帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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今回、新たなパワーアニマルを出しますが、前振り無しの登場です。
経緯は次回作で発表する為、御了承下さい。


quest14 魂の鳥、飛翔する!

「消えただと⁉︎」

 

 鬼ヶ島では、テンマの怒鳴り声が響く。相対するのは、ガオネメシスだ。

 

「ああ……ガオゴッドが現れて、倒したガオパラディン諸共、消えていったよ……。まさか、ガオゴッドが復活していたのは驚きだがな……」

 

 ガオネメシスは気にしない風な感じで話す。だが、一方のテンマは苛立ちを隠さない様子だ。

 

「悠長な事を言ってる場合か? 貴様が、パワーアニマルを全て、封印したと言ったのでは無いか⁉︎」

 

「フン……例外もある……」

 

 憤るテンマを余所に、ガオネメシスは余裕のある姿勢だ。

 

「ガオゴッドは元々、1000年前の精霊王だ。それが現代に甦ったのだから、これ以上の事が起きても不思議じゃあるまい?」

 

「……問題無い、とでも言うつもりか?」

 

 テンマは低く唸る。

 

「貴様……ガオの戦士でありながら、余に味方をするのは何故だ?」

 

 ガオネメシスは真意を見せない。何の目的があって、オルグに味方するのか……そうする事で、自分にどういったメリットがあるのか……流石のテンマも、この男の内を読めない。

 

「くく……勘違いするな。俺には俺の目的がある。言うなれば、これは''主従''では無い。俺と貴様の間による目的を共にした''同盟''だ」

 

 同盟……仲間や主従とは違い、共通の敵を倒す為に築かれた関係……だが、同盟には裏切りが付き物である。この男の強さは認めるが、裏を返せばいつ手を噛まれても可笑しくない状況にあるのだ。

 それは、テンマもまた然り……自分の必要時には、ネメシスを蜥蜴の尾切りにする腹でいる。

 互いに一本線で隔てた関係に、あるのだ。

 

「ガオレンジャー共を根絶やしとする迄は、この関係は必要だ。仲良くしようでは無いか」

 

「…フン…」

 

 ガオネメシス、テンマの関係は良好とは言えぬが、取り敢えずの同盟を結ぶに至っていた。

 

「ゴーゴには、闇の精霊王を貸し出してある。あれが居る限り、ガオパラディンは勝てぬ……今のままでは…な…」

 

 今のまま……何やら意味深めいた言葉だが、ガオレンジャーの存在を厄介視するテンマと異なり、ネメシスは余裕のある態度を崩さない。まるで、ガオレンジャーを何時でも倒せると言わんばかりだ。

 

「……テンマ、お前は引き続き、オルグ共を統率しガオレンジャーを倒せ。俺は別方面から、奴らを追い詰める。

 全てが終われば、この地上の支配権はまるまる、お前にくれてやる」

 

 そう言い残すと、ガオネメシスは姿を消した。テンマは、何かを考える様に唸る。

 

「……おい、ニーコ‼︎」

 

 

「はいはーい! お呼びですか〜?」

 

 

 テンマの呼び声に応じ、ニーコが姿を現した。

 

「“あれ“の用意は出来ているか?」

 

「”あれ“ですかァ? 使える準備は出来てますけどォ、もう使っちゃいますゥ?」

 

 ニーコは甘ったるい口調で尋ねるが、テンマは威厳を醸し出しながら応える。

 

「構わん。ガオネメシスは信用がならん。使えるなら、手駒は揃えて置く必要がある」

 

「欲張りですねェ? 四鬼士の皆さんを挙って、手駒にしたのに」

 

 軽口を叩く様に宣うニーコを、テンマの恐ろしい形相で凄む。

 

「黙れ。余の命令に従えぬぬか? 余計な詮索は許さん」

 

「あ〜、いえいえ! 命令には喜んで従いますです、はい」

 

 テンマを怒らせれば後々、面倒な事になる事を理解しているニーコは機嫌を取りながら、いそいそと出て行く。

 ニーコが部屋を出た後、テンマは1人、ほくそ笑む。

 

「ガオレンジャー共め……余に逆らえば、どうなるか分らせてやる……」

 

 

 

