帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest18 響きの調べ 後編

「クッ…ガオの巫女め…‼︎」

 

 ガオネメシスは苦しげに呻いていた。普段の余裕がある態度をかなぐり捨て、酷く焦燥した様子だ。

 

「あの忌々しい歌を……‼︎」

 

 苛立ちながら、ガオネメシスはテーブルに拳を叩きつける。

 

 

 〜酷く取り乱しておるな、ガオネメシスよ…〜

 

 

 鏡から低い声が聞こえて来る。ガオネメシスは鏡に向けて威嚇した。

 

「黙れ…‼︎ くそッ…響きの調べ等で、この俺が取り乱すとは……忌わしいッッ‼︎!!」

 

 喚く様に、ガオネメシスはテーブルを蹴り倒した。

 

 

 〜我々からすれば響きの調べ等、耳障りな雑音でしか無い。

 それに苦痛を覚えると言うならば、貴様の’’呪い’’も極まれり、と言った具合か〜

 

 

「黙れと言ってるんだ‼︎」

 

 

 今度は鏡に拳を叩きつけた。鏡は割れ、地べたに音を立てて転がる。だが、鏡からは変わらず声が聞こえ続けた。

 

 

 〜貴様の中にまだ残っている、と言う事だろう……’’心’’がな。それを捨て去らぬ限り、’’呪い’’は貴様を苦しめるだろう……。苦しむが良い、ガオネメシスよ……貴様の言う’’世界への叛逆’’を成し遂げるその時まで、苦しみ足掻き続けるが良い……〜

 

「チィッ‼︎‼︎」

 

 ガオネメシスは怒りに任せ、鏡の欠片を踏み砕いた。

 何度も何度もグリグリ踏み躙り、鏡が粉となるまで……。

 

「俺は…ガオネメシス…世界に叛逆する者…世界を復讐の牙で噛み砕く……狂犬だァァァ‼︎‼︎!」

 

 そう吠える様にガオネメシスは慟哭した。右手から鏡を砕いた際に手を切ったらしく、血が滴り落ちて来る。その血は……生物の証である’’赤"では無く、毒々しい’’緑’’だった……。

 

 

 

「(お願い、シロガネ……目を醒まして……)」

 

 ガオズロック内にて、テトムは響きの調べを歌い続けた。

 彼女は信じていた。狼鬼の中にまだ大神の’’心’’が残っている事を….1000年以上、オルグとして生きて来た彼は人としての’’心’’を失っていなかった。だから、今もまだ大神月麿としての意思は失われていない筈だ。

 彼が響きの調べに反応し苦しむのが確たる証拠だ。

 かつて、祖母のムラサキが教えてくれた。真のガオの巫女が歌う響きの調べは、邪気を浄化する力があると言う……。

 

『テトム…』

 

 突如、声が聞こえた為、テトムは歌を止め振り返る。すると、其処には懐かしい姿……風太郎少年が居た。

 

「荒神様……!」

 

 テトムは目を見張る。風太郎少年は、ガオゴッドの化身だからだ。風太郎は悲しそうに言った。

 

『ゴメン…僕は今、動く事が出来ないから、風太郎として意思を送り込んだんだ…。シロガネは前回以上に邪気に取り込まれてしまってるみたいだ。僕の声も届かない程に……』

 

「そんな……‼︎」

 

 ガオゴッドの力を持ってしても、大神を元に戻す事は叶わない。なら、どうすれば良いのか?

 

「私達では、シロガネを救えないのですか⁉︎ どうすれば…⁉︎」

 

『君達だけじゃ無理だ。“原初の巫女’’の力を使えば或いは……』

 

「原初の……巫女?」

 

 風太郎の口から吐き出された用語に、テトムは訝しがる。

 

『テトムやムラサキの前……先々代の、ガオの巫女の事だよ。歴代の巫女の中で最も力があり、現在のガオの戦士達の基盤を作ったとされている……彼女は、古代のオルグの邪気を祓い、手を下す事なくオルグを滅ぼせたと言われてる……』

 

「そう言えば昔……ムラサキおばあちゃんから聞いた事があります……私の遠い御先祖様に、強い力を持った巫女が居た、と……」

 

 まだ、テトムが幼い頃……先代の巫女にして祖母ムラサキから聞かされた話……まだ、人間の文明の成り立ち始めた頃に地上を跋扈し始めたオルグ達を一掃し、人間達に安息をもたらした巫女が居た、と言う昔話……。

