帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
鬼ヶ島に戻った後、玉座の間にてテンマは冷徹な目で、ヒヤータを見据えていた。ヒヤータは頭を下げて、いつもの様な尊大さが見られない。
「……作戦は失敗…しかも、狼鬼をガオレンジャーに奪還されてしまった…だと?」
デュークオルグとは言え、失敗は失敗……しかも、石橋を叩いた上から更に叩くタイプのヒヤータの失敗だ。
これには、比較的にヒヤータを四鬼士の中で優遇していたテンマからすれば許し難い不始末である。
「……ヒヤータ……貴様らしく無い失敗だな……あれ程に、策に策を上塗りした末に寝首を掻かれるとは、正に策士、策に溺れたな……」
「……お返しする御言葉が、見つかりません……」
今回の一件、ヒヤータの計略ではガオグレーを狼鬼を倒していれば、それで全ては成功していた筈だった。
だが、最後の最後に摩魅の思わぬ抵抗とガオゴールドの帰還と言うイレギュラーな事態が立て続けに起きた結果、形勢は逆転された挙句、狼鬼を操る鬼の結晶を意図的に破壊して暴走させた末、精霊王に倒されてしまった……。
言うなれば、逆上したヒヤータの一時の怒りから起きた油断によって敗北を喫した、と言っても過言では無い。
思う所がある故、ヒヤータも言葉を返せずに居た…。
「このままでは終わりませんわ……次で、ガオレンジャー達を血祭りに上げてご覧入れましょう」
「ほゥ……大した自信だな?」
ヒヤータの言葉を聞いたテンマは、警告を入れる様に凄む。
「ヒヤータ、分かっていようが……余の配下に役立たずは要らぬぞ? 失敗は許さん、必ずやガオレンジャー達の首を携えて余の前に献上せよ」
「……御意」
そう言い残すと、ヒヤータは鬼門に姿を消した。その際、テンマの背後に、ガオネメシスが姿を現した。
「さて…ガオネメシスよ。ヒヤータは、ガオレンジャーに勝てると思うか?」
テンマの質問に対し、ガオネメシスはクックッと小さく笑う。
「……あの女は頭が切れる。だが、それだけだ。正面から、ガオレンジャーにぶつかっても、先ず勝てんさ」
「……ならば、何故にヒヤータを行かせた? 貴様の指示に従っても、勝てる見込みが無い戦となるのでは、無駄ではないか?」
そもそも、テンマは四鬼士を部下として招集する事にには反対だった。各々に我が強く、一癖も二癖もある輩ばかりだ。
ツエツエやヤバイバは役立たずだが、自分やガオネメシスが動けば、ガオレンジャーを一網打尽にする事は容易い。
にも関わらず、ガオネメシスの鶴の一声で四鬼士への招集を掛けた。テンマからすれば、それが理解出来ない。
「役に立たぬなら、それ相応の使い方がある……と言う事だ。どの道にしろ、ヒヤータは狡猾過ぎる故に野心が強い。
生かしておいても、メリットには成るまい……それより、例の’’計画”に利用すれば良い……」
「計画……”鬼還りの儀”か……」
ガオネメシス、テンマの口から発せられた謎の言葉に、ガオネメシスはクックッと笑った。
「……そうだ……この計画が実現すれば、この地上は再び、オルグの楽園となる。かつて、オルグの天下だったかの時代が現代に蘇るのだ……ハッハッハッハ……!」
そう言って、ガオネメシスは高笑いを上げた。それを扉に張り付く様に、ツエツエは立ち聞きしていた。
「例の計画? 鬼還りの儀? 一体、何の話なの⁉︎ そもそも、ガオネメシスは何者だって言うの?
