帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest13 明かされる真実

 ー僕が、10歳の頃……父が再婚した。物心が付く前に、生みの母親を病気で亡くして以降、父に育てられて来た。そんな中、母親の居ない日常が当たり前だと思い始めた頃……急に父が女の人を連れて来た。

 その人は、父の会社の同僚で母の親友だった。母が死んだ後も父や息子である僕を気に掛けてくれた。

 その女の人も結婚し子供も居たが、彼女も旦那を早くに亡くしてしまったらしい……。

 そんな似た様な間柄に関係である為、父とは交流が続き互いに励まし合う内に……父と両思いになるのは必然だった。

 父が彼女と小さな女の子を家に連れて来た時、初めて彼女と出会った。

 その娘は父親以外の男性に対し、恥ずかしそうにしていた。僕は妹となる、その娘に優しく声を掛けた。

 

 

「初めまして、祈ちゃん」

 

 

 その一言で僕に新しい母と妹が出来た。最初は何処か気まずそうな彼女も、時を経るに連れ笑顔を見せてくれた。祈は僕を兄と慕い、僕も妹を大切に思った。

 いつまでも、仲の良い兄妹として生きていたかった……なのに……どうして……?

 僕は暗闇の中に堕ちて行く。祈の笑顔も友達も皆、黒く塗り潰されて行った……そうして、僕の感覚は途切れてしまったー

 

 

 

 ー起きて……さァ起きて……ー

 

 

 誰かが、陽に語り掛けて来る。だが、指一本動かす事が出来ない。

 

 

 ー早く起きて……!ー

 

 

 再度、声を掛けられた為、陽は少しだけ目を開けてみる。朧げだが、小さな人影が見えた。

 

「やっと起きたね……もう駄目かと思ったよ」

 

 陽を覗き込んでいたのは、1人の少年だ。だが不思議な事に、幼い容姿とは裏腹に大人びた達観した雰囲気が醸し出される。

 

「き、君は……?」

 

 陽は痛む身体に耐えながら、上体を起こした。少年は優しく微笑む。

 

「僕は風太郎。またの名を、ガオゴッドさ」

 

「ガオ……ゴッド……?」

 

 陽は風太郎なる少年を見た。外見は自分より、かなり歳下だが、この少年は今、自分をガオゴッドと名乗った。

 

「ゴッド……って言う事は、君は神様?」

 

 少年から放たれる浮世離れした気に、彼が只者では無い事を肌で感じさせる。

 

「君達から見れば、そうなるのかな……最も、この姿は仮の姿。僕の本来の姿は……」

 

 そう言うと風太郎は姿を消す。すると、陽の頭上に巨大な精霊王が現れる。

 

 

 ーこの姿では、お前達とコンタクトを取るのが難しい。故に直接に対話をするならば、私本来の姿より風太郎としての姿を取る方が良いのだー

 

 

 陽は威厳を放ちながら話すガオゴッドに驚愕する。精霊王は人間に姿を変える事も出来るのか……改めて、パワーアニマルと言う人知を超えた存在に、脱帽した。

 

「それで……僕は一体、どうなってしまったんですか?」

 

 陽は、ガオゴッドに問いかける。そもそも、自分はこんな所で油を売っている場合じゃ無いのだ。グズグズしていたら、オルグ達に町をメチャクチャにされてしまう。そう焦っていたら、ガオゴッドは再び、風太郎少年の姿に戻った。

 

「落ち着いて、陽……いや、ガオゴールド。君には順を追って話さないと行けないんだ。その為に、君を此処に呼んだんだ」

 

 風太郎は宥める様に陽を諌めた。神様とは言え、自分より歳下の少年に子供扱いされるのは妙な感覚だが、今はそんな事を言っている場合じゃ無い。

 

「それより、此処は一体……」

 

「周りをよく見て」

 

 風太郎に促され、陽は周りを見る。其処には夥しい数の石柱や建造物が、砕けたりバラバラになったりして散乱していた。

 

「此処はね……君達、人間の住む現実世界とは少し外れた場所にあるんだ。僕は今、この場所からでしか現実世界に干渉出来ない。他のパワーアニマルも同様にね」

 

「どうして?」

 

「……僕達が復活したオルグ達に敗けた事は、テトムから聞いただろう? 今回の僕達の敗因は、有象無象のオルグ達が結集して来た事……もう一つは、オルグ達に味方する男の存在を見過ごしていた事だ」

 

「男……もしかして⁉︎」

 

 陽は勘付いた。自分達の前に現れ、ガオシルバーを圧倒的な強さで捩じ伏せた謎の戦士の存在を……。

 

