帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest20 刃がギラめく‼︎ 前編

「そう…そんな事が…」

 

 事の顛末を陽から聞いたテトムは眉根にシワを寄せる。

 

「あの時、祈に何かが乗り移った様に様子が変わって、ひかりの様な物が発せられたんです。そしたら、操られていた人達が気を失って……」

 

「……うーむ。ひょっとしたら、それは”神下ろし”かもしれんの……」

 

「神下ろし?」

 

 唐突に、佐熊が応えた。

 

「昔、ムラサキもやっていたのを覚えとる。パワーアニマルの魂を身体に乗り移らせて、巫女の口を借りて会話が可能としていたんじゃ。更に研磨すれば、パワーアニマルの有する力を行使出来る様になると言うが…」

 

「でも、それは高度な術よ。私だって、出来ないのに……」

 

「なら…どうして、祈が…?」

 

 陽は驚いた。テトムさえ行使出来ない高等な術…それが、神下ろし…。古来の日本では、巫師や祈祷師の身体に神を乗り移らせて予言を下す秘術があったとされる。

 有名どころが、邪馬台国の女王とされた卑弥呼だ。彼女も神の声を聞き、国を導いたと言われている。

 そんな力を何故、祈が行使出来たのか? そこが、陽には不可解だった。

 

「陽…貴方に話すべきか、悩んでいたのだけれど….」

 

 迷った様に、テトムは言葉を濁したが、この際だから言っておく事にした。

 

「初めて祈ちゃんと出会った時……彼女から、巫女の力の片鱗を感じたの。最初は気のせいだと思ったんだけど……でも、今の話を聞いて確信したわ…」

 

 テトムの言葉に、陽は困惑した。少なくとも、祈と共に過ごした此れ迄の日々から言っても彼女から、変わった様子は見受けられなかった。

 

「祈は一体……」

 

「生まれ変わり……」

 

 テトムは、ポツリと呟く。

 

「彼女は、ガオの巫女の生まれ変わりかも知れないわ……」

 

「生まれ変わりって、ムラサキのか?」

 

 佐熊は尋ねるが、テトムは首を振る。

 

「いえ…もっと前の巫女よ。おばあちゃんを先代とするなら先々代のガオの巫女、と言う方が正しいかしらね……」

 

「先々代、って何時代の巫女ですか?」

 

 陽は、先々代の巫女と言われてもピンと来ない。何しろ、佐熊や大神が1000年前のガオの戦士だと言われても実感が湧かないのだから、無理もない話だが…。

 

「遥か2000年前……人間の文明が成り立ち始めた頃……」

 

「2000年前か……ワシだって、まだ生まれとらんのォ…」

 

 サラッと凄い事を言い出したテトムに、佐熊は何気に返す。

 最早、どんな非常識な事態が起きても驚くまいとしていた陽だが、まだガオレンジャーには驚かされそうだ。

 

「私も、おばあちゃんに聞いた話でしか知らないけど、今以上にオルグ……当時は単純に鬼と呼ばれていたのだけど、彼等が跋扈する暗黒の時代があったの。

 オルグ達は欲望赴くままに、人間達を蹂躙し殺戮し、災いをもたらしていた……そんな時代に、ある日、突然に姿を現し世の全てのオルグを祓った巫女が居た……その巫女は、歴史上で初めてパワーアニマルと交感し、彼等と共に当時のオルグ全てを倒したとされるわ」

 

「オルグ全てを⁉︎ たった1人の巫女が⁉︎」

 

 陽は俄かに信じられない。まだ、ガオレンジャーさえ居なかった時代にて、たった1人でパワーアニマルを纏め上げ、その時代に居たオルグ達を全滅させたなんて……。

 

「その巫女、どんな人だったんですか?」

 

「それが分からないの…。その巫女の素性に付いては、全くと言って良い程、残されて居ないわ。

 ただ、彼女が存在したと言う事実だけが、歴代の巫女達に語り継がれているの…。

 おばあちゃんは言っていたわ…彼女の名前は『原初の巫女』と…」

 

 益々、分からなくなった。その正体不明の巫女は一体、何者なのか?

 

「それで? その巫女と陽の妹に何の関係が?」

 

 佐熊が話に入って来る。テトムは続けた。

 

「彼女が巫女の魂を受け継いでいる可能性があるの……正確に言えば、巫女の力をね」

 

「祈が、ガオの巫女の生まれ変わりだって?」

 

 陽は目を丸くした。自分の妹が、ガオの巫女の生まれ変わり?