 

「ですが….大昔に存在した巫女が、今も生きている筈が……」

 

 テトムは絶望した。テトムを始め、ガオの巫女は長命である。しかし、少なくとも2000年以上の昔に生きていた巫女が現代まで生きているとは到底、思えない。

 狼鬼として封印されていた大神や、鬼地獄に幽閉されていた佐熊の様な例外を除けば、古来の人間に悠久の時を生きている筈が無いのだ……。

 

『彼女は……生まれ変わっている……』

 

「え?」

 

 風太郎の発した言葉に、テトムは耳を疑った。

 

『既に原初の巫女の魂は転生し、現代に甦っている。そして、その力も少しずつ目覚め様としている……』

 

「その人は今⁉︎」

 

 テトムは期待を寄せて尋ねた。もし、その巫女が現代に甦っているなら……大神を救う事も可能の筈だ。

 

『……誰か迄は分からない……でも、テトムがよく知る少女だよ……』

 

 風太郎の言葉に、テトムは勘付いた様にハッとした。そして、彼女の脳裏に1人の少女の顔が浮かんだ……。

 

「(まさか…あの娘が⁉︎)」

 

 陽の妹、祈……。こころの話では、ガオゴールドの危機にガオゴッドを呼び寄せたと言う。現役の巫女であるテトムでさえ、ガオゴッド級のパワーアニマルを呼び寄せる芸当は出来ない。テトムは確信が言った様に肯いた。

 

 

 

 ガオゴールド、ガオグレーは驚愕する。眼前にて闘う狼鬼の身体から邪気が目に見える迄に溢れ出ていた。

 明らかに先程とは様子がおかしい。

 

「グォォォッ‼︎‼︎」

 

 狼鬼は見境なく攻撃を繰り出して来た。だが、力は先程の比ではなく正に狂戦士と化している。

 

「く…大神さん‼︎ 正気に戻って‼︎」

 

 諦めずに呼び掛けるが、狼鬼は構う事なく暴れ回る。

 

「いかん‼︎ 狼鬼の身体が……‼︎」

 

 ガオグレーが指差すと、狼鬼の身体はみるみる間に変化して行く。角と髪は長く伸び、全身の鋭いトゲがよりシャープとなった。目を赤くギラつかせたその姿は鬼と遜色無い姿だ。

 

「奴等の言う通り最早、今の狼鬼には自我が無いのかも知れんのゥ……」

 

 

「ククク…そう言う事だ」

 

 

 声と共に鬼門が出現し、中からガオネメシスが現れた。

 

「ガオネメシス‼︎」

 

「貴様が、ガオグレーか……シロガネとは同郷らしいが嬉しかろう? かつての仲間と再会出来てな」

 

「き…貴様ァ…‼︎」

 

 下衆染みた挑発に、ガオグレーは怒る。ガオゴールドは直感した。大神が狼鬼となったのは、こいつの仕業に違い無い……。

 

「何故だ‼︎ 何故、大神さんをこんな姿に…⁉︎」

 

「俺は何もしていないさ……狼鬼の姿となったのは、シロガネの内に抱える’’本質’’だ」

 

「本質……だと?」

 

 ガオゴールドは耳を疑った。あの姿が大神の本質だって?

 

「何も、シロガネに限った事じゃ無い。人間なんてものは皆、内に持っている。本能に従い唯々、暴れ回るだけの獣性……まだ、高度な知能を持つパワーアニマル共の方が知性があるじゃ無いか。人間は誰もが、一皮剥けば悍しい本性を露わにする。狼鬼は、その最たる姿と言う訳だ」

 

「……違う‼︎ 大神さんは、そんな人じゃ無い‼︎ 他の人だってそうだ‼︎ 確かに、人間は間違いを犯す‼︎ 仕方ない、人間は神じゃないんだから……でも! 間違いを間違いのままにせずに、良い方向に持って行こうとする人間だって居る! 僕は、そう信じてる‼︎」

 

 ガオネメシスの言葉を、ガオゴールドは否定する。しかし、ネメシスは馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに笑った。

 

「ハハハハ……綺麗事を抜かすな、小僧が。お前は人間の本性を知らないだけだ。例えばの話だが……殺されるだけに存在する人間を知っているか? そんな奴等は目の前で他人が殺されても恐れない、眉も潜めない、逃げようともしない。

