ガオレンジャーを倒して、テンマ様に認められりゃ、俺様の地位も確立されるだろうし……そうなれば次は、ハイネスの座でも狙ってみるかね?
ククク、ハイネスデューク・風のゴーゴか……中々、良い響きだぜ。ククク……アーッハハハハハ!!!」
1人で妄想しながら、高笑いするゴーゴ。もう既に、ガオレンジャーを倒した様な気持ちであるらしい。
取らぬ狸の皮算用、とは良く言った物である。
そんな様子を影から見ていたのは、ニーコである。
「やれやれ、幸せな方ですね〜」
呆れた様に一部始終、見守っていたニーコは、フッと姿を消した。
一方、鬼ヶ島では……。
「フン……大方、そんな所だろうと思ったわ」
玉座の間に座り、将棋を指すテンマ。その向かいに座るのは……。
「やはり、気付いておいででしたのね。其れとも、ニーコから聞きまして?」
四鬼士の紅一点、水のヒヤータが扇子で口元を隠しながら駒を動かす。テンマは、フフンと鼻で笑う。
「余を見くびるで無いわ。貴様が小細工を仕掛けていた事など、とうに見通していた。其れにしても……何故に、ゴーゴが一番手になる様に仕組んだ?」
テンマは、ヒヤータの企みを早々から看破していた。
ならば隠し通す意味は無い、と考えたヒヤータは、素直に応える。
「ゴーゴは実に、オルグらしい男です。あれ程、オルグらしい思考の者は、そうはいません。
独り善がりで短絡的、己の身の丈など爪の垢程も理解していない、にも関わらず将を気取っている。
だからこそ、これ以上無い迄に適任なのです。一番手としては……」
ヒヤータは淡々と語りながら駒を進める。テンマは、ウームと唸った。
「ゴーゴでは、ガオレンジャーには逆立ちしても勝てませんわ。ならば、彼にはガオレンジャーの戦力データを取る為の、トカゲの尻尾として役に立って貰います」
彼女の合理的かつ非情な性格に、流石のテンマも眉を潜める。曲がりなりにも自分と対等、ひいては純粋な戦闘力ならゴーゴに分があるに関わらず、彼を計画の噛ませ犬に使い捨てようとするのだから…。
「ヒヤータ……貴様、相当に陰険な女だな」
テンマは皮肉混じりで、正直な感想を述べた。しかし、当人のヒヤータはクスッと笑いながら
「褒め言葉として受け取っておきますわ」
と、釈明しなかった。ある意味、かなりの大物である。
「ヒヤータお姉様〜!」
急に、ニーコがパタパタと入ってきた。
「ゴーゴ様の作戦、順調みたいですよ? お姉様の描いた絵通りに」
「そう、ご苦労様」
子犬みたい擦り寄ってくるニーコの報告を穏やかに聞くヒヤータ。何時の間にか、ヒヤータを「お姉様」と呼ぶ間柄になっているらしい。
「テンマ様、王手ですわ」
そうしてる間に、ヒヤータはテンマの玉将に王手を掛け勝利を収めた。
「ぬゥ、またか。貴様は主に花を持たせる、と言う言葉を知らぬのか。貴様と鬼棋を指して、一度も余は勝ててないでは無いか」
負けた事に、テンマは納得が行かんばかりに不平を漏らす。しかし、ヒヤータはクスクスと笑う。
「戯れとは言え、鬼棋も戦と同じ。手加減なく攻めよ、と言ったのは貴方ですわ、テンマ様」
「ぬゥ……前言撤回だ。貴様は陰険のみならず、肝の座った女だ」
テンマの皮肉とも取れる言葉に、ヒヤータは笑うだけだ。彼女は決して本心は見せない。其れは彼女が、虎視眈々と策謀を練った上で、それを悟らせない為の処世術だった。
「謎のガオの戦士?」
ガオズロックに帰還した陽は、事の顛末を報告する。
ガオの戦士なのに敵、ガオレッド達の仲間の武器を持ち、オルグを使役する事も出来る。
未だ嘗て無かったイレギュラーの登場に、テトムは眉を潜めるしか無い。