 

「そんな馬鹿な! 祈は普通の…少し傷付きやすい女の子ですよ⁉︎ あの子が、ガオの巫女の生まれ変わりだなんて……」

 

 陽は現実を受け入れられない。可能な限り、祈をガオレンジャーとオルグの非常な戦いに巻き込みたくなかった。

 それなのに、祈がガオの巫女だなんて……。

 

「信じられないかも知れないけど……仮に彼女が、ガオの巫女の力を受け継いでいるなら今後、オルグ達は彼女を的に射かけて来る可能性が高いわ」

 

「そんな⁉︎」

 

「陽の話を聞く限り、まだ祈ちゃんは巫女の力を完全に覚醒していないわ。完全に力を使い熟せば、並のオルグは祈ちゃんに触れる事さえ出来なくなる。でも……まだ未成熟な状態である事をオルグに悟られたら、奴等は祈ちゃんの命を確実に奪いに来る。気付かれない様に注意しなさい」

 

 テトムの言葉に、陽は頭を抱える。今度は自分や友人の命だけでは無い。祈が、オルグ達に命を狙われる危険があるのだ。もし、自分のいざ知らない所で祈がオルグ達に出くわしたら? 駆け付けた時には、祈は物言わぬ屍になってるかも知れない。考えただけでも、ゾッとする。

 

「大丈夫だ。オルグ達が妙な真似を出来ん様に、ワシも目を光らせておく。お前さんの妹は、オルグ共に指一本触れさせん」

 

 佐熊は励ますが、陽は力無く頷いた。その様子を奇妙な目が、物陰から伺っていたのを3人共、気付かなかった。

 

 

 

「ふ〜〜ん。そう言う事……」

 

 ヒヤータは安楽椅子に腰掛けながら、ほくそ笑んでいた。

 ガオレンジャーの行動を逐一、知る為、ヒヤータは先程の戦いに乗じて”オルグ蟲”を付かせておいたのだ。

 蟲を通じて、ガオレンジャー達の会話も行動も筒抜けだった。

 

「貴方の言った通りね、ガオネメシス?」

 

 ヒヤータは後ろを振り返ると、ガオネメシスが立っていた。

 

「クク……ガオレンジャーも自分達の行動が、こちらに流れているとは夢にも思うまい」

 

「…それで? 私に、この情報を流してどうする気?」

 

 警戒心を解かずに、ヒヤータは尋ねる。

 策謀を得意とする彼女は、同時に用心深い。元々、全てがキナ臭いガオネメシスの存在を、ヒヤータは信用していない。

 そもそも、オルグですら無い彼を信用する等、無理な話である。

 

「どうもこうも……この原初の巫女の存在が我等、オルグの勝敗を決する。今、ガオレンジャーを応対しているのは、お前だ。この巫女を利用しない手はあるまい……」

 

「……」

 

 やはり、この男は一癖も二癖もある。自分も相当、狡猾であると自負はあるが、このガオネメシスはそれ以上だ。

 何を企んでいるのか……信用は出来ないが、確かに利用しない手は無い。この原初の巫女も…そして、ガオネメシスも…。

 

「ありがとう…中々、興味深い話だったわ…」

 

 艶やかに言ったヒヤータに、ガオネメシスは背を向ける。

 

「後は、お前の好きにするが良い…」

 

 そう言い残し、ガオネメシスは暗闇の中に姿を消した。残されたヒヤータは1人、思案に暮れる。

 

「……ニーコ!」

 

「はいはーい! お呼びですか、お姉様?」

 

 ヒヤータに呼ばれて、ニーコがヒョコッと姿を見せた。

 

「魏羅鮫をこれに」

 

「え……あの人、呼んじゃうんですかァ?」

 

 ニーコは気が乗らない様子だが、ヒヤータは無表情のまま…。

 

「気が進まないのは私も同様よ。でも、彼なら万が一の事があっても、私のお腹は痛まないわ」

 

「また捨て駒にしちゃうんですかァ? 」

 

「勝利には捨て駒が必要なのよ…それに…」

 

 無表情のまま、ヒヤータは駒を手に取る。

 

「不安要素となる芽は根を張る前に摘んでおくべきだと思わない?」

 

 そう言うと、ヒヤータが手に持つ駒は粉々に砕け散った。

 表情は変わらないが、眼は刃の様に鋭く冷たかった。

 

 

 

 次の日、リビングで陽は制服を着ながら祈の事を考えていた。

 今朝の祈は、何時もと変わらない様子だった。だが……彼女の秘密をテトムから聞かされた陽は、落ち着かない様子だ。

 祈が、ガオの巫女の生まれ変わりだったら……もし、そうなら今後、オルグ達の攻撃は祈に向いて来る恐れがある。

 果たして、自分に守り切れるか? 祈を助ける為に、他の人間に危害が及ぶ事となれば、自分は祈を見捨てなければならないのか?