……どうやら、愚図愚図してる場合じゃ無いわね……‼︎」
ツエツエは意を決した様に、踵を返して鬼門の中に姿を消した。様々な野望、思惑が入り乱れる中、邪気の霧に覆われる鬼ヶ島は不気味に映っていた……。
一方、ガオズロック内では……無事に救出した大神を休ませていた。狼鬼の呪縛から解放されたものも、精神的にも体力的にも大神は疲弊し切っていた。身体を休ませなくてはならない……テトムが泉の水を水飲みに掬って飲ませて、漸く大神は落ち着いた。
「シロガネ……お帰りなさい……」
改めて、テトムは最愛の仲間の帰還を労った。大神は頭を振る。
「よしてくれ、テトム……俺は、お前達をまた裏切ってしまった……労われる資格も無い……」
狼鬼として操られながらも、大神は朧げながらに意識を有していた。逆らおうとして狼鬼の意志に反して助けようとしても、オルグの策謀によりその意志さえも封じ込まれ、望まぬに関わらず仲間達と戦う事を強要されてしまった。
その自己嫌悪と罪悪感が、大神の心を責め立て苛めていく……そんな彼に、陽は慰めた。
「……大神さん、自分を責めないで下さい……全ては、オルグのせいです。狼鬼として操られながらも、大神さんの意思は残っている事を感じていました……」
陽の言葉に、大神は弱々しく笑う。
「……驚いたな、陽……暫く会わない内に、戦士として成長した……正直、見違えたよ……」
改めて、陽の姿を見た大神は素直に称賛した。
平和な日々を過ごして来た甘さの捨てきれない少年は、数々の修羅場を潜り抜けた結果、戦士の矜恃を持つに至っていた。
「僕は……佐熊さんやテトム、祈が居なければ何回、死んでたか……」
今日まで、ガオゴールドとして戦って来たが決して楽観出来た勝利とは言えない。辛うじて、仲間達のサポートがあっての紙一重による勝利と言えた。
それでも勝つ事が出来たのは、自分一人による手柄とは陽は思えない。
「いや……そう考えれる様になれたのなら上出来だ。千年の友が…ガオゴッドが、お前を認めた理由が今から良く分かる……。間違い無く、今のお前は立派なガオの戦士だ……」
大神は自分無しで、ガオレンジャーの重圧に陽が耐えれるか、 と気掛かりであったが、それは取り越し苦労に終わったらしい……正直、安心した。
その際、テトムと佐熊が入って来た。
「テトム、祈は?」
「大丈夫……無事に学校に送り返したわ……荒神様が、学校や操られた人々の記憶を改変していてくれたから、騒ぎにはなって無いわ….」
「あれだけの騒ぎに巻き込まれながらも、毅然としていたわい……まだまだ、小娘と思ったが大した度胸の座った娘じゃ!」
そう言いながら、佐熊はカラカラと笑う。佐熊の姿を見て、大神は驚いた顔になる。
「お前は……まさか、カイ……か⁉︎」
大神の声は震えている様だ。だが、佐熊はキョトンとした様子で彼を見る。
「カイ……? はて……ワシの事を言っておるのか、シロガネ?」
「ああ……でも、何故⁉︎ お前は……ク……‼︎」
興奮のあまり、立ち上がろうとするが大神は身体に残るダメージ故に痛みを覚え、顔をしかめる。
「シロガネ……無茶をしては駄目よ……‼︎ 」
テトムは、大神の身体を支えた。
「……スマン……だが、どうしてだ? お前は、あの日、鬼地獄に堕ちて行った筈だ……」
「説明すると長くなるがのゥ……どうやら、ワシも鬼地獄に封印されとる内に千年以上、経ってしまった口じゃ……。
詳しい話は、テトムに聞いた。百鬼丸を倒す為、狼鬼となった事もな……しかし、互いに再会出来て良かったわい」
細かい事は特に考えず、佐熊はあっけらかんと答えた。同時に、陽が口を挟む。
「失礼ですが……貴方の名前は、カイと言うんですか?」
陽の質問に、佐熊はウームと唸った。
「どうも、そうらしいのォ……しかし、昔の名前じゃ。もう、ワシにはどうだって良い事だし今迄通り、佐熊力丸と呼んでくれた方が良い。それで良いか、シロガネ……いや、大神月麿?」
改めて、自己紹介した佐熊に対し月麿は笑う。
「……ああ、どうやら俺の知っているカイらしいな……。
ならば俺も、この時代に合わせて大神月麿と呼んでくれ……」
