帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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今回は二話、同時に掲載にてお送り願います。



quest SP6 神龍、吠える!

 “彼”は眠っていた。暗闇の中で……悠久の眠りに就いていた…。かつて、彼は不毛な地に降臨し、大地に草木を芽吹かせ、動物達に叡知を与えた。

 やがて、彼等は小さな集落を作り、命を育んで数を増やしていった。やがて、集落は町となり、時を経て国となった。

 彼は、壮大となった国を見届けると自身の分身を宝珠に封じ込めて大地の底で眠りに就いた。万が一、国に仇為す者が現れた時は、降臨し力を貸す為に……彼は眠りに就いた。

 だが百年、二百年経っても平和の日々が続く。彼は眠りながらも熟考した。最早、自分を必要とはしていない…と…。

 ならば、世界が終焉を迎える日まで、眠り続けるのも一興…彼は、そう言う結論に至り、深く眠り続けた。

 あれから、何年…いや、何十、何百と経っただろうか? ふと、彼は自身を呼ぶ声に耳を傾けた。

 聞き違い等では無い。確かに、自分を呼んだ。地上で何が起きているのか、彼には知る由もない。現に、彼が眠りに就いた日から自分を呼び覚まそうとした者は居ない。

 しかし…誰かが自分を必要としている……だが、身体を動かそうにもピクリとも動かない。

 彼は自分の身体を見て驚く。幾多にも及ぶ木の根が、身体に巻きついている。鬱陶しい為、引き千切ろうと試みたが、根は強固に巻きついており、離れてくれない。

 更には、自身の眠る辺り一帯が枯れた様に固まり殊更、動きを鈍らせている。

 これには、流石に違和感を感じずには居られなかった。自分が眠っている間、想像を絶する事態が起きたのかも知れない。それを確かめ様にも、身体に巻き付く根が邪魔をする。

 どうするべきか考えあぐねていると、その根を伝わって力が流れ込んで来る。

 それが何かは分からない。だが、その力は奔流の様に彼の身体に流れ込み、力が見る見る内に満たされて行くのが分かる。彼は身体を動かして見た。すると、根は紙を裂くかの様に簡単に千切れた。今度は頭を動かす。首を締め付けるかの様に巻きついていた根は切れた。

 どうやら、自分を邪魔する物は無くなったらしい……彼は、上昇を始めた。何が起きているかは分からない。だが……必要とされた以上は、答えねばならない……その為に、己が力の一部を地上に置いて来たのだ……彼は上昇を続ける。自分を呼ぶ声に応える為に……。

 

 

 城下でも人々は騒ぎ立てていた。王宮に賊が侵入、若者達が化け物相手に戦いを挑んだと、天地がひっくり返った様な騒ぎとなっていた。

 万狗は、火の手が上がる王宮を見て、目を丸くする。

 

「母ちゃん‼︎ 大変だよ、王宮が‼︎」

 

 母親を呼び出して、王宮を指差す。母親も、息子の見る方角を見て、事の顛末を理解した。

 

「あの子達……遂にやっちまったんだね……! 何て、馬鹿な真似を…‼︎」

 

 母親は、狼尾達が遂に反乱を起こしたのだろうと勘違いした様だ。万狗は、ウズウズし出す。

 

「母ちゃん……僕……‼︎」

「駄目だよ、万狗‼︎ 子供の行く所じゃ無い……アンタはここに居な‼︎」

 

 と、母親に叱責された。先程、佐熊に反乱に加わるのを止められ、彼は家に帰った。

 まだ幼いながらも、自分が居なくなれば母親と妹が悲しむ事を佐熊に教えられたからだ。

 だが、狼尾達は反乱を起こしてしまった。万狗は弱い自分を呪った。その際、母親が表に出て行く。

 

「か、母ちゃん⁉︎」

 

 母親の後を追い、万狗は外に飛び出す。すると目の前に、地べたに跪き祈りを捧げる母親の姿があった。

 

「母ちゃん、何やってるの?」

「神龍様に祈りを捧げているんだよ!」

 

 母親は一心不乱に祈っていた。万狗は母親に食って掛かる。

 

