帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest39 精霊王頂上決戦 再び!

 ガオゴールド達が戦いを繰り広げる一方、ガオマスターとガオネメシスの交戦も白熱した物となっていた。

 ネメシスが、ヘルライオットから銃弾を撃ち出し、マスターを狙い撃つ。しかし、全てがフルムーンガードによって防ぎ落とされてしまう。

 その隙を狙い、ガオネメシスの懐に入り、ルナサーベルを振り下ろすガオマスター。

 だが、やられる一方のガオネメシスでは無い。近接に踏み込まれた際も、ヘルライオットを直立させ、銃身に刃を纏わせた。ガオマスターは、その攻撃をルナサーベルを受け止める。

 

「……何故、本気で斬り掛かって来ない?」

「……お前こそ。距離を詰めようとしたり、わざと刃を逸らしたり……」

「自惚れるな‼︎ 貴様の出方を伺っているだけだ‼︎ 其れとも……俺が、貴様に情けを掛けていると、甘い期待をしているのか?」

 

 ガオネメシスは冷たく、せせら笑う。

 

「期待では無い、確信だ。まだ、お前にも“心”が残されていると言う事だ。スサノオ、悪い事は言わん。オルグと手を切れ! このまま、身を闇に沈めれば全てを失うぞ‼︎」

「……何を……‼︎ 黙れ‼︎ 何が心、だ‼︎ 俺にとって大切な者は、もうこの世には居ない‼︎ 最早、失うものも守るべき物も何一つ残ってないのだ‼︎ 」

「……忘れたのか、スサノオ……! 私達は二人共、同じ人の背を見て育ち……同じ人を守る為に戦って来たでは無いか……‼︎ 彼女は、復讐など望んではいまい…!」

 

 ガオマスターの言葉に、ガオネメシスは動揺した。僅かだが隙が出来、マスターはヘルライオットを弾き飛ばし、ネメシスの首元に、ルナサーベルを突き付けた。

 

「クッ⁉︎」

「お前が其処まで堕ちたのは……あの日、お前を助ける事が出来なかった私の罪だ……‼︎ お前が私を怨むなら、甘んじて罰を受けよう……だが! 罪の無い人間達に、お前の怒りをぶつけるのは、お門違いだ‼︎」

「“罪の無い”⁉︎ 人間共には罪が無い、だと⁉︎ 其れこそ、お門違いも甚だしい‼︎ 姉が、我々が、命を賭けて紡ぎ出した平和を己が手で壊し、自然を壊し、オルグを際限なく撒き散らす人間共に罪が無い訳が無い‼︎ 其れ程、平和を無下にするなら、奴等の望む地獄へ俺が変えてやる迄だ‼︎」

「何を…馬鹿な…‼︎」

 

 ガオネメシスの発した狂気に満ちた言葉に、ガオマスターは言葉を詰まらせる。その際に隙を見せたマスターを、ネメシスは見逃さなかった。

 ガオネメシスはガオマスターの腹部を蹴り飛ばし、怯んだ隙にヘルライオットを回収した。

 

冥獄焔弾(みょうごくえんだん)‼︎」

 

 ヘルライオットの引き金を引いて、銃口から漆黒の炎の弾が発射された。ガオマスターはフルムーンガードを使う前に吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐッ……‼︎」

 

 ガオマスターは辛うじて立ち上がるが、マスクに亀裂を生じる程の威力だった。

 

「フ……さらばだ、ガオマスター‼︎ 親愛なる我が兄君よ……」

 

 ガオネメシスは嘲笑いながら、ヘルライオットを突き付けた。と、その時、二人の間を割って入る者が居た。

 

「止めて‼︎」

 

 其れは祈だった。今にも撃ち込まれそうな銃口の前に立ち、ガオマスターを庇う。

 

「其処を退け」

「退きません!」

 

 ガオネメシスは冷たい口調で言ったが、祈は毅然とした態度で拒否した。

 

「……撃たれたいのか⁉︎ さっさと退け‼︎」

「撃ちたいなら、撃てば良い‼︎ でも、私の目の黒い内は絶対に、この人を撃たせない‼︎」

 

 祈は、ガオマスターを絶対に撃たせまいと、身体を盾にして立ちはだかる。本来なら彼女ごと、後方に居るマスターを撃ち抜く事は、ガオネメシスには容易い。しかし、祈に銃を突き付けたネメシスの手は何故か、ブルブルと震えた。