曲折経てだが、千年前のガオの戦士は和解しあった。互いに悠久の時を乗り越えて、現代に生きなくてはならない身だったが、かつて闘いを共にした同士が今、再び共闘するに至れたのだ。
「さァ、これでガオレンジャーは全員揃ったわ……しかし、いつの間にか3人も揃ってしまったわね……」
テトムは陽、大神、佐熊と順に見ていく。何れとも、個人の実力はガオレンジャー5人分と言っても過言では無い。
特に最近の、ガオゴールドの成長は目覚ましい。このまま行けば、オルグ達を全滅させる日も遠くは無いかも知れない。
「今は、ゆっくり休んで下さい……オルグ達は、僕達を休ませる気は無いだろうし……」
「ああ……すまない……」
「……それにしても、あのヒヤータと言う女、かなりの曲者じゃ。このまま、大人しくしているとは思えんのゥ……」
3人の戦士は、深刻な表情で互いを見た。
現在、オルグ側に味方するデュークオルグ”四鬼士“……その中でも極め付けに狡猾で残忍な策士、ヒヤータ……次は、どんな悪事を企むのか……想像も付かなかった……。
一方、とある洞穴内……鍾乳石や石筍が立ち並び、ゾクリと背筋を突き刺す冷気が立ち込める闇の中……カツン…カツン…と岩を叩く音が聞こえて来る。
「おい、ツエツエ……本当に此処で間違いないのか?」
暗闇の中で、ヤバイバの声がする。手にはツルハシを持って、岩を切り崩している。
「ええ……間違いないわ…! 書物によれば、此処にある筈!」
「しかし……何だって、俺達ばかりがこんな事…!」
ツエツエの言葉とは別に、ヤバイバはブツクサと文句を言う。
「もう少しの我慢よ! これを発掘さえすれば……!」
ヤバイバを励ましながら、ツエツエもツルハシを振り下ろす。額に汗を滲ませながら、2人の鬼は闇雲に岩を掘り崩す。
「…テンマ様が私達を見限り、四鬼士も負け続き……このままじゃ、私達が粛正されるのも時間の問題……‼︎
私達が助かるには、これに賭けるしか無いの……‼︎」
そう言いながら、ツエツエはツルハシを打ち付けた。その時、ガッ…と特に硬い物体にぶつかった音がした。
「手応えがあったわ……‼︎」
してやったり、と明るい声でツエツエは言った。ツルハシで僅かに残った岩屑を払い落としていくと……。
「ヤバイバ…やったわよ、私達……‼︎」
「おおォ…‼︎」
2人は、頭に付けたヘッドライトを岸壁全体を照らしつつ後退する。岸壁の中にはには壁に埋め込まれた氷壁に閉じ込められた三体の異形……内一体の姿は、竜に似た頭部をしている。
「ガオネメシスの言ってた通りだわ…! 本当にあったのよ…‼︎」
「これが…伝説の…⁉︎」
ツエツエは目を輝かせ、ヤバイバは息を飲む。
「…そうよ…オルグの中でも最古の存在とされ、その強過ぎる力から封印された最強…もしくは最凶のオルグ魔人……!
ふふふ…遂に、見つけたわよ……!」
ツエツエの目は欲望で、ギラギラと輝いていた。
「此れを復活させれざ、私達はテンマ様にビクビクする事は無いわ…! 四鬼士達に扱き使われる事も無い…!」
「…ああ…苦労が報われるな…!」
「…思えば、ガオネメシスの尾行して…この情報を漏らすのを盗み聞きしたのが始まりだった…それから、詳しい場所を探り当てる迄……長かったわ……‼︎』
ツエツエは思い返す。テンマによる恐怖政治にてオルグは一枚岩に纏まったものも、数々の失敗や四鬼士の登場により、オルグ内に於ける自分達の地位は下落し窓際に迄、追いやられてしまった。
しかし、このままで諦めるツエツエでは無い。必ずや、手柄を立てて返り咲いて見せる……ゴーゴやヒヤータに扱き使われながらも、ニーコに嘲笑われながらも、ツエツエは堪えた。それもこれも、全ては”この瞬間“の為……!
「この3人のオルグ魔人達が、私達の”切り札”よ!」
「し、しかしよ……こいつら、本当に俺達に従うのか? かの百鬼丸さえ、持て余した奴等なんだろ?」
ヤバイバは不安そうに、ツエツエを見た。
「大丈夫……私は、オルグの巫女よ。この私が本気を出せば、全てのオルグ達を使役する事は容易いわ……‼︎」
そう言うと、ツエツエは自前の杖を構えて呪文を唱え始めた。
〜永久に鎖されし氷壁に魂と共に封じられ、永劫の眠りに就く三体の鬼よ……今こそ、その封印を解き放たん……我、銘じる……目醒めよ! そして、我に従属し給え……!