「……母ちゃん! こんな時に…‼︎」

「こんな時だからだよ‼︎ もう、私達に出来る事なんか何も無い……神龍様に縋るしか無いじゃないか!」

 

 母親の言葉に万狗は悟る。もう神に縋らなくちゃ、どうにもならない瀬戸際まで立たされているのだ。

 周りを見れば、家から出て神龍様に祈る者達が多々、居た。

 万狗は神龍と言う存在を信じていなかった。所詮、この世に神様なんて居ない……あるのは、抗いようの無い不条理……それだけだと思っていた。

 奇跡なんて願うだけ無駄だ……皆、自分を守るだけで手一杯だった。それは、万狗も例外じゃ無かった…。

 だが……もし本当に居るなら……神龍が本当に居て助けてくれるなら……。

 気が付けば、万狗も母親の横に跪いていて、祈り始めた。

 

「(お願いします……本当に居るなら……もし本当なら……母ちゃんを…薫々を…この国の皆を助けて下さい、神龍様‼︎)」

 

 信じていなかった……実を言えば、今でも信じていない。

 しかし……もし、本当に神龍が存在しているなら、今の状況から自分達を救ってくれるなら……少年は強く誓った。この国の為に尽くす人間になると……少年は強く願った。だから……奇跡を起こして欲しいと……‼︎

 その際、大地が凄まじく揺れ始める。万狗は突然の地震に驚くが、彼の目の前に目を疑う物が映った。

 王宮を覆い尽くさんとするオルグドラシルの前から立ち昇る光り輝く龍……龍は、巨樹の真上にまで上昇すると、五つに分身して降りて行った。

 

「…し、神龍…?」

 

 万狗は存在しないと諦めていた神龍の存在を目撃した。

 

 

 

 その頃、王宮では……。

 ガオゴールド達は自分達の目の前に立つ五人の戦士……それは、かつて地球をオルグ達から守り抜いた歴戦の勇者、ガオレッドを筆頭とするガオレンジャー達だった。

 

「な…なんと⁉︎ これが、予言の八戦士だと⁉︎」

 

 流石のウラも、これには凝視するしか無い。此処には存在しない筈のガオレンジャー達が全員、集結を果たすとは……。

 

「ああ…言い伝えは本当だった…! 八戦士が来て下さった…!」

 

 娘々は感嘆の涙を流す。しかし、ガオシルバーは目の前に現れた彼等が今、戦える状況に無い事をしている。

 ガオゴールドもそうだ。かつて、ガオゴッドから彼等が敗北した後、行方不明になってしまった事を知らされた。

 だが……今は、そんな事はどうだって良い。共に戦ってくれる戦士が駆け付けてくれたのは心強い。これなら、ウラ率いるハイネス三人衆に対抗出来るかも知れない。

 ガオゴールドはドラグーンウィングを構え、号令を掛けた。

 

「皆、行くぞ‼︎」

 

 ガオゴールドの言葉に、ガオの戦士達は臨戦態勢に入る。だが、ウラも負けてはいない。

 

「えェい‼︎ 当初と予定は違うが……ガオレンジャー達を血祭りに上げよ‼︎ 行けェ、オルゲット達よ‼︎」

 

 ウラはオルゲット達に命令を下した。オルゲット達は一斉に武器を構えて攻撃を仕掛けて来た。それに合わせて、ガオレンジャー達も仕掛ける。

 

「ブレイジングファイヤー‼︎」

 

 ガオレッドが、ライオンの顔を模した鉄甲ライオンファングを両手に装着し、ガオソウルを纏わせながら袈裟懸けに奮い、オルゲット達を叩き伏せて行く。

 

「ノーブルスラッシュ‼︎」

 

 ガオイエローが、鷲の横顔を模した長剣イーグルソードを装備し、ガオソウルを纏わせた斬撃をX状に放ち、オルゲット三体を斬り捨てていく。

 

「サージングチョッパー‼︎」

 

 ガオブルーが、鮫の背鰭を模した二振りの短剣シャークカッターを用いて、ガオソウルを纏わせた斬撃を左右から奮い、オルゲット二体を一閃する。

 

