帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest40 明かされる過去

「ぐ…うおォォ……!!!」

 

 鬼ヶ島の一室にて…。ガオネメシスは頭を抑え、悶え苦しんでいた。ガオゴールドとの戦いで形成を逆転され、トドメを刺される寸前に戦線を離脱したが、先程にテトムより聴かされた響きの調べが、ネメシスに精神的なダメージを与えていた。

 何時もの余裕のある傲岸不遜な態度は全く見られず、かなり追い詰められている様子だ。

 

「大丈夫ですかァ?」

 

 ニーコがヒョコッと顔を見せ、ガオネメシスに語り掛ける。彼女が周りを見れば、多数のオルグ魔人やオルゲットの亡骸が散乱していた。

 ガオネメシスが周囲に当たり散らす様に、ヘルライオットを乱射し、それに巻き込まれる形で、死んでしまったらしい。

 

「あーあ、皆、死んじゃったじゃ無いですかァ……。ネメシス様の気晴らしの為にオルグを殺したら、テンマ様に叱られますよォ?」

 

 小馬鹿にした様な彼女の台詞に、ガオネメシスは今にも噛みつかんと言った感じで、ヘルライオットをニーコの眉間に突き付け、射撃した。

 

「二度と、この俺に減らず口を叩くな…‼︎」

 

 ゼロ距離から放たれた弾が、ニーコの顔を吹き飛ばした。首の無くなった胴体が、糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。

 しかし、コンマ2秒で破壊された顔は復活して、ピンピンとした様子のニーコが起立した。

 

「アハッ♡ 私を殺すなんて無駄ですよォ♡ 知ってる癖にィ♡」

 

 他者の神経を逆撫でする事に関しては、ニーコの十八番である。ガオネメシスは口の中に放り込まれた苦虫を噛み潰した様に、苛々としていた。

 

「クッ…‼︎ 性悪猫が……‼︎」

「クスクス……苛立ってますねェ、ネメシス様?」

 

 激昂しているガオネメシスを見ながら、ニーコは火に油を注ぐかの如く、近付いて来る。益々、ネメシスは憤怒のオーラを漂わせた。

 

「……ニーコ、俺は今、虫の居所が悪いんだ……‼︎ 無闇に近付かない方が身の為だぞ……‼︎」

「ンフフ♡ そんな、ネメシス様に、とっても良い事を教えてあげようと思ったのにィ♡」

 

 馴れ馴れしく擦り寄って来るニーコに対し、ガオネメシスは煩わしそうな態度を取る。

 

「良い事、だと? 貴様の情報など当てになるか」

「あらら〜? そんな事を言っちゃって良いんですかァ?」

 

 勿体ぶった様に焦らしながら、ニーコはガオネメシスのマスクに口を近づけると小声で、何かを話した。

 すると、ガオネメシスは「クックッ…」と含み笑いを上げた。

 

「成る程な……! 実に貴様らしい姑息な手段だ……」

「ありがとうございまァす♡ そ・れ・に、ネメシス様の“身体”、そろそろ限界じゃ無いですかァ? 丁度良いと思いますよォ?」

 

 ニーコの発言に、ガオネメシスは胸を抑えた。

 

「……ああ、そうだな……。半ば悲鳴を上げ始めている身体だ、確かに丁度良いかも知れん……」

 

 そう言いながら、胸を抑える手に力を込めるガオネメシスだった…。

 

 

 

 その夜、陽と祈はガオズロック内に座っていた。あの後、無事に祈を連れ戻し学校へ送ったが、急にいなくなった事を周囲に弁明するのには骨を折ったらしい。

 陽もまた学校へ戻り、猛や昇のお陰で怪しまれなかった事を知り、胸を撫で下ろした。

 同時に美羽も、さりげなく学校に戻っていたが、洋館で別れた際「後で話す」と言われて、話す機会を失ってしまった。

 恐らく、ガオマスターや美羽も此処へ来るのだろうが、まさか同級生だった鷲尾美羽が、ガオの戦士だったとは、と陽は驚きを隠せなかった。

 

「美羽さんも、ガオの戦士だったなんて……」

 

