帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest29 狐と語らう!

「親方様‼︎ あれは⁉︎」

 

 一部始終を離れた場所にて、ガオレンジャー達の闘いを見ていたヤミヤミと鬼灯隊は、ゴーレムオルグの手を捻るかの様に倒した九尾の狐に目を丸くした。

 

「恐らく……パワーアニマルの一種に違いないな……。だが、あの姿は……」

「ご存知なのですか?」

 

 ヤミヤミは鋭い眼光でゴーレムオルグの残骸を見ていた。

 

「古来より……狐は人間共から神格化されて語り継がれていた。曰く、神々の使いだとか……曰く、妖の親玉だとか……海の向こうに栄えた大陸では、美女に化けて一国を崩壊させた、等と言う逸話も残る……」

「ほな……あれも、そんな狐なんでしょうか?」

 

 ライは、ヤミヤミに尋ねる。だが、ヤミヤミは首を振るだけだ。

 

「さてな……だが、我々の任務はガオレンジャーの壊滅……それを遮るならば、消すまでよ……」

「あの裏切り者の混血鬼は、宜しいのですか?」

 

 ホムラは聞いた。あのドサクサに紛れ、摩魅はガオレンジャーに保護されてしまった。しかし、ヤミヤミはさして慌てた様子も無い。

 

「所詮、人にも鬼にも成れぬ半端者……捨て置けば良かろう……我等は、ガオレンジャーと付かず離れずに監視しつつ探る事に徹する」

「何でだよ⁉︎ さっさと殺っちまえば良いじゃねェかよ⁉︎」

 

 コノハは不満そうに垂れたが、ホムラが其れを嗜める。

 

「黙っていろ、コノハ‼︎ 親方様には何か、お考えがあっての事だ‼︎ 我々は、それに従えば良い‼︎」

「ケッ‼︎」

 

 気に入らない、と言わんばかりにコノハは不貞腐れた。

 

「焦る事はない……我々は我々のやり方でガオレンジャーを攻める……行け、鬼灯隊‼︎ 竜胆市に潜入し、引き続き拙者の指示を待て‼︎」

 

『御意‼︎』

 

 ヤミヤミの命令を聞き、五人のくノ一達は一斉に消え去った。残ったヤミヤミは無言のまま……。

 

「いい加減に出て来ればどうだ?」

 

 と、後ろの暗がりの中に向けて言い放つ。すると突如、現れた鬼門の中から、ニーコが出てきた。

 

「流石、オルグ忍者の元締めですねェ♩ 気配を消していた筈なのにィ……」

「うぬの気配など隠し切れるものか。それより、拙者の後ろに立つで無い……命が惜しければな……」

 

 ヤミヤミは僅かに殺気を滲ませながら、ニーコを睨む。「んふッ」と、ニーコは妖しく笑う。

 

「何の様だ? テンマ様の言伝でも持って来たのか?」

「そんなんじゃ無いですよォ。ヒヤータお姉様も死んじゃったし、ヤミヤミさんに仕えようと思ってェ」

「要らん。目障りだ、消えよ」

 

 バッサリと切り捨てるヤミヤミ。そもそも、ヤミヤミはこのニーコと言う女を信用していない。

 テンマに仕えていると思えば、ヒヤータに擦り寄ったり彼女の形勢が悪くなると、アッサリ見捨てる様な女だ。

 信用出来た試しは無い。

 

「むゥ……連れない方ですねェ。女に冷たい殿方は、モテませんよォ?」

「興味ない。そんな事より、さっさと要件を言え」

 

 ぶっきらぼうにヤミヤミは吐き棄てた。ニーコは、クスリと微笑む。

 

「折角、ガオゴールドの弱点を教えてあげようと思ったのにィ……」

 

 勿体ぶる様な口ぶりに、ヤミヤミは振り返る。

 

「どう言う事だ?」

「……ふふ……ガオゴールドは優しい方ですわァ。敵であれば容赦はしないけど、心を許した者には何処までも優しく……そして愚かになりますわァ」

 