 もう迷わない、と覚悟を決めた筈なのに……。

 

「兄さん…!」

 

 ふと、祈が隣に立っていた。憂いに満ちた浮かべながら見ている。

 

「あ…ごめん、祈……」

 

「兄さん、何かあったの?」

 

「いや、何も…」

 

「嘘! 」

 

 祈に心配かけまいと陽は咄嗟に嘘を吐いたが、嘘と見抜いた祈は若干、声を高くして叫んだ。

 

「昨日、兄さんが青い顔で帰って来たの知ってるのよ! 」

 

 見られてたのか……陽は苦み走った顔で唸る。

 途端に、祈は泣きそうな顔になった。

 

「……もしかして、私の事? 私が兄さんの戦いで足枷になっているの?」

 

「‼︎」

 

 痛い所を突かれた陽は目を丸くする。祈は、こんな時は嫌に鋭い。やっぱり、と言わんばかりに祈は涙を流す。

 

「兄さん……もう、ガオレンジャーとして戦うの止めて」

 

 突然に吐き出された言葉に、陽は呆然とした。

 

「……出来る訳ないだろ……」

 

 力無く陽は言い切った。今、自分がガオレンジャーを止めてどうなる? オルグの侵攻が進み、沢山の命が失われる結果になるだけだ。

 大体、ガオレンジャーとして深い場所に迄、足を踏み入れた陽は、もう中途半端に逃げ出す事は出来ない。

 それを聞いた祈は大粒の涙を流しながら叫んだ。

 

「兄さんが辛そうにしている姿を見せられる私の身にもなってよ‼︎ 私が兄さんの足枷になってるんじゃないかって思う方が、よっぽど辛いんだから‼︎」

 

 心の丈をぶつけて来る様に、祈は叫ぶ。陽は驚きの余り、目を丸くした。足枷? 何の話だ?

 

「僕は祈の事を足枷になんて思ってない。何を勘違いしているんだ?」

 

「……‼︎ そうじゃない……! 私はただ……兄さんの事が……もういい!」

 

 言葉を詰まらせながら、祈は走り去っていく。乱暴に鞄を引っ掴み、ドアを閉めて祈は出て行く。彼女の去った後、陽は眉間にシワを寄せながら、祈の言葉を思い起こす。

 

 

 〜兄さんが辛そうにしている姿を見せられる私の身にもなってよ‼︎ 私が兄さんの足枷になってるんじゃないかって思う方が、よっぽど辛いんだから‼︎〜

 

 

 自分の行動が祈を傷付けていたのか? それとも……? 陽は1人、自問自答を繰り返しながら暫く動く事が出来なかった。

 

 

 

 学校への路を涙を流しながら、祈は走った。

 まただ。また、陽に辛く当たってしまった。陽の事を気遣う筈が、自分の中に溜まりに溜まった鬱憤をぶつける結果になるなんて……。

 どうして、こんな事になってしまったんだろう? 自分と兄は穏やかに過ごしてきただけなのに……。

 つい最近まで、兄と幸せな日常を送っていた日々が懐かしい。もう、あの頃の日常には戻れないのか?

 

「おっはよ、祈!」

 

 向かい側の道から、舞花がやって来た。昨日、オルグ達に操られたとは思えない程、元気そうだった。

 彼女の姿に、祈は心配を掛けまいと涙を拭う。

 

「…おはよう、舞花…」

 

「どうかした? 涙なんか流して…」

 

 舞花が心配しながら、祈の顔を覗き込む。

 

「…ううん、何でも無いの…」

 

「何でも無い訳無いじゃん! 祈の悪い癖だよ? 何でも自分で抱え込んで、人へ掛かる負担の事を心配するの」

 

 舞花は、ビシッと指を指して来た。確かにそうだ…と祈は、しみじみ思う。陽に心配を掛けたく無いとして、辛い事や苦しい事を何でも無い、と誤魔化してしまう。

 

「…もしかして、陽さん…?」

 

「…うん…」

 

 こう言った時、舞花は確信を突いて来る。祈も深く頷くしか無い。

 

「喧嘩したの?」

 

「喧嘩したって言うか…私が一方的に怒っただけ…」

 

「そうなんだ……陽さんって優しくて理想的なお兄ちゃんな感じだからね……」

 