 驚愕していたのは、祈も同じだった。以前、魏羅鮫オルグの件で彼女に助けられた際、意味深な言葉を発していた事があったが、こう言った伏線だったとは思わなかった。

 それは、大神や佐熊も同じだった。一度だけ、彼女と邂逅した時、彼女が、先代ガオレンジャーの一人、ガオイエローこと鷲尾岳の縁者である事を聞かされた。

 あの時点で、ガオレンジャーについての知識を有していた美羽だが、この様な展開は想像だにしていなかった。

 

「……しかしのォ、あのガオマスターっちゅう男、中々の曲者じゃのう……。オルグを相手にした際、武器を使わんと素手で立ち向かっておった……」

 

 佐熊は、ガオマスターと初めて顔を合わせた時、彼が鬼灯隊のくノ一二人に武器無しで、徒手空拳のみで渡り合い、勝利していた事を二人に話した。祈も

 

「あの人、ガオネメシスとも互角以上に戦ってた……」

 

 ネメシスとの戦いでは、負傷を負わされていたが、それでも尚、彼にはガオネメシスと立ち向かえる余力があった。

 つまり、彼はガオネメシスやデュークオルグ級のオルグと同格の力を有している事になる……。

 等と考えていると、テトムとこころと摩魅、更にはガオマスターと美羽が入室して来た。

 摩魅は、祈を見るなり大粒の涙を浮かべ、縋り付いてきた。

 

「祈さん、ごめんなさい…‼︎ 私、私…‼︎」

 

 泣きじゃくりながら、摩魅は祈に謝罪し続けた。元を正せば、摩魅がオルグ達に情報を流したのが原因だった。

 しかし、祈は摩魅の頭を撫でながら微笑む。

 

「…もう良いよ、摩魅ちゃん。無事に帰って来れたんだから、もう良い……」

 

 涙でグシャグシャになった摩魅の顔を見ながら祈は言った。その様子に陽は微笑ましくなった。

 

「……さて、盛り上がっていく所、申し訳ないのだが……」

 

 騒がしくなった室内を静かにする様に呟くガオマスター。

 

「先ず君達に集まって頂いたのは、他でも無い。私とガオネメシスの関係についてだ……」

「それより、僕が聞きたいのは……」

 

 話を始めようとしたガオマスターを遮る様に、陽は水を差した。

 

「僕が、ガオゴールドに選ばれたのは必然だったと……ガオの巫女の生まれ変わりである祈と僕が出会った事も偶然では無いと……なら、僕がガオの戦士に選ばれた理由を教えて下さい‼︎」

 

 陽は激しく問い詰めた。そもそも気になって居た。これ迄、ガオの戦士と関わりなく生きてきた自分が何故、ガオの戦士となったのか?

 そもそも、先代ガオレンジャーもパワーアニマルに選ばれる迄は、互いに接点すらない関係だったのだ。

 それなのに、自分がガオの戦士となる事は最初から決まって居た事だった。ガオマスターが、そう言う理由が彼は気になって仕方無かった。

 マスターは、小さく溜め息を吐く。

 

「……せっかちな奴だな……。それを話すのは非常に長い話になる……先ずに話さねばならないのは……二千年以上の昔に迄、遡る……」

 

 ガオネメシスは、遠い昔の御伽噺を話す様な口ぶりで話し出す。陽達は全員、耳を傾けた。

 

「今から二千年以上前……まだ人類に文明らしい物がなく、小さな集落に似た国々が各地に点在していた時代……」

 

 

 

 〜二千年以上前

 

 当時は人と獣は互いに狩り、狩られあいながらも共存し、助け合い生きていた。

 人は生きる為、山で動物を捕まえて、海、川で魚を獲り、野山から木の実を採取して、正しく獣と一体した生き方をしていた。

 そんな中、増えていった人間達に呼応するかの如く、異形の怪物達が現れ始めた。人々は、それを“鬼”と呼んで恐れていた。

 だが、鬼に負けっぱなしと言う訳じゃ無かった。鬼へ対抗するかの様に、姿を現した巨大な獣達……。彼等が暴れ回る鬼達を倒して回り始めた。人々は、その大いなる存在を大自然の化身“精霊”と呼んで、感謝し奉った。ある時から、人間の中に神獣達と交信する者、鬼達と戦う者達が現れた。

 その存在を人々は敬意を込め、交信する者を“巫女”、戦う者を“戦士”と呼んだ……。

 

 

『アマテラス様! お導き下さい、アマテラス様!』

 

 