 ニーコの言葉を聞いたヤミヤミは、思う所があったのか黙りこくる。そして、口を開くと……。

 

「ふん……胸に留めて置こう……」

「それと、もう一つ……」

 

 そう言って、ニーコはヤミヤミにそっと耳打ちした。ヤミヤミは何か思案する様に肩を竦め、そのまま姿を消した。一人残ったニーコは、ニィ……と口角を吊り上げて笑う。

 

「んふふ……こっちもこっちでやらせて貰いますよォ……さァ、貴方達……出番ですよォ?」

 

 ニーコが、パンパンと手を叩く。すると、鬼門が開き姿を現す大柄の影……。

 

「ガオレンジャーには狙い通り“鼠”を忍ばせておきました……これから、ガオレンジャーを集中に攻撃して貰いますよォ……あ、先に言っときますけど……次は無いですよォ?」

 

 小馬鹿にしたニーコのケラケラ笑いに、二人の影はムスッとした様子だ。だが、ニーコに背を向けてドシドシと歩いていった。

 

 

 

 ガオズロック内では……帰還したガオレンジャー達の報告をテトムは聞いていた。

 

「狐の姿をしたパワーアニマル?」

 

 陽の報告を聞いたテトムは眉根を寄せながら尋ねる。

 

「うん……オルグの急襲から僕達を助けて……そのまま、消えていったんだ……」

「しかし……あれは助けた、と言うより現れた敵を倒した様な感じじゃのゥ……動物も、縄張りを荒らした他の動物に、攻撃を仕掛ける様にな……」

 

 陽に続いて、佐熊も議題に参加した。確かに、あの九尾の狐は、自分達に友好的と言った態度では無い。自分のテリトリーを荒らされ、それに激昂して攻撃して来た具合だ。

 だが、それ以前に九尾の狐はパワーアニマルの一種ならば、どう言った存在なのだろう?

 無言を貫いていた大神は、口を開く。

 

「陽の持つガオドラゴン達の様な、レジェンド・パワーアニマルの類かも知れないな……」

「レジェンド・パワーアニマル? 確かに九尾の狐は、伝説の動物だけど……」

 

 大神の考察に、陽も考える。

 九尾の狐……陽の知り得る限りでは、ファンタジー小説の中ではドラゴンと同じ位にメジャーなビッグネームだ。

 だが、殆どの作品に於いて九尾の狐と言えば、人類に仇を為す敵として描かれている。

 有名所が、平安時代に日本に現れ、美しい美女に化けて災いをもたらしたとされる妖狐『玉藻の前』や、中国の物語『封神演義』等に登場する傾国の美女とされた『妲己』も妖狐の化けた物だと描かれていた。

 

「ガオドラゴン達に聞いてみたらどうじゃ?」

 

 佐熊の提案に対し、陽はガオドラゴンの宝珠をかざしてみる。

 

「ガオドラゴン……あの狐は何なのか知っているか?」

 

 〜うむ、少しな……。レジェンド・パワーアニマルは然程、数は居ないゆ故な……〜

 

 ガオドラゴンの宝珠は輝きながら、言葉をテレパシーで伝えた。どうやら、ガオドラゴン達も、あの狐を知っているらしい。

 

「ねェ……この娘、熱があるみたいなんだけど……」

 

 話に熱中する四人を尻目に、祈は摩魅を介抱していた。あの騒ぎの後、急に意識を失った摩魅は高い熱を発し始めたのだ。

 

「おい、その娘を連れて来て良いのか? オルグと関係のある娘なんじゃろう?」

 

 佐熊は警戒心を解かずに、摩魅を睨む。過去に対峙した際、オルグ側に付いていた摩魅は言うなれば、自分達の敵に値する。それを助けるのは、機嫌では無かろうか?