「うん……だから、私と同じで自分の弱みを見せてくれないから……時折、不満になっちゃう……」

 

 そう言った際に、祈はハッとした。私と同じ……そうだ、私だって舞花に気を遣って弱みを見せ無かった……。

 自分がされた事ばかりに気を取られ、兄にした事を棚に上げていた。

 

「…きっと、陽さんは祈の事が大切なんだよ。だから、余計に過敏になっちゃうんじゃ無いかな?」

 

 舞花の言葉に祈は黙したまま頷く。本当は分かっているつもりだ。陽の気持ちも、自分の幼さも……。

 陽は今頃、苦悩しているに違いない。帰ったら謝らなくては……。

 

「ほら、早く行かないと! 今日は朝練なんでしょ!」

 

 舞花の言葉に、祈は思い出した様に顔を上げた。

 

「あ、そうだった! 急がなきゃ‼︎」

 

 祈は慌てて走り出した。舞花も後に続く。そんな様子を憎々しげに見つめる少女が居たが、祈達は気付かなかった。

 

 

 

 学校に着いた祈は部活の道場に向かう。

 祈は剣道部に所属している。家庭の事情から不参加が多かったが、最近は再び通える様になったのだ。

 道着を身に纏い、道場に入って行く祈。既に部員は揃っていた。

 

「竜崎さん、久しぶりね」

 

 顧問の先生が親しげに話しかけて来た。祈は少し申し訳なさそうに……。

 

「長い間、不参加で申し訳ありませんでした、小手川先生」

 

「いいのよ。家庭の事情もあるしね。さて、これで全員かしらね?」

 

 小手川先生は部員を見通す。すると部員の1人が手を上げた。

 

「先生、峯岸さんがまだ来てません」

 

 それを聞いた小手川先生は、眉を潜めた。

 

「あら、本当……だれか聞いてない?」

 

 先生の質問に対して、祈を始めとした部員達は首を横に振る。すると剣道部部長の女子が言った。

 

「小手川先生。あの子、最近、増長し過ぎなんですよ。お灸を据えてやったらどうですか?」

 

 他の部員も、それに同意した。小手川先生も顔を顰める。

 

「確かにね……実力はあるんだけどね……」

 

 

「すいません、遅れました」

 

 

 道場に声が響き渡り、声の方角を見ると黒髪のボブにした道着の少女−峯岸千鶴が入って来た。

 

「ちょっと、遅刻よ! 朝練の時間くらい守りなさいよ‼︎」

 

 部長が怒りながら、千鶴を責め立てる。しかし、千鶴は悪びれる所か……。

 

「だから、謝ったじゃないですか」

 

 と、反抗的に応える。それに対して、部長は更に激昂した。

 

「なに、その態度⁉︎ あんた、本当に悪いと思ってる訳⁉︎」

 

「ちょっと垂水さん、落ち着きなさい!」

 

 険悪な空気となる2人の間に小手川先生が仲裁に入る。

 

「峯岸さんも、遅刻して来たんだから誠意を見せなさい! 」

 

 流石に顧問に叱責された事で、千鶴は不貞腐れながらも「ごめんなさい」と返した。

 そんな彼女の様子に、他の部員も苛立っていた。

 

「あの娘、何様のつもりなのかしら…?」

 

「剣術家の娘だか何だか知らないけど、鼻に掛けて…」

 

「自分が私達より優れてるって、天狗になってるのよ…」

 

 全員、千鶴に対しての不満な態度を隠さず、不平を言った。

 峯岸千鶴は、著名な剣術家を父に持ち、幼い頃から剣道に

 打ち込んできた。故に、中学生の部活動レベルである剣道部に対し、かなり斜めに構えた態度を取っていた。

 しかし、その態度に半し彼女の剣道に対する実力は本物である。それあって先輩達も彼女に対して強く出る事が出来ず、半ば泣き寝入りの状態だった。先輩達が、そんな様子である為、ますます千鶴は付け上がり、鼻持ちならない調子だった。

 ふと、千鶴は祈の姿を見つけた。

 

「あれ、竜崎先輩? 来てたんですか、とっくに辞めたと思ってたけど……」

 

 千鶴は小馬鹿にした様に、祈をせせら笑った。その様子に、祈はムッとした表情で言い返した。

 

「どうして、私が辞めなきゃならないの?」

 

「だって先輩、殆ど部活に来てないし…ぶっちゃけ、腕も落ちちゃってるんじゃないですか?」

 

