帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest15 狼が消えて…【挿絵付き】

「ち……チクショ……」

 

 戦場から少し離れた河原……全身がズダボロとなったゴーゴが、やっとの思いで這いあがって来た。

 ガオパラディンから受けた傷は深いが、辛うじて命は助かった。だが、起き上がる事も出来ない。

 

「ガオゴールドめェ……! この借りは絶対に返してやるぜ……必ずな……‼︎」

 

 怒りと屈辱に顔を歪ませ、呪詛の言葉を吐くゴーゴ。

 九分九厘、勝っていた。だが、ガオパラディンの思っても見ない反撃に逆転を許してしまい、自分の計画は一瞬で水の泡と化してしまった。

 このままでは終われない。終わらせる訳が無い‼︎

 自分に煮え湯を飲ませたガオゴールドに報復し、奴の五体をズタズタにしてやらなければ、気が済まない。

 復讐を誓い、ゴーゴは何とか鬼ヶ島に帰ろうと試みるが如何せん、受けた傷が深い為に思う様に身体が動いてくれない。

 

「くそ……! こんな所で、くたばる訳には……‼︎」

 

 それでも、痛む身体に鞭を打ち動かそうとするゴーゴ。

 腐ってもオルグ……それも、ハイネスに次ぐ地位を持つデュークオルグの自分が……。その時、ゴーゴの前に歩み寄る気配がした。

 

「手酷く、やられたわね、ゴーゴ?」

 

 それは、ヒヤータだ。相変わらず優雅な笑みを浮かべながら微笑んでいる。

 

「ヒヤータ……⁉︎」

 

 意外すぎる人物の登場に、ゴーゴは驚く。だが、今となっては都合の良い。

 

「へへ……丁度良いぜ……‼︎ 手を貸してくれねぇか? この通り……ズダボロなんだ……鬼ヶ島に連れて帰ってくれよ……そうすりゃ、ガオゴールドに目に物を見せて……‼︎」

 

 辛うじて動く手を出して、ヒヤータに助けを乞うゴーゴ。

 だが、ヒヤータは微笑んだまま動こうとはしない。この時、ゴーゴは気付かなかった。ヒヤータは微笑こそ浮かべているが、目は冷たく自分を見据えていた事を……。

 

「おい……ヒヤータ……早く……‼︎」

 

 様子がおかしいヒヤータに違和感を覚えたゴーゴは再度、訴える。が、気付いた時は、もう手遅れだ。

 

 

「ご苦労様、ゴーゴ。これで、貴方は御用済みよ」

 

 

 ヒヤータはそう吐き捨てると、扇子を振るう。すると、河の水が蛇の様に、ゴーゴの身体に絡め付いて来た。

 

「お、おい⁉︎ 何の真似……だ⁉︎」

 

「テンマ様から言伝よ。貴方は、もう要らないから消えろ……だそうよ」

 

「な⁉︎」

 

 この瞬間、ゴーゴは漸く、ヒヤータの真意に気付いた。

 嵌められた……が、既に遅い。

 

「貴方は私の描いた絵通り……それ以上の働きを見せてくれたわ。ガオゴールドに九分九厘、勝利しかけながらも最後は、自分の爪の甘さから自滅した。お陰で、ガオゴールドとの貴重な戦闘データが取れたわ」

 

「な……なんだと……⁉︎ 」

 

「鬼地獄への手土産に良い事を教えてあげるわ。貴方を一番手に仕向けたのは、この私よ」

 

 更なる驚愕な真実に、ゴーゴは目を剥く。その際、ゴーゴの懐から、カードが落ちる。あの順番を決める為に用いたカードだ。カードは……白紙だ。

 

「……は、白紙だ…と……⁉︎」

 

「クス……まだ分からない?」

 

 ヒヤータは指をパチンと鳴らす。すると、白紙のカードに数字が、炙り出しの様に浮かび上がって来た。

 

「……⁉︎」

 

「これで分かったでしょう? 貴方は最初から最後まで、私の掌の上で踊っていたのよ」

 

「……ク……クソ、ヒヤータ……テメェ……‼︎」

 

 自分は、ヒヤータの策に利用されただけだった。だが最早、後の祭りである。水はゴーゴの全身を覆うと、川の中に引き摺り込んでいく。

 