 

「今すぐ、放逐した方が良い」

 

 大神も摩魅に対し懐疑心を抱いている。彼からすれば、オルグに操られ利用されたのだから、至極当然ではあるが……。

 

「そんな⁉︎ こんな熱を出している子を放っておく訳に行かないよ⁉︎」

 

 摩魅に対し敵意を向ける二人に対し、祈は非難した。しかし、テトムも不安げな顔を向けた。

 

「祈ちゃん……さっき、その娘を“混血鬼”だって、言ったわよね……?

 

 こんこんと眠り続ける摩魅を見ながら、テトムは続ける。

 

「もし、それが本当なら……この娘は人間とオルグの血を両方、引く存在と言う事になるわ……」

「人間とオルグの血を……って、そもそも、オルグが子を為せるのか?」

 

 テトムの言葉に、佐熊が突っ込む。言う迄も無く、オルグは邪気の集合体であり、厳密に言えば生物とは違う。

 

「……人とオルグの混血……前例は少ないけど、人として人間社会に溶け込んでいるオルグも居たわ。

 ともすれば、オルグと結ばれて子を残していたとしても、全く不思議では無いわ……」

 

 テトムはそう言いつつ思い出す。かつて、オルグでありながら、人の温かい心に触れて改心したオルグがいた事を……。

 彼の名は炭火焼オルグ……。彼も最初こそ、他のオルグ同様に破壊本能に従い、数多の人間を傷付けていた。だが、自分の焼いた焼き芋を美味しそうに食べる兄妹の優しさに触れ、人を襲う事を止めて自分の焼いた焼き鳥を振る舞い続ける事に幸せを感じる様になった。

 だが、不幸にもオルグとして生まれ堕ちた運命には逆えず、先代のガオレンジャー達と対立、戦いを経て一度は和解しかけたものも、オルグ達の仕掛けた卑劣な罠により知性を消されてしまい、最後はガオレンジャー達に引導を渡されてしまった。

 オルグは総じて悪、と言うそれまでの考えを否定し、穏やかなオルグも居る事を知る事が出来たが、矢張り人間とオルグは相入れる事は出来ない、とガオレンジャー達の報せにテトムは諦めていた……。

 だが、目の前にかつてとは境遇は違うが、オルグと人、両方の魂を持つ者……皮肉にも、オルグを倒す事を宿命とするガオレンジャーは二世代に渡って、また出会ってしまう事になった。

 

「もし彼女もそうなんだとすれば……彼女は人を襲う可能性も充分にあると言う事になる……だとすれば、彼女を置いておくのは余りに危険な選択ね……」

「……そうだな……」

 

 テトムの言葉に大神も同調する。万が一、彼女の中に流れるオルグの血が暴走すれば、自分達だけでは無く彼女を助けた祈も危険に晒される可能性が高い。極めてリスクの高い選択である事は事実だ。

 

「…でも…⁉︎ 兄さんは……⁈」

 

 祈は陽に助け船を求めた。他の仲間が彼女を助ける事に難色を示している以上、事実上、現ガオレンジャーのリーダーに当たる陽もまた、摩魅を擁護する立場に立てないだろう。

 陽は暫く悩んだ様子で考えていたが、意を決した様子で摩魅を見た。

 

「彼女を……助けよう……」

「兄さん‼︎」

 

 兄の言葉を受け、祈は喜ぶ。だが案の定、他の仲間は良い顔をしない。

 

「良いのか、陽……我々の首を絞める結果に成り兼ねないんだぞ?」

 

 大神は戦士として長いキャリアを積み重ねて来た人間としては、仲間の安全を優先したい。まして、オルグに利用され二度も狼鬼とされてしまった彼からすれば、尚更である。

 

「だからと言って……オルグを血を引いているからと言って……彼女を見殺しにする様な真似は出来ないよ……」

「………」

 

 陽と大神は戦士としての気構えが異なる節があった。

 人々の為に戦う、と言う面では共通しているが、陽は仲間、他人に関わらずに助けようとする、大神は仲間を守る為に少数の犠牲は止む無し…無論、その犠牲は自分も含まれているが……。その互いに譲る事が出来ない矜恃が、対立を招いてしまった。