 周囲の立ち並ぶ家屋の中で一際、立派で荘厳な造りの建築物……その周りに、多くの人々が集まっていた。すると屋敷から出てくる白を基調にした清楚な出で立ちの女性……彼女が、初代ガオの巫女であるアマテラスである。

 アマテラスは不安気に集う人々を、穏やかな様子で見回した。

 

『また、鬼達が現れました‼︎ 立ち向かった若い衆が、傷を負わされ築かれた防壁も破られそうです‼︎』

 

 初老の男性の言葉に、アマテラスは真剣な面持ちだ。

 

『お静まりなさい……神獣の声が聞こえて来ました! 神獣の加護を受けし戦士達を遣わせよ、さすれば災いは鎮まらん……』

 

 アマテラスの発した言葉に、どよめく人々は一斉に静まった。アマテラスは自身の後方にて傅く二人の男を振り返る。

 

『ツクヨミ、スサノオ! 精霊より恩恵を賜った貴方達に銘じます! 鬼達を鎮めよ!』

 

『御意‼︎』

 

 二人の男は顔を上げる。一人は端正な顔立ちに黒髪を肩で綺麗に整えた美青年、もう一人は端正ながらも何処か荒々しい風貌で腰まで伸ばした黒髪をざんばらにした偉丈夫だった。

 二人は腰に差した剣を持ち、立ち上がった。

 

 

「そのスサノオと言う人が、ガオネメシスの正体?」

 

 ガオマスターの話を聞いていた陽は尋ねる。マスターは頷き、祈も陽に言った。

 

「ガオネメシスも言っていたわ。自分は、原初の戦士スサノオの成れの果てだって」

 

 余りに壮大な話に、陽達もテトムでさえも開いた口が閉じない。

 

「原初の巫女アマテラスに弟が居たなんて……おばあちゃんも知らなかったわ……」

 

 テトムは自分の一代前のガオの巫女ムラサキを思い出す。彼女は、長命なガオの巫女だが、自分の前に居た巫女アマテラスについての情報を、殆ど持ち合わせて居なかったのだ。

 

「…無理もあるまい…。そなたが祖母、ムラサキが巫女として生きた時代には、アマテラスの情報は殆ど残されて居なかった…。

 いや、意図的に掻き消されてしまったのだ…」

「意図的に?」

 

 今度は大神が尋ねた。ガオマスターは、何処か苦し気だった。

 

「……そうだ。今でこそ、アマテラスやスサノオは神と語られ、神話の中で神格化されているが……それは、彼女の末路を哀れんだ者達が、後世に残した精一杯の感謝だったのだ……」

「……末路を哀れんだ? 一体全体、アマテラスの身に何があったんじゃ?」

 

 佐熊も会話に入る。

 

「……祈……君は、ガオネメシスから、アマテラスについて何と聞いた?」

 

 ガオマスターは、祈に聞いた。祈は困惑しながらも

 

「……彼は……アマテラスは守っていた人間に裏切られて、人間に失望して死んだ、と……」

「それは間違いでは無いが……正解でも無い……」

 

 祈の答えを聞いて、ガオネメシスは言った。

 

「アマテラスは確かに人に裏切られた……しかし……彼女は人間に失望した訳でも、見限った訳でも無い……。

 彼女は…アマテラスは、人間を守る為に命を未来に繋いだのだ……」

「繋いだ?」

 

 陽は話が見えない。何故、アマテラスは自分を裏切った人間を赦し、最後まで守ろうとしたのか? ガオマスターの話は続く。

 

「……少し話を戻そう。アマテラスは生まれた時から、大自然の化身……君達が、パワーアニマルと呼ぶ精霊達の声を聞く力があった……。最初は、ただそれだけだったが……やがて、精霊達と心を通わせ、その力を引き出す術を身に付けた……君達が、戦う際に身に纏うガオスーツ、破邪の爪の源たるガオソウルとは……アマテラスの編み出した力を応用したに他ならぬ……」

 

 これには、テトムさえも驚いた。ガオレンジャーの力の根源たるガオソウルとは……何と、二千年以上の昔に、アマテラスによって編み出されていたなんて……。

 

「アマテラスは、この力を用いて、オルグ達と対抗した。しかし……その当時は、まだ君達の様に全ての人間が、ガオの戦士となれるには至らなかった……。アマテラスを守りたいと願う、彼女の血を分けた二人の弟しかな……」

「じゃあ、その弟が、スサノオ?」

 

