帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest35 恐竜鬼(オルグ)の襲来‼︎

 その時、街では大きな騒ぎが起きていた。人々の悲鳴が街中に響き渡り、瓦礫の崩れる音が轟く。

 一件のビルが崩落したかと思えば、青ざめた人達が我先にと飛び出して来た。濛々と舞い上がる砂埃の中から、巨大な三つの影……。

 

 

「グオォォォォッッ!!!!!」

 

 

 砂埃をかき消さんばかりの咆哮が木霊した。姿を現したのは、恐竜の王ティラノサウルスに酷似したオルグ魔人、ティラノオルグだ。その巨体に見合った頭部には、オルグの証たる角と大きく裂けた口内には、鋭く尖った無数の牙が生え並んでいる。更に本来のティラノサウルスの物とは異なる二の腕は筋骨隆々としており、掴んでいたビルの柱を振り回した。すると、辛うじて保っていたビルは完全に瓦解し、後は文字通りの瓦礫の山と化してしまった。

 其処へ追い討ちを掛ける様に、複数の車をスクラップにしながら突き進むのは……。

 

 

「オオォォッ!!!!」

 

 

 重戦車を思わせる巨体と、城塞を思わせる頭部から一際、大きな三本の角が生えたオルグ、それは、トリケラトプスに似た魔人、トリケラオルグだ。

 愚鈍そうな体格に見合い、突き進む姿は瓦礫を押し潰しながら尚も進軍する戦車に等しい。

 更に追い討ちを掛けるかの如く、空上より滑空しながら逃げ惑う人々を襲撃して来るのは……。

 

 

「ギエェェッ!!!!」

 

 

 グライダーの如し鋭角な翼に、細くシャープな体格、猛禽類のクチバシの様な鋭い口、それはプテラノドンに似た魔人、プテラオルグだ。 

 その翼を羽ばたかせると、突風が巻き起こり周囲の建物や車を吹き飛ばし、破壊していく。

 その様子を遠方より見守る二人組が居た……。

 

「凄い…凄過ぎるわ…‼︎ これが、古の時代に世界を蹂躙したオルグの力……!」

 

 ツエツエは恍惚し切った様子で、ウットリと見ていた。

 

「確かに凄ェぜ……。百鬼丸が持て余す訳だ……こんなの、解き放った日には世界そのものが終わっちまう……‼︎」

 

 ヤバイバは圧倒的な力を見せつける恐竜オルグ達に戦慄を覚える。ツエツエは邪悪に笑った。

 

「……けれど! この、ツエツエは征服したのよ‼︎ シュテン、ウラ、ラセツ、テンマさえも諦めた最凶のオルグを、完全なる支配下に置いたの‼︎ 彼等が居れば、私達の向かう所に敵無し! ガオレンジャーなんか恐るるに足らずよ‼︎

 見なさい! 人がゴミの様だわ‼︎」

 

 ツエツエは完全に陶酔し切って居た。恐竜オルグ達に吹き飛ばされ、逃げ惑う人間達は成る程、確かに向い風に吹き散らされる塵に等しかった。

 

「フフフ….この恐竜オルグを利用して、ガオレンジャー達を殲滅した後、私達を散々に虚仮にしたテンマもニーコも、ガオネメシスも四鬼士達も全て叩き潰してやるわ‼︎

 そうすれば、この私が……次代のオルグの女王、オルグ・クイーンよ‼︎」

 

 野心を胸を滾らせながら、ツエツエは高らかに宣言した。そんな大それた望みを抱かせる程、恐竜オルグの強さは凄まじかった。長きに渡り、ガオレンジャーに辛酸を飲まされ続けた自分達が、オルグ達の頂点に立つ……正に下克上である。

 この瞬間の為に、テンマやニーコ、四鬼士達から受けた数々の屈辱に耐えて来たのだ……。

 

 

「止めろッッ!!!」

 

 