 挑発する様に、千鶴はズケズケと吐き捨てる。祈は感情的にはならない迄も、無礼な態度を取る後輩に不快感を露わにした。

 

「ちょっと! 竜崎さんは、家庭の事情があって部活には参加出来なかったの! 知ってるでしょう⁉︎」

 

 祈に代わり部長の垂水が食ってかかった。だが、千鶴は高飛車な態度を止めない。

 

「私、前から納得行かなかったんです。ウチの剣道部って、実力重視で大会にも御用達でしょ? なのに、部活にも殆ど参加しない人が大会のレギュラーなんて、不公平だと思いません?」

 

「何が言いたいの?」

 

 祈は静かだが、怒りを滲ませながら尋ねる。千鶴は不敵な笑みを浮かべた。

 

「はっきり言いましょうか? 次の大会のレギュラー、私に代わって下さい。私が出た方が確実に勝てますから」

 

 あまりと言えば、失礼極まり無い物言いに、周りはカンカンだ。

 

「あんた、一年の分際で態度が大きいわよ! 竜崎さんは、あんたより前から剣道やってるじゃない! 図に乗らないでよね!」

 

「そうよそうよ‼︎」

 

 遂に部員全員が、抗議を始めた。だが、千鶴は全く態度を改めないで反対に…

 

「その一年に、一本も取れないで全敗している人は誰でしたっけ?」

 

「ク…‼︎」

 

 痛い所を突かれ、部員達は一言も反論出来ない。小手川先生も、遂に黙りかねて口を挟む。

 

「いい加減にしなさい! 剣道は力を競い合う為の物じゃ無いの‼︎ 礼儀を学び、相手を尊ぶ為の物! 貴方が言ってるのは、昔の辻斬りの理屈よ! 剣術家の娘の貴方なら、ちゃんと理解していると思っていたわ‼︎」

 

「先生、そう言うのは実力の伴う人間が言う事ですよ? それに、私はライバルとは常に対等で居たいんです。自分より劣る人と一緒に居たって、つまらないじゃないですか?」

 

 完全に舐めきった台詞だ。余程、自分の実力に自信が有るのか、相手を敬う気持ちが微塵も感じられない。

 それまで黙っていた祈は、遂に立ち上がる。

 

「峯岸さん……自分の実力を過信していると、今に痛い目を見るよ?」

 

 祈の言葉に、千鶴は初めて顔色を変えた。

 

「実力を過信? どう言う意味ですか? 私、竜崎先輩より強いって自負してますけど?」

 

「確かに、貴方は強いし実力も備わってる。でも、それだけじゃ無いよ。貴方より強い人はいっぱい居るし、私だって中途半端な考えで剣道やって来た訳じゃ無いから」

 

 淡々と的を射た発言に、千鶴は気分を害した様子だ。

 

「じゃあ、勝負しましょうよ‼︎ 私が先輩より実力が上だって事を証明しますから‼︎」

 

 プライドの高さ故に千鶴は祈の態度に腹を立て、その鼻っ柱を叩き折ってやりたくなったのだ。

 

「あんた、何言ってんの⁉︎ これは喧嘩じゃ無いのよ⁉︎」

 

「分かってます‼︎ 私だって、剣道をやって来た人間としての意地とメンツがあります‼︎ 此処まで言われたら、後には退けません! 先生、良いですよね⁉︎」

 

 千鶴は前言を撤回する気は、さらさら無いらしい。祈は困った様に…。

 

「私、そんなつもりで言ったんじゃ……」

 

「あれ? やっぱり私に負けて恥かかされるのが怖いんですか? だったら、レギュラーの座は私が貰いますし、先輩は私に無礼な態度を取った事を謝って下さいね?」

 

 消極的な態度の祈に対し、千鶴は嘲りを込めて言い放つ。

 

「……其処まで言うなら、一本勝負するよ。その代わり、私が勝ったら、先輩達に謝って」

 

「フフン、良いですよ?」

 

 とうとう、祈と千鶴は剣道の勝負をする事になってしまった。だが、その様子を外から伺う2人組……ツエツエとヤバイバである。

 

「おい、ヒヤータが言ってたのって……」

 

「ええ、あの子ね」

 

 そう言いながら、ツエツエは右手に持つ禍々しい気を放つ刀をチラつかせた。

 

 

 

 〜祈に傲慢な態度で勝負を挑もうとする少女、峯岸千鶴。

 そして、その様子をこっそり伺うツエツエのヤバイバの真意とは⁉︎ 彼女達が持つ刀は、何を意味するのでしょうか⁉︎〜

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