帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
今年も『帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー』シリーズを、宜しくお願い致します‼︎
「ああ……なんて事……」
ガオズロック内にて、テトムが泉を前で慟哭していた。
ガオシルバーが姿を消したと同時に、狼鬼が姿を現した。
これが意味をするのは、一つしか思い浮かばない。ガオシルバーが再び、狼鬼と化してしまったのだ。
かつて、ガオレンジャーの前に姿を現したデュークオルグ、狼鬼。その圧倒的な力の前に、ガオレンジャー達は幾多と苦戦を強いられた。その狼鬼が今度は、ガオゴールドの前に立ちはだかるなんて……。
「あれは、ガオシルバーだよ……!」
テトムの隣に立つこころが呟いた。彼女も厳しい表情を浮かべている。
「分かるの?」
「うん…オルグの邪気に混じって人間の気を感じる……でも、既に身体の大半が邪気に浸食されている…」
こころは、狼鬼を見据えながら言う。あの狼鬼から普通では尋常では無い程の邪気が滲み出ている。
恐らく、かなりの高濃度の邪気を注ぎ込まれたのだろう……。
「このままじゃ、ガオゴールドは……‼︎」
「……まって……⁉︎」
こころは何かを察し、目を閉じる。
「別の気配を感じる……」
ソウルバードの化身であるこころは、人並み以上にオルグの邪気を感じ取る事が出来る。その力は、かつてのソウルバードを軽く凌ぐ。
「流石ね……お母さんを超えているわ……」
テトムは驚いた様に彼女を見た。この前の戦いの後、こころ自身が話してくれた。自分は、かつてガオレンジャーと戦った……ガオレッドが「ピヨちゃん」と呼んで可愛がっていたソウルバードが、ガオレンジャーのピンチを救う為、力の一部を地上に残し、オルグの目を欺く為に人間に姿を擬態していた事を……。
「……誰なの? 誰が来るの?」
「……分からない……でも凄く強い力……」
テトムの問いに対し、こころは遠い目で見ていた……。
「クックック……全ては計画通りだ……」
鬼ヶ島の地下室にて、ガオネメシスは鏡に映る狼鬼を見て含み笑いを上げる。
「ヒヤータめ……ゴーゴを殺した時は流石に肝が冷えたが……狼鬼を手勢に加えていたとはな……」
〜本当に、上手く行くのだろうな…?〜
突如、鏡に髑髏が浮かび上がり、ガオネメシスに語り掛けた。
〜ガオゴッドが小賢しい事に我等、オルグ達の動きを制限してしまいおった……あまつさえ、ガオゴールドが想像以上に力を付け始めておる……我等、オルグにトドメを刺し得る存在となるのでは?〜
「心配するな、ガオゴールドに狼鬼は討てぬ……奴は甘過ぎる……」
ガオネメシスは確信がある様に言った。
「ガオゴールド……奴の強さの根源は他者を助けようとする’’自己犠牲'‘によるものだ。それが奴の強さであり……弱点でもある……相手が敵であろうと、それが気を許した存在なら非情に徹する事が出来ない……奴は戦士としては失格だ」
ガオゴールドの人柄を淡々と、酷評するガオネメシス。
時として戦士は勝利の為なら必要以上に残酷かつ狡猾な戦法を取らなければならない時もある。
だが悲しいかな、ガオゴールドは飽くまで人としての当たり前な他者を思いやる’’慈しみ’’を要点に置く余り、敵であろうと情けをかけてしまうだろう。それが、仲間であるなら尚更である。
〜万が一、狼鬼を倒してしまった場合は、どうする?〜
しかし、謎の声の主は未だに懸念を抱いている様子だ。すると、ガオネメシスは振り返る。