「そう……奴は、ガオの戦士でありながら悪の道に堕ち、人間達の滅亡を企んでいるんだ。奴が、オルグ達を手引きし、団結した彼等を天空島に襲撃させた…」

 

「あいつは……ガオネメシスと名乗ってたけど……一体……」

 

 陽の質問に対し、風太郎は力無く首を振る。

 

「奴が何者なのか……何故、ガオの戦士でありながら、オルグに加担するかは分からない。ただ一つ言えるのは……奴は、人間に対し並々ならない憎しみを抱いていると言う事だけ……」

 

 神であるガオゴッドさえ分からない謎の存在……その際、急に風太郎は陽の手を持つ。

 

「な、何を……」

 

「君に見せてあげれる……あの日、ガオレンジャーが総力を発揮しても勝てなかった真相を……オルグ達との本当の戦いは……シロガネとテトムが脱出してから始まったんだ……」

 

 そう言うと、陽の身体は急に浮き上がる。いや、正確には浮遊する陽の下に自分の身体があるのだ。

 陽は、どんどん浮上して行く……意識を超え、時を超え……。

 

 

 

 次に陽が気が付けば、そこは戦場だった。辺りは木々は薙ぎ倒され大地は抉られ、さながら地獄絵図だ。

 

「此処が、天空島アニマリウム……パワーアニマル達の最後の理想郷で人類にとって平和の砦……だった」

 

 だった……と風太郎は呟くが、見回して見ても其処は理想郷とは程遠い光景だ。

 ふと、陽の眼前にて巨大な爆煙が巻き起こった。

 其処では、5人のガオレンジャーとオルグ達による戦いが行われていた。

 

「ははは‼︎ 不用意に抗えば、余計に苦しむ事になるぞ? 大人しく降参するんだな」

 

 オルグ達を率いるのは、背中に巨大な掌が2つ生えた不遜な態度のオルグ。

 

「奴が、今のオルグ達を率いるハイネスデューク、テンマ。奴が、有象無象のオルグ達を一枚岩に統率し、天空島に奇襲を仕掛けて来たんだ」

 

 風太郎は悔しげな表情を浮かべる。そうしてる間に、テンマから放たれた光線が、ガオブルーを攻撃した。

 

 

「ウワァァァァッ‼︎‼︎」

 

 ガオブルーは吹き飛ばされた。陽は我慢出来ずに駆け出すが……。

 

「無駄だよ、此処は君の精神だけに見せている過去の映像だ。オルグ達と戦う事はおろか、彼等と間接的に触れる事すら出来ない」

 

「でも……‼︎」

 

 みすみす目の前で仲間であるガオレンジャー達がやられている所を見ているしか出来ないなんて、余りに歯がゆ過ぎる。

 そうしてる間に、テンマの繰り出す攻撃に1人、また1人と倒されて行く。

 遂に、果敢に立ち向かったガオホワイトも倒されてしまった。砕け散ったマスクから覗く顔を見て、陽は驚愕した。

 

「さ、冴姉さん⁉︎」

 

 ガオホワイトの正体は、自分に所縁ある人物だった。幼い自分に武術の手解きを教えてくれた鹿児島にいる従姉……それが、大河 冴だった。

 

「……まさか、姉さんもガオレンジャーだったなんて……‼︎」

 

 そう言えば昔、詳しくは教えてくれなかったが、大変な戦いをしていた時期がある……と教えてくれた事がある。其れこそが、ガオレンジャーだったんだ……。

 

「さァ、後は貴様だけだ! 」

 

 1人、残されたガオレッドがテンマと対峙する。手に握られるのは破邪の爪、ライオンファング。

 テンマの手には禍々しい形の剣が握られ、ガオレッドに迫る。

 

「貴様も愚かな奴よ……自ら、墓穴を掘りに来るとはな」

 

「だ、黙……れ……‼︎」

 

 ガオレッドは、ライオンファングを握り締めテンマに殴り掛かる。重い一撃を腹部に喰らい、テンマは大きく仰け反る。

 

「ぬぅ……‼︎」

 

「メタモルフォーゼ‼︎ ガオメインバスター‼︎」

 

 ライオンファングが姿を変え、ハンドカノン状の武器に変わる。

 

「俺は諦めない‼︎ 俺を信じてくれる仲間が居る限り!