 陽は、ガオネメシスのマスクの下にある人物が、アマテラスの弟にして、原初の戦士スサノオである事を知った。

 ガオマスターは頷く。

 

「……スサノオは強かった……。純粋な強さなら、歴代のガオの戦士が束になっても勝てないだろう……。ただ強いだけでなく、ガオソウルを破邪の爪として利用する方法を編み出したのも、スサノオだ…」

「……それで、ネメシスはガオレッド達の破邪の爪を扱えたのか……‼︎」

 

 大神は、ガオネメシスとの初戦で、ガオレッド達の破邪の爪を彼が用いていた事を思い出す。ガオの戦士たる彼は、他のガオレンジャー達の武器である破邪の爪を最大限まで引き出していた。其れ等は、ガオソウルの活用法を、彼が熟知していたからに違いない。

 

「アマテラスは、スサノオと、もう一人の弟ツクヨミを率いて、国に襲い掛かるオルグ達と迎え撃った。

 そして遂に、オルグの支配者にして、全オルグの祖とも言える存在が現れた……。其奴の名は、雄呂血……。歴代のオルグの中で最も強く、最も凶悪で、最も人間を憎んでいたとされた古のオルグの王……。

 奴は、アマテラスを倒す為、全オルグを率いて、彼女に戦を仕掛けた……当然、スサノオとツクヨミが黙ってはおらず、当時のパワーアニマル達を率いて、雄呂血と対立した。

 三日三晩に及ぶ死闘の末、遂にスサノオが雄呂血の首を落として勝利を得た。頭目を失い、オルグ達も全て消滅した……現代においては、闘神・須佐之男命による妖蛇・八岐大蛇の退治と銘打たれているが、これこそが、八岐大蛇伝説の真相だ……」

 

 ガオマスターの口から聞かされた日本の歴史の影に埋もれた、ガオの戦士の歴史……改めて、陽は自身が身を置くガオレンジャーの世界には、未だに理解出来ていなかった事を痛感した。 

 

「伝説では、此処で終わりだが……話は続く。全てのオルグを滅ぼし、アマテラスは称えられた……だが、雄呂血を倒したスサノオを見た人々の反応は違った。

 雄呂血を倒した、と言う事は……その雄呂血以上に強大な鬼となるのでは無いか……一人の言い出した言葉は、やがて野火の如く広がり、遂には、スサノオへの迫害が始まった。それだけ、スサノオの強過ぎた。

 アマテラスやツクヨミは、スサノオの潔白を人々に訴えたが、疑惑に染まり、オルグの恐怖を焼き付けられた人々には聞く耳を持たれなかった……。スサノオを殺すか、追放するか……そんな穏やかでは無い話が持ち上がり始め、とうとうスサノオが言った。

 

 〜この国を出る〜、とな」

 

 ガオマスターは天を仰ぎながら続けた。微かに揺れるマスクの下では、はひょっとしたら泣いていたのかも知れない。

 

「当然、アマテラスもツクヨミも止めた。しかし、自分が居続ける限り、この混乱は収まらない。漸く訪れた平和を守る為、スサノオは我が身を犠牲にする形で、国を出た……。

 しかし皮肉にも……これが悲劇の始まりだった」

 

 一旦、話を切ったガオマスターは、すっかり夜となった景色を見ながら、外へ出ようと誘う。

 判らぬまま、陽達は彼に続く。夜の冷たい風が肌に突き刺さる。

 

「スサノオが国を出た後、混乱していた人々は収まった。だが……今度は人間同士で殺し合う事態となった。国が大きくなり、増え過ぎた人間は、平和の中で持て余した力を間違った方角へ使ってしまったのだ。

 アマテラスは悟った。これこそ、雄呂血の仕掛けた最後の復讐なのだと……。奴は、死する瞬間に自分の中にあった邪気を吐き出し、国中に撒き散らした。邪気に侵された人間は、怒りや妬み、嫉みと言った負の感情を抱き、互いに殺し合う……そして、雄呂血と共に消え去った筈のオルグは再び、姿を現した。

 国の危機、アマテラスの危機に、スサノオは祖国へと戻ったが、既に国は滅び去り、アマテラスもツクヨミも戦死していた……。

 大切な者を全て失ったスサノオは悲しみと絶望に慟哭し、自らに剣を突き立てて果てた……」

 

 そう言うと、ガオマスターの変身が解けた。ガオマスクによって隠されていた黒髪が露わになる。

 