 

「……陽……お前は優しい奴だ。それは悪い事では無いだろう……だが、敵に対する行き過ぎた優しさは何れ、己の身を滅ぼす事になる場合だってあるぞ?」

「彼女が敵だって証拠は無いでしょう⁈」

「敵では無い、と言い切れる確証も無い‼︎」

 

「二人共、止めなさい‼︎」

 

 遂に互いの感情が爆発し一色触発寸前にまで、ヒートアップしてしまうが、耐え切れずにテトムが一喝した。

 

「貴方達が揉めてどうするの⁈ 頭を冷やしなさい‼︎」

 

 テトムの鶴の一声で、二人は押し黙る。だが、まだ互いを睨みつけたままだ。祈はオロオロとした様子で二人を見た。

 遂に佐熊も口を挟む。

 

「月麿……お前の気持ちも分かるぞ……じゃが、今のワシ等は仲間内で争っている場合じゃ無い筈じゃ……違うか?」

 

 佐熊は大神を宥める様に言う。その際、居た堪れなくなった陽は口を開く。

 

「命は皆、尊い……例え、オルグの血を引こうとも、命は命だ…」

「!」

 

 大神は、陽を見る。悲しそうにも穏やかな表情だった。その姿に大神は不思議と懐かしさを感じ、目を見開いた。

 一瞬だが、陽の顔にガオホワイト/大河冴の面影がダブって見えた。

 彼女もまた、万物の命を尊ぶ優しい気性を持つ少女だった。

 そう言えば、竜崎兄妹は彼女の甥であると、テトムが言っていたが……どうやら、陽の優しさは彼女からの流れを系譜としているかも知れない……。

 

「……分かったよ……好きにしろ……」

 

 素っ気無いながらも、大神は一旦、話を切り上げる事にした。佐熊の言う通り、今は仲間内で争っている場合では無い。今すべきなのは……件の九尾の狐のパワーアニマルをどうするかについてだ。

 

「テトム……あの狐のパワーアニマルは、俺達の仲間になってくれるのか?」

 

 大神の質問に対し、テトムは首を横に振る。

 

「分からないの……レジェンド・パワーアニマルはガオドラゴン達以外は殆ど知らないから……」

 

 ガオの巫女であるテトムでさえ、未だに謎の多いレジェンド・パワーアニマルについては知識が少ない。

 ましてや、九尾の狐型のパワーアニマル等、過去に現れたと言う話も無い。話は振り出しに戻ってしまうが……。

 

 

「ガオワイバーンが、案内してくれるよ」

 

 

 ふと、こころが現れて言った。

 

「ガオワイバーンが? 何で?」

「本人が、そう言ってる」

 

 こころが、陽のポケットを指差す。陽はポケットから、ガオワイバーンの宝珠を取り出すと、鈍く光っている。

 

「ガオワイバーンが、何て言ってるか分かるの?」

 

 テトムは尋ねた。ガオワイバーンは、こころが加入すると同時にガオレンジャー陣営に加わったパワーアニマルだ。

 それも相重なり、謎も多い。ましてや、テレパシーで意思を伝えるガオドラゴン達と違い、ガオワイバーンはそうしない。だから、彼の心中を察する事は出来ないのだ。

 

「ガオワイバーンは、まだ子供だから、ガオドラゴン達みたいにテレパシーが使えない……でも、私はソウルバードだし、ガオドラゴン達は疎通が出来るの」

「そうだったのか……」

 

 今まで知らなかった新事実に、陽は納得した。

 ならば、ガオワイバーンを連れて行けば九尾の狐と和解までは行かなくとも、対話は出来るかも知れない……。

 

「とにかく……今は、もう一度、天狐山に向かう事じゃ。山歩きなら、ワシに任せとけ。歩き慣れとるからのゥ」

 