 突然、ツエツエ達の前に陽と佐熊が駆け付けて来た。聖なる泉が異変を察知し、ガオズロックでやって来たのだ。

 彼等の姿を見たツエツエは、ニィィッと笑う。

 

「来たわね、ガオレンジャー‼︎ この日を指折り数えて、待ち侘びたわよ‼︎ 今日こそ、お前達に引導を渡してやるわ‼︎」

 

 ツエツエは勝ち誇った様に言い放つ。今迄の様に、一方的には敗けない……そんな自信に満ち溢れていた。

 その際、ヤバイバが、陽達を見て気付く。

 

「んん? ガオシルバーはどうした?」

 

 その言葉に陽達は顔を曇らせる。昨日の敗戦後から、大神の行方不明のままだ。

 二人の様子を見たヤバイバは、茶化す様に笑う。

 

「はは〜ん? さては逃げたな、あの負け犬野郎‼︎ ま、天空島にオルグが襲撃して来た時も、ガオの巫女と一緒に我先にと逃げ出したからな、アイツは‼︎」

 

 ヤバイバの馬鹿にした態度に、佐熊は激昂した。

 

「き…貴様ァ…‼︎ 言うに事欠いて、負け犬じゃと⁉︎ その言葉は、聞き捨てならん‼︎ 大神を侮辱する事は、ワシを侮辱されたも同然じゃ! 取り消せ‼︎」

 

 千年前から共に戦って来た盟友であり、掛け替えの無い相棒でもある大神を扱き下ろした態度を取られた佐熊は、怒り狂う。しかし、ヤバイバは前言を撤回する所か益々、嘲る様に続けた。

 

「何を取り消せって⁉︎ ムキになる所を見れば、本当だったみたいだな‼︎ 風の噂で聞いたぜ? お前等、ガオネメシスの野郎と戦って、こっ酷く敗けたらしいじゃねェか‼︎

 ハハハハ‼︎ やっぱり、お前等じゃ、その程度さ‼︎ 先代のガオレンジャー達の方が余程、強かったぜ‼︎」

「き…貴様ァァ……!!!」

 

 完全に見下された言い草を取られた佐熊は、怒りが頂点に達しそうになった。しかし、陽は佐熊を冷静に宥めた。

 

「佐熊さん、敵の挑発に乗せられたら終わりですよ!」

「しかし、陽……!」

「大神さんは逃げたりなんかしない…‼︎ 誇り高い狼の様な人だ…必ず、戻ってくる! だから、僕達だけで大神さんが来るまで時間を稼ごう‼︎」

 

 陽は信じていた。大神月麿と言う男を……彼は一度や二度、敗北した位で折れてしまう様な弱い人間じゃ無い……。必ず、弱さを克服して自分達の下へ帰って来てくれると彼は信じていたのだ。

 

「オホホホ‼︎ 美しい仲間愛だこと‼︎ けど、時間を稼ぐなんて無理だわね‼︎ お前達は、ガオシルバーが帰って来るのを待つ事なく、この恐竜オルグ達の餌食になるのだから‼︎」

 

 ツエツエが杖を振るうと、恐竜オルグ達は一斉に集結して来た。

 

「恐竜オルグ…だと?」

 

 陽は、ツエツエに付き従う三体のオルグ魔人達を見た。確かに、ティラノサウルス、トリケラトプス、プテラノドンの姿をした彼等ら、その名の通り古代に地上を我が物顔で君臨していた恐竜達に酷似していた。

 

 〜陽、気を付けて‼︎ 彼等は、今まで戦ったオルグとは違うわ‼︎〜

 

 テトムが、G -ブレスフォンを介して、陽にアドバイスを送った。

 

「その声は、ガオの巫女ね‼︎ こうして話をするのは久しぶりだわね⁉︎」

 

 ツエツエは、二十年前の戦いで因縁の出来たガオの巫女に対し、挑発する様に話し掛けた。

 