「その時は、俺が自ら始末する迄だ。その為に、俺が居るのだからな……」
鏡に映るガオネメシスのヘルメット、肩当てには今迄には見られ無かった装着があった。其れは、まるで禍々しい形をした犬の顔を模している。
「ガオレンジャーは総じて、俺が滅ぼしてやるさ……この’’叛逆の狂犬’’ガオネメシスがな……」
ガオネメシスは高らかに宣言した。彼の背後には水晶の中で眠るガオレンジャー達……物言わぬ彼等を尻目に、叛逆の狂犬はひたすらに笑い続けた。
ガオゴールドと狼鬼は相対する。目の前に現れた漆黒の狼に似たオルグ……彼から放たれる邪気に、そのガオゴールドは戦慄する。
「(……何て凄い邪気だ……こいつは今迄のオルグとは違う……‼︎)」
思わず息苦しさを催す程に、高濃度の邪気……それだけでは無い。このオルグからは’’意思’’を感じられない。まるで機械と相対している様だ。
「オホホホ‼︎ コイツは、アンタが倒してきたオルグとは違うわよ‼︎ さあ、どうするかしらねェ⁉︎」
ツエツエは挑発気味に嗤った。確かに、その通りだ。狼鬼を相手にして言える事は一つ……得体の知れない不気味さ……それしか無い。
だが、退く訳には行かない。例え相手が誰であろうと……。
「狼鬼……貴方の力を見せてあげなさい」
「承知しました、ヒヤータ様……」
狼鬼はヒヤータに従う様に淡々と応え、武器を構える。それに呼応して、ガオゴールドもドラグーンウィングを構えた。
「(……なんだ、この胸騒ぎは……⁉︎)」
ガオゴールドは狼鬼に妙な感覚を覚え、困惑した。だが、そうしてる間に狼鬼は飛び掛かり、自分の眼前に迫る。
「……クッ⁉︎」
先手を取られた。ガオゴールドは、ドラグーンウィングで防ぐが三日月剣の余りの重さに驚愕する。
「…なんて重い斬撃だ…‼︎」
辛うじて防いだものも、狼鬼は続け様に三日月剣による連戟を繰り出して来る。その速さは目にも止まらない。
「…しかも…速い‼︎」
何とか斬撃を受け切るが、反撃の余裕さえ見つからない。この狼鬼、かなりの強敵だ。
「く……手強い‼︎」
今迄に無い強敵の出現に、ガオゴールドは苦戦を強いられて
しまう。だが、狼鬼は焦るガオゴールドに関係無く、攻撃を繰り出して来る。
「チィ……ガオサモナーショット・連弾発射‼︎」
そう言って、ガオサモナーショットを構え、連発で光弾を発射するガオゴールド。が、尽く躱されてしまう。
「クス……手こずっているわね……狼鬼には、貴方は倒せなくてよ……」
ヒヤータは優雅な様子で、ガオゴールドを挑発する。このままでは勝てない。そんな際、狼鬼はヒヤータに言われるがままに動いている事に気付く。
「(まさか、狼鬼はあの女に操られているのか⁉︎ ならば‼︎)」
意を決して、ガオゴールドは銃口をヒヤータに向け発射した。すると狼鬼は、ヒヤータを庇う様に動く。
「(やっぱり‼︎)」
思った通り、狼鬼はヒヤータが直接、コントロールしている様だ。
「ふふふ、どうやら気付いたようね……今や、狼鬼は私の支配下にありますのよ……だから、私の忠実に僕として働き、私の危機には盾となる様に動く……何故かしらね?」
ヒヤータは笑いながら言い放つ。ガオゴールドは、狼鬼を見据える。やはり、狼鬼からは妙な感覚が醸し出されてならない。
「教えてあげましょうか? 狼鬼の正体が誰なのか? 貴方にとって、親しい間柄ですわ……そう、狼鬼の正体はガオシルバー……貴方が、大神月麿と呼んでいた男よ……」
「な……」
ガオゴールドは絶句する。目の前で敵として立ち塞がるオルグが、ガオシルバーだって……?