「そいつは、ガオネメシスと名乗った。人間に対し敵意を抱き、復讐の為に地獄から這い上がって来たとも」
「ガオネメシス……ごめんなさい、聞いた事が無いわ。少なくとも、私が知り得る限りでは……」
大神の言葉に、テトムはかぶりを振る。
陽は理解が追いつかない。敵はオルグだけじゃ無かった。ガオネメシスと言う第三勢力の存在……だが、オルグを使役しているならば、奴はオルグとグルである可能性も高い。オルグを追えば、ガオネメシスにぶつかるだろう。何れにしても戦いは避けられ無い。
「それに、ガオネメシスはガオイエロー達の武器を使った。間違いなく、奴は仲間達の安否を知っている筈だ…! 」
大神は確信が言った様に呟く。だが、オルグとガオネメシスが繋がっている仮説を真実とするなら、それは仲間達の身がオルグ達の手中にあると認めざるを得ない。
「一先ず、鬼門の一つは潰したわ。ガオネメシスについては調べて行くしか無いわね」
「ああ。また一つ、面倒事が増えたな」
テトムと大神は一先ず、話を纏めた。だが、陽は腑に落ちない。同時に、陽は今朝からの悩みをテトムに尋ねた。
「テトム……僕も一つ、相談があるんだけど……」
「何?」
陽の問いかけに、テトムは首を傾げる。陽は悩みながらも、話した。
「ガオレンジャーの存在が、人間達に認知されて来てるんだ。このままじゃ、ガオレンジャーやオルグの存在が知れ渡って……」
「貴方の正体が周りにバレる恐れがある、と?」
「ハイ……」
これはこれで問題だ。テトムも、うーんと唸る。
「そうね……前の戦いと違って、今回は竜胆市に被害が集中してるから……。既に私達の戦いを見過ごせない事態になっているのかも」
「いっその事、正体を明かしておくのはどうだ? 戦いが長期化すれば、否応も無く露見するぞ?」
大神の意見は一応、理に適っている。だが……。
「そうすれば、余計にオルグ達の付け入られる隙を与えてしまうわ。今は時代が違うのよ」
言語道断、と言わんばかりに一蹴するテトム。
「その事は私に考えがあるの。上手くいくかどうか分からないけど……」
「その考え、とは?」
「それは未だ言えないの。でも、もう少しで完成するわ」
テトムは多くを語らないが、何か策があるらしい。ふと思う所があり、陽は尋ねてみた。
「オルグが、この町の外に出たら元も子もないんじゃ……」
「それについては大丈夫。どうやら、オルグ達がこの町に作った鬼門は、オルグ達にとって一種の隔離空間でもあるの。つまり、鬼門が無い外にオルグ達は出て行けないし行く理由も無い。私達が、この町に居る限り、オルグ達の存在が外に知れ渡る事も無い」
なるほど……陽は頷けた。だが問題は、オルグ達の被害がこの町に集中する、と言う事になる。
そうならない為には自分達が、早期でオルグを倒すしか手は無い。
「今、結界を張る準備をしているから、もう少しで陽の心配は解決するわ。貴方は、それまで周りに正体がバレないようにしていて」
全く無茶を言ってくれる……陽は頭を抱えた。そうしてる間に、竜胆高校が見えて来た為、取り敢えず作戦会議は終了となった。
陽は怪しまれない様に、屋上で降ろして貰った。空は茜色に染まり、すっかり夕方だ。まるまる、サボってしまった。皆に、なんて言い訳しよう……。
「竜崎 陽」
ふと声がした為、振り返る。其処に立っていたのは……。
「君は?」
それは、12.3歳位の女の子だった。祈と変わらないか少し下か……だが、何処か大人びた感じの少女は、かなり年上に見える。
服装も妙と言えば妙であり、眼の様なマークが入った黒いニット帽を被り下から白い髪が三つ編みにされ覗いている。更には奇妙な刺繍が入った水色のワンピースを着ており、浮世離れした雰囲気を醸し出していた。