 〜オルグの巫女……貴方達、何を封印から解いたか分かっているの⁉︎ 恐竜オルグは一度、封印から醒めれば見境なく暴れ回る怪物なのよ⁉︎ 貴方達の手に負える様な代物じゃ無いわ‼︎〜

 

「御忠告傷みいるわ、ガオの巫女……こいつ等の危険さは重々、承知しているわよ‼︎ 大昔に滅びた恐竜の化石に、それこそ千年の邪気なんか目じゃ無い濃度の邪気が宿り、オルグと化したのが、この恐竜オルグ! あまりの凶暴ぶりから、千年前のオルグの王、百鬼丸さえも制御出来ず、再封印して放置したと言う曰く付きのオルグ達よ……。

 けど! このツエツエは、その制御不能の怪物を支配下に置いたのよ‼︎」

 

 そう叫びつつ、ツエツエは仰々しく手を広げた。恐竜オルグ達も今は大人しくしているが、ツエツエが命令を下せば何時でも襲い掛かって来そうな勢いだ。

 陽は覚悟を決める。このまま、彼等を放置すれば多数の被害が出てしまう。それを防ぐには、此処で奴等を迎え撃つしか無い。だが、テトムの言葉を察するに、この恐竜オルグ達は並のオルグとは比べ物にならない実力を有しているらしい……。ウカウカしていたら、こっちの足元を掬われてしまうだろう……と、強く考えながら陽、佐熊はG -ブレスフォンを起動させ、ガオレンジャーに変身した。

 

 

 

 ガオレンジャー達が、恐竜オルグ達を迎え撃っている所……大神は、狼鬼と激戦を繰り広げていた。

 ガオレンジャーとして戦い慣れているとは言え、今はガオスーツの恩恵を受けていない。デュークオルグ級である狼鬼と生身で戦うのは、苦戦は必然だった。

 それでも大神は守り刀を用いて、狼鬼の三日月刀を受け止めた。しかし、実力差は火を見る様に明らかである。

 銀次郎も、狼鬼の脚に噛み付いて攻撃したが、当の狼鬼は鬱陶し気に蹴り、払い退けた。だが、それでも銀次郎は唸りながら狼鬼に向かって行く。

 

「……銀次郎……もう良い……。後は、俺が……‼︎」

 

 そう言う大神も既にボロボロの有り様だった。それでも倒れる訳には行かない。

 目の前に立ち塞がるのは過去の自分。己の内に潜む弱さから、精神を邪気に蝕まれ身も心もオルグと化した自分…。

 あの時、シロガネだった自分は、闇狼の面を付けてガオゴッドでさえ手に負えなかった百鬼丸を滅ぼした。

 しかし、内にあったオルグとなる恐怖、仲間と戦わなければならないと言う苦痛が何時しか仲間への怒り、憎悪へ変わり狂戦士、狼鬼と変えてしまったのだ。

 そして今回…また、自分は己の内にある弱さに敗けて逃げてしまった……だから、もう逃げる事は許されない。例え、針のむしろに座り続ける事になっても、業火に身を晒し続ける事になっても、運命に立ち向かって行く! 平和な日常に背を向け、オルグとの終わりの見えない戦いに身を置いたガオゴールドやガオグレー、ガオレッド達の様に…!

 

「皮肉だな……かつて、こいつが慕っていた奴を俺自身の手で倒さなくちゃならないとは……」

 

 半ば自嘲する様に、大神は零す。狼鬼だった頃、確かに気持ちを共にした犬……言うなれば、自分で自分を傷つけるのも同じだ。

 それでも大神は、守り刀を振り上げ狼鬼に斬り掛かる。しかし、狼鬼の三日月刀に払い飛ばされてしまう。

 

「クッ…‼︎

 

 腕に残る傷みに、大神は顔を顰める。守り刀は遠くに飛ばされてしまい、手ぶらとなってしまった。

 銀次郎は大神の前に立ち、再び狼鬼の脚に噛み付いた。しかし、狼鬼は痛みを感じる所か、三日月刀を逆手にして銀次郎に突き下ろした。

 