 逆に、殺す奴等はまるで果物でも捥ぐかの様に、そんな人間の手足を切り落とし、頭を潰す。そして返り血に塗れた姿で笑うのさ……ハハハ、正に人間らしい姿だ‼︎

 お前も、そうだ‼︎ もし、目の前で妹が同じ目に遭わされていれば、そいつを同じ目に遭わせてやりたいと願うだろう……そして、見るに耐えない残虐な行為に及ぶさ!」

 

「う…嘘だ‼︎」

 

「ゴールド、耳を貸すな‼︎ 奴は、お前を動揺させようとしているに過ぎん‼︎」

 

 ガオグレーは、ガオゴールドに語り掛ける。だが、ゴールドは動揺していた。祈が、非道な目に? もし、そうなったら自分は平常で居られるか?

 

「フン…言葉に惑いが満ちているぞ…どうやら自覚していた様だな。この狼鬼の姿を見ろ‼︎ 自我も自制も無い、ただ本能赴くままに暴れ回るだけ…これこそが人間本来の姿だ‼︎

 人間もほんの何万年前までは獣そのものだった‼︎ しかし、彼等には悪意が存在しない、陽が登れば起きて月が登れば寝る獣と同一….だが、文明の発達と共に人間は要らぬ知恵を付け始めていったのさ! 人間は、それを進歩等とほざくが笑わせるな‼︎ 俺から言わせれば、それは’’堕落’’だ‼︎ 人間は自分で自分の姿を汚していった‼︎ 地球に蔓延る雑菌としてな‼︎

 お前は雑菌を守る為に戦うと言うのか? だとすれば、それは愚行だ! 」

 

 

「黙れッッ‼︎!」

 

 

 ガオネメシスの人間に対する侮蔑に満ちた酷評に、堪らなくなったガオゴールドは叫んだ。

 

「人間は、そんな生き物じゃ無い‼︎ 確かに文明の発達故に失った物はある…でも、変わらずに持ち続けている物はあるんだ‼︎ それは他者を慈しむ心……獣も人も誰かを慈しむ思いを変わらず持っている! 親は子を守る為、子は親を愛する為に戦うんだ‼︎ それを壊す資格なんか、この僕にも、お前にも無いんだ‼︎」

 

 ガオゴールドの言葉には強い思いが込められていた。人間も動物も血を分けた子供を、親を、仲間を命懸けで守ろうとする。

 それは何時の時代も変わらない。だからこそ、ガオドラゴン達は力を貸してくれた……ガオゴールドは、そう信じていた。

 

「……やれやれ、口で言っても分からぬか……ならば力で分らせてやろう……狼鬼‼︎」

 

 ガオネメシスは命令を下す。すると、狼鬼は大人しくなり笛を吹き出す。すると、何処からともなくガオウルフ、ガオハンマーヘッド、ガオリゲーターが姿を現した。

 

「ガオウルフ……‼︎」

 

 ガオゴールドは絶句した。地球を守る為に戦うパワーアニマル達が、オルグの手先となってしまったなんて……。

 

「お前が人間達の為に戦うなら、地球を守る為に生まれたこいつらを倒さなければ成らない! 魔獣合体‼︎」

 

 ガオネメシスの言葉に従い、ガオウルフ達は変形し合体する。だが、精霊王の顔は狼の口が閉じ頭からは鬼の如し角が生えていた。

 

 

 〜正義の狩人は主人が闇に呑まれた事に影響し、邪悪なる精霊の王へと変貌するのです〜

 

 

「誕生‼︎ ガオハンター・イビル‼︎」

 

 

 狼鬼はガオハンター・イビルに吸収されて行き、邪の精霊王は動き出す。

 

「ク……幻獣召喚‼︎」

 

 ガオゴールドも、ガオドラゴン達を召喚した。三体のレジェンド・パワーアニマル達は合体し、精霊の騎士王ガオパラディンとして相対した。

 それと同時に、ソウルバードがガオパラディンに融合しコクピットとしてガオゴールドを搭乗させた。

 

「これが、レジェンド・パワーアニマルか……1000年前は見た事が無いのう……」

 

 ガオグレーは、ガオパラディンの姿を見て盛んに感心していた。

 その為、ガオネメシスが姿を消していた事に気が付かなかった。

 

 

 