鬼は内! 福は外!〜
ツエツエの呪文と共に巫女舞を披露した。すると杖から放たれた邪気が氷壁を覆い尽くして行き、堅牢な氷の表面に亀裂が生じる。やがて亀裂は広がって行き、中に眠るオルグ魔人達の目が紅く発光、氷は砕け散った……。
翌日、陽は祈を伴い通学中だった。昨日、学校を途中で抜け出した為、不安だったが、幸いな事に美羽が先生に口裏を合わせてくれたらしい。
だが、猛とは未だ話が付いていない。其れが気掛かりだ。
「ねェ、兄さん……猛さんと喧嘩したって本当?」
不意に祈が話し掛けて来た。陽は重々しく頷く。
「ひょっとして……ガオレンジャーの事で?」
「……僕が最近、ガオレンジャーとして抜け出す事がバレたんだ……ガオゴールドである事は、バレてないけどな…」
祈には打ち明けた。ガオレンジャーに関しての秘密はしない……少なくとも、現時点では祈も当事者であるからだ。
祈は悲しそうに俯いた。
「…兄さんが、ガオレンジャーとして戦っている事……せめて、猛さん達に話さない?」
陽は、やっぱりそう来たか…と言わんばかりに、祈を見た。
「話して、どうなる? アイツらが納得してくれるのか?」
「でも…このままじゃ、兄さんが……!」
分かってる…祈の言いたい事は…。今回、自分はガオレンジャーとしての重圧、使命に囚われる余り、大切な人間達と距離を置く自分に気付いた。
それは、危険な目に合わせたく無いと言う配慮もあるが……同時に、ガオレンジャーと言う異質な存在となった自分の姿を知られたく無かったからだ。
祈とは特殊な形で秘密を共有、和解に至れたが、彼等の場合は違う。ガオレンジャーでも無ければ、関係者でも無い。
言い換えれば部外者だ。そんな彼等に、どう説明すれば分かって貰える? 陽は眉根を寄せた。
「に…兄さん…」
急に祈が震える様な声がした。
「どうした、祈?」
「…あれを見て…」
祈が指を差すと、猛と昇が歩いている。だが、様子が変だ。足取りがフラフラとして、どうも真っ当な精神状態とは言い難い。
「おい、猛! 昇!」
陽は2人に声を掛けた。だが、2人は陽と祈に目もくれずに無言で歩いて行った。更に2人の目を見れば、虚ろな目となっているのが分かった。
「…まさか…」
嫌な予感がして、陽は駆け出す。祈も後に続くが……。
「祈! お前は…‼︎」
「危ない目に遭わせたく無い…って言いたいんでしょう?
でも、今の状況なら兄さんと別れた方が危ないじゃない!」
緊迫した状況ながら、陽は苦笑した。
確かに……今、祈と別行動を取れば、祈の身柄を奪われるかも知れない。オルグ達の狙いは、自分だけじゃなく祈も然りだからだ。
「….…分かったよ……僕から離れるなよ‼︎」
「…うん…‼︎」
陽は根負けして、祈を同行させる事にした。祈も強い顔で付いてくる。陽のG−ブレスフォンが強く輝きを放った。
猛達を尾行して付いていくと、其処は昭和時代頃に建てられ現在は廃校となった中学校に辿り着いた。校門を潜ると、グラウンドには猛や昇を始め多くの人間が倒れている。
「こ、これは……⁉︎」
嫌な予感は的中した……‼︎ やはり、オルグ達の罠だった。自分達を誘い出す為に…‼︎
「ご機嫌麗しゥ……ガオゴールドさん?」
神経を逆撫でする様な下卑た声が、響いた。声の方角を見れば、ニーコは宙に座り微笑んでいる。
「お前は…‼︎」
「ようこそ…私達、オルグの主催する死のパーティーへ…そして、お久しぶりですわねェ…竜崎祈さん?」
ニーコは余裕ある態度を崩さずに、祈に微笑む。祈は、キッと睨み付けた。
「貴方…あの時の…!」
祈は覚えていた。つい昨日、祈を捕らえたゴスロリ衣装のオルグ……其れが彼女だからだ。
「はァい♩ まさか、貴方まで来て下さるなんてェ…光栄ですわァ…そ・れ・で・は……ヒヤータお姉様、どうぞ!」
ニーコは手を上げる。すると鬼門が開き、中から凄まじい形相のヒヤータが現れた。