「や、止めろォォォォッ!!!」

 

 冷静さを欠いた大神は手ぶらのまま、狼鬼に突撃した。彼に掴みかかり、銀次郎に傷を負わせない様にする。

 だが、生身の身体である大神に対しても狼鬼は三日月刀で斬りつけて来る。全身の服は裂け、鮮血が滲む。

 それでも大神は狼鬼から手を離さない。勝てないから、やらない……そんな半端な考えでは駄目だ……。勝てないと分かっていても、やらなければならない、そんな戦い方もある。

 そんな時、大神は狼鬼の顔を見る。何と鬼面の目にあたる部位より涙を溢していたのだ。

 その際、絞り出す様な声が狼鬼から聞こえて来る。

 

「何故ダ……何故、戦ワナケレバ、ナラナイ……何故……」

 

 今の自分を深く追い詰める様な声……其れを聞いた大神は、初めて狼鬼の中に無いと思われた心を知る事が出来た。

 この目の前の居る狼鬼もまた、大神自身なのだ。大神の無念そのものが具現化した存在だったのだ。

 自分の前に現れたのも、動物や鳥が生まれた場所に戻って来る一種の帰巣本能に過ぎなかったのだろう。

 にも関わらず、自分は彼を拒絶した。過去の忌まわしい存在だと断じて、狼鬼を消し去ろうとした。

 そうでは無い……狼鬼を受け入れなければならない……敵対するので無くて、自分の存在として……。大神は、狼鬼から手を離し前に立つ。

 

「……済まなかった……。お前は俺だ……俺が、お前を望んだ……弱かった自分に対して、仲間を救ってくれる存在を欲した……。なのに、お前を受け入れなかった……弱かった自分を認められなかった……」

 

 淡々と大神は謝罪の言葉を述べる。狼鬼は大神の告解を黙々と聞いていた。その際、三日月刀を下におろした。

 

「……俺は弱い人間だった……仲間を守る事も出来ない様な、そんな惨めな人間に過ぎん……。

 だが、それでも俺と共に苦楽を共にしてくれる仲間の存在が居る……。俺一人で全てを解決するのでは無く、皆で困難に立ち向かってくれる……。だから、狼鬼……もう、お前も戦う必要は無い……もう闇の力は……必要ない。お前も、ゆっくり休んで来れ……」

 

 大神は一旦、言葉を切った。それを聴き終えた狼鬼も、右手の力を緩め、三日月刀を下に落とした。

 そして、大神を見つめていた彼の眼差しは、オルグとは言えない程に穏やかで、優しかった。

 やがて、狼鬼の角の部位から光り輝く砂の様な粒子に風化していき、やがて跡形もなく消えて行った……。

 

「振り切った様じゃな……迷いを……」

 

 林をかき分けながら、山口老人がやって来た。大神は驚いた様な顔になる。

 

「……老人……。貴方は一体……?」

「……言ったろう? 俺は、ただの暇な年寄りだ……。それよりも……行くんだろう、戦いに……」

 

 老人の質問に対して、先程までの惑いに満ちた表情が嘘の様に晴れやかな大神の顔があった。

 

「……ええ……」

「……お前さん達が、パワーアニマルと呼んでいる者が無くとも……戦えるのかい?」

 

 パワーアニマルの事まで知っている……いよいよ、只者では無い。しかし、そんな事はもう、どうだって良い。

 

「……武器を奪われたなら、取り返せば良い……。敗けたなら、再戦して勝てば良い……。終わった事を悔んで、後ろを振り返り続けても前に進めない。俺は……もう振り返らない……前に進む!」

 

 強い決意に満ちた顔で大神は宣言する。最早、迷いは欠片も感じられない。山口老人は、ニッコリと微笑む。

 

「……フフ、良い顔じゃ。ならば、お前が戦える力を返さなくてはのォ……。のゥ、銀次郎?」

 