「まさか千年の友が復活していたとは……」

 

 ガオシルバーは、ダムより少し離れた場所にて佇んでいた。

 ガオゴッドをより窮地を救われ、テトムと離れた場所に転送された彼は、ガオゴールドの所在を探っていた。

 先程の攻撃にて五体満足で居るとは思えないが……せめて生きている事を望むばかりだ。

 

 

「キャァァァッ‼︎‼︎」

 

 

 突如、絹を裂く様な悲鳴が森中に木霊した。テトムの悲鳴では無い。ガオシルバーはただ事では無い、と悟り駆け出した。

 

 

「ハァ……ハァ……‼︎」

 

 森の中を、祈が走っていた。こころとは逸れてしまったばかりか後ろから、三体のオルゲット達が迫って来る。

 

「ゲットゲット‼︎ オルゲット‼︎」

 

 オルゲット達は武器を片手に、祈を捕まえようとして来る。

 祈も捕まってたまるか、と必死になって逃げるが所詮は人間、腐ってもオルグの端くれであるオルゲットから逃げ切れる筈も無く、徐々に距離を詰められて行く。

 とうとう、疲労が足に来た祈は地面から突き出ていた木の根に足を取られ、転倒してしまった。

 

「痛ッ…‼︎」

 

 転んだ際の激しい痛みに祈は顔を歪ませる。そうしてる間に、オルゲット達は祈を取り囲んだ。

 

「あ……あ……」

 

 恐怖に気を失いそうになりながら、祈は後ずさる。オルゲット達は、ジリジリと近づいて来た。

 ふと、祈の頭に声が響く。

 

 

 ー巫女の魂を感じるぞー

 

 ー巫女の匂いがするー

 

 ー憎らしいー

 

 

 巫女の魂? 匂い? 何の事か分からないが、オルゲット達が明確な敵意を抱いているのを感じた。

 

 

 ー巫女を殺せー

 

 ーはらわたを引き摺り出せー

 

 ー骨まで焼き尽くせー

 

 

 物騒な言葉が聞こえた。一体のオルゲットが金棒を構えながら、祈に近付く。

 

「…い、嫌…来ないで…」

 

 震える声で祈は嘆願するが、無情にもオルゲット達には届かなかった。オルゲットは金棒を振り上げ、祈の頭に目掛けて振り下ろした。

 

「嫌ァァァッ‼︎‼︎」

 

 祈は目を閉じる。その際、頭上で弾ける様な音がした。

 恐る恐る、目を開けて見ると金棒を剣が受け止めていた。剣の持ち主を見ると、いつか会った銀色の戦士が居た。

 

「走れ‼︎」

 

 銀色の戦士−ガオシルバーが怒鳴る。祈は気が遠のきそうになる自分に喝を入れ、ヨロヨロと立ち上がり走り去っていた。

 獲物を狩るのを邪魔されたオルゲット達は、怒り心頭でガオシルバーに迫る。だが、ガオシルバーは一切、譲る気は無い。金棒を振り上げながら襲い掛かってきたオルゲット達を、ガオハスラーロッドでいなして行く。

 

 

「銀狼満月斬り‼︎」

 

 

 ガオシルバーは円を切る様に、ガオハスラーロッドを振り斬撃を放つ。オルゲット達はなす術無く倒され、泡となって消えて行った。敵を倒した事を確認したシルバーは、ロッドに付着したオルゲットの返り血を払う。辺りに静寂が訪れた

 

 

「フン……雑兵程度では、このザマか……」

 

 

 突然、静寂を破る様に低い声がした。ガオシルバーは辺りを見回すと、夜の帳の中から人影が姿を現した。

 

「貴様は……‼︎」

 

 それは、紫色のマスクを不気味に輝かせた戦士ガオネメシスだ。手には赤色の手甲を装着している。

 

「それは、ライオンファング……‼︎ ガオレッドの破邪の爪まで……‼︎」

 

 ガオネメシスは持っているのは、ガオレンジャーのリーダーであるガオレッドが所有する筈のライオンファング。パワーアニマル、ガオライオンを模した彼の愛用する武器だ。

 

「……クク……嬉しかろう? 仲間の武器だ」

 