「……待ってましたわ、ガオゴールド…‼︎ 貴方達のせいで、私の練りに練ったプランは御破産……オルグ内での地位も危うくなりましてよ……さァ、どうしてくれまして?」
普段の知的な顔は無く、ガオレンジャーに対しての憎しみと計画の破綻からか激情を露わにしていた。
「自業自得だろう⁉︎ それより、これは何の真似だ! 僕の友達や関係ない人達を連れ込んで⁉︎」
陽も負けじと叫ぶ。すると、ヒヤータは冷たい声で高笑いした。
「これは見せしめですわ…‼︎ 彼等の魂は皆、生きたまま引き剥がしてあげたのよ‼︎ そして……それは此処に!」
そう言うと、ヒヤータは水色の掌に収まる程度の水晶玉をチラつかせた。そして、其れを口に入れる。
「な、何を⁉︎」
陽は止めようとするが、ヒヤータはゴクリと飲み込んでしまった。
「さァ…これで彼等を助けるには、私を倒すしか無くなりましてよ……これが、貴方への見せしめですわ……!」
「き、貴様……‼︎」
陽は、怒りでワナワナと震えた。祈は被害者の中に舞花や千鶴が居るのも気付いた。
「ご丁寧に貴方達の友人にターゲットを絞って差し上げましたのよ? 倒れている者達を見て御覧なさいな? 知った顔ばかりでしょう?」
ヒヤータに言われた通りに見回せば、全て陽や祈に関係する者達だ。
「……僕の大切な人達を、よくも……‼︎ 許さない‼︎」
「ホホホホ‼︎ 許さない、は良かったですわ‼︎ でも……許さないのは、こっちの台詞なんだよ‼︎ この糞餓鬼が‼︎」
遂にヒヤータは言葉遣いを乱暴な口調に変えて、口汚く陽を罵った。と、同時に人間を模した顔にヒビが走る。
「お前達、人間は私達、オルグに狩られるだけの餌でしか無い……大人しくしてりゃ生かさず殺さず、飼い殺してやったものを……私に逆らったばかりに、惨めな死を受ける羽目になるんだ……ハッ! つくづく、人間は馬鹿だなァ! そもそも、私達オルグを生み出しているのは、お前等じゃねェかよ‼︎」
「……皆を解放しろ、ヒヤータ……‼︎」
怒り狂うヒヤータに恐れる事なく、陽は言葉を発した。其れが気に食わなかった為、ヒヤータは更に激昂、顔のヒビが益々、広がった。
「私に命令するんじゃ無いよォ‼︎ ゴミ屑以下のカス人間がァァァ‼︎ 良いわ…そんなに死にたいなら…殺してやる‼︎ だが、楽に死ねると期待するなよォ? 甚ぶって引き裂いて……絶望に堕とした末に殺してやるよォォ…!‼︎」
そう叫ぶと、ヒヤータの顔は完全に崩れ落ち、醜いオルグの素顔が現れた。逆立った髪、伸びた角、両手の爪は鋭く伸びきって居る。
「あれが、ヒヤータの本性か…‼︎ 」
「…浅ましいね…‼︎」
陽も祈も、醜悪な本性を露わにしたヒヤータに嫌悪感を隠さない。その際、佐熊と大神が駆け付けた。
空を仰げば、ガオズロックが低空で飛行している。
「泉がボコボコ泡立って居るから来てみたら…大変な事になっとるのォ…‼︎」
佐熊は倒れ伏す人間達や、変貌したヒヤータに驚く。陽は、大神の姿に目を丸くした。
「大神さん⁉︎ まだ、動いては…⁉︎」
「大丈夫だ…‼︎ ガオレンジャーの一員である俺が何時迄も寝てられるか…‼︎」
「だけど…‼︎」
「それに…ヒヤータには借りがあるからな…‼︎ 借りはキッチリ払って貰う‼︎」
食い下がろうとしない大神に、陽は仕方ないと頷き…祈に声を掛けた。
「祈! ガオズロックに避難していろ‼︎」
「分かった‼︎」
祈を下がらせて、陽達はG−ブレスフォンを構えた。
「ガオアクセス‼︎」
3人の戦士は光に包まれ、ガオスーツを身に纏った。
「天照の竜! ガオゴールド‼︎」
中央に立った金色の竜が強く吠える。
「豪放の大熊! ガオグレー‼︎」
右に立った灰色の熊が雄々しく吠える。
「閃烈の銀狼! ガオシルバー‼︎」
左に立った銀色の狼が気高く吠える。
「命ある所、正義の雄叫びあり…!