 山口老人が大神の横にいた銀次郎に語り掛けた。すると銀次郎は、二人から離れた場所へ行き……全身が光に包まれた。

 次の瞬間、銀次郎の姿は無くなり、漆黒に輝く巨大な狼の姿をしたパワーアニマルとなっていた。姿形は、ガオウルフに似ているが、こっちは瞳の色が緑色だった。

 

「銀次郎…⁉︎ お前も、パワーアニマルだったのか?」

「……俺と出会った時、既に銀次郎はパワーアニマルの力を有していた。しかし、その姿を俺に見せたのは一度だけ…。

 こいつは、お前さんと再会する瞬間を待っていたのだろうよ……。誇り高い狼のパワーアニマル、ガオハウルはな」

 

 大神は、銀次郎改めて、ガオハウルに手を伸ばす。ガオハウルは大神に顔を寄せると、大神の腕に小さな光が寄せ集まり姿を消した。やがて光が収まった時、腕を上げると、其処にはG -ブレスフォンが装着されていた。

 

「フフフ……どうやら、ガオハウルは、お前さんを認めた様じゃ……。さァ、行け! もう自分を見失うなよ?」

「……はい‼︎」

 

 山口老人に背を押され、大神は駆け出した。残された老人は、その様子を見守りつつ……

 

「頼んだぞ、シロガネ……そして、ガオハウルよ……私の力が完全に戻る、その時まで……」

 

 そう言い残し、山口老人の姿は跡形も無くなり、一瞬だけガオゴッドの姿を見せて青空の中に消えて行った……。

 

 

 

 その頃、恐竜オルグの侵攻を食い止める為に戦うガオゴールド達もピンチに陥っていた。恐竜オルグ達の猛攻を前に、ゴールドとグレーの攻撃は何れも歯が立たなかった。

 遂には、ティラノオルグの仕掛けた攻撃に二人は吹き飛ばされ、大ダメージを負ってしまった。

 

「クッ……! つ、強い……!」

 

 先日のガオネメシスの戦いでも、かなりの深手を負わされたガオゴールド達では、異常な程のタフネスさを誇る恐竜オルグ達と五分五分で渡り合うには至れなかった。

 

「あ……スーツが……‼︎」

 

 佐熊はガオソウルが尽きた事で、ガオスーツが消失している事に気付いた。

 ツエツエは勝ち誇る。

 

「オホホホ‼︎ 勝負あったわね、ガオレンジャー‼︎ さァ、ティラノオルグ‼︎ ガオレンジャーを踏み殺しておしまい‼︎」

 

 ツエツエの命令に従い、ティラノオルグは陽の前に歩み寄る。霞んだ目で見上げると、悠然と立つティラノオルグが右脚を持ち上げた。

 

「クソ……大神さんが居てくれたら、こんな……‼︎」

 

 陽は悔やむ様に呟く。もし、ここに大神が…ガオシルバーが居れば、少なくとも無様に負ける事は無かった筈なのに………そんな、後悔が押し寄せて来る。

 やはり自分達には、ガオシルバーが居なければ駄目だ……しかし、もう遅い。ティラノオルグを巨大な脚が、迫って来る。

 

「あ…陽…‼︎」

 

 佐熊が手を伸ばして来るが、自分も身体を動かす事が出来ずに居た。

 その際、ティラノオルグの脚に爆発が起きてバランスを崩した。

 

「な、何だァ!!!?」

 

 ヤバイバは素っ頓狂な声で叫ぶ。地響きを上げながら仰向けに倒れ伏すティラノオルグ。

 陽は何が起こったか分からず、辺りを見回す。すると右方向から、こっちへ歩いて来る人影……。

 

「ガオ…シルバー…⁉︎」

 

 陽は朦朧とする意識の中、幻覚を見ているのかと我が目を疑う。いや、幻では無い。確かに、ガオシルバーの姿だ。

 

「お…大神…さん…!」

 