「馬鹿な……有り得ない‼︎」
「クスクス……有り得ないかしらね? 残念ながら、これは現実よ。ガオシルバーを捕らえ、洗脳した結果なのよ。我等、オルグに忠実にして最強の戦闘兵器、狼鬼に生まれ変わったのよ……。貴方を倒す為にね」
「そ、そんな……! 嘘だ……嘘だァァァ⁉︎」
思わず、ガオゴールドは武器を落とし掛ける。ガオシルバーが、オルグの尖兵にされてしまうなんて……。悪夢なら覚めて欲しい……ガオゴールドは深い絶望感に囚われた。
「(クス……戦意を喪失した様ね……私の計略、此処に達成したり……)」
ヒヤータは密かに、ほくそ笑む。これこそ、ヒヤータが仕掛けた狡猾な作戦……狼鬼の正体が大神と知れば、もうガオゴールドは彼と戦う事は出来ない。かつて、ガオゴールドはガオシルバーを庇い武器を捨てた事を彼女は知っている。
仲間に武器を向ける事は彼には出来ない……そう言った割り切れなさを抱いている事を読んだ上での作戦だ。
彼の抱く優しさを逆手に取った……知略を武器とするヒヤータならではの作戦である。皮肉にも、かつてガオシルバーが危惧していた「ゴールドの優しさによる危険性」が現実の物となってしまった。
「大神さん! 目を覚まして下さい‼︎ 貴方は、ガオシルバーでしょう⁉︎」
ガオゴールドは懸命に呼び掛けるが、狼鬼は一言も発さない。それ所か、狼鬼の攻撃は激しくなる一方だ。
「無駄よ、もう彼は自分が人間であった事すら覚えていない。前回の様に記憶とのズレに苦しむ事も無い…ただ、私達オルグの為に戦う操り人形となったのよ…諦めなさい…」
ヒヤータは冷たく吐き棄てる。もう自分の知る大神は居ない……オルグに付き従うだけの戦闘兵器と化してしまったのか……そんなの……理不尽過ぎる。
「アンタ、テンマ様に勝る程のサドだな……」
ヤバイバは、ヒヤータに対しての率直な感想を述べた。元々、腹に一物抱えている様なタイプには見えたが、これ程とは思わなかった。
「クス……褒め言葉として受け取っておきますわ……」
ヒヤータは、さらりと流す。元々、彼女はオルグ……地位もハイネスに次ぐデュークオルグである。その立場まで昇り詰めたのも単に、その切れる頭脳と必要とあらば、仲間でさえ簡単に切り捨てる合理的な思考があってこそだった。
「さて……ガオゴールド。貴方に一つ取り引きを持ち掛けましょう……私達、オルグに付き従うと言うなら、これ迄の無礼を水に流してあげましょう……」
「な…なんだと?」
「私達の配下として生きろ、と言ったのよ…安心なさい、私もテンマ様も広い心を持っています。悪い様にはしないわ」
それは王手寸前に迄、采配を進めた彼女なりの余裕だった。つまり、その気になれば、この場でガオゴールドを始末する事は容易である……されど彼女は、ガオゴールドの精神に揺さぶりを掛けた。
だが、ガオゴールドは屈さない。かつての自分なら、甘言に惑わされてしまったかも知れない。だが、今の自分は違う。
「断る‼︎ お前達の軍門になんか降らない‼︎」
「そう…残念……ツエツエ、ヤバイバ‼︎」
ヒヤータが命令を下すと、ツエツエが保育士を、ヤバイバが園児一人を捕まえて出て来る。
「なんの真似だ‼︎」
「クスクス……私は獲物を仕留める際は、周到に罠を仕掛けておくの…さァ、ガオゴールド? この2人の命と貴方の命、どちらを差し出しまして?」
卑劣……ガオゴールドは悔しそうに歯軋りする。だが、無関係な人達を見殺しには出来ない。ガオゴールドは手を上げた。
「銃を捨てなァ‼︎ さもなきゃ、このガキの首を掻っ切るぜ⁉︎」
「うわァァァん、怖いよォォ‼︎」
人質にされた園児が泣き叫ぶ。ガオゴールドはガオサモナーバレットから手を離した。銃は下に落ちて……大地に当たる瞬間、ガオゴールドは銃を蹴り上げ再び握り直す。
そして、ツエツエとヤバイバを狙撃した。
「グアッ⁉︎」
「アアッ⁉︎」
突然の奇襲に2人は悲鳴を上げる。此れには流石のヒヤータも驚いた様に目を見開く。