「貴方を待っていた」
「僕を……? て言うか君、私服だけど何年? 何で、此処に居るの?」
陽の質問に少女は何も応えない。その代わり、陽の横を歩いて行く。
「貴方は、このままじゃ敗ける」
「は?」
何を言ってるんだ、この子は……陽は首を傾げる。
「オルグ達は強い。今のままじゃ勝てない」
「‼︎」
今、オルグと言った。そんな事を知っているなんて、理由は一つしか無い。
「オルグか⁉︎」
陽は身構える。だが少女は何もしない。
「違うよ、私はオルグじゃ無い。貴方達の味方……」
少女の言葉に陽は警戒を解いた。確かに彼女からは敵意を感じない。底知れ無い何かを感じるが……。
「君、名前は?」
陽は少女の名前を尋ねる。
「私? 私は……」
慌てて少女は考える。陽は不審に思うが……。
「……こころ。私はこころ」
「……今、考えて無かった?」
「竜崎?」
別の声がした為、振り返る。其処には鷲尾 美羽が怪訝な顔で立っていた。
「鷲尾さん?」
「誰と喋ってたの?」
「誰って……」
陽は再度、振り返ると既に、こころは忽然と消えていた。
「あれ? さっき迄……」
「竜崎……あんた、本当に大丈夫?」
美羽は呆れた眼で、陽を見る。確かに端から見れば、かなり挙動不審に見える。
「それより……あんた、午後の授業まるまるサボったでしょ? 先生を誤魔化すの苦労したんだからね」
不機嫌な様子で話す美羽。そう言えば出掛ける時、彼女に見つかったんだった……。
「先生には早退した、って伝えといたから明日、謝っときなさいよ……ッとに、学級委員の仕事、増やさないでよね……」
「ご…ごめん…」
取り敢えず、謝っておく陽。美羽は、はァッと溜息を吐く。
「ま、困った事あるんなら、相談してくれて良いよ。あんま妹に心配掛けない様にね」
「祈?」
「ん……。あんたの妹から頼まれたの。『最近、兄が無理してるっぽいから、気に掛けてあげて貰えませんか?』ッて」
「何で祈が、鷲尾さんに?」
「何でって、ウチら小学校からの付き合いじゃん。私と竜崎兄妹と乾と……高校に入ってからは疎遠だったけど…」
そんな事も忘れたのか、と言わんばかりに美羽は気怠そうに言った。言われて見れば、そうだった気がする……。
「ほら、教室閉めちゃいたいし、校門も閉まるよ。早く帰れば?」
「え……うん……」
美羽に早くしてくれ、と急かされて陽は鞄を取りに、教室に向かう。後ろから付いてくる美羽は、陽の背に話し掛けて来た。
「ねェ、竜崎……ちょっと聞きたいんだけど……」
「何?」
陽は振り返る。美羽は困った様な顔をしていた。
「竜崎ってさ……ヒーローって居ると思う?」
「えッ?」
突然の言葉に陽は戸惑う。その様子を見た美羽は、慌てて訂正して来た。
「ち、違うよ⁉︎ ただ、もし居たら……ッて聞いただけだから! じゃ、早く帰ってね‼︎」
美羽は、陽を追い越して階段を下って行った。陽は、そんな彼女の様子に面食らっていた。
ガオレンジャーの正体が、バレるのも時間の問題かも……陽の中で嫌な予感が過った。
「ククク……機は熟したな……」
風のゴーゴは今にも氾濫しそうな川を見下ろしながら、さも愉快げに笑う。
「さァ、楽しいガオレンジャー狩りの始まりだァ! 景気良く決めてくれよ、放水オルグ‼︎」
「ポポポーーーン!‼︎」
ゴーゴの言葉に連れ、河原に大量の水を流し込むのは……防水ポンプの様な姿をしたオルグ魔人だった。
〜これは大変です。風のゴーゴの企む計略により、竜胆市が洗い流されようとしています!
急ぐんだ、ガオレンジャー‼︎ 危機は迫っているぞ‼︎〜