「アイアンブロークン‼︎」

 

 ガオブラックが、牛の顔を模した手斧バイソンアックスにガオソウルを纏わせ、力強く振り下ろし、オルゲットを斬り裂いて行く。

 

「ベルクライシス‼︎」

 

 ガオホワイトが、両端が虎の顔を模した根タイガーバトンにガオソウルを纏わせ、オルゲットの腹部、顔面を打ち据える。

 

 五人の戦士達は各々に、オルゲット達を近付かせまいとした。ガオゴールドは、彼等の勇姿に目を張る。

 

「凄い……‼︎ これが、ガオレンジャーなのか…‼︎」

 

 まだ、自分が産まれる前に戦った伝説の戦士達……話に聞いていたが、これ程とは……。

 

「ゴールド‼︎ ボーっとしとる場合か‼︎ ワシ等も負けてられんぞ‼︎」

 

 ガオグレーが、オルゲットを投げ飛ばしながら、ガオゴールドに叫ぶ。その声で漸く、ゴールドは我に返った。

 

「銀狼満月斬り‼︎」

 

 一足早く、ガオシルバーは駆け出し、ガオハスラーロッドをサーベルモードにして、オルゲット達を次々、斬り倒して行った。

 

「ガハハハ! 大神の奴、張り切っとるのォ‼︎ どれ、ワシも! 大熊豪打‼︎」

 

 ガオグレーも、グリズリーハンマーをバットの様に振り回してオルゲット達を吹き飛ばしていく。

 

「竜翼日輪斬りィ‼︎」

 

 ガオゴールドも、ドラグーンウィングを構えて、オルゲット達を斬り倒して行く。瞬く間に、オルゲット達の数は減って行った。

 

「……」

 

 だが、ウラはそんな状況ながらも顔色を変えず、黙したまま傍観していた。だが、その顔は悪巧みを考える様な邪悪な顔だった。

 

 

「す…凄い…」

 

 テトムと共に後方に退がっていた娘々は、ガオレンジャー達の強さ見て、素直に驚いていた。

 あの化け物を相手に正面から渡り合う戦士……正しく、自分達が待ち望んだ者達だった。

 

「一体、あの方達は?」

「……ガオレンジャー……」

 

 テトムが、ポツリと呟く。娘々は彼女の顔を見る。

 

「テトムさん?」

「…ガオレンジャーが…帰って来たわ…」

 

 何時しか、テトムの瞳から一筋の涙が浮かんでいた。

 彼女は思い出していたのだ。かつて、共に戦っていた戦士達が陽達と共闘している姿を見て、十九年前の戦いを……。

 

「……彼等なら、やってくれるわ……十九年前の、あの時の様に……」

 

 そう……十九年前もそうだった。危機的な状況に関わらず、彼等は立ち向かった。正に今と同じだった……全てのハイネスを倒し、最後のオルグを倒したのも束の間……倒した筈のハイネスが復活し、更には最強のオルグ、センキの登場で希望から絶望に叩き落とされた……その上、全てのパワーアニマルが消滅してしまうと言う窮地に立たされたが、彼等は最後まで挫けなかった。そして、復活したパワーアニマル達の力を借りて、遂にセンキを討ち滅ぼした。

 あの時と同じく、ガオレンジャー達が集まったなら、きっと勝てる。そう信じさせてくれる。

 

「大丈夫よ……皆を信じて……‼︎」

 

 テトムの言葉を受けた娘々は、強く希望を抱いた。

 

 

 

「さァ……後は、お前達だけだ‼︎」

 

 オルゲット達を全員、倒したガオゴールド達は、ウラの前に立つ。

 

「ホホホ……‼︎」

 

 しかし、ウラは気に止める様子もなく北叟笑むだけだった。

 

「何が可笑しい⁉︎」

 

 ウラの様子に、ガオゴールドは怒鳴る。

 

「そなた達は分かって居らぬ……この、オルグドラシルが此処に立つ意味を……オルグドラシルよ‼︎ 大地を吸い尽くせ‼︎」

 

 ウラが命を下すと、オルグドラシルは共鳴するかの様に蠢いた。すると、木の根が水を得た魚な様に地中で這い回った。

 