「アラアラ…」
ガオサモナーバレットの銃撃により、解放された2人。ガオゴールドは叫ぶ。
「今の内です、早く逃げて‼︎」
ガオゴールドに急かされて保育士は園児を抱えて逃げ出す。
だが、ヒヤータは狼鬼に命令を出した。
「……狼鬼、ガオゴールドを殺しなさい……」
「…御意…」
狼鬼はヒヤータの命令に従い、三日月剣を持って飛びかかって来た。ツエツエとヤバイバに気をやっていた為、狼鬼に気付かなかったガオゴールドは出遅れてしまう。
「…死ね、ガオゴールド…‼︎」
「…クッ…‼︎」
三日月剣がガオゴールドの首筋を捉え、今まさに斬り落とそうとしたその刹那……。
ガキィン…と何かが三日月剣とぶつかり合い、弾かれてしまった。足下には紫色の布で柄を覆った小刀が突き刺さっている。
「な…誰だ⁉︎」
「そこまでじゃァ‼︎ 」
やたらと大きな声が響き渡る。声の主を探すと、保育園の屋根の上から一際巨体な男が見下ろしていた。
「性懲りも無く、悪さばかりしとるんかァ‼︎ 悪い鬼は、ワシが成敗してくれるわ‼︎」
そう言って男は飛び降りて来る。すると、足下に転がっていた小刀を懐にしまった。
男の服装もまた異様に古めかしく、さながら山伏みたいな格好だ。
「あ、貴方は…⁉︎」
「ワシか⁉︎ ワシの事なんかより、あの鬼共を蹴散らすんが先決じゃ‼︎ さァ、行くぞ‼︎」
ガオゴールドが止める間も無く、謎の男は駆け出して行く。
「何なの、あれ…?」
「さァ…ただの馬鹿だろ? それしか思い浮かばん…」
大した武装も無く、オルグ相手に突っ込んで来る……側から見れば愚者以外、何者でも無い。
「……来る者は拒まず……オルゲット‼︎」
「ゲットゲット‼︎」
ヒヤータは多数のオルゲット達を嗾けて来た。オルゲット達は武器で男を殴り付けるが、男は効いてない様子だ。
「なんのこれしき‼︎ フンヌゥゥ‼︎‼︎」
男はオルゲット達を纏めて抱きかかえると、渾身の力で締め上げた。
「げ…ゲットォォォォ……‼︎‼︎」
オルゲット達は全員、謎の男によって倒され泡になっていった。
「ば、馬鹿な……‼︎ ただの人間に……‼︎」
ツエツエは慌てふためくが、ヒヤータは冷静だ。
「どうやら、唯の人間じゃ無いですわね。何者?」
ヒヤータの問いかけに対し、謎の男はニヤリと笑う。
「問われて名乗るも痴がましいが…問いには応えて返さにゃならん……‼︎ ならば、一つ名乗ってくれる‼︎」
そう言うと男は左腕を掲げた。その腕には、熊を模したのG−ブレスフォンが装着されていた。
「ガオアクセス‼︎ サモン・スピリット・ジ・アース‼︎
はァァァ‼︎‼︎」
突如、男は発光しだす。すると、光が収まってくれば中心に立っていたのは、灰色の熊に似たガオマスクを装着したガオレンジャーが居た。
「豪放の大熊‼︎ ガオグレー‼︎」
謎の男は自らを、ガオグレーと名乗った。
「まさか⁉︎ 新しいガオレンジャーが居たなんて…⁉︎」
誰よりガオゴールドが驚いた。まさか、ガオレンジャーがまだ居たとは知らなかったからだ。
「テトム、あの人が’’力を持った’’者だよ…」
こころは泉に映るガオグレーを指して言った。一方、テトムはガオグレーから目が離せないでいた。
「さっき、あの人が投げた小刀は、ムラサキおばあちゃんの守り刀……何で、あの人が持っているの?」
ガオグレー……今の所、彼が何者かは分からないが、少なくとも敵では無い事は分かった。
今となっては、ガオゴールドとガオグレーに賭けるしか無い。
「(頼んだわよ……‼︎)」
テトムは強く祈った。
「さァ、来い‼︎ ワシが相手じゃァァ‼︎」
ガオグレーは拳を握りしめ威嚇する。
「ふむ……」
ヒヤータが扇子を振るうと、オルゲットが多数と召喚された。オルゲット達は一斉に向かって来る。
「グリズリーハンマー‼︎」
ガオグレーが手をかざすと、熊の顔を模した巨大な大槌が握られていた。
「どりゃァ‼︎‼︎」