「さようなら、ゴーゴ。安らかに、お眠りなさい」

 

 

「……や、やっぱり謀りやがったなァァァ……‼︎‼︎」

 

 

 アリ地獄の如く渦巻く水の中に飲み込まれながら、ゴーゴは断末魔の呪詛を上げた。最後に腕だけ川から突き出ていたが、それさえも渦巻いて行く水のうねりと共に掻き消され、遂に河原は何事も無かった様な、落ち着きを取り戻した。

 

「オルグにとって、敗北は”死’’。貴方が言った言葉よ」

 

「あらら、殺しちゃったんですかァ?」

 

 突如、ニーコがヒョコッと姿を現す。

 

「殺さなくても良かったんじゃ無いですかァ? テンマ様から、そんな命令出してませんでしたよォ?」

 

「……でも、テンマ様の性格からしても、任務を遂行出来なかったゴーゴは罰を受けなくてはならない。

 同じ死を賜るくらいなら今、私の手で殺してあげるのが私なりの慈悲よ。これでも、私は仲間に寛容なのよ?」

 

 ケロリとした顔で言って除けるヒヤータ。ニーコは、クスクスと笑う。

 

「ゴーゴ様も、ちょっぴり可哀想ですねェ。利用された挙句、殺されちゃうなんて……」

 

 そんな事、爪の垢程も思ってない癖に、ニーコは言った。ヒヤータは冷笑を浮かべながら……

 

「でも、お陰でガオゴールドに対してのデータは取れたし“思わぬ収穫“もあった……ゴーゴは、こうなる運命だったのよ」

 

 自分の手で殺めておきながら、あっさりとヒヤータは言い切る。彼女からしてみれば、ゴーゴ等、最初から切り捨てるつもりだった。もとい、四鬼士と銘打たれているが自分達に仲間を思いやる等と言う概念は無い。そもそも、邪気の集合体であるオルグは、仲間が倒れれば手を差し伸べず踏み越えて行くのが普通だ。

 妙な情にて繋がっているツエツエとヤバイバが異常なのだ。

 

「……所で、そろそろ出てらっしゃいな?」

 

 ヒヤータは森の影に向けて語り掛ける。すると、ソソソとバツが悪そうに顔を出す二人組……。

 

「生きてたんですかァ? 相変わらず、ゴキブリ並の生命力ですねぇ?」

 

 ニーコが、小馬鹿にした様に嘲笑う。

 あの後、氾濫する川に流されたツエツエとヤバイバは、何とかダムに捕まり流されまいと耐えていた。

 ひょんな事から、ダムがガオゴッドに修復された事で助かり、2人は川から這い上がって来たのだ。

 その為、2人共、全身がずぶ濡れである。

 

「今度と言う今度は、テンマ様も堪忍袋の緒がブチ切れちゃいますねェ? 2人共、時世の句の用意しといた方が良いですよォ?」

 

 クスクスと笑いつつ、他人事みたいにニーコは言った。ツエツエもヤバイバも一言も発せず、絶望的に顔を歪ませる。

 

「良しなさい、ニーコ。そんな意地悪を言ったら可哀想よ?

 それに今回は、ゴーゴの不始末で彼女達は、それに従っただけ……ツエツエ、ヤバイバ。貴方達は今後、私の指揮下に入って貰います。異存はないわね?」

 

 ヒヤータが穏やかに尋ねた。ツエツエは黙ったまま、コクリと頷く。

 

「安心なさい、私はテンマ様やゴーゴみたいに貴方達を無碍に扱う気は無いわ。貴方達の事は、私なりに評価しているのよ?」

 

「え?」

 

 ツエツエも顔を上げる。ヒヤータは、何処までも穏やかだ。

 

「私の指示に従えば悪い様にはしない、約束しましょう」

 

「ほ、本当に?」

 

「ただし……」

 

 不自然に言葉を切り、ヒヤータは扇子を動かす。すると、川の水が触手の様に動き出し、地面に転がる石を持ち上げる。

 

「私の役に立たないと、私が貴方達を判断すれば……」

 

 そう言って、ヒヤータは扇子を軽く振る。途端に水の触手は岩を強く締め付ける。ギシギシ…と岩が軋み始め、途端に岩は粉々に砕け散った。

 