 

「ね…姉さん…!」

 

 ガオネメシスは見た。祈の顔に、面影に姉アマテラスを重なって見えた。祈は憐みを込めた悲しい表情を浮かべつつ、ガオネメシスを見つめる。

 

「思い出して……。貴方だって、かつては誰かの為に闘う戦士だったんでしょう?」

 

 祈は、ガオネメシスの中にある“心”に訴えた。その姿に、ネメシスは思い出していた。まだ平和だった頃、幼い自分に寄り添ってくれたアマテラスの顔を……。

 

「(この悲しげな顔は……たった一度だけ、見た事がある……‼︎ 俺が幼い頃……死に行く人間の姿に涙を流していた姉さんの顔を……‼︎)」

 

 ガオネメシスは、自分がスサノオとして生きていた時、姉と共に生きて幸せだった時に、野垂れ死んでいた人間の為に涙を流して、祈りを捧げていた姿を思い出した。

 彼の胸は、短刀で抉られる様な苦痛が走る。彼自身、自覚はして無かったが、彼の中に、ほんの僅かに残されている良心が呵責で苛まれていたのだ。しかし今更、引き返す事は出来ない。

 既に人を捨て去り、半ばオルグの様な歪な存在へと成り果ててしまった自分は、あの頃には戻れない。

 一度、外道へ足を踏み入れた者は二度と内道へは還れないのだ。その先に待つのが絶望であったとしても、ひたすら歩き続けるしか無い。

 

『スサノオ……もう、止めなさい……』

 

 ふと祈の口から発せられる声。ガオネメシスは耳を疑ったが、その声に後退った。

 

「姉さん⁉︎」

 

『貴方は、自分で自分の首を締めているだけ……。もう自分を追い詰めるのは、よしなさい……』

 

 アマテラスは、祈の身体に降りて彼女の口を借りて話しているのだ。平坦な道を自ら踏み外し、茨の道を行く弟を止める為……。

 しかし、ガオネメシスの首を振った。

 

「姉さん……俺は、もう守る者は無い。姉さんの居ない、この世界には何の価値も見出せないんだ……!」

 

『スサノオ、守る者は私じゃ無いわ……。貴方が守るべき者は……この世界に生まれてくる明日の命よ……」

 

「明日の……命?」

 

 アマテラスの語り掛ける言葉は、ガオネメシスの雁字搦めに縛られた心に響く。

 

『貴方は、かつて其れを守る為に戦っていた。今を生きるガオの戦士達……形や思想は異なれど、本質は変わっていないわ……。其れは慈しみ、自分の後ろに居る者達を守り戦う慈しみよ……。今代を生きるガオの戦士達の志は、貴方から始まったのよ……‼︎ 竜崎陽を見たでしょう? 彼は、かつての気高い思想に満ちていた貴方と寸分と違わない……。思い出して、スサノオ……‼︎』

 

「ち、違う……俺は……俺が守りたかったのは……」

 

 姉に間違いを指摘され狼狽する弟の様に、ガオネメシスは頭を振った。もう彼には、過ちを過ちと認める事さえ出来ない。姉の復讐こそが真実だと思い込もうとしていた。

 ネメシスは憎々しげに、祈とガオマスターを睨みながら、後退して行く。

 

「クッ…‼︎ 貴様の始末は後だ…‼︎ 鬼還りの儀が完遂するには、ガオゴールドの存在は邪魔でしか無い‼︎ 奴等を血祭りに上げ……俺の復讐を果たす‼︎」

 

 ガオネメシスはアマテラスは言葉を振り切り、鬼門の中に消えて行った。残された祈は力が抜けた様に、崩れ落ちる。

 其れを態勢を立て直したガオマスターが受け止めた。亀裂が広がったマスクの一部から覗いていたのは……何処と無く、陽と良く似た顔だった。

 

「……姉さん……」

 

 ガオマスターは小さく呟き、祈を抱えると歩き去って行った。

 

 

 

「な、何という事に……‼︎」

 