 やはり、彼は帰って来てくれた。逃げてなど居なかったのだ。ガオシルバーは、ガオハスラーロッドを構えつつ恐竜オルグ達を睨み付ける。

 

「が、ガオシルバー⁉︎ 生きていたのか⁉︎」

 

 ヤバイバは驚いた顔で叫ぶ。

 

「勝手に殺すな。お前達を倒し尽くす迄は死なないさ…。一度、牙を抜かれた俺だが、力を取り戻して地獄から這い上がって来た‼︎」

 

 そう言って、ガオシルバーはガオハスラーロッドをサーベルモードにして、トリケラオルグに迫った。

 

「銀狼満月斬りッ!!!」

 

 ガオハスラーロッドから放たれた斬撃が、トリケラオルグに直撃、吹き飛ばした。

 プテラオルグは空中より奇襲を仕掛けようと舞い上がるが、その一瞬を、ガオシルバーは見逃さない。

 すかさず、ガオハスラーロッドをブレイクモードに切り替えて、フィールド上にエネルギーのプールを創造、宝珠を構えた。

 

「破邪聖獣球! 邪気…玉砕‼︎」

 

 撃ち出された宝珠が、プテラオルグに全発命中した。

 

「ギ……シャアァァァッ……!!!!」

 

 大爆発を起こしながら、断末魔を上げ墜落するプテラオルグ。爆炎の治まった後、プテラオルグの残骸が散乱していた。

 

「ば…馬鹿な…‼︎ 恐竜オルグを、まるで赤子扱いに…‼︎」

 

 自分達の絶対的な切り札を、あっさりと撃破された事に、ツエツエ達はショックを隠し切れない。

 ガオシルバーは、悠然と立っていた。

 

 

「す…凄い…‼︎」

 

 陽は、ガオシルバー単独で、自分達を苦しめた恐竜オルグを倒してしまった事に驚愕していた。

 

「ぬゥ……‼︎ 大神の奴、以前よりずっと力を増しておるな……‼︎ それに、ガオウルフ達を奪われて変身能力を無くした筈のあいつが、どうやって…⁉︎」

 

 佐熊も、大神が復帰して直ぐに、あれ程の凄まじい強さを発揮した事に驚いていた。

 明らかに前よりも、パワーアップしている……。

 

「今は、何でも構わない…‼︎ ガオシルバーが戻って来てくれたなら、あいつらにだって勝てる…‼︎」

 

 陽は、心強い味方の復帰に、心が湧き上がる気持ちだ。彼が帰ってきた以上、今度こそ自分達に敵はいない…そう言い切れる程だ。

 

 

「あ、陽⁉︎」

 

 

 その際、ふと声がした為、陽は振り返る。すると、其処には今ここに居るべきでは無い二人が立っていた。

 

「た、猛⁉︎ それに、昇も⁉︎」

 

 それは陽の親友である二人、猛と昇だった。二人も偶々、この場所に居合わせ、恐竜オルグ達の襲来に巻き込まれてしまったのだ。命辛々、逃げ出し避難していた時、負傷した状態で座り込んでいた陽を発見し、駆け付けて来た次第である。

 

「な、何で二人が……⁉︎」

「いや、それはこっちの台詞だよ‼︎ 遊びに来てたら、あの化け物が現れて、何とか逃げ出したと思ったら……お前を見つけて……」

 

 猛は、陽を意外な場所で、しかもボロボロの状態で会った事に驚きを隠せない様子だった。

 しかも、昇は同じくボロボロの姿である佐熊を見て、かつ現在の事態に、疑念を抱く。

 

「……さっき、あの化け物と戦っていた戦士が、お前になるのを見たけど……まさか、お前……」

 