 俺の為に戦ってくれる友が居る限り‼︎ 俺は絶対に……諦めるかァァ‼︎‼︎」

 

 ガオレッドの魂の叫びに反応し、ガオメインバスターが赤色の光を放つ。

 

「小賢しい奴め……この修羅怨鬼剣に込められし、オルグ達の怒りを見よ‼︎」

 

 対して、テンマが構える修羅怨鬼剣から黒いオーラが立ち昇る。

 

 

「邪気……!

  正気……! 退散‼︎‼︎‼︎」

 

 

 ガオメインバスター、修羅怨鬼剣から同時に放たれた一撃が、ぶつかり合った。その凄まじい余波で木々は吹き飛ばされ、空間さえも歪みかね無い勢いだ。

 

 

「うおおおおおッ‼︎‼︎」

 

「ハァァァァァッ‼︎‼︎」

 

 

 木霊する赤き獅子と黒き鬼の雄叫びが、天空島中に響き渡る。どちらも一歩を退かない。しかし悲しいかな、人間とオルグとでは力の根底が違う。ましてや、疲労困憊となるまで戦い抜いたガオレッドも今や、風前の灯火までキテいる。一瞬でも力を抜こうものなら、弾き飛ばされてしまうだろう。

 だが、ガオレッドは敗ける訳には行かない。此処で、自分が倒れてしまえば、後ろに居る仲間達を巻き込んでしまうからだ。

 

 

『レッド‼︎‼︎』

 

 

 倒れた仲間達は、口々にガオレッドの名を呼ぶ。このままでは、彼の身体が保たない。

 その際、ガオレッドは身体に掛かる負担が少し軽くなったのを感じた。

 

「み、皆……‼︎」

 

 ガオレッドは背中越しに見た。仲間達が、レッドの負担を少しでも減らそうと、自分達に残された僅かなガオソウルを分け与えて来たの。

 

「気休めにしかならないが……俺達の力を……」

 ガオイエローは、そう呟いて気を失った。

 

「レッド……勝ってくれ……‼︎」

 ガオブルーは砕けたマスクから覗く素顔を精一杯に、笑顔にして見せ、目を閉じる。

 

「……頼む……‼︎」

 ガオブラックは一言、レッドに全てを託して倒れた。

 

「……お願い、レッド……皆を守って……」

 ガオホワイトも、嘆願する様に意識を手放した。

 

 

 

 〜グオォォ……‼︎‼︎〜

 

 

 

 更には、ガオライオンが傷付いた身体を押して、レッドの救援に現れた。ガオライオンも自身のガオソウルを、レッドに注ぎ始める。

 

「ガオライオン……お前まで……‼︎」

 

 ガオライオンとレッドの絆は強く堅牢な物だ。互いが互いを理解し合い、信頼し合っている。だからこそ、ガオレッドとして戦い抜く事が出来た。何時だって、ガオライオンが共に居てくれたから……。

 

「見せてやる……これが……俺達の信じる力だァァァッ‼︎‼︎」

 

 ガオレッドの渾身の叫びに、ガオメインバスターが反応する。砲口から赤色の光線が肥大化して放たれ、テンマやオルグ魔人に迫る。

 

「ぬおッ……⁇!」

 

 絶大なエネルギーは奔流の様に、テンマ達を包み込んで行く。天空島そのものを吹き飛ばし兼ねない光線は、オルグ達に苦痛を与える間も無く消し飛ばしてしまった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 ガオレッドは、バスターを杖代わりにして辛うじて立っていた。目の前には爆煙が立ち昇っているが、オルグ達の気配は感じない。

 

「は……はははは! 勝った、勝ったぞ……‼︎」

 

 勝利を確信し、ガオレッドは笑った。膝は崩れそうになりつつも、オルグ達の進撃を食い止める事が出来たのだ。

 

 

「……ククク、戯けが。その程度で、余を倒せたと思うてか」

 

 

 晴れ行く爆煙の中から、無傷のテンマが姿を現わす。

 

「そ、そんな……‼︎」

 

「クハハハァ‼︎ 貴様等、ガオレンジャーの時代は終わりだ! これからは我等、オルグの時代だ‼︎!」

 

 そう言って、テンマが背中の掌を広げる。すると、ガオレッドを始め、ガオレンジャー達が浮かび上がる。

 

「なッ⁈」

 

「貴様等、ガオレンジャーは只では殺さぬ。死より辛い無限地獄へと突き堕としてくれるわ!」

 

 そう言い放つと、ガオレンジャーの身体が水晶に包まれ閉じ込められていく。

 

「クハハ‼︎ ガオレンジャー、その水晶の牢獄の中で自分達の浅はかさを悔やみ続けるが良いわ‼︎」

 