 ガオネメシスは挑発する様に、ライオンファングをチラつかせた。

 

「ガオネメシス……貴様は一体、何者なんだ……⁈」

 

 ガオシルバーは驚愕する。この、ガオネメシスと言う戦士の素性が掴めない。ガオレンジャーの姿、仲間達の破邪の爪を使い熟す、加えては仲間達の消息を知っているかの様な元と……だが、ガオネメシスは真意を語ろうとせず、ライオンファングを構えた。

 

「何度も言わせるな。俺は『復讐者』だ。貴様等、人間に対してな」

 

 そう吐き棄てるとガオネメシスは突進しながら、ライオンファングを装着した拳を突き出し来た。あわやの所をガオハスラーロッドで防ぐが、拳の嵐が襲いかかって来る。

 

「ハハハ…受けてばかりでは無く攻めて来い‼︎」

 

 ガオネメシスは嘲りながら攻撃の勢いを増した。ガオシルバーも反撃の機を窺うが、隙が見つからない。

 一か八か、ガオハスラーロッドでネメシスのマスクを狙うが、首をずらして交わされてしまう。

 

「クク…そんな温い攻撃、虫をも殺せるか‼︎ 次はこっちの番だな‼︎」

 

 そう言って、ガオネメシスはライオンファングを変形、バズーカ形態の『ガオメインバスター』を装備した。そして、トリガーを引く。

 

 

「ブレイジングファイヤー‼︎‼︎」

 

 

 ゼロ距離から放たれた炎の弾が炸裂した。炎はガオシルバーを包み込み、大爆発を起こす。

 

 

「うわァァァッ‼︎⁇」

 

 

 ガオシルバーの絶叫が響き渡った。もうもうと爆炎が立ち昇り、煙の中からボロボロの姿となったガオシルバーがフラフラと立っていた。マスクは砕け、大神の顔が覗いている。

 

「……く……テトム……陽……」

 

 意識が朦朧としながらも、辛うじて仲間達の名を呼ぶ大神。徐々に、眼前に迫るガオネメシスがぼやけ始めた。

 

「さらばだ、大神月麿。貴様が次に目を覚ました時は……」

 

 ガオネメシスが何か言っている気がするが、大神の耳には届かない。そのまま、意識を手放し地べたに倒れ伏した。

 

「……連れて行け!」

 

 倒れた大神を、二体のオルゲットが腕を持ち上げ立たせ、ガオネメシスが展開した鬼門の中へと引き摺り込んでしまった。

 

 

 

 一方、テトムはガオズロック内にて大神と陽を探索していた。泉を介し、2人の気配を探すが泉は何も反応しない。

 

「お願い……シロガネ、陽。無事で居て……‼︎」

 

 テトムの藁にも縋る様に祈る。ガオレンジャー達が消息不明、この上、シロガネ達にまで万が一に事があれば、いよいよガオの戦士は壊滅だ。オルグ達に対抗できる人物は居なくなってしまう。何より……テトムは、これ以上、大切な者達が居なくなる事には耐えられない。人より長命であるガオの巫女の宿命とは言え、大切な者達との温もりを知った以上、それが消失する苦痛は、あまりにも酷である。

 そんな折、泉にとある光景が映る。テトムは覗き込んで見ると女の子が、息を切らしながら走っている姿が見えた。

 あの子は見覚えがある。陽の妹で、名前は祈だった筈だ。

 テトムは、ガオズロックを動かした。オルグ達に見つからない様に着陸し、外見をただの岩にしか見えない様に結界を張っていたが、ガオズロックは動き出すと同時に本来の姿となった。テトムの思念に従い、ガオズロックは祈の走る真上を通過し彼女の眼前に着地した。

 

「乗りなさい‼︎」

 

 テトムは、ガオズロックの入り口に立ち祈に叫ぶ。祈は最初は戸惑い、乗ろうとしない。

 

「怖がらなくて良いわ! 早く!」

 

 テトムの必死の呼び掛けに対し、祈は決意した。彼女に急かされるまま、ガオズロックは中に駆け込んだ。

 彼女が中に入るのを確認し再び、ガオズロックは何の変哲も無い岩の姿へと擬態した。

 だが間が悪い事に、その様子を目撃した者が居た。遥か遠方より、風のゴーゴがガオズロックが飛び立ち着地する瞬間を見てしまったのだ。

 