 ガオシルバーは絶句した。ニーコに従い姿を現したのは、彼の相棒にして千年来の付き合いとなる精霊王、ガオハンターだった。先の戦いで、ガオネメシスの操る混沌の精霊王ガオインフェルノに敗れ、彼に奪われた宝珠に邪気を注ぎ込まれてしまったのだ。その影響で、正義の狩人ガオハンター・ジャスティスは再び、邪の王ガオハンター・イビルへと変貌してしまった。今回は狼鬼が操る物では無く、純粋にガオネメシスの眷属となった、完全なるオルグの僕となった事を物語っているからだ。

 

「ンフフ‼︎ 御覧遊ばせ♡ 今や、ガオハンターは私達の可愛いペットとなっていますのよ‼︎」

 

 ニーコは悪辣な笑みを浮かべる。本来なら精霊王がオルグを従う等とは、あってはならない事態だ。

 しかし先述の狼鬼の件に加え、過去にはパワーアニマルや精霊王を支配し操る能力を持つオルグも存在した。

 そう考えれば、オルグがパワーアニマルを手下に出来る事も、あながち不可能では無いかも知れない。

 ガオゴールドは、過去の様々な局面に於いて、自分達を救ってくれたガオハンターと再び敵対しなければならない事に困惑した。

 

「……また、仲間と闘わなければならないのか……‼︎」

 

 今回はガオシルバーの時とは訳が違う。ガオハンターそのものが敵として、自分達の前に立ちはだかって来たのだ。

 だが、悩んでいる暇はない。一刻も早く、祈を助けなければならないのだ。ガオゴールドは、ガオサモナーバレットを取り出す。

 

「幻獣召喚‼︎」

 

 掛け声と共に三つの宝珠が撃ち上げられる。其れに呼応して、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが姿を現す。

 

「幻獣合体‼︎」

 

 ガオドラゴン達は合体を始め、間も無くして竜騎士ガオパラディンへと変形した。

 ガオゴールドに追い付く様に、ガオシルバー、ガオグレーもパワーアニマル達を召喚、瞬足の精霊王ガオアキレスと精霊の闘士ガオビルダーと三体の精霊王が現れた。

 しかし、先程迄に共に戦っていたガオプラチナはまたしても、姿を消していた。しかし、ガオゴールド達は気にする暇も無いでいた。テトムと摩魅が退がったのを見届けると、戦闘態勢に入る。

 と、その際、ガオハンターの横から別の精霊王が姿を現した。

 一人は、ガオハンターを完膚なきまで叩き伏せた混沌の精霊王ガオインフェルノだ。

 

「クックック……性懲りも無く、このガオインフェルノに挑むか……」

 

 ガオインフェルノから、ガオネメシスの声がした。と、同時に、ニーコに向かって、ネメシスは

 

「ガオレンジャー如きに、手こずるとはな……。鬼地獄の死神の力も、その程度か?」

 

 と、嫌味を零す。ニーコは不満そうに

 

「むゥ! 失敬な、本当はもっと強いんですけどォ、私の真価は鬼地獄で、より発揮されるんですゥ‼︎」

 

 と、返す。その返しを無視し、ガオネメシスはガオパラディン達の前に立つ。

 

「……フン……。ガオハンターの代わりの精霊王を見つけたか? だが、侮らん事だな。この、ガオハンターには俺が自ら邪悪で強大な邪気を注ぎ込んである。戦闘力は、数十倍となっているぞ‼︎」

 

 ガオネメシスの言葉に、ガオアキレスの中にいるガオシルバーは身構える。確かに、今のガオハンターからは尋常では程の邪気が放たれている。

 それと同時に、ガオインフェルノの足元から放たれた黒ずんだ影が形を織り成し始める。

 すると、其処には筋骨隆々としたガオインフェルノやガオハンターとは異なる、寧ろガオビルダーと似通った漆黒の精霊王が出現した。

 

「あ、あれは⁉︎ ガオマッスル⁉︎」

 

 ガオシルバーは、その姿を見て驚愕した。あの姿は、かつて先代のガオレンジャー達を支えて戦った筋肉の精霊王ガオマッスルだったからだ。

 ガオネメシスの、せせら笑う声が響く。

 

「コイツは、ガオマッスル・ダークネス‼︎ 前回、貴様等が倒したガオキング・ダークネス同様、闇から作り出したガオマッスルの模倣(クローン)だ‼︎

 力はオリジナルのガオマッスル同様、若しくはそれ以上にしてある‼︎ ガオマッスル・ダークネスよ、ガオビルダーを叩き伏せてやれ‼︎」

 