 テンマは高笑いする。ガオレンジャーの敗北……この瞬間から、オルグの時代が幕を上げたのだ。

 

「クハハハハハハァァァ‼︎! 見た事か、シュテン! ウラ! ラセツ! 貴様等が成し得なかったオルグの天下を、このテンマが成し遂げた‼︎ このテンマこそ、真のオルグマスターと相応しい‼︎」

 

 狂喜するテンマ。ガオライオンは仲間を水晶に閉じ込めたテンマに対し、怒りを見せ襲い掛かるが突如、ガオライオンの身体に爆発が起こる。

 

 

「フン……大人しくしろ」

 

 

 倒れ伏すガオライオンを見下ろす様に降り立つのは、ガオネメシスだ。

 

「何だ今頃、来たのか? もう終わってしまったぞ」

 

 テンマは、ガオネメシスに対し親しげに話す。当人のガオネメシスは、マスク越しに邪悪な嗤いを上げる。

 

「何……まだ、終わっていない。パワーアニマルを、この天空島ごと封じてしまうのだ……」

 

 ガオネメシスが右手を翳すと天空島が、パワーアニマル達が融ける様に消えていく。

 

「これで、パワーアニマルは一網打尽……ガオレンジャーもおしまいだ……」

 

「クハハハハハハァァ‼︎‼︎ これで、我等の勝利だ‼︎」

 

 融けていく天空島を背に、テンマは勝ち誇った様に高らかと笑い続けた。それと同時に、陽の身体も見えない力に引っ張られ始めた。

 

 

「陽……そろそろ戻るよ……」

 

 

 風太郎の声だ。その直後、陽の意識は途絶えた。

 

 

 

「分かった? これが真実だよ」

 

 元の空間に舞い戻った。一言も発する事が出来ない。自分は、何も分かって居なかった。ガオレンジャーの事も……オルグの事も……何一つ……。

 

「……僕は、ガオレンジャーとして戦う事を自分にとって枷の様に感じていた……でも違った。ガオレンジャーとして戦う事は……自分の命を賭ける位に大切な事だったんだ。命を賭ける覚悟の無いまま、戦い続けたから敗ける……あの女の子の言った意味は、この事だったんだ……!」

 

 こころの言った言葉の意味が痛い程に身に沁みた。

 彼女は陽が半端な覚悟で戦い続ければ、遅かれ早かれ足が竦んで敗けてしまう事を見抜いていたのだ。

 陽は、今迄の自分がオルグに勝てていたとは所謂、ビギナーズラックに過ぎなかった事を思い知った。

 ガオドラゴン達と和解し有頂天になっていた、自分の馬鹿さ加減に腹が立って来る。これ迄の勝利は、ガオパラディンやガオシルバー等と言う歴戦の勇者達の力添えが有ったからこその勝利だったのだ。

 

「僕は……何にも分かっちゃ居なかった……‼︎ ガオレンジャーと言う戦士に選ばれた意味が……彼等の姿を見て、やっと気付いたよ……」

 

 偉大なる先人のガオレンジャー達……何より、自分に武術を教えてくれた大河 冴達が命を賭けて、未来に繋いだのは自分と言う新世代の戦士に希望を見出していたからだった……そんな事に、今更になって気付くなんて……。

 

「気付いてくれて有難う、陽……。もし、君が敗北の理由に気付かなければ、ガオレンジャーの力を取り上げなくちゃいけなかった……でも杞憂に終わったよ。君は、ガオレンジャーとして大切な事を今日、学んだ」

 

 風太郎は穏やかに笑う。風太郎ことガオゴッドは、陽がガオレンジャーの名を継ぐに相応しいか否かを試したのだ。

 それと同時に、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが姿を見せる。

 

「ガオドラゴン‼︎ 無事だったんだね⁉︎」

 

 仲間達の無事に歓喜する陽。ガオドラゴンは冷ややかな態度だ。

 

 

 〜我等を脆弱な人間と一緒にするな……しかし、その様子では迷いを断ち切った様だな……〜

 

 

 ガオドラゴンは確かめる様に、陽に尋ねる。

 

「ああ……僕は、ガオレッド達みたいなガオの戦士になれない……でも、誰かの為に…地球を守る為に戦いたい…! もう一度、戦わせて貰えないか?