「……だが、アマテラスは最後の賭けに出た。自身の魂の一部を地上に残して、生き残った僅かな人間達と共に、パワーアニマル達の住う楽園、天空島に封じた。そして残りの魂を地上に残して、何時しか自分の魂を受け継ぐ者が転生する日に備え、其れを見守る役目を私に託した……」

 

 ガオマスターは振り返る。顔立ちこそ何処となく陽に似ているが、憂いを帯び、非常に悲しみに満ちた顔をしていた、

 

「じゃあ…まさか、貴方が⁉︎」

「そうだ、私がアマテラスの弟の片割れであるツクヨミ。私は姉の意思を尊重し、彼女の魂の転生を待っていた……。歴史の中、オルグが幾度と蘇り、その度にパワーアニマルの加護を受けた戦士達との戦いを見守り続けていた……。彼等と共にな……」

 

 ツクヨミは振り返る。すると、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィン、ガオナインテール、ガオワイバーンが現れた。

 

 〜久しぶりだな、ツクヨミ……二千年振りか…〜

 

「ああ……再び、出会う事になるとはな……」

 

 驚いた事に、ツクヨミとガオドラゴン達は互いに知り合いの様子だった。ガオユニコーンも続く。

 

 〜あの日、スサノオを救えなかった後悔から、私達は人間から手を引いた……彼を見捨てた人間達、オルグを生み出す人間達と見限って……〜

 

 ガオグリフィンも続く。

 

 〜我々も、人間の前から姿を消して、天空島にも行かず、アマテラス達と過ごした日々を想いに馳せて来た……。

 陽……お前と出会う迄はな……〜

 

 ガオナインテールは、陽を見た。

 

 〜アマテラスは言った。自身が魂を受け継ぐ者と、スサノオの強さを受け継ぐ者が必ず現れる、と……。だが其れは中々、現れず……長き時を生きていく内に妾達は、レジェンド・パワーアニマルと呼ばれるに至ったと言う訳じゃ…〜

 

「じゃあ、ガオドラゴン……君達は最初から?」

 

 陽は知った。ガオドラゴン達が、自分をガオゴールドに選んだ理由を……。つまり、彼等は最初から知っていた事になる。

 

 〜……スマン、陽……。本当は、もっと早く話すべきだったが……陽や祈の力が完全に目を醒ます迄は、として黙っていた……。

 だが、我々は最初に見た時から分かった……。お前こそ、我々の待ち望んだ、アマテラスの最期の際に残した予言の戦士であると……〜

 

「アマテラスの最期の予言?」

 

 大神は尋ねた。ガオユニコーンが昔を思い出す様に語り始める。

 

 〜アマテラスは最後に言い残した。悠久の刻を経て、天の巫女と日輪の戦士、目醒めん。その時、我等、六聖獣は集結せん……と〜

 

 ガオユニコーンの言葉に、陽は耳を傾ける。天の巫女と日輪の戦士? 六聖獣?

 

「天の巫女と日輪の戦士って、祈と僕の事?」

 

 陽の問いかけに対し、ガオドラゴン達は頷く。

 

 〜我々は、お前こそが、アマテラスが命を賭して未来へ繋げた希望であると信じたい。頼む……スサノオを我々の友を救ってくれ…!〜

 

 そう言って、ガオドラゴン達は姿を消した。残された陽達は、ツクヨミと美羽を振り返る。

 

「済まない、陽……。私は、弟を闇の中より救い出してやりたい…。しかし、奴には既に私の声は届かない……。頼む……弟を救い出してくれ……」

「……分かりました……‼︎ 僕は、ガオの戦士です‼︎ ガオレッド達と共に、スサノオも救って見せます……‼︎」

 

 陽の言葉に合わせ、大神達も前に進み出る。

 

「待て、陽……お前一人に背負わせるつもりは無いぞ! 俺達だって、ガオの戦士だ‼︎ 協力するぞ‼︎」

「仕方無いのォ…‼︎」

 

 佐熊も彼に合わせて応える。ツクヨミは満足げに頷いた。

 

「よく言った、若きガオの戦士達よ…‼︎ 君達ならば、地球の未来を任せられる……。陽よ、ガオサモナーバレットとドラグーンウィングを貸してくれ」

 