「な、何を⁉︎」

「何の事は無い……オルグドラシルの張り巡らせた木の根は、今や国中に広がっている。つまり……この国に立つ物全てが、オルグドラシルは養分となるのでおじゃる」

「それは、つまり……」

「そう……今、オルグドラシルが国中の人間達の命を地脈から吸っているのでおじゃる」

 

 ウラの言葉に、ガオゴールドは驚愕した。

 

「ホホホ……嘘だと思うなら……耳を済ませて聴いてみよ……。国中の者達の悲鳴が聞こえて来るぞよ」

 

 

 ガオゴールドは、その言葉に従って自身の聴力を集中させた。すると……。

 

 〜ああ……苦しい……‼︎〜

 

 〜た、助け…て…‼︎〜

 

 〜だ…誰か…‼︎〜

 

 人々の苦しみに喘ぐ姿が耳に入った。ウラは、さも愉快そうに嗤う。

 

「ホーッホホホ‼︎ 人間共の苦しみ呻き嘆く声は聴いていて実に爽快におじゃるよ‼︎ ホーッホホホ‼︎」

「や、止めろ‼︎ こんな事、今すぐ止めさせろ‼︎ お前の敵は僕達だ‼︎ 街の人達は関係無い筈だ‼︎」

 

 余りにも下衆なやり口に、ガオゴールドは激昂した。だが、ウラは嗤うだけだ。

 

「何を言う……これは見せしめにおじゃる……麿に逆らえば、どうなるか……最も分かり易い形で表しているのじゃ。

 それに、もう遅い。オルグドラシルは一度、養分を吸い出せば、その場所が枯渇する迄、止まる事は無い。これ迄は、地脈より少しずつ吸っておったが……今や、その吸い上げる速さは、この国を半日で砂漠に帰るじゃろう…」

「は、半日…⁉︎」

 

 その言葉に、ガオゴールドは絶句した。このままでは、瓏国は半日の間に、死の世界と化してしまうからだ……。

 

「ガオゴールド‼︎ あの樹を焼いてしまえば…‼︎」

 

 ガオシルバーが提案した。確かに、所詮は樹だ。焼けば崩れ落ちてしまう筈だろう……!しかし、ウラは大笑いした。

 

「ホーッホホホ‼︎ そなたはうつけか、シロガネ? あんな巨大な樹を焼き払う等……ましてや、あれは国中から得た命を養分としている……お前達が火を点ける間に、ぐんぐん成長するじゃろうな。諦めよ……最初から、そなた達に勝ち目は無かったのでおじゃるよ」

「クッ…‼︎」

 

 これもダメ……だが、何か方法はある筈だ。しかし、考えている暇は無い。このままじゃ、国中の人間がオルグドラシルの餌として吸い尽くされてしまう……。時間が全然、足りない……!

 

「ホホホ……‼︎ お主達に良い事を教えてやろうぞ…! あの樹はな……まだまだ若木なのじゃ。本来は鬼地獄に充満する濃厚な邪気を吸って、天を衝かんばかりに巨樹に成長するのじゃ……この国の人間達を吸い尽くしたら、果たして、どれ程に成長するか……見物におじゃる」

 

 ウラは下卑た顔で言った。あれだけ巨大なオルグドラシルでさえ、まだ成長する余地を残している……つまり、成長すればする程に、街の人達は死んでしまう……。

 だが、自分達には手も足も出ない。完全な四面楚歌である。

 と、その時……ガオゴールドの脳裏に言葉が響く。

 

 〜天に宝珠を撃ち込め〜

 

 それは、ガオゴッドの声だ。彼が、テレパシーで伝えたのだ。ガオゴールドは迷う事なく、ガオサモナーバレットを天に向けて、宝珠を撃った。

 撃ち上がった宝珠は天まで届き……空間が歪んだ。

 すると、歪んだ中から声が響いた。

 

 〜漸く繋がったな……〜

 

 其処には巨大な精霊王……百獣の神、ガオゴッドの姿があった。

 

「千年の友⁉︎」

「荒神様⁉︎」

 