 竜崎 陽としてじゃなく、ガオゴールドとして……‼︎」

 

 それは、ガオレンジャーとして戦い抜く、と決意した強い意志が込められていた。

 ガオドラゴンは口を閉ざしたままだ。代わりに、ガオユニコーンが口を開く。

 

 

 〜ガオゴールド……かつて、私達も貴方以前に人間と共に戦っていた時期がありました。ですが……彼は、ガオレンジャーとしての矜持を捨て、我等の前から永遠に去ってしまった……〜

 

 

 ガオユニコーンに続いて、ガオグリフィンが紡ぐ。

 

 

 〜お前も同じ道を辿るのでは、と言う懸念があった……。だが、お前はそうはならないと信じたい。

 我等に、もう一度、人間を信じさせて欲しい…〜

 

 

 最後に、ガオドラゴンが口を開く。

 

 

 〜お前が今回の敗北から何も学ばない様なら、我々は今度こそ人間を見捨てるつもりだった……良いだろう……今一度、お前を信じてみよう……。ただし、今回だけだ……〜

 

 

 偉大なるレジェンド・パワーアニマル達は宝珠の姿に変じ再び、陽の手に収まる。

 改めて認められた事に、風太郎は姿をガオゴッドへ変じる。

 

 

 〜ガオゴールド。お前になら、地球の未来を任せられる……私は今、オルグ達を竜胆市から出さぬ事に手一杯故、力を貸してやれぬが……〜

 

 

「竜胆市から出さない?」

 

 ガオゴッドの発言に対し、陽は尋ねる。

 

 

 〜酷な事に、オルグ達は竜胆市全体に鬼門を張り巡らし奴等の本拠地と直通の道を繋いでしまった……お前達が鬼門を破壊しようとも、オルグ達は新しい鬼門を繋ぐだろう。オルグ達を滅ぼさぬ限り……〜

 

 

「それじゃ……オルグ達の侵攻を防ぐのは……」

 

 陽は落胆した様に呟く。今迄の様に、オルグを倒した所で、オルグ達は無限大に現れる。見方を変えれば自分達は、オルグ達に完全に包囲されてしまっているのだ。

 

 

 〜案ずるな……逆に言えば、オルグ達は竜胆市より外に出る事は叶わぬ。奴等が町全体に仕掛けた鬼門ごと、私を始め全てのパワーアニマルの力で強力な結界で閉じ込める事に成功した。これなら、オルグ達を竜胆市内にのみに限定させれる……〜

 

 

 ガオゴッドは自分達に知らない所で、オルグ達に対し手を打っていたのだ。改めて、ガオゴッドの偉大さに陽は脱帽した。

 

 

 〜それと……この町で起こる、オルグ達による被害と、ガオレンジャーの名が知れ渡り無関係な者達を巻き込むまいとする、お前の気持ちもテトムを介し知っている……。それについては大丈夫だ。町の人間の記憶から、オルグ達やガオレンジャーの存在について定期的に改変しよう……〜

 

 

「でも……万が一、オルグ達の手に掛かってしまった人達は?」

 

 陽は、オルグ達がガオレンジャーを倒す為に無関係な人間を犠牲にしようとする場面を見ている。

 例え、記憶を改竄しようが、オルグ達によって町の人間達が命を落とせば結果は同じなんじゃ無いか?

 

 

 〜案ずるな、この町に張った結界内では、オルグ達が騒ぎを起こせば私が気付く。奴等の動きを察すれば私が、テトムに知らせよう……。神と言えど万能では無い……何より、人間達の問題に神が逐一、出しゃ張る真似は出来ないのだ……許してくれ〜

 

 

 ガオゴッドは済まなそうに詫びる。だが、陽は首を振った。

 

「謝らないで下さい。確かに、これは僕達、人間の問題です。オルグと言う存在を生み出したのも僕達、人間によるもの……詰まる所、ガオレンジャーの戦いは人類の地球に対する贖罪の為の戦いでもある……少なくとも、僕はそう考えます」

 

 陽は強い意志を持って応えた。いつか、ガオパラディンにオルグを生み出すのは人間の起こした災害や紛争による二次災害、と指摘された。

 かと言って、罪の無い人間を見捨てる訳には行かない。彼等を守る為の受け皿としつ自分が戦う事こそ、ガオレンジャーの使命なのだ。

 

 

 〜見事だ……よく、其処にまで至れた。ガオドラゴン達が、お前を選んだのは間違いでは無かった……そう信じさせてくれる……奴等の本拠地は、必ず私が見つけ出そう……この戦いを早期に集結させる為に……〜

 

 

 そう言い残すと、ガオゴッドは姿を消す。すると、陽自身の身体も透け始めた。

 

 

 〜頼む……ガオゴールドよ、地球の未来を託す……〜

 

 

 ガオゴッドの声が、リフレインする。若き戦士は戻っていく……新たなる信念を秘めて……。


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