 佐熊はカラカラと笑う。だが、大神と陽は互いにバツが悪いのか、顔を見合わせようとしなかった。

 祈は二人が険悪となってしまった事に心を痛め、顔を曇らせる。そんな彼女を陽は肩に手を乗せ、優しく微笑む。

 

「祈……後は僕達に任せて、合宿先に戻るんだ」

「でも……」

 

 祈は未だに高熱に苦しみ意識が戻らない摩魅を見下ろす。彼女が気掛かりなのだろう。

 

「大丈夫……この娘は必ず守るから……祈は心配しなくて良い……」

「大丈夫よ、摩魅ちゃん。後で、天空島で採れる薬草を使ってお粥を作ってあげるわ。直ぐに良くなるわよ……」

 

 テトムも、祈を元気付ける様に言った。そんな三人の様子を、大神は何とも言えない面持ちで見ていた……。

 

 

 

 天狐山から離れた場所……辺りには家屋は無い辺鄙な場所だ。そこに一人で佇むは、メランだ。

 彼は炎の剣を右手に持ち、左手には小石を握っていた。

 ふと、石を天に投げる。ある高さまで昇った小石は、重力に従い落下して来た。それが、メランの眼前に落ちて来た瞬間、メランは剣を持ち上げ….…数回に渡り、空を切った。

 すると小石は剣風にて再び舞い上がり、少し離れた場所に転げ落ちた。そして、小石は地面に止まった瞬間、砕け散り砂状になった。砂は風に撒き散らされて、跡形も無くなってしまった。

 その際、彼の背後に気配を感じる。メランは振り返ると、ヤミヤミが立っていた。

 

「お前か……」

 

 メランは、フッと不敵に笑う。だが、ヤミヤミは無表情のままだ。

 

「テンマ様の陣営から離れるのか?」

「ニーコから聴いたのか? あの小娘、要らぬ事を……」

 

 メランはチッと舌打ちをする。

 

「“あの方”は許さぬだろう……裏切り者は特にだ……」

「だったらどうした? 来るなら迎え討つのみ……それに、我は奴の軍門に降った覚えは無い……」

 

 淡々と告げるメランに対し、ヤミヤミは呆れた様にため息を吐いた。

 

「お主が執心する少年……ガオゴールドに会って来た……貴奴は……確かに強くなっている……」

「そうか……それは何より……」

「しかし、分からぬ……お主の行動が、だ。何故に、敵に塩を送る様な真似をして迄、奴に拘る?」

 

 ヤミヤミからすれば、本来であれば倒すべき存在であるガオゴールドを導き、時には助ける様な真似をする彼の真意が読めないのだ。メランは、ニィッと笑う。

 

「理由など、聞くだけ無駄よ……我は宿敵とは対等でありたいのだ。弱い敵を倒した所で、それは何のメリットも無い。

 己より強い者、或いは互角の者を倒した時、初めて最高の悦に浸れるのだ。貴様には分かるまいな……」

「……分からんし、分かろうとも思わぬ……。お主とは一度も話があった試しが無い……何の気紛れで、お主の様な男を友としたか……未だに理解に苦しむ……」

「それは簡単だ。貴様は、この我と唯一、引き分けた男だからよ……過去に於いて、我と戦い立っていた男は最早、貴様だけだ……」

 

 メランは心底より楽しげに言った。だが、ヤミヤミは不愉快極まりない、と言った具合に唸る。

 

「お主の場合は“引き分けた”、では無く“見逃してやった”では無いか? 気に入った相手が後々、成熟してから食らい甲斐のある様に……」

「ガオゴールドの場合は、そうだ……だが、貴様は別だ。

 後にも先にも、我が死力を尽くし引き分けた男は、貴様が最初だ。言ったろう? “唯一”、とな……」

「ふん……物はいい様だな……何れにせよ、貴様を捨て置く訳には行かぬ……」

 

 そう言って、ヤミヤミは腰に差す忍刀を抜いた。

 

「それは裏切り者の制裁か? それとも我との決着か?」

「両方だ。そして、貴様との友情もこれ迄と知れ……さらばだ、焔のメラン……」

 