 ガオシルバーとテトムは叫ぶ。竜胆市より動けぬ筈の、ガオゴッドが姿を見せた。だが、ガオゴッドは応えず、手を振るう。すると、彼の横をすり抜ける光……それは、形を作り……。

 

「ガオドラゴン‼︎」

 

 ガオゴールドの相棒である、ガオドラゴンが姿を現した。更には、ガオワイバーンとガオナインテールを引き連れていた。

 

 〜ガオゴールド、遅くなって済まない…〜

 

 ガオドラゴンは、ゴールドを見下ろしながら詫びた。しかし、他のパワーアニマルが居ない事を訝しがる。

 

「ガオユニコーンとガオグリフィンは⁉︎」

 

 〜奴等は空間に広げた穴が閉じぬ為、向こうで耐えている……他のパワーアニマル達も協力してくれた……〜

 

 〜何じゃ……妾達では不足かや?〜

 

 ガオナインテールが不満げに言った。不足なんかでは無い……今、この状況だからこそ、非常に心強い。

 

 〜彼等も、行方が知れなくなったお前達を救う為、方々を探し回っていた……漸く、この世界との道が繋がり、此方へ連れて来る事が出来たのだ……〜

 

 ガオゴッドが説明した。彼が、ガオドラゴン達を連れて来てくれたのだ。

 

「ウヌゥ……ガオゴッド! 余計な真似を‼︎」

 

 ウラは思わぬ邪魔に恨みがましげに唸る。この状況で、パワーアニマル達の介入は分が悪いからだ。

 

「ガオドラゴン‼︎ オルグドラシルが人々の命を吸っているんだ‼︎ このままじゃ……‼︎」

 

 〜皆まで言うな……全ては、ガオゴッドより聞かされている……ガオワイバーン、ガオナインテール……行くぞ‼︎〜

 

 ガオドラゴンが命令を下す。だが、ガオナインテールは……。

 

 〜フン……トカゲが、妾に命令するな……準備など、当に出来ておるわ‼︎〜

 

 と言って九本の尾を展開した。ガオワイバーンも、二体の後方に下がる。

 その刹那、ガオドラゴンの口、ガオナインテールの尾から炎が放たれた。ガオワイバーンは後方より援助する様に、翼を羽ばたかせて突風を仰ぐ。

 すると、合体した巨大な炎がオルグドラシル全体に広がる。

 たちまちに、オルグドラシルは炎に包まれて行き、やがて灰となって朽ちて行った。

 

「あああァァァ!!? 何と言う事を⁉︎」

 

 ウラは余裕のある態度が崩れ、狼狽した。苦心の末、漸く育てた樹が一瞬の内に燃え崩れてしまったからだ。

 

「凄いぞ、ガオドラゴン‼︎」

 

 ガオゴールドは、パワーアニマル達の活躍で、災いの根源であるオルグドラシルは死んだ。これで、人々は救われた筈だ。

 

「おのれ……許さん、許さんぞ‼︎ よくも、麿の計略を台無しにしてくれたな……‼︎」

 

 だが、ウラ達は未だ生きている。奴等を倒さなくては、戦いは終わらない。

 

「……しかし‼︎ 甘いぞ、オルグドラシルを焼いても、邪気までは消せぬ‼︎ オルグドラシルに蓄えられた濃厚な邪気はな……‼︎

 さァ……全ての邪気よ‼︎ 麿の身体に集まるでおじゃる‼︎」

 

 ウラは扇子を天に翳す。すると、オルグドラシルの灰は浮かび上がり邪気と化す。その邪気は導かれるままに、ウラの身体に吸い込まれて行った。

 

「ホホホホホホ‼︎ 見るが良い‼︎ オルグドラシルの邪気を吸収し、更にはシュテンとラセツの骸も取り込む事により‼︎ 麿は更なる究極の存在へと昇華するのでおじゃるゥゥゥ‼︎」

 

 ウラの身体は、シュテンとラセツの身体を取り込む事により、見る見る巨大化して行った。やがて、邪気が晴れると……。

 

「グハハハ‼︎ 我こそは最強にして最凶のオルグ! 邪神アシュラだ‼︎」

 