百獣戦隊……ガオレンジャー‼︎」
ガオゴールドを筆頭とした新生ガオレンジャーが今、爆誕した。
「す、凄い…!」
改めて間近で、ガオレンジャーの姿を見た祈は驚愕する。そして、テトムも3人の勇姿に涙を流す。
「テトムさん?」
「ごめんなさい……昔のガオレンジャー達を思い出しちゃって……さァ行って! 新生ガオレンジャー‼︎」
テトムは確信した。この3人が集った今なら、かつてのガオレンジャーにも負けない、と……‼︎
「蛆虫共がァァ…‼︎ この水のヒヤータを舐め晒しやがってェェ……‼︎ オルゲットォォ!!!」
怒りに燃えるヒヤータは、多数のオルゲットを召喚した。
「さァ、貴方達‼︎ やっておしまい‼︎」
『オルゲットォォォォ!!!』
ニーコの命令に、オルゲット達は動き出す。対して、ガオゴールド達も破邪の爪を召喚して迎え討った。
「グリズリーハンマー‼︎」
ガオグレーは剛の大槌、グリズリーハンマーを振り上げてオルゲット達を吹き飛ばした。
「ガオハスラーロッド、サーベルモード‼︎」
ガオシルバーは剣の状態にしたガオハスラーロッドで、襲い掛かるオルゲット達を斬り伏せて行く。
「ドラグーンウィング‼︎」
ガオゴールドは二刀流にしたドラグーンウィングで、オルゲット達を両断にして行く。
今迄に無い連携、心強さにガオゴールドは内心、気が昂っていた。
「(凄い…こんな事、今迄に無い位の力が湧いて来るみたいだ‼︎ 今の僕達なら…かつてのガオレンジャーにも負けないチームになれる…‼︎」
そう考えながらも、眼前に迫ったオルゲットを斬り倒した。
余りに不甲斐ないザマに、ヒヤータは苛立っていた。
「たった3人ばかりに何をグズグズと……退くんだよ‼︎」
遂に、オルゲット達を下がらせてヒヤータが前線に立った。地面から突き出した水の触手を鞭の様にしならせ、ガオゴールドを狙う。
だが、その水の触手をドラグーンウィングで斬り払って躱し至近距離に迄、迫った瞬間にヒヤータの眉間を斬った。
「ぐあァァァ……!?!」
眉間から緑色の血を吹き出させながら、ヒヤータは呻いた。
その刹那、ガオシルバーがガオハスラーロッドをスナイパーモードに変形させ、隙ができたヒヤータの腹部を撃ち抜いた。
「う…ぐゥゥ……‼︎」
不意打ちを受け、ヒヤータは苦しむ。だが続け様に、ガオグレーがグリズリーハンマーで、ヒヤータの背部から叩き付けた。
「がはァァ……⁉︎」
立て続けに攻撃を受け、ヒヤータは怯む。三方向から、彼女を挟み込み包囲したガオゴールド達は、それぞれガオサモナーバレット、ガオハスラーロッド、グリズリーハンマーを構える。
「破邪……聖火弾‼︎ 邪気……焼滅‼︎
聖獣球‼︎ 玉砕‼︎
剛力衝‼︎ 爆砕‼︎」
各々の放った必殺技が、ヒヤータに次々と着弾し大爆発を引き起こした。天まで立ち昇る火柱に呑まれ、ヒヤータは遂に倒れ伏した。
「やったぞ‼︎」
ガオゴールドは勝鬨を上げた。だが火柱が収まると共に爆煙を掻き分けて、ヒヤータが立ち上がった。
「まだ生きとるんか⁉︎ しぶとい奴め‼︎」
ガオグレーは、予想以上のしつこさに舌を巻いた。
だが如何せん、受けたダメージは大き過ぎた。ボロボロの状態で辛うじて生きている様だ。ヒヤータは悪鬼の如く、顔を歪ませながら吠えた。
「許さ…なァァ……い‼︎ まだ、私は終わってないわ……‼︎
ニーコ‼︎ 何をボサッとしてるんだい⁉︎ 私を援護するんだよ‼︎」