「……こうなるわよ?」

 

 一瞬だが、ヒヤータの顔からスッと笑みが消え能面の様な無表情となる。ツエツエとヤバイバは抱き締め合い、ガタガタと震えた。

 

「ぜ、ぜ、全力で働かせて貰いますゥゥゥ‼︎‼︎」

 

 鬼の目にも涙、とはよく言ったものだと言わんばかりに、2人は恐怖に涙を流しながら応える。最も、諺の意味は違うが……。

 また、隣に居たニーコも余りの恐怖にドン引きしていた。それくらい、今のヒヤータは凄い迫力があった。

 

「では頼むわね。期待してますわよ?」

 

 再び、ヒヤータは笑顔を見せるが今となっては、その笑顔も恐ろしい。鬼門を作り出したニーコが

 

「ささ、お姉様! どうぞ‼︎」

 

 と若干、引き攣った顔で促した。悠々と鬼門を潜るヒヤータを見届けた後、ニーコも後に続く。

 ツエツエも、それに続いた。

 

「おい、ツエツエ……俺達は……」

 

「行きましょう、ヤバイバ……今は堪えるの……!」

 

 ヤバイバの言わんとする言葉を制し、ツエツエは言った。その目は獲物を虎視眈眈と狙う蛇の如く、ギラつかせていた。

 

 

 

 あれから3日……陽は穏やかな日常を送っていた。

 ガオレンジャーとなってから、毎日が波乱万丈……決して慣れる事は無いが、ガオレンジャーとしての使命感に自覚し始めた事を陽自身が、納得せざるを得ない。

 それ以外で変わった事が有るとすれば……。

 

「兄さん……‼︎」

 

 ふと隣を歩く祈が心配そうに声を掛けて来る。

 休日の朝……珍しく、陽から祈を誘ったのだ。「散歩でもしないか?」と……。祈も、それに応じ休みの朝を2人で歩いていた。

 ふと陽は優しく笑みを浮かべ、祈の頭を撫でた。

 

「……やめてよ、恥ずかしいから……」

 

 小さな子供をあやす様な対応に、祈は不満を漏らす。だが、陽はやめなかった。

 

「……背が伸びたな、祈……あんなに小さかったのに……」

 

 陽は感慨深く言った。初めて会った時は、お互いに子供だった。でも、今は自分と背丈一つ分しか変わらない……。

 

「真面目に聞いてよ……兄さん、また戦わなくちゃならないの?」

 

 祈は憂いを帯びた目で見た。陽は戸惑う……。

 あの戦いの後、陽は祈には全てを打ち明けた。自分の今している事を……そして、これからして行く事を……。

 

 

 

 回想に入り……ガオズロック内にて……陽は語り始める。

 自分が、ガオレンジャーとなった経緯……その過程……世界に起こる真実……要所要所を掻い摘みながらも、陽は余す事なく話した。

 テトムも最初は、ガオレンジャーの正体を明かす事に難色を示すが、祈にだけは打ち明ける事を許してくれた。此処まで、巻き込んでしまった以上、祈に隠し通す事は出来ない……そう判断したからだ。

 祈は黙したまま、兄の言葉に耳を傾けた。普通なら現実から大きく逸した内容、と一蹴するだろうが……今日に見た出来事を知った以上、信じるしか無い。

 

「……僕は、ガオレンジャーとして戦わなくちゃならない。

 そりゃ、僕自身が受け入れられないさ。つい最近まで平和に生きて来て、急に地球を守る戦士になるなんてさ……。

 そんな事、漫画や小説だけの話だと思ってたし、仮に現実にあったとしても……そんな大役が自分に回って来るなんて考え付きさえしなかった……」

 

「兄さん……」

 

 祈は陽の顔を見て、今迄ひた隠してきた兄の苦悩を知った。

 誰にも相談出来ず……済し崩し的に戦いを強要されて来たのだ。きっと自分以上に陽が苦しんでいたのだろう。

 なのに、自分は秘密を打ち明けない陽に一方的に心の丈をぶつけてしまったのだ。改めて祈は、自分の浅はかなさを後悔した。

 