 ガオネメシスの指示に従い、ガオマッスル・ダークネスはボディービルダーさながらのポージングを決めた。

 

「ほゥ…ご指名とはのォ…! このガオビルダーに力で勝負を仕掛けるとは……相手にとって不足は無い‼︎」

 

 ガオグレーの勢いが、ガオビルダーに伝わり強く闘気を放った。

 ガオアキレスは、ガオハンター・イビルの前に立つ。ニーコはガオハンターの肩に乗って、戦闘に参加した。

 

「アハッ♡ かつての相棒に引導を渡されるなんて……可哀想ですねェ‼︎ で・も、安心して下さいねェ? 苦しまない様に短期で決着しちゃいますから‼︎」

 

 ニーコは既に勝った、と言わんばかりに嘲笑う。ガオシルバーは、コクピット内にて……

 

「許せ、ガオハンター……‼︎ 地球を守る為に俺は……お前達を倒す‼︎」

 

 決意を新たに、ガオアキレスは右腕のガオグランパスの持つオルカブレードを構えた。

 ガオパラディンは、ガオインフェルノと対峙した。だが、ガオパラディンは何時もとは異なり、何処か落ち着かない様子だった。

 

「ガオドラゴン、どうしたんだ?」

 

 ガオゴールドは、ガオドラゴンに語り掛けた。すると、ガオドラゴンは

 

 〜……いや、気にするな……これは、我々の私的な問題だ……! 例え、相手が誰であろうと…地球に仇なす者は倒す……‼︎〜

 

 と言いながら、ガオパラディンは構える。ガオネメシスの声が響いた。

 

「クックック……かつての仲間をも俺を拒むか……まァ良い。ならば俺も……全てを拒絶してくれる‼︎」

 

 そう叫ぶと、ガオインフェルノは起動を始めた。相対する聖なる騎士と冥府の戦士による激闘が幕を上げた。

 

 

 

 その頃、ガオプラチナは洋館の中を走っていた。後には、テトムと摩魅を続く。

 

「ねェ、本当にこっちなの?」

 

 テトムは前方を走るガオプラチナに呼び掛ける。プラチナは振り返らずに

 

「ええ……。彼がきっと….」

 

 とだけ応えた。先の戦いで、ガオプラチナは巨大戦が始まると同時に洋館へと走り出した。それを察したテトムは、彼女の後に続いた。

 案の定、ガオプラチナは祈を助けに行ったのだ。そう考えた際、眼前から人影が現れた。

 

「ガオマスター‼︎」

 

 ガオプラチナは叫ぶ。姿を現したガオマスターの両腕には、気を失った祈が大事そうに抱きかかえていた。

 

「あ、貴方は⁉︎」

 

 テトムは初めて見た戦士の姿に驚愕する。そもそも、ガオプラチナ自体も初めて見たのだ……。

 

「私は、ガオマスター。彼女を助けに来た者だ……」

 

 ガオマスターは淡々と話した。そして祈を、テトムに手渡す。

 

「心配するな……極度の緊張と疲労で気を失っているだけだ。ガオプラチナ、そっちの状況は?」

 

 ガオマスターの質問に、ガオプラチナは答える。

 

「極めて良くないわ。ガオネメシスが動き出した。まあ、そろそろ私達も……」

 

 ガオプラチナは何かを言い掛けるが、ガオマスターは首を振る。

 

「駄目だ。まだ、我々が直接は動けん。だが……あの方の力の一部を貸し出せば、或いは……」

 

 そう言って、ガオマスターは宝珠を取り出す。それを天にかざすと同時に、テトムを見た。

 

「済まぬ、テトムよ……お前を見込んで頼みたい。ガオネメシスに、あの歌を聴かせてやってくれないか?」

「えッ?」

 

 テトムは首を傾げた。

 

 

 

 ガオゴールド達は、ガオネメシス率いる悪の精霊王に対し、苦戦を強いられていた。ガオパラディンの攻撃は全て、ガオインフェルノの前には無意味であり、反対にガオインフェルノの放つ邪気に当てられた影響で、ガオパラディンの動きが鈍っている。

 

「く……強過ぎる……‼︎」

 