ヒヤータは最後の手段として、ニーコに助け船を求めた。だが、ニーコは微笑んだまま何もしない。
「? 何を……黙ってる⁉︎ さっさと…‼︎」
「もう、お仕舞いですわァ。お姉様♡」
ヒヤータの言葉を黙らせて、ニーコは言った。次の瞬間、ヒヤータにボーガンを向けて穿つ。
「う…あ…⁉︎⁉︎」
ヒヤータは蹌踉めきながら、腹部を見る。突き刺さっていたのは注射器に似た弾丸だ。
「これ…は…⁈」
「ハァイ♡ お姉様の開発した、オルグシードの抽出薬ですゥ♡ だってェ、お姉様はもう負けちゃう寸前じゃないですかァ。自慢の智略も役立たず、最後の足掻きとしてガオレンジャーに挑んでも、この体たらく……後は、こうするしか無いですねェ?」
「き……きさ……まァァァ……!‼︎」
土壇場で裏切られたヒヤータは苦しみながら、ニーコを睨む。だが、ニーコはペロリと舌を出した。
「本望でしょう? 最後はオルグらしく死ねる様に御膳立てしてあげたんですからァ? じゃ…チャオ♡」
そう言い残し、ヒヤータは鬼門の中に消えていった。残されたヒヤータは、ボコボコと音を立てながら巨大化して行く……。だが知性は無くなり、ただ本能のままに暴れ回った。
「グゥ……ウアァァァッッ!!!」
最早、策士としての一面は無くなり、オルグの本能赴くままに暴れ回るヒヤータ。爪で廃校舎を切り刻み、水の鞭で大地を抉る。
「ガオゴールド‼︎ パワーアニマルを‼︎」
ガオシルバーに促され、ガオゴールドは我に返りガオサモナーバレットを天に掲げた。
「幻獣召喚‼︎」
天に打ち上げられた3つの宝珠が輝きガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが召喚された。
「幻獣合体‼︎」
その掛け声と共に合体、誕生する聖騎士ガオパラディン。胸部にソウルバードに搭乗したガオゴールドが吸収され、ガオパラディンはヒヤータと向かい合う。
「ユニコーンランス‼︎」
ヒヤータに、ユニコーンランスを突き付けるがランスは水の鞭に阻まれてしまう。
「ギイィィィッ!!!」
途端に鋭い爪で、ガオパラディンは切り裂かれてしまう。
致命傷には至ってないが、腐ってもデュークオルグ。オルグシード抽出薬で強化された分も相まって、ガオパラディンを後退させた。
「うわァァァッ⁉︎」
コクピット内に火花が走る。しかし戸惑っていれば、辺りへの被害は甚大になる。短期決戦に臨まねば…‼︎
「ゴールド! くそゥ…ガオビルダーが出せれば…‼︎」
ガオグレーは悔しそうに歯噛みした。先の戦いで多数のガオソウルを消費してしまい、ガオグリズリー達は疲労…ガオビルダーとして手助け出来ないのだ。それは、ガオシルバーも同様だ。
「グレー‼︎ 俺達の力を、パワーアニマルに込めれば……‼︎」
「…うむ…‼︎ それしか無いのゥ‼︎」
そう言って、2人は宝珠にありったけのガオソウルを込めた。そして、ガオパラディンに投擲する。
「ガオゴールド‼︎ 俺達の力を……‼︎
「使ってくれィ‼︎」
全てのガオソウルを注ぎ込んだ2人のガオスーツは粒子となって消滅した。だが、2人の戦士が託した力は、コクピット内に立つガオゴールドの手に渡った。宝珠を台座にセットし、ガオゴールドは叫ぶ。
「百獣武装‼︎」
その刹那、ガオユニコーン、ガオグリフィンは分離して、代わりに右腕にガオハンマーヘッド、左腕にガオリンクスは武装された。
「誕生‼︎ ガオパラディン・アナザーアームⅡ ‼︎」