 ガオパラディンは、ユニコーンランスを勢いよく突き出すが、ガオハンター・イビルのリゲーターブレードで防がれてしまう。しかし、其れでもソウルバードの力で強化されているガオパラディンなら、ガオハンター相手でも苦戦を強いられこそすれど負けはしない。続け様に、ガオハンター・イビルがガオウルフが変形した左腕でパンチを繰り出すが、すかさずにグリフシールドで防御した。

 戦いは一進一退ながらも、比較的にガオパラディンが有利だ。ガオゴールドは決意した。相手が誰であろうと、敵として立ち塞がる以上は立ち向かわなければならない。

 その時、ガオパラディンのガオハンターの戦いに割り込む様に飛び込んで来る巨大な影……。

 

「こいつは⁉︎」

 

 ガオゴールドは驚愕する。それは、先の戦いで倒した筈のガオキング・ダークネスだ。確かに倒した筈だが、再び姿を現しガオパラディンの前に立ちはだかった。

 

「ハハハハ‼︎ ガオゴールド、今日が貴様の命日だ‼︎ 覚悟しろ‼︎」

 

 ガオキング・ダークネス内から、ガオネメシスの声がした。どうやら、ガオネメシスが搭乗しているらしい。

 

「行け、ガオキング・ダークネス‼︎ フィンブレードだ‼︎」

 

 ネメシスの命に従い、フィンブレードを振り下ろすガオキング・ダークネス。ガオパラディンはグリフシールドで防ぐが、ガオハンター・イビルもリゲーターブレードで斬り付けて来る。

 

「うわァァァ!⁉︎」

 

 前回の時以上に、ガオキング・ダークネスはパワーアップしている様子だ。今回は、ガオネメシスが搭乗している分、より的確な戦闘判断を取れるらしい。

 

「ハハハ、どうだ⁉︎ 闇の精霊王の前に貴様等、敵では無いわ‼︎」

 

 ガオネメシスの勝ち誇った様な笑い声が響き渡る。ガオキング・ダークネス、ガオハンター・イビルは両サイドからジリジリと近づいて来る。

 

 

「ああ⁉︎ ガオパラディンが⁉︎」

 

 テトムは見てられない、と言わんばかりに目を覆う。こんな時に限り、かつての頼れる大戦力であった精霊王達が敵に回ってしまうとは……。

 

「ムラサキの孫、心配いらん‼︎ パワーアニマルは、まだ全ては封じられとらん‼︎」

 

 ガオグレーは、そう言いながら4つの宝珠を取り出した。

 

「その宝珠は⁉︎」

 

 テトムは凝視した。レジェンド・パワーアニマルやガオシルバーのパワーアニマル以外で、生き残っていたアニマルが居たのか?

 

「ワシが現世に戻った際、ガオレンジャーとしての力を授けてくれたアニマル達じゃ‼︎ 百獣召喚‼︎」

 

  ガオグレーは、グリズリーハンマーの柄に宝珠をセットし大地に打ち付ける。

 すると、宝珠から光が放たれ……。

 

 

 ーグオオオォォォォッ!‼︎!ー

 

 

 天を裂かんばかりの唸り声と共に駆けつけて来る四体の巨躯……内、一体がガオハンター・イビルに突進を仕掛けて転倒させた。

 

 ーグォォォン‼︎ー

 

 それは巨大な灰色の熊だった。太い前足は、巨木さえも薙ぎ倒し岸壁の如し巨躯で悪鬼を捻り潰す……

 

 羆型のパワーアニマル、ガオグリズリー。

 

 続けての一体が、ガオキング・ダークネスに長い足で蹴りを入れた。

 

 ーゲロォォン‼︎ー

 

 それは巨大な深緑の蛙だった。長い脚を用い、山や谷を飛び越える跳躍力で悪鬼を蹴り倒す……

 

 ヒキガエル型のパワーアニマル、ガオトード。

 

 別の一体が複数の光弾を発射し、ガオキング・ダークネスに威嚇する。

 

 ーブォォォン‼︎ー

 

 それは巨大な茶色の猪だった。猛進し岩さえも破砕しながら、悪鬼を押し潰す……

 

 猪型のパワーアニマル、ガオボアー。

 

 また別の一体が、ガオパラディンを庇う様に前に立ち、鋭い牙をチラつかせながら威嚇した。

 

 ーシャォォン‼︎ー

 