 コクピット内で、ガオゴールドは苦しそうに喘いでいた。ガオパラディンの受ける邪気は、ゴールドにも 悪影響を及ぼしているらしい。

 更にはソウルバードであるこころも、火花が迸る等のダメージを受けていた。

 ガオネメシスの勝ち誇った笑い声が響き渡る。

 

「ガオゴールド、無駄な事は止めるんだな! 今の貴様と、レジェンド・パワーアニマル如きでは、この冥府の王ガオインフェルノを打ち破る事は叶わぬ‼︎ 頼みのガオハンターは、こちらの手中にあるしな…。

 ハハハハハハ!!!!」

 

 悔しいが、ガオネメシスの言う通りだった。力量差に於いては、ガオネメシスと自分達には圧倒的な差が存在する。

 現に、ガオアキレスやガオビルダーも、対峙するガオハンター・イビル、ガオマッスル・ダークネスに手こずっている様子だった。

 最初にガオネメシスが宣言した通り、ガオハンターは異常な程に強くなっていた。素早さ、攻撃力と共に、ガオアキレスを優に上回っていた。

 ガオマッスルも然り、ガオビルダーの攻撃に対しびくともしない堅牢な防御力を誇っていた。

 

「くゥ…‼︎ まさか、これ程とは……‼︎」

「信じられん……同じパワーアニマルとは到底、思えん…‼︎」

 

 ガオシルバー、ガオグレーの辟易した声が聞こえる。ニーコは、ケラケラと高笑いを上げた。

 

「アハハ♡ 良い眺めですねェ♡ 精霊王が精霊王を叩きのめすなんて、中々の景観ですわァ♡」

 

 ガオハンターの肩に乗るニーコは言った。このままでは、また負けてしまう。

 

「ど、どうすれば…⁉︎」

 

 ガオゴールドは困惑した。正攻法で通じないならと、ゴールドはガオワイバーンとガオナインテールの宝珠を取り出す。

 

「幻獣武装‼︎ 

 ガオパラディン・アロー&ウィップ‼︎」

 

 ガオワイバーンとガオナインテールを武装し、ワイバーンアローで先制を仕掛ける。だが、ガオインフェルノはムンガンドセイバーで弾き落とした。

 

「小賢しい‼︎ 」

 

 ガオネメシスは嘲笑いながら、ムンガンドセイバーに邪気を纏わせた。

 

「冥府螺旋撃‼︎」

 

 セイバーを鞭状にしならせ、螺旋の形に振り回した。

 

「テールウィップ‼︎」

 

 対抗して、ガオナインテールの尻尾を使い、ムンガンドセイバーとぶつけ合うが、邪気の力を纏わせたセイバーの方が一枚上手だった。

 

「ハアァァァッ!!!!」

 

 ムンガンドセイバーの振り下ろしたガオナインテールの右腕に直撃した。ガオナインテールは、そのまま叩き落とされてしまう。

 

「ぐあァッ…!!!」

 

 ガオパラディンのコクピット内に、火花が激しく上がった。ガオネメシスの高笑いが響き渡る。

 

「ハハハハハハ!!! 勝負あったな、ガオゴールド‼︎ トドメだ、絶望に沈め‼︎」.

 

 ガオインフェルノの胸部と肩にあるガオケルベロスの口から、邪気のエネルギーが溢れる。

 

「煉獄業火! インフェルノカノン‼︎」

 

 放たれる漆黒の火炎弾が発射された。このままでは直撃してしまう。ガオパラディンを動かそうとするが、先程の攻撃を受けた反動で身動きが取れない。

 と、その際に、ガオパラディンの前で火炎弾は爆ぜた。

 

「な、何だ⁉︎」

 

 突然の事態に、ガオゴールドは目を疑う。炎が晴れていくと、ガオパラディンを守る様に立つ三つの影……。

 それは、パワーアニマルだった。中央に居るのは、ダークグリーンの体色をした牙の長い象に似たパワーアニマルと、右に居るのは長い犬歯にダークイエローの体色の虎に似たパワーアニマルと、左に居るのはダークブルーの体色をした鮫に似たパワーアニマルだ。

 

「な、何だと言うのだ⁉︎ あいつらは一体……‼︎」

 

 ガオネメシスも珍しく困惑した。と、その際、何処からか歌が聴こえて来た。その歌は、ガオインフェルノの頭上を飛ぶガオズロックから流れる物だった。

 すると、ガオネメシスは途端に苦しみ出した。

 