 ヤミヤミは刀を振り上げ、メランに迫って来た。

 

「我は死なん……叶えるべき夢を叶える、その時まではな……友の最後のよしみで……此処で死んで貰う……影のヤミヤミ‼︎」

 

 そして、メランも炎の剣を構え、ヤミヤミの斬撃を防ぐ。その瞬間、張り詰めていた空気が弾け、大気が激突した2振りの刃の音を伝えた。

 

 

 

 一方、天狐山では……陽を先頭に山中を歩いていた。横にはこころが一緒だ。その後ろを大神と佐熊が付いてくる。此処まで深く登ると、登山者にも擦れ違わない。獣道、と呼ぶに相応しいハイキングコースから外れた山道は、人も歩くのを避けるだろう。

 しかし、彼等はガオレンジャーである。体力は並の人間を凌駕している。ソウルバードのこころも、パワーアニマルの端くれである為、体力には自信がある。

 とは言え……こんな場所に祈を連れて来なくて正解だった、と陽は心中でごちた。

 その後ろを歩く大神は相変わらず、厳しい表情を浮かべながら歩いている。その横を歩く佐熊は話し掛ける。

 

「まだ、気にしとるんか? 」

 

 佐熊の声に大神は顔を向ける。

 

「お前らしくも無いのォ……あんな感情を露わにする奴じゃ無かったろうに……そんなに心配か? 陽の事が……」

 

 大神は確信を突かれ、眉の皺を深めた。

 

「アイツは優し過ぎる……だが、テトムは言った。その優しさが、陽の強さなんだと……確かに、その通りだ。アイツは、狼鬼となった俺を見捨てずに最後まで助けようとし、そして救ってくれた……だが、それ故に敵に不意を突かれ易い危うさもある……それだけが不安だ……」

「優し過ぎる……か……テトムも良い所を見とるわい……しかし、お前さんも相当、“優し過ぎる”んじゃ無いかのゥ?」

 

 茶化す様に、佐熊は呟く。したり顔で笑う佐熊に対し大神は頬を赤らめて「黙って歩け」と、そっぽを向いた。

 

 

 陽は、ポケットの中からガオワイバーンの宝珠を取り出し尋ねてみた。

 

「ガオワイバーン、本当にこっちで良いのか?」

 

 陽が不安に感じるのも無理はない。ガオワイバーンに従い歩き続ければ続ける程、山の奥の奥まで踏み込んで行くからだ。宝珠が光ると同時に、隣に歩くこころも頷く。

 

「こっちで良いって」

「そっか……でも、何でガオワイバーンが知ってるんだ? 」

「彼は、ずっとこの山で暮らしていたから……“彼女”と一緒に……」

「彼女?」

 

 其れを言えば何故、こころも詳しいのか? それらは、九尾の狐に会えば分かるかも知れない……そう考えた矢先……。

 

「……何だか、雲行きが怪しいのゥ……」

 

 後ろから、佐熊が言った。空を見上げれば成る程、黒い雲が広がり、やがてポツリ、ポツリと雨が降って来た。

 

「くそッ‼︎ やっぱり、泣き出しよったわ‼︎」

 

 雨が降れば、山道を歩くのは難儀になってしまう。陽は、これ以上に登山するのは無理かと思った。

 

「ガオズロックで直接、向かうべきだったかな……」

「無理…。空からじゃ、結界の所為で入り口が見つからない。歩いて行かないと…」

 

 と、こころが言った矢先……。

 

 

 〜妾の縄張りを犯すのは、誰かえ……〜

 

 

 突然、山に響く声に陽達は警戒する。すると、足元が急に揺れだしたかと思えば崩れていき、斜面の様になっていた。

 

「な、これは⁉︎」

 

 慌てて体勢を立て直そうとするが、もう遅い。四人は斜面を滑り落ちる様に、落下して行った。

 

 

 

「ううん……」

 

 気が付いた陽は周囲を見渡す。其処は巨大な空洞の中だった。周りを見れば、大神や佐熊、こころも居た。

 

「皆……無事か⁉︎」

 

 陽が呼び掛けると全員、目を覚ました。どうやら、怪我は無いらしい。

 

「やれやれ……とんだ災難じゃ……果て? 此処は?」

 

 佐熊は身体を起こしつつ、見慣れない風景に警戒する。

 

「おい……あれを見ろ……‼︎」.