「……でも、僕は知ったんだ。ガオレッド……先代のガオレンジャー達が命を賭して護ろうとした地球の命の重みを……ガオゴッドが教えてくれた……」

 

「荒神様が……‼︎」

 

 テトムは言葉を挟む。自分のいざ知らない所で、陽を救ってくれていたなんて……。

 

「何より……冴姉さんが話してくれた地球を守る戦士の話……単なる作り話じゃ無いと分かった……」

 

「どうして冴姉さんが?」

 

 祈は首を傾げる。大河冴……自分の亡くなった母方の親戚筋に当たる従姉だからだ。

 

「驚くかも知れないが……ガオホワイトは冴姉さんだった。それも、ガオゴッドが教えてくれたよ……」

 

「本当に⁉︎」

 

「まあ……こんな偶然ってあるのかしら……⁉︎」

 

 祈は勿論、テトム本人が驚いていた。かつて、ガオホワイトとして戦ってくれた少女の血縁だったとは……。

 

「テトム……偶然なんかじゃ無いよ。これは運命なんだ……僕が、ガオレンジャーとして戦う事も……最初から決まっていた事だった……そう信じざるを得ないよ……」

 

 今の陽は、かなり達観し悟りに入った聖者に見えた。数々の戦い、そして培って来た経験が陽を人間的に成長させたらしい。

 

「だから……これが運命なら受け入れるしか無い。僕は、ガオゴールドとして必ず、オルグを打ち滅ぼしてやる‼︎」

 

 強い決意に満ちた目に、祈は何も応えられない。

 自分の気付かない所で陽は、すっかり戦士としての矜持を備えていた。

 

 

 

 回想が終わりを迎え、陽は祈の顔を見て諭る。

 祈は未だに、自分がガオレンジャーとして戦う事を良く思っては居ないのだ……現に祈は、この3日間、ガオレンジャーの話題を避けていた様だった。だから、陽も祈に話題を触れずにいた。

 唐突に、祈は陽に尋ねてきた。

 

「……私ね……兄さんの決意も理解した……決して生半可な覚悟じゃ無い事も……でも、やっぱり無理。兄さんが戦いの中で死んじゃうかも知れないと、考えただけで息が詰まりそうになっちゃう……」

 

「祈……」

 

 祈は淡々と話しながらも、震えている様だった。

 

「昨日、兄さんが、オルグって言う化け物と戦って敗けた時、死んじゃったんじゃ無いかって、目の前が真っ暗になった。兄さんが、私の目の前から永久に居なくなってしまう……ッて……凄く怖かった……あんな思いは……もう……したく……無いよ……」

 

 そう言いながらも、祈は肩を震わせ泣いている様だった。

 陽は、やり切れない気持ちに支配された。

 

「…………でも、兄さんは戦うんでしょ? オルグが居なくなる迄……」

 

「……そうだな……」

 

 呟く様に言った陽に対し、祈は怒った様に立ち止まる。

 

「でも…⁉︎ 今のオルグを倒しても第二、第三のオルグが出て来たら、また兄さんが戦うの⁉︎ もし、そうなら兄さんの人生はどうなるの⁉︎ いつ死ぬか分からない戦いの人生なんて……

 あんまりじゃない、惨めじゃない‼︎」

 

 祈の言う通り、誰かを守る戦いに身を投じるなんて自己犠牲的で聞こえは良い……美しい犠牲だ。

 だからと言って、自分が死ねば祈は独りぼっちになってしまう。自分の為に兄は死んだ、と言う割り切れない後悔を背負い、生きていく事になるだろう……。

 

「……例え、そうだとしても……僕は死なない……」

 

「何で、そう言い切れるの? 兄さんは神様じゃ無いでしょう⁉︎」

 

「祈が……待ってくれているからだ……」

 

 陽は真っ直ぐと見据えながら、言い切った。

 今迄、自分は挫けずにやって来られたのは、祈が後ろに居たからだ。祈を、どんな事があっても守って見せる……そう胸に抱いて来たからこそ、やって来られた。

 だから今回も……祈が笑って暮らせる世界となる為、自分が戦う。それが、ガオゴールドとして生きる事を決めた陽の覚悟だった。

 

「兄さん……本当に死なないって約束出来る?」

 

「ああ……今更言ったって無理かも知れないけど……僕を信じてくれ」

 

 陽は祈から目を離さずに誓う。祈を残して死なない……死なない覚悟を誓った。側から見れば甘ちゃんの戯言以外、何物でも無い。だが、甘ちゃんでも良い。

 ’’不可能な覚悟’’さえ貫き通しさえすれば、それは’’可能な覚悟’’となる。理想論だろうが何だろうが、陽は貫き通す決意を決めた。

 

「でも……大神さんだって行方不明になったんでしょう?