 それは巨大な白い山猫だった。鋭い牙と爪を操り、悪鬼を切り裂き倒す……

 

 山猫型のパワーアニマル、ガオリンクス。

 

 集った計4体のパワーアニマル達は、悪の精霊王達に物怖じする事なく、果敢に勇んだ。

 ガオグレーは、リーダー格と思われるガオグリズリーに語り掛けた。

 

「済まんのゥ、ガオグリズリー‼︎ こんな急に呼び出して‼︎」

 

 それに対して、ガオグリズリーは気にするな、と言わんばかりに唸る。

 

 

「さァ、行くぞ! 百獣合体じゃ‼︎」

 

 

 ガオグレーの号令に合わせ、パワーアニマル達は合体を始める。ガオグリズリーの身体が変形し胸部を成し、ガオトードが脚を直立させて下半身を成す。

 更に右腕にガオボアーが、左腕をガオリンクスが構成すると、ガオグリズリーに頭部が出現し一体の精霊王となった。

 

 

 〜4体の山を守護するパワーアニマル達が合体する事で、力強い精霊の王が誕生します〜

 

 

「誕生‼︎ ガオビルダー‼︎」

 

 

 ガオパラディンやガオハンターとは一線を画す力強い逞しさを醸し出す精霊の闘士が立ち上がった。

 

 

 

「す…凄い‼︎」

 

 ガオゴールドは目を見張った。先程の戦闘振りもそうだが、精霊王に搭乗して闘う姿は正しく、歴戦の勇士そのものだ。

 

「チィ‼︎ 小賢しい奴め! ガオハンター、叩き潰せ‼︎」

 

 ガオネメシスの言葉に従い、ガオハンターは動き出す。リゲーターブレードをガオビルダーに突き出すが、ガオビルダーはすかさず躱す。

 

「トードキック‼︎」

 

 ガオビルダーは飛び上がり、長い脚でハイキックを繰り出した。ガオハンターは大きく仰け反り、後退する。

 それに合わせ、ガオパラディンもユニコーンランスを回転させガオキング・ダークネスを貫いた。

 

「小癪な……‼︎ フィントライデント‼︎」

 

 ガオキング・ダークネスの持つフィンブレードが変形し槍へと変化する。それに闇のエナジーを纏わせた。

 

『暗黒貫徹・ディアボロススティンガー‼︎』

 

 フィンブレードから突き出した闇のエナジーが放出され、ガオパラディンに襲い掛かる。

 

『百獣武装! ガオパラディン・アーチャー‼︎

 一撃必殺‼︎ サイクロンシュート!!!』

 

 すかさず、ガオワイバーンを百獣武装し、光の矢を穿つ。

 光の矢は闇のエナジーを蹴散らして行き、ガオキング・ダークネスに迫る。

 

「ク……‼︎」

 

 ガオキング・ダークネスらフィントライデントで光の矢を受け止めるが、既に手遅れだった。

 収束された光の矢はフィントライデントを弾き飛ばし、ガオキング・ダークネスを射抜いた。

 大きくよろめいた、その瞬間にガオパラディンの胸部のガオドラゴンの口から光が漏れる。

 

 

「聖霊波動‼︎ スーパーホーリーハート‼︎」

 

 

 放たれし金色の光線が、ガオキング・ダークネスに直撃した。最早、防ぎようが無い迄に決まった。

 

 

 ーグオオォォォォッ‼︎‼︎ー

 

 

 ガオキング・ダークネスは断末魔を上げ、轟音と共に炎上した。残されたガオハンター・イビルは再度、リゲーターブレードを振り回しつつ、ガオパラディンに迫る。

 

 

『魔性十六夜斬り‼︎』

 

 

 リゲーターブレードから繰り出される魔性の斬撃が、ガオパラディンを捉えた。だが斬撃が届く前に、動きが止まった。

 

 

『ボアーキャプチャー‼︎』

 

 

 ガオビルダーの鼻から放出されるエナジーによる拘束ロープが、ガオハンター・イビルを雁字搦めにしていた。

 動きを封じられ、ロープを引き千切ろうとガオハンター・イビルはもがくが、硬く縛られたロープはびくともしない。

 

「うおォォォォッ!‼︎」

 

 ガオグレーが叫ぶと、ガオビルダーは左手でロープを引っ張る。すると、ガオハンター・イビルは持ち上がり天へと投げ飛ばされた。ロープは外れ、ある高さまで飛んだガオハンター・イビルは落下して来た。