「ぐ、グオォォッ…!!! や、止めろッ‼︎ その歌を止めろォォッ…!!!」

 

 ガオネメシスは頭を抱えながら、苦しそうに暴れ回る。操縦者であるネメシスに呼応し、ガオインフェルノの鉄壁の防御が崩れた。

 

 〜ガオゴールド、今よ‼︎ 彼等を使って‼︎〜

 

 テトムの声だ。すると眼前に立つパワーアニマル達は振り返った。象の姿をしたパワーアニマルが長い鼻を上げる。まるで早くしろ、と急かす様に……。途端に、彼等は宝珠へと姿を変えて陽の掌に収まる。

 宝珠を手にした瞬間、彼等の姿、そして名前がガオゴールドの脳裏に流れ込んで来た。ガオマンモス、ガオスミロドン、ガオメガロドン、と……。

 悩んでいる暇は無い。ガオゴールドは宝珠を、台座にセットした。

 

「百獣武装‼︎」

 

 すると、ガオメガロドンが右腕に、ガオスミロドンが分離したガオワイバーンに代わって左腕を構成した。

 更に体が頭部と胴体に分離し、胴体側にあったガオマンモスの鼻が長々と伸びたノウズクレイモアとなった胴体側がガオメガロドンに、タスクシールドとなった頭部側がガオスミロドンに覆い被さると…。

 

「誕生! ガオパラディン・ブレイブ‼︎」 

 

 〜ガオマンモス、ガオスミロドン、ガオメガロドンと古代の動物達のパワーアニマルを百獣武装し、ガオパラディンは勇猛さと剣技を兼ね備えた聖なる騎士へとパワーアップしたのです〜

 

 

 

 パワーアップしたガオパラディンを見たガオシルバーは、先程までに押されていたのが嘘みたいに回復した。

 眼前に迫るガオハンター・イビルのリゲーターブレードを、ガオアキレスのオルカブレードで受け止め、押し返す。

 同様に、ガオビルダーもガオマッスル・ダークネスの拳を下半身を構成するガオトードのトードキックで蹴り倒した。

 形勢逆転と言わんばかりに、ガオアキレスとガオビルダーは二体の悪の精霊王の前に立った。

 ニーコは「アラアラ」と呟きながら、ガオハンターから離れた。

 

「これ以上は付き合いきれませんわね。では、ガオネメシス様‼︎ 私、先に帰りますね! チャオ♡」

 

 と、嘯きながら姿を消した。残されたガオハンター、ガオマッスルも操り主が居なくなった事で沈黙し、そのまま姿を消してしまう。

 

「ガオハンター‼︎」

 

 ガオシルバーは叫ぶ。だが、大切な相棒はまたしても、オルグに奪われてしまった。

 

「シルバー! 気を落とすな‼︎ 必ず、ガオハンターを取り戻す機会はある‼︎ 諦めてはならん‼︎」

 

 ガオグレーの励ましが、ガオシルバーを慰める。と、その時、ガオパラディンの戦いが再開していた。

 

 

 ガオパラディンは、ノウズクレイモアでガオインフェルノの胴体を袈裟斬りにした。先程まで、ダメージを与えらなかったガオインフェルノから火花が走る。

 

「お、おのれ…‼︎ バイコーンスパイク‼︎」

 

 何とか反撃しようと、ガオネメシスは左腕のガオバイコーンを突き出すが、タスクシールドから発生したエネルギーシールドに防がれてしまう。

 と、その際にノウズクレイモアにエネルギーが溢れ、刃として纏われて行った。振り返ると、ガオアキレス、ガオビルダーがガオソウルを注いでくれていた。

 

「ゴールド‼︎ 俺達のガオソウルを力に‼︎」

「ガオネメシスを倒すんじゃ‼︎」

 

 二人の激励が、ヘルメット内に響く。ガオゴールドは頷いた。

 

「ガオネメシス‼︎ これが、僕達の絆による力だ‼︎

 『氷結粉砕! フリージングバスタード‼︎』」

 

 ノウズクレイモアに纏われたガオソウルが、凍てつく氷の刃に変換され、ガオインフェルノに振り下ろされた。すると、ガオインフェルノの身体は一瞬で凍り付いたと思いきや、粉々に砕け散った。