 現れたウラは、より禍々しい外見と化し、顔は正面がウラ、右面がシュテン、左面がラセツ、更には腕が三体のハイネスを合わせた六本と、三面六臂の鬼神として生まれ変わったのだ。手には三人の武器がそれぞれ融合した『修羅百鬼剣』として握られている。

 体型もずんぐりしていた物から、人型に近いシャープかつマッシブな物に変化している。

 

「こうなれば最早、手加減はせんぞ‼︎ 見るが良い‼︎」

 

 アシュラが修羅百鬼剣を振ると、邪気を纏わせた斬撃が王宮の城壁を抉る。更に、アシュラが歩いた後は草木が枯れていく。

 

「な、何て禍々しい‼︎ ウラを始めとしたハイネス達の怨念が、此処まで醜悪な姿にしたとでも言うの⁉︎」

 

 ガオシルバーは、アシュラの力を見て戦慄する。

 

「グハハハァ!!! 素晴らしい、邪気が見る見る湧いて来る‼︎

 このまま瓏国の上空より、濃密な邪気を撒き散らしてやる‼︎ この国を、全滅させてくれるわ‼︎」

 

 そう言うと、アシュラの背中から六つの突起が出現し、アシュラは舞い上がる。その際、アシュラの口から煙が吐き出されたかと思えば、巨大化したハンニャが現れた。

 だが、其処に意思は無く、ただ本能に任せて暴れ回るだけの怪物と化している。

 

「さァ、ハンニャよ‼︎ ガオレンジャー共を足止めしておけい‼︎」

 

 そう言って、アシュラは舞い上がって行った。このままでは、瓏国は滅茶苦茶にされてしまう。

 

「く……‼︎ どうすれば……‼︎」

 

 アシュラを追いかけたいが、ガオパラディンには飛行能力を持たない。よしんば追いかけたとしても、ハンニャを放置しては行けない。

 その際、ガオレッド達が突然、光に包まれた。やがて、光は一体化していき、その光が晴れた中には巨大な深緑の龍が咆哮を上げる。ガオドラゴンと同等、或いは僅かに上回る程の巨体を持つ龍は、外見はパワーアニマルのそれと同じだ。

 

 〜我が名は、ガオシェンロン! 遥か昔、この地に国を創りし、レジェンド・パワーアニマルだ!異界より赴きし勇者よ! そなたの目醒めを私は待ち望んでいた……さァ、今こそ、我が力を使うが良い‼︎〜

 

 神龍改め、ガオシェンロンは名乗る。神龍の正体は、レジェンド・パワーアニマルだったのだ。ガオシェンロンの額から光が放たれ、鮮やかに輝くエメラルドグリーンの宝珠がガオゴールドの手に握られていた。

 ガオゴールドは強く頷き、宝珠をガオサモナーバレットに装填、再び撃ち上げた。

 

「幻獣合体‼︎」

 

 ガオゴールドの掛け声で、ガオシェンロンの身体は変形して行く。ガオシェンロンの頭部は分離、胴体と尻尾が三角状に倒れた。胸部に分離した頭部が装着されて、右腕をガオナインテールが、左腕をガオワイバーンが構成する。

 そして背中より、小さな龍の頭が現れ口が開くと、中からヒューマンフェイスが出現した。後方から飛来したソウルバードにガオゴールドが搭乗、精霊王の中に収納された。

 

「誕生‼︎ ガオインドラ‼︎」

 

 〜神龍と謳われたレジェンド・パワーアニマルに、炎と風を司る二体のパワーアニマルが合体する事で、雷を司る精霊の王に生まれ変わるのです〜

 

 ガオシェンロンを中心に合体し、誕生した新たなる精霊王……その名は、雷の龍王ガオインドラ。

 ガオドラゴンと同じく竜をモチーフにしたパワーアニマル、ガオシェンロンだが、その姿は騎士の姿となるガオパラディンとは大きく異なる。

 例えるなら、古代中国の武人と思しき出で立ちである。

 その際、ガオインドラの胸部の龍の口から、光が放たれた。それを受けたガオドラゴンが見る見る間に巨大化して行き、やがてガオインドラより一回り巨体な竜となった。

 ガオインドラは、そのガオドラゴンの背にサーフィンをする様に搭乗した。

 