ガオグレーは、軽々とグリズリーハンマーを振り回してオルゲット達を蹴散らして行く。
「す、凄い……‼︎」
ガオゴールドは素直に感心するしか無い。力もさる事ながら、戦闘力はガオシルバーや自分を上回っている。
「ガオゴールド、死ねェ‼︎」
油断した時、狼鬼が再び迫って来た。
ガオゴールドも迷って居られない。狼鬼にドラグーンウィングで応戦して行く。
「これは……夢……?」
保育士の女性は目の前で起こる現実離れした事象に付いていけなかった。
「スッゲ〜、やっちまえ〜‼︎」
「頑張れ〜‼︎」
子供達は恐怖を忘れ、口々に応援を始める。
「せいやァ‼︎」
ガオグレーはまるで玉でも転がす様に、オルゲット達を薙ぎ倒して行く。だが、オルゲットの数は一向に減らない。
「えぇい、面倒じゃ‼︎ 纏めて倒しちゃる‼︎」
そう言うと、ガオグレーはグリズリーハンマーに宝珠をセットする。そして、ハンマーを回転していき……。
「邪気…爆砕‼︎ 破邪…剛力衝‼︎!」
勢いよくハンマーを振り下ろした。だが、ハンマーを中心から衝撃波が起こり、オルゲット達は全員、吹き飛ばされてしまった。
「ぬぅ……まだまだ、使いこなすのが難しいわい……力を入れ過ぎて、建物を壊せんからのゥ……」
ガオグレーは不満そうに、グリズリーハンマーを下ろした。
ガオゴールドも危うく吹き飛ばされそうになるが、お陰で狼鬼と距離を取る事が出来た。
「…なんて、無茶苦茶な戦い方なんだ……‼︎」
力を重視したガオグレーの戦い方に、ガオゴールドも流石に開いた口が塞がらない。
一方、ヒヤータは水のバリアーを張り衝撃波を防いでいた。
「……危ない所だったわね、保険を掛けといて正解だったわ……良いでしょう、今回は引いておくわ。狼鬼、行くわよ…」
そう言うと、ヒヤータは狼鬼を伴い、鬼門の中に消えて行った……ツエツエ、ヤバイバも慌てて追い掛ける。
「あんた達‼︎ 次にあった時が最後よ‼︎」
「首を洗って待ってやがれ‼︎」
そう言って、オルグ達は消えて行った…。何とか被害は最小限に抑える事が出来たが……。
「ぬぅ…逃げ足の早い奴らじゃァ……」
ガオグレーは倒し切れなかった事に不満そうに唸る。ガオゴールドは、彼に駆け寄る。
「あの……危ない所を助けて頂いて、ありがとうございます……」
「ん…? はっはっは! 気にするな、成り行きじゃ‼︎ しかし、お前さんも中々じゃのう‼︎」
ガオグレーは豪快に笑いながら返して来る。その際、保育士達が駆け寄って来た。
「あの…さっきのは一体…⁉︎」
「ねェねェ、さっきやったアレ、どうやんの⁉︎」
「テレビだよ、テレビの撮影だよね‼︎」
保育士や子供達は口々に話し掛けて来るが、ガオゴールドは回答に困ってしまう。
「え…えっと…」
「むぅ…何か騒がしくなったのぉ….」
ガオグレーも急な騒ぎに戸惑っている様だ。その時に、ガオゴールドのヘルメット内に、テトムの声が響いた。
《ガオゴールド‼︎ 今は、その場から離れて‼︎ 彼も連れて来てね‼︎》
テトムは慌てている様子だ。確かに、こんなに人の目を引いている訳には行かない。
「ガオグレー…さん‼︎ 悪いけど、僕に付いてきて下さい‼︎」
「ぬ? 何処に連れて行くんじゃ?」
「良いから‼︎」
ガオゴールドは訝しがるガオグレーを促しながら走り去って行った。残された園児達、保育士は不思議そうに首を傾げる。
「……結局、何だったのかしら?」
一方、ガオネメシスは鏡に映るガオグレーの姿に興味を示していた。
「あの男は……まさか生きていたとはな……」
ガオネメシスは鏡の横にある3つの宝珠を手にした。
「クク…久方ぶりにお前達を使う事になるかもな…」
そう言って、ガオネメシスはセピア色に輝く3つの宝珠を天にかざした。宝珠のセピアは鈍く輝き、不気味な光沢を放っていた……。
〜狼鬼に苦戦する、ガオゴールドの前に現れた新たなガオの戦士ガオグレー‼︎ ガオネメシスの持つセピア色の宝珠が意味をするのは、何なのでしょうか⁉︎〜