「ヘッ‼︎ 見つけたぜ…‼︎ 其処に居るんだな…‼︎」

 

 ゴーゴは、ほくそ笑む。町を浸水する計画は破綻したが、ガオレンジャーを倒しさえすれば計画に支障は無くなる。

 先程、精霊王ごとガオゴールドを倒したが、ガオゴッドに介入によりガオシルバーとガオの巫女は逃してしまった。

 テンマから仰せつかった命令は、ガオレンジャーの殲滅。ならば、ガオの巫女やガオシルバーを殺して置かなかれば成らない。だが、あの亀岩の中にガオの巫女が居る。ならば、ガオシルバーも一緒だ。人間が一緒に居る様だが問題ない。

 一緒に始末してしまおう。そうすれば、ガオレンジャーは事実上の全滅、手柄は自分一人の総取りだ。

 良いぞ、ツキの風は自分に吹いている……! ゴーゴは確信し、ガオキング・ダークネスに命令した。

 

「行け‼︎ ガオの巫女やガオシルバーを、あの岩ごと一網打尽にしてしまえ‼︎」

 

 ゴーゴの命令に従い、ガオキング・ダークネスは動き出した。

 

 

 

「危なかったわね……でも、もう大丈夫よ」

 

 テトムは優しく語り掛ける。だが、祈は今更になって震え始めた。無理もない……戦う力を持たない少女が、あんな恐ろしい目にあったのだから……。

 

「心配ないわ……此処に居たら安全だから……」

 

 今尚、震え続ける祈を労る様に、テトムは肩に手を乗せるが祈は、その手を叩いた。

 

「……貴方が兄を……戦いに巻き込んだんですか?」

 

 顔を上げた祈の顔を見て、テトムは理解した。彼女は恐怖に震えていたのでは無い。怒りに震えていたのだ。

 

「どうして、兄さんを巻き込んだの⁈」

 

 遂に祈はすっくと立ち上がり、テトムを睨みつける。その瞳には、テトムに対して明確な憎悪が込められて居た。

 

「貴方が……兄さんを巻き込まなければ……兄さんは、あんな恐ろしい怪物と戦わずに済んだのに……その上……兄さんは……‼︎」

 

 激昂しながら、祈の眼から大粒の涙が止めどなく流れ落ちた。テトムは、何とか彼女を落ち着かせようとした。

 

「落ち着いて……貴方の、お兄さんは……」

 

「近付かないで‼︎」

 

 祈は、近寄ろうとするテトムを拒絶する。

 

「兄さんは……優しくて、いつも私を守ってくれた。私と兄さんは慎ましく平和に暮らしていた……どうして、私達の平和を壊したの? 兄さんが戦わなければならないの⁉︎

 

 祈は溜め込んでいた鬱憤を晴らすかの様に、テトムに心の丈をぶつけた。彼女が陽と出会わなければ、彼女が陽に戦う力を与えなければ、彼女が最初から居なければ……駄々を捏ねる子供みたいな理屈だと言う事は理解していた。一方的な八つ当たりである事も……。

 それでも、テトムは黙したまま祈からの罵倒を受けた。

 どう説明しても、自分が陽にガオレンジャーとしての戦いを望んだのは事実……彼を戦士に選んだのは、ガオドラゴン達だが……戦う事を教え導いたのは自分だ。祈のテトムに対する怒りは、至極当然な事だ。

 そんな中、テトムは祈に僅かな違和感を感じた。自分と同じ様に、ガオの巫女としての力を感じる。かなり小さな力だが……彼女の中に、そう言った力があるのは間違いない。

 

 その際、ガオズロックに大きな揺れが走った。

 

「キャアァァァッ‼︎⁉︎」

 

 突然の振動に対し、2人は地べたに倒れ伏す。テトムの泉から外の様子を見ると、ガオキング・ダークネスがガオズロックを壊そうとしていた。

 フィンブレードを岩の頂に突き刺して無理矢理、破壊せんとする。

 