「百獣武装! ガオインドラ・スカイライド‼︎」

 

 ガオシェンロンの力が、ガオドラゴンに新たな力を与えた。ガオインドラは飛翔し、空へと飛び上がる。それを阻む様に、ハンニャは斬り掛かろうとするが……。

 

 〜邪魔はさせん‼︎〜

 

 ハンニャの前に雷が降り注ぐ。すると、其処にはガオゴッドの姿があった。

 

 〜ガオシルバー、ガオグレー‼︎ お前達の力を貸してくれ‼︎〜

 

 ガオゴッドが語り掛けて来る。ガオシルバーは強く頷いた。

 

「お安い御用だ、千年の友‼︎ 行くぞ、ガオグレー‼︎」

「おお‼︎」

 

 ガオシルバーとガオグレーは応じ、ガオゴッドの体内に吸収された。

 ガオゴッドの中には通常のコクピットとは違う、まるで浄土の様な空間が広がっている。其処に、ガオシルバーとガオグレーは座禅を組んだ状態で搭乗していた。

 

「行くぞ、ガオゴッド‼︎」

 

 ガオシルバーが指示を出すと、ガオゴッドは頭部の角飾りを左腕のガオジャガーが咥える様に装備し、剛弓パワーアローに変形した。

 

「天誅パワーボウ‼︎」

 

 パワーアローが放たれる光の矢が、ハンニャの身体を射抜いて行く。ハンニャは苦しげに後退した。

 

「ゴッドハート‼︎」

 

 立て続けに、胸部のガオレオンの口から放たれる光線が、ハンニャに襲来した。ハンニャは大太刀で光線を受けるが、徐々に押し返されて行く。やがて、限界を迎えた太刀は吹き飛ばされてしまう。

 その一瞬を、ガオゴッドは見逃さなかった。

 

「神獣荒神剣‼︎」

 

 ガオゴッドの右手のガオソーシャークの鼻の鋸にガオソウルを纏わせる。そして、ハンニャの頭から下まで振り下ろした。

 

「が……あァァ……!!!」

 

 真っ二つに両断されたハンニャはズルリと擦れ落ちる。そして、ハンニャに背を向けたガオゴッドは一言……。

 

 〜成敗!〜

 

 と呟くと、ハンニャは倒れ、爆発した。

 

 

 

 空中では、飛翔するアシュラをガオインドラ・スカイライドにて追跡していた。ガオインドラは飛行しながら左腕のワイバーンアローを射掛けるが、アシュラは修羅百鬼剣を奮い弾く。

 

「しぶといやつめ‼︎ ならば、これならどうだ‼︎」

 

 アシュラは修羅百鬼剣の刃から邪気の弾幕を発生させ、ガオインドラに嗾けた。

 

「テールシールド‼︎」

 

 ガオインドラの右腕に持つテールウィップを展開させ、素早く回転する。弾幕は全て弾かれた。

 だが、確実に仕留めるには、アシュラの動きを止めるしか無いが、飛行速度はアシュラの方が一枚上手で、その動きを封じるのは至難である。

 

「グハハハ! 勝負あったな! この一撃で、瓏国と共に滅びるが良い! 正気……退散‼︎」

 

 修羅百鬼剣から放たれる邪気の斬撃がガオインドラを襲った。決めるなら今しかない。

 

「風雷一矢・テールスティンガー‼︎」

 

 ガオインドラは右手のテールウィップをワイバーンアローに番える。テールウィップにガオソウルを纏わせていき、光り輝く矢となった。そして、光の弦を引き絞り穿つ。

 光速の矢は、軌跡を描きながら斬撃と衝突した。ぶつかり合う正気の矢と邪気の斬撃は互いに互いを喰らい合い拮抗する。その余波が、瓏国の街にまで及び始める。

 

「クッ…‼︎ やっぱり、タイミングが早過ぎた…! このままじゃ、瓏国そのものが……‼︎」

 