 

 大神が指を指すと、地面の中心の一部が盛り上がり巨大な台座となっている場所がある。その上から見下ろして居るのは……。

 

 

 〜その方達は、何者じゃ〜

 

 

 それは先程の戦いに乱入して来た白い九尾の狐だ。その容姿、神々しい姿を見た陽は一言…「美しい」としか思えなかった。

 

「久しぶりね、ガオナインテール」

 

 こころが、旧友に呼び掛ける様に声を掛けた。

 

 〜そなたは……ソウルバードの雛か……。ふん……随分と醜い姿に擬態したものよ〜

 

 嘲る様な口ぶりの九尾の狐改め、ガオナインテール。こころは膨れっ面をした。

 

「この姿は、それなりに気に入ってるわ」

 

 〜それより……何のつもりで、妾の縄張りに人を入れた?〜

 

 ガオナインテールは若干、怒りを見せる。だが、こころはすました様子だ。

 

「彼等は、今代のガオレンジャー。貴方に会いたがっていたから連れて来たわ」

「初めまして……僕はガオゴールド、ガオの戦士です……」

 

 〜興味ないわ……妾の縄張りを荒らし、ズカズカと寝床にまで踏み込んで来るとは……〜

 

 ガオナインテールは不機嫌極まりない、と言った具合に唸る。どうやら、ガオナインテールは人間に対し不信感を抱いてるらしい。

 

「今、オルグ達が人間世界に蹂躙し人々は危険に晒されています。ですから、どうか……僕達に力を……!」

 

 〜クッ…笑止な。何ゆえに、妾がそなた等に力を貸さねばならぬ……〜

 

 陽の言葉を途中で切り、ガオナインテールは言った。

 

 〜あのオルグとやらは、そなた等、人間共が生み出した物であらうが。なれば、それを如何にかするのは、そなた等がやれば良かろうに……。妾は、この山に篭って千年近く経つ……今更、此岸に姿を見せるつもりは無い……大体、人間を助けてやる道理も無いしの……〜

 

 つまらなそうに、ガオナインテールは首をもたげる。

 

「貴方も……人間を毛嫌いしているのですか?」

 

 〜痴れ者が……己達が我々に好かれているとでも思うたか? 思い上がりも甚だしい……妾は、この山に住み着く遥か昔より人間共の歴史を見て来た……血と欲に塗れた歴史をな……。人間共は何千年もの間、破壊、殺戮、戦争……同じ事を繰り返しているだけでは無いか……妾も欲に支配された人間共に警告する名目で、過去に何度か人の姿を取り干渉して来た……だが、無駄だったよ。人間は時を経て、己の過ちを忘れ去り、妾を極悪非道な妖狐等と呼んで、起きた災厄全てを妾の所為にした……最早、人間には愛想も尽き果てた……人間が滅びるなり、オルグが滅びるなり好きにすれば良い……〜

 

 ガオナインテールは、そう言って丸まってしまった。

 

「貴方の言う通り、人間は何度も間違いを冒しました。そして、これからも冒すでしょう……でも、全ての人間が、そうである訳では無い……」

 

 〜詭弁を言うな、我々を戦の道具にしているだけの小物が、小賢しい事を言うで無いわ! 片腹痛い……!〜

 

 ガオナインテールに言葉を切られ、陽は口を噤む。その際、陽のポケットから宝珠が飛び出し、ガオワイバーンが姿を現した。

 

 〜お前か……雛と共に居なくなったかと思えば、人間共に飼い慣らされていたか……〜

 

 ガオナインテールは、ガオワイバーンを見て呟く。すると、ワイバーンは小さく吠えた。

 

 〜何だと? 陽は違う、優しい奴だ…だと? 馬鹿馬鹿しい……人間など、総じて地球を汚す無用の長物だ〜

 

「随分と嫌われたもんじゃな……」

「とは言え、事実は事実だ。耳に痛い話だ……」.