「ガオレンジャー、ガオの巫女‼︎ お前等は、完全に包囲されている‼︎ 無駄な抵抗は止めて出て来い‼︎」

 

 ガオキング・ダークネスの隣で、ゴーゴが高らかに叫んだ。と、同時に風の弾丸をガオズロック目掛け投擲して来る。

 弾丸が直撃すると、ガオズロックの揺れは大きくなる。この亀岩は、並大抵の力では傷一つ付かない。だが、相手はデュークオルグと精霊王だ。逃げ出そうにも外に出ればオルグ達が、空へ逃げれば撃墜されてしまう。正に八方塞がりだ。

 

「よーし、あと3つ数えて来る迄に出て来なければ、その亀岩ごと吹っ飛ばすぜ‼︎ ひとーつ……‼︎」

 

 ゴーゴが秒読みを数えた。テトムは決意する。

 

「これまでの様ね……今から、私が外に出て囮になる。貴方は全速力で森の中へ逃げなさい」

 

 テトムの提案に、祈は凝視した。囮になる……それは即ち、みずから死にに行く様なものだからだ。

 

「どうして、私の為に⁈ 」

 

 つい今し方、あんなに酷い言葉で罵った私の為に、命を賭けれるのか? 祈は分からなかった。

 

「ふたーつ‼︎」

 

 ゴーゴの声が聞こえる。もう猶予は無い。テトムは小さく笑った。

 

「貴方のお兄さんなら、そうすると思うわ」

 

 その言葉に、祈はハッとした。そうだ……陽は、いつもそうだ。私の為に必死に戦ってくれていた……それなのに、私は1人で泣き喚いて……何て幼稚だったんだろう……。

 

「へへ…みーっ……」

 

 みっつと叫び掛けたゴーゴは不自然に言葉を切る。何事かと、テトムは泉から外の様子を見ると、ガオズロックを庇う様に、ガオキング・ダークネスへ光弾が当たり大きく仰反る。

 

「くそッ! 誰だ、邪魔をしやがるのは⁉︎」

 

 ゴーゴが光弾の先を見ると、其処に立っていたのは……。

 

 

「ガオパラディン‼︎」

 

 

 テトムの歓喜した。先程、倒された精霊王が再び、立ち上がった。ガオゴールドは生きていたのだ。

 

 

『テトム‼︎ ごめん、遅くなった‼︎」

 

 

 ガオゴールドの言葉がテレパシーとなって聴こえて来る。テトムは堪らず、泣き出した。

 

「ゴールド……良かったァ……」

 

 仲間の無事を確認したテトムは、さめざめと泣き出す。ガオパラディンは、テトム達を守るべく、ガオキング・ダークネスの前に立ち塞がった。

 

 

 

「ハハハハ‼︎ また、やられに来たのかよ⁉︎ お前も懲りない奴だな⁉︎

 良いだろう……ガオキング・ダークネス‼︎ 血祭りに上げちまえ‼︎」

 

 完全に見縊った様に、ゴーゴが嘲笑う。だが、今の自分とガオパラディンなら負ける気はしない。そんな気がした。

 その時……。

 

 

「私の力を使って」

 

 

 ガオパラディンとガオキング・ダークネスの間に、光に包まれたこころが現れた。

 

「君は⁉︎」

 

「ああ⁉︎ 何だ、今度は⁉︎」

 

 2人の言葉とは別に、こころはみるみる間に姿を変えていく。其処には、やや機械的な印象を持つ鳥の様な生物が居た。

 

「あれは、ソウルバード⁈」

 

 テトムは彼女を知っている。精霊王の心臓として融合し、精霊王に更なる力を引出させる特殊なパワーアニマル、ソウルバード。

 ソウルバードはガオパラディンの胸部から体内に収納し、コクピット部位に収まった。

 

 

 〜ソウルバードが精霊王と融合する事により、ガオの心臓は鼓動を上げ、ガオパラディンの潜在能力は極限まで引き出されるのです〜

 

 

「こころ⁈ 君も、パワーアニマルだったなんて……⁉︎」

 

 

 ー説明している暇は無い……此れで、ガオパラディンの力を更に引き出させる……見ていて‼︎ー

 

 