 

『殴打粉砕‼︎ ストロングブレイク‼︎』

 

 落ちて来た瞬間に、ガオビルダーは左腕で渾身のパンチを叩き込んだ。拳から放たれた一撃は、ガオハンター・イビルを再度、吹き飛ばす。が、爆発する瞬間にガオハンターは忽然と姿を消してしまった。

 

「ガオハンターが消えた⁉︎」

 

 ガオゴールドが驚愕しながら辺りを見回す。あるのは倒れ伏すガオキング・ダークネスだけだ。その時、ガオネメシスの声が響き渡った。

 

 

 〜フン…少しは腕を上げた様だな、ガオゴールド…そして、ガオグレーよ…‼︎ だが、それが貴様等の全力ならば到底、俺の敵では無いな…〜

 

 

「どう言う意味じゃ‼︎」

 

 ガオグレーが怒鳴り返す。ガオネメシスは不遜な態度で続けた。

 

 

 〜このガオキング・ダークネスは、本物のガオキングのデータを基に生み出したレプリカに過ぎぬ。そして、俺は今の戦いで力を半分も使っていない…〜

 

 

「半分……だって⁉︎」

 

 ガオビルダーの助力あってとは言え、ガオキング・ダークネスを操るガオネメシスは手強かった。それでさえ、ガオネメシスは殆ど、力を出し切っていなかったと言うのだ。

 ならば、真の力を発揮したガオネメシスは如何程に強いのだろう? 改めて、ガオゴールドは戦慄した。

 

 

 〜精々、足掻くが良い……狼鬼も、ガオハンターも我々の手中にある。我々の有利には変わらないのだ……。

 それにしても……紛い物とは言え、一度ならず二度も無様な敗北を喫するとは、精霊王の名に相応しく無い欠陥品め……貴様等、もう用は無い‼︎〜

 

 

 その刹那、燃え盛るガオキング・ダークネスに一筋の雷撃が落ちた。すると、ガオキング・ダークネスの身体は風化した彫像の如くヒビ割れ、ガラガラと音を立てながら崩れ落ちてしまった。

 

 

 〜次に貴様等と対峙する時は、そんな紛い物とは比べ物にならない、俺本来の”力’’で遊んでやろう……楽しみにしていろ……ハッハッハッハッ……!‼︎〜

 

 

 捨て台詞の如く、ガオネメシスは吐き棄てて声は聴こえなくなった。残された、ガオパラディンとガオビルダーは佇むばかりだ。

 

 

 

「…結局、大神さんを助けられ無かった……」

 

 夕暮れを見つめながら佇む陽と佐熊。己の不甲斐なさを呪うかの様に、自嘲するかの様に陽は呟く。

 

「心配要らん、陽‼︎ あのガオネメシスを倒しさえすれば、シロガネは元に戻る‼︎」

 

「……そうでしょうか?」

 

 そう言われても、陽には不安が拭い去れない。

 何より…あのガオネメシスの強さは未知数だ。未だに計り知れぬ力を持つ彼と、想像の範疇を遥かに超えているオルグ達……果たして、自分達だけで勝てるのか?

 

「元気を出して、陽‼︎ シロガネは必ず助けられるわ‼︎ 貴方達が最後の希望よ! 」

 

 後ろから、テトムも励まして来た。そうして、漸く陽は笑顔を見せた。

 

「ああ……そうだな‼︎ 僕達が諦めちゃ、大神さんもガオレッド達も助けられ無い! 闘うしか無いんだ‼︎」

 

「ハハハハ‼︎ よく言ったぞ、それでこそガオの戦士じゃ‼︎」

 

 陽の様子に佐熊も笑う。そうして、陽は佐熊を見た。

 

「大神さんを助ける為に…世界を守る為に…これからも宜しく、ガオグレー‼︎」

 

「ああ! 任せておけ、ガオゴールド‼︎」

 

 そう言うと2人の戦士は腕を交差し誓った。仲間達を助け、オルグ達を倒す……その思いを誓いにして……。

 

 

 〜圧倒的な力を見せ、ガオゴールドの見事に援護した新戦士ガオグレーと剛力の闘士ガオビルダー

 果たして、ガオネメシスの隠された’’力’’とは? そして敵の手中に堕ちた大神を救う事は出来るのでしょうか〜


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