 兄さん一人で戦うなんて無謀よ……」

 

 祈の言葉に陽は口籠る。あの戦いの後、大神が姿を消した。

 テトムは、大神が姿を眩ますのは今に始まった事じゃ無い、と言っていたが、彼女本人が心配しているのは明白。

 心配なのは陽も同様である。大神は、陽にとって大切な仲間である以上に、頼りになる存在だ。

 彼の身に何かあったのか……陽の胸に不安が過ぎる。

 その際、陽の左手首のG -ブレスフォンが唸り出した。陽は、すかさずブレスフォンを取る。

 

 《陽、大変よ‼︎ オルグ達が現れたわ‼︎ 場所は……》

 

 テトムの言葉に、陽は頷く。

 

「分かった‼︎ 直ぐに向かう‼︎」

 

 そう返すて、陽は祈に向き直り「先に帰ってて」と告げるや否や、走り出す。走り去る兄の背に祈は……

 

「兄さん、気を付けて‼︎」

 

 そう叫ぶのが精一杯だった。陽は無言のまま、背中越しに親指を立てる。残された祈は1人、涙を流す。

 

「待っているだけなんて……辛いよ……」

 

 誰に言う訳でもなく、祈は無力な自分を呪った。自分にも’’力’’が欲しい。陽を助けれるだけの力が……。

 

 

 

「さァ、オルゲット達‼︎ 暴れるのよ‼︎」

 

 ツエツエの指揮に従い、オルゲット達は暴れ回った。

 場所は幼稚園……子供達は、突然の襲来に逃げ回るばかりだ。保育士の若い女性は人質となった子供達がパニックとならない様に努めながら、ツエツエを説得する。

 

「お願いです! 子供達は解放して下さい‼︎」

 

 しかし、ツエツエはそんな彼女の訴えに耳を貸さない。

 

「そうは行かないわ‼︎ あんた達は、あいつをおびき寄せる餌よ‼︎ 死にたくなかったら、大人しくする事ね‼︎」

 

 ツエツエが、杖を保育士の首筋に突き付けながら一喝する。

 

「よォ、ツエツエ……なんか俺達、いよいよ下っ端扱いだよな……」

 

 ヤバイバは、今の自分達の状況をボヤく。

 

「皆まで言わないで、ヤバイバ……‼︎ 今だけよ、今だけ……何時迄も、このままで終わるもんですか‼︎」

 

 ツエツエは若干、狂気を孕んだ目で凄む。その際、表が妙に騒がしくなった。

 

「あ、何だアレ⁉︎」

 

「スッゲー、カッケー‼︎」

 

 園児達が騒ぎ始める。ツエツエは窓から外を見ると、オルゲット相手に善戦する金色のマスク……。

 

「来たわね……‼︎」

 

「おう……‼︎」

 

 ガオゴールドの存在を認知した2人は、運動場へと飛び出す。

 

「オホホホ‼︎ 待ってたわよ、ガオゴールド‼︎ 」

 

「ヒャハハハ‼︎ よくも今まで、コケにしてくれたな‼︎」

 

「……また、お前等か……懲りないな……」

 

 ガオゴールドは呆れた様に呟く。彼等は決して弱くないが、この短期間で四鬼士やガオキング等との戦いを経たゴールドからすれば最早、しつこい雑魚にしか見えない。

 

「あー! その態度‼︎ さては俺達を馬鹿にしてるな⁉︎」

 

「馬鹿にはしてない……してないけど……人の迷惑になる様な真似はするな‼︎ 狙うなら、僕を狙えば良いだろう?」

 

「クゥ〜〜‼︎ やっぱり馬鹿にしてるな‼︎ 俺達は、お前の所為で今じゃ、オルグ内で窓際に追いやられてしまったんだ‼︎

  どうしてくれる⁉︎」

 