 ソウルバードの言葉に従い、ガオパラディンの身体は光に包まれていく……。胸部のガオドラゴンが吠えた。

 

 

 ー凄い力だ……さっき迄とは比べ物にならん……‼︎ー

 

 

 ガオドラゴンの言葉通り、ガオパラディンは強化された状態ど、ガオキング・ダークネスに向かっていく。ガオキング・ダークネスもフィンブレードで迎え撃つが……。

 

「ユニコーンランス‼︎」

 

 ガオゴールドの命令に従い、ユニコーンランスを繰り出すガオパラディン。だが、今迄の物とは違い高速に攻撃にてフィンソードを弾き飛ばした。その状態で、ガオキング・ダークネスの胸部を一閃した。

 攻撃を受けたガオキング・ダークネスは後退し、森林内に倒れた。

 

「アアアア、くそ‼︎ 見てられねぇや‼︎ 俺も行くぞ‼︎」

 

 業を煮やしたゴーゴは自身の身体を巨大化していき、ガオパラディンの前にも立ち塞がった。フード状態の半身ははだけ、風神を思わせる袋の様な羽衣を纏っている。両手には小型のナイフが装着した手甲を装備していた。

 

「へへ……伊達にもデュークオルグを名乗ってる訳じゃねェんだ‼︎ 行くぜ‼︎」

 

 ゴーゴはナイフ付きの手甲でパンチを繰り出す。すると、拳に込められた風の力が炸裂する。

 

「ハハハハ‼︎ どうよ‼︎ これが、風のゴーゴ様の力だ‼︎」

 

 ゴーゴは高らかに笑う。すると、ガオキング・ダークネスも戦線に復帰し2体1で、ガオパラディンを追い詰める。

 

「くそ……これじゃ、不利だ‼︎ せめて、ガオハンターが居てくれたら……‼︎」

 

 ガオゴールドは、ガオシルバーの居ない事を嘆く。だが、ソウルバードが語り掛けてきた。

 

 

 ー心配無いよ……彼が来てくれたからー

 

 

「彼?」

 

 ソウルバードの言葉に疑問を抱くガオゴールドだが突如、ゴーゴが身体を退け反らせた。

 

「チィ……何だ⁈」

 

 ゴーゴが目を凝らすと、ガオパラディンの前に別のパワーアニマルが姿を現した。それは、ガオドラゴン同様に竜の姿をしており、こちらはエメラルドグリーンの体色である。

 

「あれは⁉︎」

 

 

 ー「ガオワイバーン……風を司るレジェンド・パワーアニマルよ」ー

 

 

 ソウルバードの説明と同時に、ガオワイバーンは吠える。すると自らの意思でエメラルドグリーンの宝珠となり、ガオゴールドの手に渡った。

 

 

 ー台座に宝珠をセットして、ゴールド‼︎ー

 

 

 ソウルバードが指示する。それに従い、ガオゴールドは宝珠をソウルバードに設置されたプレートにセットした。

 すると左腕のガオグリフィンが分離し、翼を広げ足を折りたたむ様に直立となった姿に変形したガオワイバーンが武装された。

 

 

 〜風を司るガオワイバーンを幻獣武装する事により、悪鬼を射抜く弩を装備した精霊の王となります〜

 

 

「幻獣武装! ガオパラディン・アーチャー‼︎」

 

 

 ガオワイバーンは巨大なボーガンの形態と化し、ガオパラディンの左腕に収まった。

 

「何が、アーチャーだ‼︎ この風のゴーゴ様に、風で勝負を仕掛けるとは良い度胸じゃねェか‼︎

 喰らえ‼︎ 『豪風拳嵐』‼︎‼︎」

 

 ゴーゴは風の纏った拳を、ガオパラディンに打ち込んでくる。風の防御を得た拳は万力の一撃となって躱したガオパラディンの足下を螺旋状に抉る。

 それに合わせる様に、ガオキング・ダークネスが「ダークネス・ハート」を発射する準備に入った。

 

 

 ー「ガオゴールド、今だよ‼︎」

 

 

「ああ、分かった‼︎ 『一撃必殺! サイクロンシュート‼︎』」

 

 