〜2人のガオの戦士の力を受け取り百獣武装した時、心技体を兼ね備えた精霊の王となるのです〜
右腕のガオハンマーヘッドはリゲーターブレードを構え、左腕のガオリンクスは吠える。
ガオパラディン・アナザーアームⅡは素早く飛び上がり、ヒヤータの背部に回り込む。水の触手で捉えようとするも、ガオリンクスの繰り出すリンクスパンチで殴りつけられてしまい不発に終わった。
「が……アアァ……‼︎」
怒りに狂うヒヤータは向きを変え、爪で切り付けようとしたがリゲーターブレードで爪を斬り取られた。
「ひぎィィィ……‼︎」
激痛に喘ぎながらも、ヒヤータは水の触手を総動員してガオパラディン・アナザーアームⅡを捕まえた。だが、ガオパラディンは万力を込めて触手を引き千切った。
拘束を抜けたガオパラディンは左右に加速を始める。まるで分身したかの様に、5体に増えたガオパラディンをヒヤータは闇雲に切りつけた。だが、5体共、霞と共に消えた。
「コッチだ‼︎」
ガオゴールドの声に、ヒヤータは振り返る。其処にはガオパラディン・アナザーアームⅡが、リゲーターブレードを構えている。
「避けてみな! 悪鬼突貫! ホーリースパイラル‼︎」
突き出したリゲーターブレードが、ヒヤータの腹部を貫いた。ヒヤータは苦しみながら爆発していく。
「……あがァァァ……‼︎ 私が……こんな所で……ウラ…さまァァァ!!!!」
今際の際に知性が蘇ったヒヤータは苦悶の断末魔を上げながら、再び爆炎に飲み込まれた。燃えゆくヒヤータを背に、ガオパラディンはリゲーターブレードを肩に乗せる。
「やったァァァ‼︎」
ガオズロック内にて、テトムと祈が抱き合って喜ぶ。地上でも、大神と佐熊が肩を抱き合いながら喜んでいた。
勝利の雄叫びを上げつつ、ガオパラディン・アナザーアームⅡはリゲーターブレードを掲げた。
洗脳の解けた人々は、何があったか分からない様に歩いていく。中には猛と昇も居た。
「何だって俺達、こんな所に?」
「さァな…」
記憶の無い2人は首を傾げる。その際、陽が駆け寄った。
「猛、昇…‼︎」
親友の無事に、陽は安堵した。その声を聞いた猛は、陽を見ながらバツが悪そうに笑った。
「陽……昨日は悪かったな……俺、どうかしてたわ……」
その言葉に、陽も笑う。
「もう良いんだ……僕も、コソコソしてゴメン…」
今は未だ秘密を打ち明ける時期では無い。だから、必ず笑って話せる日が来る迄、戦い続けよう…! ガオレンジャーとして‼︎ 陽は、そう胸に誓った。
「ほら…早くしないと、遅刻だぜ?」
昇に急かされ、2人は慌てて走り出す。その様子を、祈は見ていた。
「祈ー? 早くしないと、置いてくよ〜?」
舞花と千鶴に呼ばれて、祈も急いで学校へと向かった。テトム、大神、佐熊は2人の姿を見ながら、微笑ましく笑った。
〜遂に四鬼士の2人目、水のヒヤータを撃破したガオレンジャー‼︎ だが、知性を活かして暗躍した彼女は手強かった。
全てのオルグを倒す時まで、ガオレンジャー達の戦いは終わらないのです〜
ーオリジナルオルグ
−水のヒヤータ
四鬼士の紅一点。智略を得意とし、狡猾な罠を張り巡らし敵を追い詰める策士。
普段は穏やかで冷静だが、自身の策が破られたり想定外の事態が起きると、荒々しく粗野な口調となる。
ハイネスデューク、ウラを信奉していた。
−邪装ヒヤータ
人間の姿を解き、オルグとしての本性を見せた姿。
口調は乱暴で汚くなり、策を用いず力に頼った戦い方に傾倒する。こちらが、彼女の本質らしい。