 ガオゴールドは唸る。短期決戦に挑む筈が、アシュラ自体にとどめを刺すに至れる程、ダメージを与えていなかった。

 このまま拮抗し続ければ、瓏国を崩壊させてしまい兼ねない。重苦しい空気が漂う中……。

 突如、アシュラに目掛けて飛んで行く影があった。

 

「ヌゥゥ⁉︎ だ、誰だ⁉︎」

 

 アシュラは修羅百鬼剣を弾かれて後退し、テールウィップは回転しながら、ガオナインテールの口に戻る。そして、二体の前に舞い降りたそれは、翼を広げて前面を見せた……。

 

「な⁉︎ 精霊王⁉︎」

 

 それは、ガオパラディンともガオハンターとも、ガオビルダーとも違う精霊王だった。真紅のボディと巨大な翼、鳥の胸部、右腕は槍を模したオレンジ色のキリン、左腕はハサミを模した角を模した緑色の鹿、下半身はライトブルーのサイ……。

 

『ガオイカロス‼︎』

 

 ヘルメット内に、テトムの声がする。

 そう……先の戦いで、ガオレンジャーと共に戦い抜き、その強大な力で数多のオルグを滅ぼした天空の精霊王ガオイカロスである。

 

「ガオシェンロンが呼び寄せたんだ…‼︎」

 

 ガオゴールドは理解した。さっきの、ガオレンジャー達も、ガオシェンロンの力により現れた物だった……ならば、あのガオイカロスも、ガオシェンロンが……。

 

「おのれ、小癪な‼︎ 邪魔をするなら貴様から……‼︎」

 

 激怒したアシュラは、修羅百鬼剣を振り下ろし、ガオイカロスを攻撃する。だが、空を泳ぐかの様に、ガオイカロスは飛び回って躱す。更に躱し様に、アシュラの腹部に蹴りを入れた。

 

「グオォッ!!?」

 

 アシュラは不意打ちを喰らって、バランスを崩す。距離を取ったガオイカロスは身体を宙返りさせ、右足に収納されていたアルマジロ型のパワーアニマル、ガオマジロが飛び出す。

 それを、左足で狙いを定め蹴り飛ばした。これこそ、ガオイカロスの必殺技『究極天技・イカロスダイナマイト』である。

 ガオマジロは炎を吹き出しながら回転し、アシュラの修羅百鬼剣に激突、見事に破壊した。

 と、同時にガオイカロスの胸部であるガオファルコンがいななく。まるで「今だ!」と言わんばかりに……。

 

「よし……分かった‼︎ 行くぞ、ガオインドラ‼︎」

 

 ガオゴールドが声を掛け、ガオインドラは再びテールウィップを番える。

 

「……ぬゥゥ……一先ず、退散を……‼︎」

 

 形成が逆転されたアシュラは退散しようとするが、その際、ガオイカロスの翼にある二つの目玉に似た紋様から射出された光線に捕らえられ、身動きを封じられてしまう。

 

「クッ……動けん‼︎」

 

 ガオイカロスの拘束技『イカロスバインド』。これに捕まったオルグは何人たりとも、引き外す事は叶わない。

 奇しくも、かつてウラ単体時も、この技によって引導を渡されたのだ。

 

「これで、終わりだ‼︎ 究極雷矢・神龍の怒り‼︎」

 

 テールウィップにガオソウルと共に激しい電光が迸る。そして射抜かれた雷速を伴う一矢は大気を切り裂きつつ、アシュラの胸に突き刺さる。

 

「ぬ…ぐ…ァァァ……! 私が……負けるとはァァァ……!!!」

 

 苦しげに唸りながら、ハンニャの胸から雷光が広がり、遂に大爆発を起こした。

 

「やったァァァッ!!!」

 

 ガオゴールドは勝利を確信した。ガオインドラも高らかに勝鬨を上げ、勝利を見届けたガオイカロスは光の粒子となって消滅して行った…。

 

 

〜遂に最凶のハイネス、アシュラを倒したガオインドラ‼︎

これで漸く、瓏国を覆う災厄は晴れました‼︎ 次回、いよいよ感動の終幕を迎えます‼︎〜


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