 頭の良い昇は、あの化け物達と対峙していた戦士と陽達が同一人物であると見抜いてしまったようだ。

 陽は言葉を濁してしまう。今、この状態で、どう言い訳しても誤魔化し切れる物では無いのは明白。

 可能な限り、自分がガオレンジャーである事は秘密にしておきたかった。巫女の生まれ変わりである祈は兎も角、猛達はガオレンジャーの関係者では無い。

 オルグとの抗争が著しくなって来た現在となっては、彼等を巻き込みたくは無い。

 と、その時、急に二人は意識をなくしたかの様に、ガクリと膝を突く。

 

「エッ⁉︎」

 

 突然、二人が倒れた事に陽は驚く。いつの間にか、二人の後ろに回り込んでいた佐熊が、猛と昇の首元を素早く突いたのだ。意識を失った二人を佐熊は倒れない様に抱え、静かに寝かせた。

 

「心配要らん。気絶しただけじゃァ……。この二人には、まだ真実は打ち明けられんのじゃろう?」

「佐熊さん……」

 

 陽の心情を察し、トラブルにならない様に気を利かせてくれたのだ。陽は彼の機転の良さに感謝する。

 

「さァ! シルバーを援護してやらなくちゃのォ‼︎」

「はい‼︎」

 

 佐熊に促され、陽も立ち上がる。そして「ガオアクセス‼︎」と同時に叫ぶと、ガオゴールド、ガオグレーの姿となって駆け出した。

 

 

 

「こ…これで、終わった訳じゃ無いわよ‼︎ 鬼は内! 福は外!」

 

 ツエツエはオルグシードをプテラオルグの残骸に投げて、呪文を唱える。すると残骸は再結合し巨大化、巨大オルグ魔人として復活した。

 と、同時に角を切られて蹲っていたトリケラオルグも、オルグシードを喰らい始め、巨大化していった。

 さながら、本物の恐竜のそれを上回る姿となった。

 

「おい‼︎ ティラノオルグも食わせるか‼︎」

 

 ヤバイバは、ツエツエに尋ねるが、ツエツエは首を振る。

 

「ティラノオルグは出さないわ‼︎ 一旦、引くわよ‼︎」

 

 と、だけ言い残し、鬼門を召喚すると中へと消えていく。ヤバイバ、ティラノオルグも続いた。

 残されたプテラオルグ、トリケラオルグは自我も無く司令塔も無くなった事で、暴れ回り始める。

 

「幻獣

   百獣召喚‼︎」

 

 ガオゴールドとガオグレーは同時に宝珠を打ち上げ、パワーアニマル達を召喚する。

 ガオドラゴン達を中心にしたガオパラディン、ガオグリズリー達をした中心にしたガオビルダー。

 そして、ガオシルバーはガオハスラーロッドを天に構えた。

 

「百獣召喚‼︎」

 

 宝珠を打ち出すと、天上にて光り輝く。すると、他の精霊王達を掻き分けて姿を現す狼型のパワーアニマル、ガオハウル。現れ状に高々に吠えると、別々のパワーアニマルも姿を現した。

 一体は、黒いワニの姿をしたガオリゲーターとは色違いのパワーアニマル、ガオダイル。

 もう一体は、シャチの姿をしたパワーアニマル、ガオグランパス。

 何れとも今迄、見た事が無いアニマルばかりだ。だが一つだけ言えるのは……彼等の目的は、ガオシルバーを守る為、それだけだ。

 

「百獣合体‼︎」

 

 ガオシルバーの掛け声で、三体のパワーアニマル達は合体して行く。ガオダイルが直立して胴体に、右腕をガオグランパス、左腕をガオハウルが構成する。

 そして、ガオダイルの頭部が下がり別の頭部が出現する。ガオハンター同様、狼の顔をしていたが口が開くと、ハンターとは違い鉄仮面状のマスクに覆われていた。

 更に分離したガオグランパスの背鰭を右手で装備すると……。

 

「誕生! ガオアキレス‼︎」

 

 〜三体の瞬の技を持つパワーアニマルが合体する事で、ガオハンター以上の瞬足の精霊王に生まれ変わるのです〜

 

「あれが……ガオシルバーの新しい……力……!」

 