 ガオパラディンが左腕を構える。すると、ガオワイバーンの頭部が輝き出し、巨大な弓が生成された。

 と、同時にガオキング・ダークネスの「ダークネスハート」が発射される。ガオパラディンも、サイクロンシュートも発射した。

 サイクロンシュートは、直撃したダークネスハートの力に押される事なく、スピードを保ったまま直進し、ガオキング・ダークネスの胸部に突き刺さった。

 風の矢を受け、ガオキング・ダークネスは倒れ爆散してしまう。

 

「うおッ、やりやがったな‼︎ こうなりゃ……‼︎」

 

 切り札を倒された事で、ゴーゴは何を思ったのか自分の腕に付いた手甲を外した。

 

「遠距離から弓で狙い撃ちされたら、豪風拳嵐を放つ前にやられちまう……だったら、その分の風を一つに纏めてぶっ放すまでよ‼︎‼︎」

 

 そう言って、掌に風を集約していき巨大な風圧の玉を作り出した。風の爆弾を投げようとしているのだ。

 

「お前の風の矢か、俺の風の爆弾か⁉︎ 勝つのは、どっちか勝負しようや‼︎ 」

 

「く……正気か⁉︎ そんな物を至近距離で使えば……」

 

 ガオゴールドは目を疑う。あんな風圧の塊を解放すれば、自分やテトムは愚か、中心地に立つゴーゴも無事にはすまされない。

 

「ハッ! お前等、人間にオルグの美学なんざ理解出来んだろうぜ! 俺達、オルグはな……敗ける事は”死”なんだよ! 敗ける位なら、全力の攻撃で勝ってやる‼︎ 」

 

 そう言って、巨大な豪風玉を投げ付けてきた。だが、ガオパラディンも腕を下ろす。

 

「ハッ⁉︎ 敵わないと諦めたか⁉︎」

 

「違う……巨大な風なら、竜の咆哮で掻き消す。

『聖霊波動! スーパーホーリーハート‼︎』

 

 ガオドラゴンの口から、ソウルバードによって増幅され強化されたガオソウルの威力で倍増したホーリーハートが放たれた。スーパーホーリーハートは迫る豪風玉を難なく破壊し、ゴーゴに迫った。

 

「そ…んな…この風のゴーゴが……力で敗けるなんて……そんな馬鹿な……‼︎‼︎」

 

 自分の敗北を受け入れられず、風のゴーゴは聖なる光線に飲み込まれて行き……影も残らぬ程に消失してしまった。

 

「やったァ‼︎‼︎」

 

 ガオゴールドは勝利した。彼の喜びに反応して、ガオパラディンは勝利の咆哮を上げた。

 

 

 

 戦いを終え、テトムの所へ戻ると、ガオズロックの中からテトムと祈が出て来た。

 

「い、祈⁉︎」

 

 陽は驚く。祈は申し訳なさそうに俯く。テトムは小さく謝った。

 

「ごめんなさい……来ちゃった……」

 

 祈の言葉に、陽は全てを察する。彼女は知ったのだ。自分の正体を……。

 

「……兄さん、私……」

 

 気まずそうにする祈を見て、陽は笑顔で彼女を抱き締めた。

 

「謝らなくて良いよ……悪いのは僕だ……」

 

 その後、暫くの間、陽は祈を抱き締めた。祈も抱き締められながら泣いていた。その様子に、テトムは無言のまま、涙を流した。

 

 

 

 とある山中……闇の中を歩く一人の影が居た……。

 

「さて……どうすれば下りられるんかのう……」

 

 影は、そう言いながら闇の中へと消えて行った……。

 

 

 〜戦士として成長し、四鬼士の一角”風のゴーゴ”を打ち倒したガオゴールド。しかし、暗躍するガオネメシスに拐われたガオシルバーの運命は、どうなるのでしょうか⁉︎〜




ーオリジナルオルグ
 ・風のゴーゴ
 四鬼士の一角を成すデュークオルグ。性格は、典型的なオルグらしく力尽くで事を進めるタイプ。
 戦闘時は風を操り、肩に羽衣と両手にナイフが装着した手甲の装備し戦う。
 必殺技は風圧を凝縮して投擲する『豪風玉』と風を拳に纏い風圧を直接、叩き込む『豪風拳嵐』。

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