 

 必死に語り掛けるガオワイバーンの言葉にも、ガオナインテールは取り付く島も無い。そこへ、更に三つの宝珠が浮かび上がる。

 

 〜山に篭りすぎて、周りが見えなくなったか? 狐の君よ……〜

 

 その言葉と共に、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが姿を現す。

 

 〜これはこれは……よもや、そなた等の顔を見る事になろうとは……ほんに、今日は縄張りを荒らされるわ、見たくもない顔を見る羽目になるわ……厄日かの……?〜

 

 ガオナインテールの皮肉全開の言葉に対し、ガオドラゴンは牙を出して唸る。

 

 〜我々とて、貴様の顔など見たくも無いわ……だが、今は我々も、ガオゴールドに力を貸している身だ……〜

 

 〜そなた等が力を貸す、とな? 何と、珍妙な……妾以上に人間を見下していたのは、そなた等では無かったか? 人間の家畜に成り下がるとは……〜

 

 ガオナインテールは、さも愉快な物を見た様に笑う。しかし、ガオユニコーンが遮る。

 

 〜私達は自ら、ガオゴールドに力を貸すと決めたのです。彼は、其れだけの意志を私達に示してくれました……〜

 

 〜人間の家畜? それは、我々への侮辱だ‼︎ 取り消せ‼︎〜

 

 冷静に諭すガオユニコーンと、怒りを滲ませるガオグリフィン。だが、ガオナインテールはそっぽを向く。

 

 〜揃いも揃って人間を信じろ、とは……失せよ、気紛れに結界を緩めて招いてみれば興醒めよ……とんだ茶番に付き合わされたわ……〜

 

「待って下さい‼︎ このままでは地球が死んでしまう‼︎ そうなれば、貴方だって……」

 

 〜黙れ、人間が‼︎ 地球が滅びるなら、それも仕方ない……人間の身から出たサビだ……既に妾は、永き時を生きて来た。見たくも無い物を見続けて来た……もう充分だ、自然の摂理に従い……地球が滅びると同時に、我等も消えるのだ……。

 さっさと去れ! もう話す事は何も無い……〜

 

 そう言い残し、ガオナインテールは眠り出した。ガオドラゴンは呟く。

 

 〜狐の君よ……私も、人間を完全には信じていない……だが、陽は全ての人間が悪では無いと思わせてくれた……もし、我等の言葉に耳を傾ける気があるなら……共に戦って欲しい……〜

 

 独り言の様にガオドラゴンは言ったが、ガオナインテールは知らぬ存ぜぬを決め込んでいた。

 

「……ごめん、やっぱり駄目だ……力になってくれそうに無い……」

 

 こころは謝る。が、陽は微笑む。

 

「しょうがない……行こう……」

 

 そう言って立ち去ろうとした時……三人のG -ブレスフォンが鳴り響く。

 

『皆、大変よ‼︎ オルグが山に火を……‼︎』

 

 テトムの声が響く。陽達は目を合わせ頷く。ガオドラゴン達を宝珠に戻し、四人は空洞を後にした。

 こころは振り返りざまに、ガオナインテールを見たが、無言のままに走り去る。

 残されたガオナインテールは小さく一言……

 

 〜あの若僧が、そなたの待ち望んだ者なのかや?

 のう……アマテラスよ……〜

 

 それだけ言って、再び眠り始めるガオナインテールだった……。

 

〜人間に対して、素っ気なく接するガオナインテール……彼女は陽達と力を合わせる事は無いのでしょうか⁉︎

そして、ガオナインテールとアマテラスの関係は⁉︎〜

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