 いつに無くヒガミっぽく怒鳴るヤバイバ。ハッキリ言って逆恨みでしか無いが……。

 

「ふふふ……そんな余裕で居られるのも今の内よ、ガオゴールド‼︎ 今日こそ、アンタを倒して返り咲いてやるわ‼︎

 行くわよ、ヤバイバ‼︎」

 

「ガッテン‼︎」

 

 ツエツエが叫ぶと、ヤバイバもナイフを構え襲い掛かって来た。それに、オルゲット達も続く。

 

 

「ドラグーンウィング‼︎」

 

 

 ガオゴールドも破邪の牙、ドラグーンウィングを展開させて迎え撃つ。だが、力を付けたゴールドに、オルゲット達等、敵では無い。次々に打破されていく。

 

「今日は、其れだけじゃ無いわ‼︎ サァ、行くのよ! 強化オルゲット達よ‼︎」

 

 ツエツエが杖を振るうと今度は、コブが僅かに肥大化したオルゲットが襲来した。

 

「そいつ等は、ただのオルゲットじゃ無いわ‼︎ 純度の高い邪気を吸収し、パワーアップした個体達よ‼︎」

 

 迎え撃ちながら、ガオゴールドは納得する。

 なる程……確かに強さが違う。しかし、ゴールドは、強化オルゲット達の攻撃を掻い潜り、ガオサモナーショットを構えた。

 

 

「ガオサモナーブレット‼︎ 全弾解放‼︎」

 

 

 すると込められたエネルギーが一気に放出され、強化オルゲット達を吹き飛ばして行く。

 あっという間に、強化オルゲットも普通のオルゲットも倒されてしまった。

 

「…え、もう終わり?」

 

「…新記録だな…こりゃ、ヤバイば…」

 

 幾らなんでも、もう少し善戦すると思っていたが……こう

 も呆気なく倒されると、かえって清々しい……。

 

「…さて、後はお前達だな…?」

 

 最早、手慣れた様に一掃してしまうガオゴールド。ツエツエは悔しげに地団駄を踏む。

 

「キィ〜〜‼︎ どうして、何時も何時も敗けるのよ‼︎」

 

 

 〜やれやれ、何をしているの……貴方達は……〜

 

 

 突然、鬼門が現れたかと思えば、中から見慣れない女性が姿を現した。見た目は人間の女性だが、頭にはオルグを象徴する角がある。

 

「お初にお目に掛かりますわ……私、水のヒヤータと申します……以後、お見知り置きを……」

 

 ヒヤータは穏やかに微笑みながら挨拶する。だが、その柔和な態度とは裏腹に、何やら底知れぬ禍々しさを感じた。

 

「お前も、オルグなのか⁉︎」

 

 ガオゴールドは、ドラグーンウィングを向けながら威嚇した。

 

「クス…そんな身構えなくとも……今は貴方に危害を加えるつもりはありませんわ」

 

「信用出来ないな」

 

 ヒヤータの態度に反し、ガオゴールドは至って警戒心を露わにしたままだ。

 

「ふふ…中々の胆力…。でも、まだ青さが抜け切れない…何れにしても、若い芽は早めに積んでおくのが吉かしらね?」

 

「何?」

 

「今日、貴方の前に来たのは飽くまで挨拶代わり……そして、貴方に合わせたい者を連れて来ましたのよ」

 

 それだけ呟くと、ヒヤータは指をパチンと鳴らす。すると鬼門の中から、別のオルグが現れた。

 その姿に、ガオゴールドは戦慄する。狼を思わせる漆黒の顔、上から下まで黒尽くめな全身、極め付けは黒い三日月ににた武器を携えた不気味な出で立ちの男だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「紹介しましょう。私の配下、”狼鬼’’ですわ」

 

 

 ヒヤータの紹介に、狼鬼の目は妖しく紅い輝きを放った。

 

 

 〜何という事でしょう⁉︎ 新たな四鬼士ヒヤータに伴われて姿を現したのは、先の戦いでガオレンジャーを大いに苦しめたデュークオルグ、狼鬼‼︎ 果たして、ガオゴールドは如何にして立ち向かうのでしょうか⁉︎〜

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