 そう言って、ツクヨミは陽の差し出したガオサモナーバレットとドラグーンウィングに力を注ぎ込み始めた。

 すると、二つの破邪の爪は融合し、一つの武器に姿を変えた。見た目は、ガオドラゴンがそのまま銃になった様な姿だ。

 

「受け取れ、日輪の戦士よ……アマテラスの遺した真の破邪の爪『ソルサモナードラグーン』だ‼︎」

 

 パワーアップした破邪の爪を手にした陽は、ドラグーンウィングが銃身の左右に折り畳まれているのを見た。

 

「銃身を垂直に立てて見ろ」

 

 ツクヨミの指示に従い、陽はソルサモナードラグーンを垂直にした。すると翼が銃口の左右を隠す様に反転し、銃口より光り輝く刃が出現した。

 

「それは、かつてスサノオが使っていた物だ。君の力が覚醒する迄、その姿には至らなかったが……どうやら、君は認められた様だな……」

 

 陽は光の刃を天に翳して見せた。どうやら、自分はガオの戦士として新しい段階へと進んだらしい。

 そして、大神を見て…

 

「大神さん…」

「……ああ」

 

 次に、佐熊を見て…

 

「佐熊さん…」

「んん?」

 

「僕達で、オルグを倒そう‼︎ 必ず‼︎」

 

「ちょっと。私、忘れないでよね」

 

 話の腰を折る様に、美羽が入って来た。

 

「……ごめん、竜崎。ずっと隠してて……。私にガオの戦士としての力をくれたのは、ガオマスターだった。

 でも、貴方達の成長に妨げになるとして、戦いに加わる事も真実を告げる事も出来ず、影から見守る事しか出来なかった……」

「そうだったのか…」

 

 美羽が、ガオの戦士の知識を有していた事、ずっと引っかかっていた事に対する謎が漸く解けた。

 

「……でも、これからは私も力を貸す‼︎ その時は私に力を貸してくれた、この子も目を覚ましてくれるから!」

「この子?」

 

 陽の質問に対し、美羽は懐から虹色に輝く宝珠を見せた。

 

「この子は、ガオフェニックス。永遠の命を生きるレジェンド・パワーアニマルだよ……。でも、今はまだ眠っている……」

 

 恐らく、アマテラスの遺した予言に出てくる六聖獣……恐らく、ガオフェニックスの事を指すのだろう。

 陽は思い出した様に、ガオマンモス達の宝珠を、ツクヨミに返した。

 

「これは貴方のパワーアニマルですよね、お返しします」

「…ああ」

 

 そう言って、宝珠を懐に戻すツクヨミ。陽は、ずっと黙りこくっていた摩魅に振り返る。

 

「摩魅ちゃん……君だって、これから僕達の大切な仲間だ……」

「な、仲間? でも、私は……」

 

 オルグの手先となって、陽達の情報を流し続けて来た自分を、改めて仲間と認めてくれる陽に、摩魅は困惑した。

 

「……摩魅ちゃんは私達に申し訳無いと思っているからこそ、涙を流したんでしょう? それで、もう良いじゃない……」

「……祈さん……」

 

 優しく語り掛けて来る祈に、摩魅は大粒の涙を流しながら、抱きついた。陽は決意する、もう彼女の様に涙を流す者は出させまいと……ガオネメシスの企む鬼還りの儀は、必ず食い止めてみせると……。

 

 

 何処か遠く離れた地……あたり一面に散乱するオルグの死骸……。どれもこれも、まるで食い散らかした様に、グチャグチャだ。と、その際、何かを咀嚼する様な音が響く。

 音のする方には、巨大な影が一心不乱にオルグの血肉を喰らっている姿があった。その様子を、遠方よりツエツエが不遜な様子で見ていた。

 

「フッフッフ……機は熟したわ…‼︎ さァ、ティラノオルグ‼︎ 今度こそ、ガオレンジャー達を根絶やしにしてやるのよ‼︎」

 

 ツエツエが杖を振り上げる。ティラノオルグは天を見上げ、高々に吠えた……。

 

 

 〜遂に明かされたガオネメシスの正体と、原初の巫女アマテラスの秘密‼︎ 新たな仲間として、ガオプラチナとガオマスターを加えたガオレンジャーですが、ガオレンジャーを根絶やしにすべく、ティラノオルグを従えたツエツエの牙が遂に、ガオレンジャーに届こうとしています‼︎

 果たして、ガオレンジャーの運命は⁉︎〜


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