 だが砕けたのは外側の氷だけで、中身にある筈のガオインフェルノは姿を消していた。

 

 

 〜フン……まさか原初のパワーアニマル達まで味方に付けたとはな……だが、俺を倒すには至らん……勝負を預けておいてやる……。

 鬼還りの儀を止めたければ、鬼ヶ島までやってくるが良い……最も、やって来れたら、の話だがな……ハハハハ……‼︎〜

 

 

 ガオネメシスの捨て台詞が、虚空を木霊する。ガオパラディンは消え去っていくネメシスの声を聞きながら、天を睨んでいた……。

 

 

 戦いの後、陽は地上に降りた。大神と佐熊もやって来る。

 

「ガオネメシスには逃げられましたね……」

 

 陽は悔しげに言った。佐熊は強く、背を叩く。

 

「そう落ち込むな、陽。あの手も足も出なかったガオネメシスに逃亡させる迄に追い込んだのは事実……次こそ決着を付けてやれば良い」

 

 佐熊の励ましに対し、陽は肯く。確かに、ガオネメシスは強敵だったが、今回は何とか追い払う事が出来た。だが、それでも彼が強敵である事は変わらない。もっと精進しなければ……。

 

「兄さん‼︎」

 

 降り立って来たガオズロックから、祈が走って来た。彼女の無事の姿を見て陽は心底、安堵した。

 駆け寄って来た祈を、陽は優しい抱き締めてやる。

 

「兄さん、兄さァん…‼︎」

「……無事で良かった……」

 

 ただ、それだけしか言えなかった。さめざめと泣き続ける祈を、陽は落ち着く迄、抱き締めていた。

 

「済まない、私の責任だ」

 

 突然の誰かの声に、陽達は振り返る。ガオズロックから、見慣れないガオの戦士が降りて来たからだ。

 

「貴方は、さっきの……」

 

 大神は、鬼灯隊の奇襲から自分達を助けてくれた謎の戦士がここに居る事を驚いた。

 

「ガオネメシスが、この様な大胆な行動に移すとは思わなかった。彼女の中にある巫女の力に甘えていた……」

「貴方は?」

 

 陽は泣き続ける祈を胸に抱きながら尋ねる。

 

「私は、ガオマスターだ。君達が、オルグと戦い続けている事は知っていたが……私は、それに介入する事は出来なかった……。本当に済まない……」

「マスターの所為じゃ無いわ……」

 

 ガオマスターの背後から、テトムと共に降り立って来たのは、ガオプラチナだった。と、同時に、ガオプラチナのスーツが粒子になって消えていく。

 

「鷲尾さん⁉︎」

 

 ガオプラチナの正体を知った陽は驚く。なんと、陽の同級生である鷲尾美羽こそがガオプラチナだったなんて……。

 

「隠してて、ごめん……。だけど、本当の事を明かせなかった……。竜崎が傷つきながら、苦しみながら戦っているのは分かっていたけど……」

 

 美羽は申し訳なさそうに頭を下げた。陽は数々の展開に頭が付いていけないながらも、ガオマスターを見据えた。

 

「教えて下さい‼︎ ガオネメシスは一体、何者なんですか⁉︎ どうして、祈が狙われたんですか⁉︎」

 

 陽の興奮しながらも一気に捲し立てた。何故、祈をガオネメシスは狙うのか…ガオネメシスの正体は人なのか、オルグなのか…彼が知っている事を全て知りたかった。

 ガオマスターは落ち着いた様子ながら、語り出す。

 

「……無論、そのつもりだ。最早、隠し通す意味も無い。ガオネメシスが……いや、スサノオが此処までしゃしゃり出てくればな……」

「スサノオ?」

「天照の竜、ガオゴールドよ……今から私が話す事に、どうか怒らずに耳を傾けて欲しい……。君が、ガオの戦士として選ばれた事……アマテラスの生まれ変わりたる彼女と出会った事……これらは全て、必然だったのだ……」

 

 淡々とした口調で、ガオマスターは語り始めた……。

 

 

 〜ガオマスター、ガオプラチナの助けもあって、ガオネメシスを退けたガオゴールド達! ガオネメシスの正体、そして過去を知るガオマスターの口から語られる真実の物語は如何なる物なのでしょうか⁉︎〜


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