 ガオゴールドは、絶句した。一度、敗北による挫折から折れてしまった大神だが、見事に復活を果たして……。

 

「ゴールド‼︎ よそ見しとる場合じゃ無いぞ‼︎」

 

 ガオグレーに怒鳴られ、ガオゴールドは我に帰る。目の前には、トリケラオルグが突進して来た所だ。

 だが、ガオビルダーが其れを受け止め、ゼロ距離よりリンクスパンチを喰らわせた。

 堅牢なボディーを誇るトリケラオルグを傷付けるには至らなかったが、その巨体を仰け反らせる事に成功した。

 その隙を突いたガオパラディンは、殴打した部分をユニコーンランスで貫徹した。

 矢張り、ダメージによって脆くなっていたのか、ランスが深く突き刺さる。苦痛にトリケラオルグは呻くが、もう逃がさない。

 

「ガオグレー、今だ‼︎」

「よし来た! 轟々獣撃! ストロングショット‼︎」

 

 蓄積された破邪のエネルギーが、ガオボアーの鼻が変形した砲口から発射された。

 

「グギャ……ああああァァァッ!!!!」

 

 断末魔を上げつつ、トリケラオルグは吹き飛ばされ、巨大な爆炎の中に倒れてしまった。

 ガオパラディンとガオビルダーは揃ってポーズを決める。

 

 

 ガオアキレスとプテラオルグもまた激戦を繰り広げている最中だった。空中から奇襲を仕掛け、ガオアキレスを追い詰めようとするが、その素早い身のこなしに、逆に翻弄されてしまう。勢い余ったプテラオルグは更に高く舞い上がろうとするが、ガオアキレスのジャンプの方が高かった。

 

「オルカブレード‼︎」

 

 その状態で、プテラオルグを二回に渡り斬り付ける。その影響で、翼を失ってバランスを崩したプテラオルグは、地べたに叩き付けられてしまった。

 高度からの落下による反動で逃げる事も出来ないプテラオルグ目掛け、ガオアキレスはオルカブレード逆手に持ちつつ、着地した。

 

「悪鬼両断! アキレススライサー‼︎」

 

 プテラオルグを斜め袈裟斬りに斬り付けるガオアキレス。その直後、プテラオルグの斬り口から発火し大爆発を起こした。

 その爆心地の手前に着地したガオアキレスは、オルカブレードを肩に置いた……。

 

 

 

 戦いを終えた後、ガオアキレスを前に佇む大神。其処へガオパラディン、ガオビルダーから降り立った陽と佐熊がやって来た。

 

「大神さん! 戻って来てくれたんですね‼︎」

 

 陽は嬉しかった。一度はスタンスの相違から決裂してしまったが、矢張り大神は帰還した。

 しかし、理由は如何であれ仲間を見捨てて逃げ去った事に自己嫌悪を抱かずには居られない大神。しかし、佐熊は笑いながら……

 

「月麿、遅いぞ‼︎」

 

 と、軽く皮肉を交えながら言った。その言葉は、大神は必ず帰って来る……そう確信があった様にも聴こえた……。

 大神は、自分を変わらずに信じてくれた『もう一人の千年の友』に無言ながらも、笑顔で応えた。

 

 

 〜大神、過去の懺悔を振り切り、新たな力を携えて堂々と帰還‼︎ 更には強敵とされた恐竜オルグの内、二体を倒す快挙を成し遂げ、彼等は先に待ち受ける強敵に備えるのでした〜




ーオリジナルオルグ
−トリケラオルグ

トリケラトプスの化石に邪気が宿り、オルグ魔人と化した三体の恐竜オルグの一角。巨大な角と怪力が武器で、普通の攻撃では傷一つ付かない堅牢な皮膚を持つ。

−プテラオルグ
プテラノドンの化石に邪気が宿り、オルグ魔人と化した三体の恐竜オルグの一角。翼を用いた機動力とトリッキーな動きが武器だが、それ故に防御力は致命的に低い。
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